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突然の悪意
しおりを挟む《ちょっとだけ関係の無い話》
おはようございます。
待ちに待っていた昨日公開の『はたらく細胞』をナイトショーで観に行きました!わたし的にめちゃくちゃ面白かったです"(ノ*>∀<)ノ
佐藤健の白血球、芽郁ちゃんの赤血球、体の持ち主芦田愛菜ちゃん、かっこいい先輩役の清志郎くん。そのほかの役者さんもトテツモナクヨカタ(´。✪ω✪。`)
……そして、小説の投稿を忘れておりました。꒰՞ . ̫ .՞꒱"スミマセン。
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「今日こそ手に入れるわよ!」
「はい!」
早朝五時。気合いの入った声が響き、ウィントマン伯爵家の扉が開いた。出てきたのはサラとケリー、そして若干目をしょぼしょぼさせているハドウィンだ。
各家では使用人達が仕事を始めている頃だが、まだ街は目覚める前で通りはしん、と静まり返っている。冬の冷たい空気が身を刺すようだが、それでもサラの気合いは衰えない。澄んだ空気を吸い込むと、三人とも少しずつ目が冴えていった。
「ごめんなさいね、二人にもこんな早起きをさせてしまって。」
「いいえ。今日こそ手に入るといいですね。」
「ええ。明日には学園が始まってしまうでしょう?絶対に『ひかあな』を手に入れないといけないわ...!」
「私一人で並びましたのに。」
ハドウィンの言葉にサラはブンブンと首を振った。そして力強く、胸の前で拳を握る。
「自分の力で手に入れるからこそ意味があるのよ...!!」
そうなのだ。休みは今日までなのだから、今日中に手に入れて、しかも読む時間も確保しなくてはいけない。大体一時間ほどで読み終わるであろうが、そこから考察を深めるために何度か熟読する必要があるのだ。
(マルベリア様とエミリア様はもうきっと読んでいる筈だわ...!遅れをとるわけにはいかないもの。)
目の前の『ひかあな』の事で頭がいっぱいで、昨日あった出来事をすっかり忘れていたサラは、浮き立つ心のままに閑散とした街を進んでいた。
中心地へと向かう路の、十字路に差し掛かったときだった。
サラ達の進行方向の左側にはもう三度訪れた植物園、そして右側には奥に貴族の屋敷が点在していて、その手前の林で少し目隠しのようになっている。道沿いには垣根が並び、その中の一つが突然、がさりと音を立てた。
(……猫か何かかしら?)
サラは一瞬だけ気にしたが、先を急ぎたいが為にすぐに歩みを進めた。しかし次の瞬間、垣根の影から何かが飛び出してきた。
――それは、背の高い男だった。
その男の右手が街灯の光を反射し、ぎらりと鈍い光を放つ。「刃物だ」と気づいた瞬間には、もう目の前に迫っていた。
「……!」
サラは息を呑み、足が硬直したかのように動けなくなる。振り上げられる右手。その軌跡をただ見つめることしかできなかった。刺される――! そう思った瞬間、目をぎゅっと閉じた。
だが、次に感じたのは鋭い痛みではなく、何かに「ドンッ」とぶつかられた衝撃だった。
耳の直ぐ近くで布の切り裂かれるような音はすれども、その身に痛みを感じることは無く、ぐっと身を固くし縮こまっていたサラは、すぐ近くから聞こえたハドウィンの怒声に目を開けた。
「この野郎っ!」
目の前には、剣を抜いて男と対峙するハドウィンの背中があった。相手の男が彼よりも大柄である事がまだ薄暗い朝の中でもはっきりと解った。
刃物を握る全身黒ずくめの男が、躊躇なくハドウィンに襲いかかる。
「ハドウィン!」
サラが叫ぶ間もなく、ハドウィンは押されて地面に尻もちをついた。男の刃が振り下ろされる――その瞬間、鋭い風を切る音が響く。
その瞬間に、ビュッと風を切る音がして男の手から刃物が弾き飛ばされ、彼はバランスを崩した。その直後、複数の足音が四方から迫ってきた。
「捕まえろ!」
「逃がすな!」
騎士たちの怒声が響き渡る。男は状況が不利だと悟ったのか、振り返ることなく林の奥へと駆け出していった。騎士たちはすぐさま追いかける。
サラはその場に立ち尽くし、呆然と目の前で繰り広げられる光景を見つめていた。全身が震え、何が起こっているのか完全には理解できない。ただ、胸の奥で鼓動が早鐘のように鳴り響いていた。
――その時だった。
自分を包み込むような温かい感触に、ふと気がついた。確かに、刃物が当たった音がしたのに、痛みは一切ない。違和感に気づき、ゆっくりと顔を上げると――
「ケリー……?」
目の前にいたのは、自分をかばうように抱きしめる侍女のケリーだった。しかし、ケリーの肩は濡れたように黒く光り、それがじわりと広がっていく。
――血だ。
「ケリーーー!!!」
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