44 / 87
やらかした【ハーヴェイ殿下視点】
しおりを挟むいつも読んでくださってありがとうございます(*・ω・)*_ _)誤字、脱字の指摘もありがとうございます。
どんどん不穏になっていくのですが、それに合わせて誤字増えたらごめんなさい…!
修正修正!=͟͟͞͞ ( ˙꒳˙)イソグズォォォ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ああ、やらかした……。」
ガーヴィンが部屋を出ていった後、一人取り残されたハーヴェイは、低く呟いた。その声には怒りも後悔も滲んでいる。
影から状況を知らされた時、耳を疑った。
あり得ない。サラの護衛には王家の騎士団の中から自ら選び抜いた五人の精鋭を配置していた。加えて、彼女の影として二人の隠密が時間交代で監視していたのだ。
ここまで手を尽くして、なお突破されるなど……想像もしていなかった。
「くそ……。」
ハーヴェイは唇を噛みしめた。油断していたのだ。いや、過信だ。自分の計算が甘かったのだと、ハーヴェイはきつく形の良い唇を噛んだ。
事態が不穏に動き始めたことに気づいたのは、四年前のことだった。
あの女――ハーヴェイが忌々しい記憶とともに思い出すその女の行動が、突如変化したのだ。
それまでは無差別だったと、ハーヴェイの影には伝えられていた。平民も貴族も問わず、まるで思考を放棄したように誰彼構わず接触を図り、時に関係を持つ。
その行動を時折影の報告で聞きながら、彼女への軽蔑と嫌悪を募らせていた。
だが、ある時から状況が変わった。
ローゼマリアが接触する相手は、貴族の男性だけになり、彼女に関わりを拒んだある一定の男たちの婚約者や妻が次々と襲われるという事件が発生するようになったのだ。
――標的にされたのは王族派閥の者たちばかりだった。
十二件――これは過去に起きた貴族令嬢、夫人の襲撃事件の数だ。
早朝や夕刻、そして連れている従者や侍女が少ないタイミングを狙っての卑劣な犯行だ。被害者の中にはその者を見ている者もいる筈なのに、見ていないと口を揃えて言う。
そして第二王子マクベスへの秋波。あっさりと庶子の妹の手の中へと堕ち、みっともなく女に擦り寄る彼のその姿は、威厳もへったくれもなかった。
それ迄、ローゼマリアという女は、王の血を引いていながらも、王位継承権がない。王宮においては誰にも相手にされず、寂しさを埋める為に男に媚びる。男を覚えて盛っている。ただそれだけの存在だと思っていた。
それだけでは無いのかもしれないと、ふと気がついた時、ハーヴェイはゾッとした。
そこに浮かび上がった共通点と意図――それは王族派閥の結束を揺るがし、王族そのものに不信感を植え付ける国家転覆を企む何者かの存在を思わせるものだったから。
それは、どう転んだとしても王太子の足枷にしかならない。
ガーヴィンを囮にしたのは、彼が王族派閥に属する貴族であり、サラ・ウィントマンという婚約者を持つが故だった。そして、その婚約者が襲われる可能性も十分予測していた――だが、その危険を未然に防げるだけの策を講じたつもりでいた。
ローゼマリアが男性に接触してから、その婚約者が襲われるまでには、これまで必ず二週間ほどの猶予があった。それが時間的な余裕を生むという目算があったし、これまでのパターンが続くと高を括っていたのだ。
しかし今回は、その裏を完全にかかれた形になった。一体何が、そんなに犯人を急がせたのか検討もつかない。
ただ、ハーヴェイは自分が失敗したのだということだけを、悟っていた。
478
あなたにおすすめの小説
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる