【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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その人との関係は?

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 その間もガーヴィンの視線が、真っ直ぐサラの頬に突き刺さってくるのを感じて。
 一瞬逃げようかと思ったが、少女は諦めて足を止めた。そして。



「ガーヴィン様。」



 と、笑顔で声を掛けた。何時もなら愛称で呼ぶところだがそれは辞めて、その上『様』をつけた。



 そう声をかけた瞬間、彼の顔が変わった。それをなんと表現したら良いだろうか。

 何時もサラと居る時は蕩けるような笑みを浮かべ、頬もまるで乙女のように赤く染めているというのに。
 彼は驚愕を通り越して、唖然としたまま口を開きかけた形で固まっている。その目は大きく見開かれ、身体は小刻みに震えているようだ。卒倒しそうなほどの動揺が全身に表れている。

 え?私ってそんなに怖い?




「…まるで幽霊を見たみたいな顔してますね。」


 ガーヴィンのその姿を見たせいか、冷静さを少し取り戻したハドウィンの呟いた言葉にサラは大きく頷いた。どうみても、彼はをしているようには見えないのだけれど。
 でも、ガーヴィンのピンク髪の少女が確かに縋りついている。しかもこっちを凝視している。


(うわぁ。)



「…ガーヴィン様?」



 声を掛けてから、石のように固まってしまったガーヴィンにサラは再度声を掛けた。このまま硬直されていても困る。恐らく隣の女性はサラの予想している人で間違いないと思うのだが、其れだと尚のこと。



「…サラ。」

「御機嫌よう。…今日はハーヴェイ殿下に呼ばれたのではなかった?」

「……。」

「そう手紙に書いてあった筈だけど違ったのかしら?」



 笑顔でそう言うと、ガーヴィンの震えが大きくなった。
 ちょっと面白い。

 ああでも。私ったら思ってたよりも今の状況にムカついてるわと、サラは頭の片隅で思った。サラとガーヴィンが向き合っているというのに、腕に巻きついたままの女はそこから動こうともしない事に。そして今の状況を黙ったままでいる婚約者に対して、ジュリー様と同じくらい怒っているかも。
 ここが公共の場でなければ「私の婚約者に触らないで!」と言って、彼女の手を彼の腕から振り払っていたのかもしれない。そして引張た…きはしないけれども。無論ね、そんなことはしないけど。
 しないけれど腹立だしい。

 にこにこと微笑んだままのサラより、その気配はどうやら正確にガーヴィンに伝わっているようで。小さな声で「違うんだ」とか「これには訳が」とか聞こえてくる。その理由を先に話して置いてくれたら良かったのじゃないだろうか、とサラは思うのだ。



 ところがその緊迫した空気を破ったのは別人だった。



「ねえ。あんた、だあれ?ガーヴィンの何?」

「……。」







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