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⑫失踪
しおりを挟む「エディ、本当にいなくなったんですか?」
「ああ━━君か」
ペガサスのケンと話したあと、田代は塚本のマンションに駆け付けた。
ドアを開けたのは、顔見知りの塚本のマネージャー、笠島だった。
「ちょっと入って━━誰にも見られなかったか?」
笠島はあたりを気にしながらも、田代を招き入れた。
玄関脇の衣装部屋だった。二人でひそっと立ち話を始める。困り果てた様子が、その眉を顰めた表情からも窺えた。
「澄生と親しい君だから、正直に言うよ。エディが急にいなくなって━━澄生は相当ショックを受けてる。部屋から出てこないんだ。そっとしておいてくれないか」
奥の部屋からは物音ひとつしない。
「一体何があったんですか」
田代が食い下がると、
「誰にも言わないで欲しいんだが・・・」と前置きしながら、笠島が重い口を開いて語ったことは、田代を驚愕させた。
エディが前日手首を切って自殺を図り、未遂に終わったこと。
しかしどうやらそれは本気ではなく、狂言自殺らしいこと。
「エディが自殺━━!」
「回りが澄生と別れろって言うから、発作的にやったかもしれない」
そのあとエディは飛び出して、行方不明で、どこにいるかわからないという。
「ケガはどうなんですか?病院へは行かなかったんですか?」
「幸いケガは大したことなくて━━すぐ血も止まったし、高橋マネージャーが来て、部屋で包帯巻いて手当てしたんだ。それがちょっと目を離したスキにいなくなってしまったんだよ━━今、高橋さんがあちこち探してる」
結局エディはその日帰って来なかった・・・・・
1969年5月5日 その日はペガサスのデビュー記念ライブだった。
その会場にエディ萩原は、姿を見せなかった。
「エディが出ないなら、お金を返して!」
ファンの叫びも空しく、翌日には所属事務所から正式に、エディの脱退が発表された。
ペガサスはすぐに、替わりのメンバーを入れて再出発したが、エディ脱退のダメージは大きく、間もなく解散した。
塚本澄生とエディ萩原の、秘められた恋も終わった・・・
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