【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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好かれてるのかしら?

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 決定的にガーヴィンを「大好き」と思ったのは、サラが初めて刺繍をしたハンカチを半ば強制的に渡した時に、本当に嬉しそうに微笑んでくれた時だった。

 その時手習いで刺したのは、当時からガーヴィンが飼っているレオンという名のグレート・ピレニーズの白い犬だった。
 侍女や母の手を借りながら創ったそれは、初めてだったことも相まってどう見ても犬には見えなかったけれど。(白い…ラクダ…ラマみたいな?)
 それでもガーヴィンはキラキラとした大きな目でサラの刺繍を何度も撫でて眺めていた。それが嬉しくて、あれから何回贈ったのか覚えていないくらい刺繍の入ったハンカチをプレゼントしている。(100枚は優に越えているかも)お陰で刺繍の技術はそんじょそこらの針子に負けないほどのものになった。


 見た目も、つい一年前まではサラよりも身長が低く身体も小さなガーヴィンだったが、16歳を過ぎた頃から急に縦に伸びた。

 成長痛で足が痛いと言っていたと思ったら、その後あっという間に少女の背丈を一気に越してゆき、今では頭一個分の差がある。ひょろっとしていた頼りな気な身体も、最近はきちんと鍛えているのか程よく筋肉がつき、学園の制服もとても良く似合っている。顔立ちにはまだ甘さがかなり残っているものの、以前よりも精悍になってきた。

 最近だと持ち前の中性さが色気へと変わり、サラは見ていると何だか胸がムズムズする気分になる事があるが、幼い頃は一緒に居ると女の子が二人並んで遊んでいるように見られていた。
 そんな時、ガーヴィンは自分の見た目が「女々しい」という事をとても悩んでいたけれど、そんなのどうでも良いくらいサラはガヴィンの中身が好きだったのだ。


 少女は積極的に自分の気持ちを伝える性格だったし、月に何度かやり取りしている手紙でもいつも「大好き」という気持ちや言葉をしたためていた。
 お茶会の席でも、出来るだけ沢山会話を楽しめるように色んな事を調べたし、お出かけに行く時(二人きりでは勿論ないけれど)は、ガヴィンの輝く瞳が見たくて、それも下調べを頑張っていた。

 サラの愛を、きっと全身で感じているガーヴィンはいつも幸せそうに微笑んでくれる。「サラは色んなことを知っていて素敵だ」と褒めてくれる。そして、いつもお別れの時には手を振って、歩き始めてそして一度振り返って、にっこり「またね」をしてくれる。紅色に染まる頬が、楽しかったんだという事を示してくれているようで、いつもサラはそれだけで本当に幸せだった。
 


 けれど。



「…今更だけど…ガヴィーから好きって、言ってもらった事、一度もないわ。」




 いつも好意を伝えるのはサラ。それに対して、いつも照れたように微笑むのはガーヴィン。その笑顔は自分の気持ちを受け入れてくれているのだと、ずっと思っていたけれど。実はそれが違っていたのだとしたら?自分の勘違いだったとしたら?





「…それって凄く、悲しいわ。」










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