【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

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消耗戦

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第一階層の最終フロア、『魔窟』の中にいたのは一匹のドラゴンだった。

体に緊張が走る。

ドラゴン種は、魔物の中でも別格の強さを誇る。

個体によって差はあるが、鋭い牙と頑丈な皮膚、高い魔力攻撃と魔法耐性を兼ね備えている。


しかもドラゴンが厄介とされている理由は、その戦闘能力の高さのみが理由ではない。

他の一般的な魔物と、ドラゴン種との凶悪レベルを隔てている大きな要因——それは、人間に勝るとも劣らないと言われる、高い知能だ。

言語こそ持たないとされているが、戦いの中で人間の動きを観察し、それに対応する力を持っているドラゴン種。

彼らが「ダンジョンの賢者」などと呼ばれるのはそのためであり、だからこそ経験の豊富な冒険者ほど、ドラゴン種との戦いを避けたいと考える。

単純な強さからではなく、その狡猾さを理由にあげて。


そんな上級パーティーでさえも、戦いを避ける危険種……しかも僕は、パーティーですらない。

『でもこのダンジョンの魔物は、一般のダンジョンとは少し様子が違うからな』

僕はじっと、相手のことを観察する。

黒いゴツゴツした皮膚。珍しい色合い、質感だ。だがこのダンジョンでは全ての魔物が例外なくそうだったので、この点に驚きはない。

大きさは、中程度。翼は退化したのだろうか、明らかに全身を宙で支えられるほどの大きさはしておらず、飾りのようだ。

火を吹くかはわからない。しかしこちらには魔力攻撃を無効にする羽衣があるから、その点はあまり恐れる必要がないだろう。

ポイントは、距離を詰められるほどの俊敏性を相手が持っているかどうか。

それがないのであれば、僕にも勝機はある。離れた距離からひたすら魔力の打ち合いをし、消耗戦に持ち込む。

黒いドラゴンから漂っている、気怠げな雰囲気。あまり機敏に動く姿は、想像できない。

僕は腰に引っかけた頭陀袋に触れる。

『大丈夫。やばくなったらすぐに手鏡を使ってこのダンジョンから脱出する。

出来るところまで……力試しのつもりで挑んでみよう』

グォォォォォォォ!!

ようやく僕がいることに気がついた黒ドラゴンが、吠え声をあげ、威嚇してくる。

僕は挨拶代わりに、手袋から幾つかの火球を放った。



ボフッ、ボフッ、ボフッ!

火球は真っ直ぐに黒ドラゴンへと向かっていく。

そして何の邪魔が入ることもなく、見事、黒ドラゴンの脇腹にヒットした。

グゥ、ガァ!

黒ドラゴンが苛立しげな声を上げる。

『おっ、わりとあっさりあたったな』


火球、大水、落石、放電。

魔法の属性を変え、黒ドラゴンの反応を探る。

ギャワァ!
グォォォ……
グッ、ガァァッ!

『普通に効いてる……』

放った魔法に、ことごとく反応がある。

これはひょっとすると。

『いけるかもしれない』

息つく隙を与えず、魔法を畳み掛けた。

やはり残酷なことをしている気分になったけれど、ドラゴン種が相手では油断などできない。反撃の隙を与えたら、一撃でひっくり返されるかもしれないのだ。

バチンッ
ドーン、ドーン
ザァァァァ
ボフッ、バフッ

ギャワァァァァ!!




ハァハァハァ……

『……どういうことだ』

状況は終始変わらなかった。

こちら側の一方的な攻勢。

一発一発に、たしかに効いている反応があった。

それなのに。

グォォォ……

「クソッ!」

手袋から電撃を放つ。

バチンッ。

しかし最初に出していたものと比べると、威力がかなり落ちている。

グゥアッ!

『効いているはずなのに……どれだけしぶといんだ……』

ハァハァ……

『全身の虚脱感がすごい。

一発撃つごとに、体がだるくなっていく。

いくら手袋の補助があるとは言え、魔法発動時の消費魔力が0になるじゃない。

反撃の隙さえ与えなければ勝ち目はあると思っていたけれど……

このままじゃ、先にこっちが動けなくなる……!』


頭陀袋に手を入れる。

求めるものを取り出しながら、頭の中で考える。

もちろんその間も、離れたところにいるドラゴンから視線は外さない。

『ドースさんの情報では、第一階層の主はドラゴンじゃなかった。

しかしこれは事前に考えていたことだから驚きはない。

ダンジョンの中での生態系、パワーバランスは常に変わり続けている。

聖なる泉があり、魔力濃度が濃い『魔窟』というフロアは、魔物にとって最も居心地のいい場所だ。

訪れる時々で主が変わっていることなどそう珍しいことではないし、

ドースさんを含むパーティーがこのダンジョンを調査したときから大分期間があいているのだから、なおさらだ。


初めての探索で、ここまで来れたのだから十分。

ダンジョン全体の形状は地図と変わりないこと、少なくとも第一階層の魔物は強くないこと、そして現在の階層の主がドラゴンであることを知れた。

来た甲斐はあった。

次はもっとうまくやれる』

頭陀袋の中から、目当ての物を取り出す。

手鏡。

呪文を唱えれば、ドースさんとラコが待つ骨董品店に帰れる……


「…………えっ」

一瞬だった。

ずっと視線は外さなかったはずなのに、気が付いたら、黒い巨体が目の前にあった。

「がっ!!」

激しい衝撃をもろに受ける。

尻尾で弾き飛ばされた。

幸い、羽衣の上からだからダメージはほとんどない。

が。

『しまった……!』

受けた不意打ちで、手にもっていた鏡が吹き飛ばされた。

慌てて周囲を確認する。大股で十歩くらいの距離の場所が、きらりと光った。

『あった!』

すぐさま起き上がり、それを拾いに行く。

『嘘、だろ……』

目の前が黒い巨体に覆われる。

『なんでこんなに速く動ける?

何か魔法を使ってい……』

次の瞬間。

あんぐりと開いた黒い口が、顔の前に迫って来た。

ドラゴンが持つ高い知能。

羽衣に覆われていない、無防備な自分の頭部。

後ろには壁。恐怖と動揺でこわばる体。

『何か、何か魔法を……』

手袋を向ける前に。



意識は途絶えた。
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