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協力求む【ハーヴェイ視点】
しおりを挟むハーヴェイはあの日、ローゼマリアに絡まれていた彼を助けた後、その出会いを利用する事を思い付いた。
あの時はそれが一番良い考えだと思ったのだ。
でも、コイツがこんなに怖いなんて聞いてないぞ…!怒り心頭で瞳孔が開いたまんま此方を無言で見つめてくる目の前の男にハーヴェイの背中は冷や汗が滝のように滴り落ちていた。
遡る事、ひと月前の出来事だ。
ハーヴェイの「囮にならないか?」の一言で、ガーヴィンの心のシャッターがガラガラピシャーンと閉まる音が聞こえた気がした。
「嫌です。無理です。絶対したくありません。」
「ガーヴィン、そう言わずに…。」
「なぜ私が阿呆殿下の後始末の為に借り出されなくてはならないのですか?意味が全く分かりません。」
「…まあ、それは、そう、なんだが。」
目の前で、第三王子である自分に臆することなく言葉を返してくるその男の絶対零度の瞳は、何時もは透明度の高い水色であるにも関わらず怒りのせいかどことなく紫がかって見える。
何時も温厚に(?)微笑んでいるその顔からは表情が消え去り精巧な人形のように無なのだが、それが返って怖い。しかもそこに「何でてめえの為に」と大きな文字で書いてあるのもハッキリ見えた。
でも、逃げちゃダメだ。
「ガーヴィン、」
「現王の失態で産まれた王位継承権も無いお子がどうであろうと、こちらに迷惑でも掛けてこなければ我々一般貴族には関係の無いことです。そもそも、本人が後始末をつけるべきでは?まだ現役でいらっしゃるのですから。大体、マクベス殿下にその娘の危険性を伝えていなかった王に問題があるとしか思えません。元々王族が管理出来もしない者を城内に置いておくってどういうつもりなんですか?私には全く理解できませんね。」
早口がすごい早口が。
「…おい、ヒートアップしちゃってるよ。」
「こっち見んなよ、無理だよ。俺に止めらんないよ。」
「あいつ、あんな可愛い顔して、毒吐き王子の異名を持ってるんだか「そこ。何か言いたいことでも?」
「「ありません!!!」」
彼の後方でひそひそと話をしていた、ルベリオとサントスがピッと背筋を伸ばして黙った。君達、何時も俺の話はふわふわ聞いているのに何故ガーヴィンには弱いの?
「いや、分かるんだ。お前の気持ちは。だが、このチャンスを俺も逃したくない。」
「嫌です。」
「ぬう。」
頑として譲らない、それどころか益々冷気を発する目の前の男。
ガーヴィン・ランマイヤー。
如何にも物語の王子様として絵本に登場してきそうな甘く淡い色の見た目とは異なり、その性格は冷静沈着、時に辛辣であり、そして政に一番重要な冷酷さを持っている事をハーヴェイは理解している。
どうしても臣下に欲しくて、今は補佐候補として時折登城してもらっているのだ。
そうしたら、案の定彼は目をつけられてしまった。あの厄介な王の真実の愛の結晶に。
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