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山奈みちかは触れられない
しおりを挟む昨日も昨日で尊い推しをありがとうございます神様。私は幸せですなんて今日も天を眺めた。
「あ、みちかちゃん」
「……! 推しっ……!」
「おし……?」
危ない危ない、心の準備もなく現れた推しに溶けるところだった。
私、山奈みちかの
推しの二人、小泉かすみと和泉りあ。
並んで登校だなんてもう世界を幸せにする気ですか。今たった1つの命が尊さで散りそうでしたよもう。
もちろんそんなことを言えば未だにかすみちゃん以外には警戒心むきだしの和泉さんに変な目で見られちゃうから言わないけど。
「な、なんでもないの。おはようかすみちゃん、と和泉さん」
「かすみ、知り合い?」
「いやいや同じクラスでしょりあちゃん……」
まさか和泉さんに存在を知られてすらいなかったとは。あれですか、かすみちゃん以外は眼中にないということですか。ありがとうございます。
山奈みちか、本日をもちまして空気になります。
「みちかちゃんと話すのなんだか久しぶりかも」
そりゃ二人の会話が聞きたくて空気になろうと努力してましたからね。
そのための努力は惜しみません。かすみちゃんが私のことを忘れていなかったことに少しだけ安堵する。
「かすみ、私先に行ってるね」
「え、ちょっと待ってよりあちゃんっ」
え、え?カスミサキイッテルネ??
マッテヨリアチャン??
ダメですよ。当て馬展開には期待したいけどそれはまだ早いというか私にはちょっともったいないというか。
私は道端の雑草になって二人を見ていたいだけなの!
当て馬になるのならば人気者で有名なお姉ちゃんの友だちがいたらしいしそういう感じの人がふさわしいといいますか。まぁかすみちゃんはどんな人が来ても和泉さんを選びますし。
だからちょっと待って和泉さん!!
「あ、みちかじゃん、この時間珍しいね」
友!!!!!
いつも昼休みになる度に私の席へ来てはペットのゴンノスケの話をする私の友だち。いつもは受け流してばかりいたけど今回ばかりは天使に見える。
ナイスタイミング。
今日は君を抱きしめたい。
「私、ゴンちゃんと学校行くから二人でゆっくり行ってきなよ」
「え、ゴンちゃんて私のこと……?」
「えー、でも……ならみんなで行かない?」
その方が楽しいよなんて、私へ手を差し伸べるかすみちゃん。
やっぱりかすみちゃんは優しくて可愛い。
かす×りあの関係なくしても私はかすみちゃんのことを人として好きなんだ。
でも、私は見逃さない。
かすみちゃんが私に手を差し伸べたときに見せた和泉さんの寂しいようなムッとしたような表情。
思わず瞳に残した過ぎて何度も瞬きしてしまったわ。心のシャッターが忙しい。
「大丈夫大丈夫! 急いでるから!」
呆然とする友だちの手を握って思い切り駆け出す。推しと同じ空気を吸ってしまった……。
私が花だったら間違いなく咲いてる。種から一気に咲き誇ってる。
「はぁ好き……尊い」
「ちょ、みちかっ…! 今日何かあったっけ?」
意味がわからないとでも言いたげな友人へ、私は大切なことを教えてあげよう。
「モブはそう簡単に触れちゃダメなんだよ」
「……はい?」
そう、私はモブになる。
かすみちゃんたちを遠くで見守るモブになるんだ。
今日はきっといい事ありそう。
暖かな日差しの中で、私は無意識にスキップをしていた。
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