【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

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どこで間違えたか?

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魔力が充満している地下ダンジョンの中でも、特にその濃度が濃い「魔窟」。

まだ冒険者によって足を踏み入れられていない「魔窟」には、必ずといっていいほど強力な魔物、あるいは数の多い魔物のどちらかが潜んでいる。

魔窟の空気中に濃く含まれている魔力を吸って、他の場所よりも魔物が発達しているからだ。

そしてもう一つセットになっているのが、「聖なる泉」の存在。

というよりも、そもそも魔力が濃くなっていたり、魔物が集まってきたりといった魔窟が発生する原因として、「聖なる泉」がある。




「おーい、あったぞ! こっちだ」

レッドイーターを倒したのち、その周辺を手分けして探索するパーティー。見つけたのは、パーティーリーダーである戦士のゴダスだった。

全員が、呼ばれた方に向かう。

ゴダスの前には、暗闇の中で輝く魅惑的な泉があった。

「ほう、これはまた」

ザンが舌なめずりしながら、その泉を覗き込む。

「純度の高い泉ですねぇ……」

夢見心地でザンが手を伸ばすと、魔法使いのアルアが、泉に触れる寸前で彼の手を掴んだ。

「何やってんだよ、おっさん。汚い手で触んな。

私らが先だろ?」

「おや、失礼。

レディーファーストでしたね。これはうっかり」

「何がうっかりだ」と、泉の淵に跪いた神官メーテが棘で刺すように呟く。

学者は気分を害する様子もなく、すごすごと後ろに下がった。


魔法使いは、自分の手で泉の水をすくい、喉に流し込んだ。

彼女はぶるぶると身震いし、

「あぁ、生き返る……」と恍惚の表情で呟いた。

「ほどほどにしとけよ。ここでしばらく休憩するにしても、あまり酔っぱらわれたら敵わん」

「ちっ……わかってるよ!」

魔法使いは、ばつが悪そうにそう言った。

役職柄、他のメンバーよりも魔力消費が激しく、その分、体内に留めておける魔力量も多い彼女だったが、それでも必要以上にポーションや聖なる泉の水を摂取しようとするきらいがあった。

完全に中毒なのだ。


対照的に、魔法使いの隣で泉に手を差し入れている神官は、その水を口に含もうとはしない。「聖なる泉」の水は、直接体内に取り込まなくとも、十分に魔力を回復することができる。

むしろ、よほど魔力容量の大きい者以外は口にするべきではないと、国が公に注意を促しているくらいだ。

それでも毎年、新たな魔窟の開拓に成功した中~上級パーティーのメンバーが、魔窟の主を倒した興奮のまま聖なる泉に口をつけ、そのまま重篤な中毒症状を起こし命を落とすケースが報告されている。

「聖なる泉の周りには骨が散らばっている」などと一般に言われているのは、このためだ。


神官は腕を浸し、顔を洗うと、泉から離れた。

魔法使いはそれを横目で見て、いつまでも自分一人で飲み続けるわけにもいかず、またパーティーリーダーの目もあって、名残惜しそうに泉から離れた。


「では、我々の番ですね」

学者は戦士に向かってニィ、と笑った。

「冗談ですよ。お先にどうぞ」

ゴダスは当たり前だろという様子で泉に近づき、その水に手を浸した。それから抜き出して、濡れた手でパンパンと頬や腕を叩く。

終わると立ち上がって、すれ違った学者には目もくれず泉から立ち去った。

「魔力なんか大してないくせに」と、泉の前に残された学者は、笑顔を顔に貼り付けたまま呟いた。


それからぐるんと首を僕の方に回して言った。

「さぁ、お楽しみの時間ですよっ」

言うが早いか、学者は懐に差していた短剣を抜き、僕の方に迷いなく突き刺した。

「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」

「あはっ、あはは!!」

学者のスキルによって体の動きを制御されている僕は、どれだけの痛みを感じても逃げることができない。

学者は狂ったように、僕の体のあちこちに短剣を突き刺し続ける。

血が噴き出す。冗談みたいにみたいに。

痛みが這いずり回る。目、耳、鼻。すぐにどこが痛んでいるのか、わからなくなる。

痛みに意識が飛びそうになり、痛みによって、その意識を引き戻される。

その繰り返し。

慣れ親しんだ、死の臭いがし始める。


どこで間違えたのだろうと、体を離脱しはじめた意識で思う。

宙に浮いた視点から、虫けらのように地面に這いつくばっている自分を見おろす。

狂った男に、なす術もなく刺され続けている自分を。


どこで間違えたか。

その時点を、僕は正確に思い出すことができる。

僕が選択を誤った日。



その日は僕が、成人になった日だ。
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