【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

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反撃の狼煙

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ゴッ。

鈍い音がした。

学者は殴られた顔面をおさえ、地面にへたり込んだ。


「弱点が分かっているなら、なぜ最初に言わなかった」

怒りを目にたぎらせている戦士。

彼の背後には、つい数分前までターコイズゴーレムだった岩の塊と砕けた破片が散らばっていた。ほのかに発光さえしていた岩石の鮮やかな青緑色は、早くも黒ずみ始めている。


ターコイズゴーレムの討伐後。

戦士ゴダスの指示に従って、魔法使いと神官は野営の準備を始めた。

そして破壊された魔物の後始末をしようとした学者に、大きな足音を立て戦士は近づき、何の前触れもなく顔面を殴った。


「言ってみろ。なぜ最初に、弱点を言わなかった」

「これまでの魔物は難なく倒されていましたし、必要ないかと……

うぐっ」

説明している学者の脇腹に、ゴダスは容赦なく蹴りを入れる。

「必要があるかどうかは俺が判断する。戦闘に役立つ情報は、すぐに共有しろ」

「はい……ガッ」
 
学者はまた蹴られた。今度は頭だ。

学者は頭を抱え、地面にうずくまる。

戦士はザンに背を向けて、魔法使いと神官に向かって言う。

「今夜の寝ずの番は学者にやらせる。

アルアとメーテは、しっかりと休むように」

「はーい」
「わかりました」

アルアは嬉しそうに返事をし、メーテはほっとしたように返事をした。


地面にうずくまった学者は、すぐには起き上がらなかった。

『今だ』

僕はその隙を逃さなかった。

素早く地面に目を走らせる。

そして目当ての物が見つかると、それをさっと拾い、自分の服の中に隠した。

『これで準備はできた』

バレてはいけないと思い気を張ったが、それでも自然と頬は緩んだ。



今回の探索において、ダンジョンに潜り始めてからはどれくらいの日数が経っただろうか。

正確なことは覚えていないが、一ヶ月近くは経っているはずだ。

さすがに強者揃いのパーティーメンバーにも、疲労の色が見え始めた。

もちろん、聖なる泉が現れるたびに魔力や体力の回復は一通り行なっている。

しかしそれらにはあらわれない疲労―――精神にくる疲労が、四人全員に蓄積し続けているのは明らかだった。


加えて、階を増すごとに、強くしぶとくなる魔物。

序盤の階層では、魔窟にいる主相手でさえ戦士の一撃でサクッと片付けていたのに、今では魔窟以外で遭遇する敵でさえも、神官や、あるいは学者の戦闘参加が余儀なくされている。


パーティーの雰囲気は、日を追うごとに悪くなっている。

『いいぞ、もっと悪くなれ……』と僕は思っていた。

パーティー内の連携が悪くなり、個々のメンバーが孤立すればするほど、僕が利用できる隙は増えるだろう。

何を企むにせよ、チャンスは多いに越したことはない。




「入れ」

学者ザンが、腰につけていた紫色の巾着袋をとって、僕の前に差し出した。

それは『シャーマンの頭陀袋』と呼ばれる魔法具だ。

見た目は小さな巾着袋だが、中には巨大な空間が広がっていて、大量の物を入れることができる。冒険者の必需品で、他のパーティーメンバーもそれぞれ腰に一つずつつけている。

学者だけ違うのは、その袋を二つつけているということだ。自分の物を入れて運ぶ用と、そして僕を閉じ込めておく用。


基本的にダンジョンを探索するとき、僕は外に出されている。

おそらく、魔力の濃い場所に長くいさせることと、パーティーメンバーが魔物を倒す場面にいさせることで、経験値を積ませ、よりスキルの効果を上げさせるためだろう。

そして夜眠る段になると、ずだ袋の中に入らされる。おそらく、僕が逃げたり、学者の寝首を掻いたりしないようにするためだ。


僕は大人しく、その袋の口に手を入れる。袋の口を通る瞬間に、魔法具の効果で、手がぎゅんと小さくなる。手から腕、そして頭。袋の中に、全身を入れる。

中に入ると、袋の口からゆっくりと底に向かって、体が落ちていく。どういう仕組みの魔法なのかは分からないが、落ちるスピードはとても緩やかだ。袋の中へ次々に物を入れていっても、壊れたりしない理由がよくわかる。


といっても、学者が僕の監獄用に使っているこの袋には、何の物も入ってはいない。僕がある物を使って、何か悪さをしないようにするためだろうか。

僕は袋の底に、ふわりと着地する。

そして服の中から、学者が戦士に殴られていたとき、密かに拾い、隠し持っていたものを取り出す。


それは、ターコイズゴーレムの破片だ。

つららのように棒状で尖っているものを選び、拾った。

すっかり死後の変色が進み、黒ずんでいるが、硬さは申し分ない。


自分以外何もない、がらんとした袋の中で、僕はにやりと笑う。

『何もないなら、出せばいいんだよな』


そして自分の胸に思い切り、つらら状の破片を突き立てた。
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