セブンティーン

ひらおかゆきこ

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①クラブ アストロ

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エディはステージが終わると、いつもの様に仲間と『アストロ』に来ていた。 今日のライブも派手に暴れたので、体の芯がだるい。 

季節はもう秋になろうとしていた。

リーダーのテリーや、ドラムのヨージみたいにウィスキーを飲んでひと息つければいいが、自分はまだ飲めない。コーラで我慢する。


アストロはこの1968年にオープンしたばかりの、サイケデリックゴーゴークラブ、と呼ばれる店だ。 生バンドの音が響き渡り、一階の広いホールでは100人以上が踊れるようになっている。

二階は、それを見下ろすようにテーブル席があり、ちょっとくつろいで飲めるようになっていた。


エディ萩原は17歳。ロックバンド ペガサスのキーボード奏者だ。
明るい栗色に染めた髪を肩まで伸ばしている。マッシュルームカットというよりは、おかっぱに近いフェミニンなスタイルが似合う美少年だ。

目線ギリギリの前髪の下で、長い睫毛に縁取られた黒目がちの瞳が、潤んだように見える。

色白で、すっと通った鼻筋、唇は人形のように愛らしく、何も付けなくても赤味を帯びている。
体も165cmと小柄だ。誰もが「女の子みたい」と言った。


1960年代の後半にGS(ジーエス)=グループ・サウンズと呼ばれた熱狂的なバンドブームがあった時代のことだ。
ペガサスは大阪出身のバンドで、1968年にデビューするとすぐに人気爆発した、トップアイドルグループなのだった。

デビューに際し、全員国籍不明のニックネームが付けられていた。
有名作家が手掛けた楽曲は、すぐにヒットチャートに登り、話題となった。

当時まだ男性のファッションは保守的で、髪が長いだけで不良扱いされた。
そんな中、ペガサスのメンバーは全員茶髪で長い髪。フリルや刺繍に彩られた奇抜なコスチュームで、世間の度肝を抜いたのだった。華麗なヴィジュアルが、注目の的だった。

中でもエディ萩原の中性的なルックスが、ローティーンの少女達に絶大な人気を得ていた。

※ ※ ※

「エディ、たまには踊らない?」
リードギターのケンが誘いに来た。ケンはダンスが好きだ。

「ううん、ここに座ってる方がいい」
エディは首を振った。今日は疲れているし、ダンスはあまり好きではない。

「俺が行くよ。エディはここで見てろよ」
代わりにヴォーカルのスティーブが、下のホールを見下ろして立ち上がった。

バンドの演奏と明滅する照明が、幻覚を呼び、まるでトリップする気分にさせる。当時としては最先端のクラブだった。

芸能人の客も多い。ペガサスのメンバーはここの常連だった。ファンは中高校生がメインなので、大人の雰囲気のこの店までは追いかけて来ない。皆リラックスして過ごせる場所になっていた。

エディはホールで踊る人の波は気に留めず、薄暗い入口あたりをずっと眺めている。

気が付くと、先週会ったばかりの、ある人の姿を目で探していた━━━

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