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2回目のドタキャン、だと?
しおりを挟む手紙の中のガーヴィンは酷く落ち込んでいるようだった。
「どうしてもハーヴェイ殿下の要請を断れなかった」と言い訳を述べ、「最近、殿下の人遣いが荒い。側近候補降りようかな…。」と迷いの吐露。そして「サラに申し訳ない、この埋め合わせは必ずするから。次は必ず行こうね。」と二枚に渡る便箋の中、少し右上がりの癖のある文字で綴られていた。
何故か悪い予感しかせず、もやっとした気持ちが少女の胸に広がる。手紙と共に本日も送られてきたのは、黄色のガーベラの花束だった。
花言葉は『究極の愛』。ガーヴィンがこの意味を知っているはずがないとサラはやはり思う。
絶対に侍女か家令に選ばせている気がする。ガーヴィンに悪気は無いだろう、婚約者に手紙とともに花を贈りたいけど何を送って良いのか検討もつかないから選んで、と。そう言っている姿が容易に想像が着いた。
そしてその想像に、なんだか腹が立った。
「…植物園に行くわ。」
「え?お嬢様?」
「準備をして頂戴。」
「は、はい、只今!」
ケリーは驚いたような顔をしていたが、二度あることは三度あるという。サラはそれを確かめる必要があるわと、そう思ったのだ。
「…ガヴィ。貴方は今日、誰と会うの…?」
拗ねたように口を尖らせながら、サラは呟いた。こんな所で尋ねてみても、当たり前だが答えは返ってこない。けれど、怖くて本人には聞けない。
サラは再び窓の外へと目を向けた。烟る淡い水彩画のような雨の世界は、不安な少女の心そのものだ。
休日の植物園は、やはり少し混んでいた。無料で解放されている公園内は、冬の暖かい陽射しを求めて平民が沢山寛いでいる。その横を通り過ぎ、この前入った有料の温室へとサラは足を向けた。
こちらは、空いているわけでは無いが外よりも人が少なく暖かだった。
ほっと一息付き、ケリーと護衛騎士のハドウィンと共に室内をゆっくり散策する。何となく、こっちの方向にいるのでは?とサラは自分のガーヴィン探知レーダーに頼りながらも進んで行った。
すると。
(やっぱり居たわ。)
キャッキャとはしゃぐ女の声が聞こえてくる。陽の光にピンク色の髪がふわふわと遊んでいるのがサラの目に留まった。直ぐ近くにいる婚約者の姿も。どちらかと言うと、彼を先に見つけてその次に居て欲しくなかったその女性の姿を確認してしまった形だったけれど。
「うわあ!何ですかあれ。えっ?!ガーヴィン様…?」
「ええっ?!」
少女がショックを受けるよりも先に、ケリーのハドウィンがサラの後ろで声を上げた。すると、その声に気がついたのだろう。ぱっとガーヴィンがこちらに視線を向け、大きな目を益々大きく見開いた。その口の形がサラの名前を描いた。
(あ、バレてしまったわ。)
一瞬狼狽えてしまったサラは、きょろっと後ろに控える侍女達の方に視線をやった。その視線の先、ケリーとハドウィンは睨みつけるようにガーヴィンを見ている。
あ、敵認定されちゃってる。どうしよう。
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