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ふわふわした友人達
しおりを挟む「まあ、怖い顔。どうしたのサラ。」
「…ご機嫌よう。マルベリア様。」
お昼休みの前、前の席に座る公爵令嬢マルベリア・サンドラルドが朝以来、つかのまの休憩時間にサラの顔を見て驚いたように言った。美しい切れ長の目元が珍しく丸くなり、サンセットトパーズ色の瞳がくるりん、と良く見えている。
「ちょっと嫌なことがありまして。…後で、聞いてくださいます?」
「ええ、もちろんよ。それはエミリアも呼んでも良いのかしら?」
「はい、勿論です。」
エミリア・フォークスは、侯爵令嬢である。愛らしい見た目の彼女もまた、高位貴族特有の淡い金髪に水色の瞳をしている。
高位貴族のみが机を並べる教室の中で、入学初日に三人が並びの席だった。
「御機嫌よう。マルベリア・サンドラルドよ。以後よろしくお願いしますわね。」
「御機嫌よう。エミリア・フォークスですわ。よろしくお願いします。」
「御機嫌よう。サラ・ウイントマンでございます。どうぞよろしくお願い致します。」
「…早速、お伺いしたいのだけれど。」
銀髪を青いレースのリボンでハーフアップに結い上げ、凛とした眼差しで公爵令嬢であるマルベリアがそう口火を切った。何だろう、とサラとエミリアが身構えていると。
「…学長様の御髪って、どう思われます?」
と彼女は言ったのだ。
ちなみに学長の髪型は非常に整えられた鬘なのだが、恐らくマルベリアが言っているのは前髪の事だった。自然にしておくかクルクルと巻いていたり、丁寧に横に分けて糊で止めているのが通常の男性の髪型だった。しかし、学長の前髪は前に真っ直ぐぐん、と伸びている。前髪で顔に影が出来るくらいに、ただ真っ直ぐ伸び、そして形良く整えられているのだ。櫛を駆使して下から上、上から内側へという風に固めてあるようでふんわり長い棒状の前髪がそこに存在しているのである。非常に珍しい形をしているのだ。いつ何時に見ても顔に影ができるのでもしかしたら庇の役割があるのかもしれない。
サラが何と答えて良いのか考えあぐねていると、隣にいたエミリアが真面目な顔で「…お手入れが私達よりも大変そうでございましたわね。」と答えた。それはサラも思った。言って良いのか迷っていた。
くっ。逃げられない、と悟ったサラは少し考えた後。至極真面目に、
「…蝙蝠の休憩場(庇の下の部分)としても、最適かと存じます。」
と返事をした。それが二人にとても気に入られたらしい。
何でもマルベリアとエミリアは幼少期よりの幼馴染であり、学園に入学したら同年代の子女の友達を増やしたい!と密かに燃えていたようで。サラのユーモアさは、問題なくその試験(?)に合格したのだった。
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