【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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やらかした【ハーヴェイ殿下視点】

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いつも読んでくださってありがとうございます(*・ω・)*_ _)誤字、脱字の指摘もありがとうございます。
どんどん不穏になっていくのですが、それに合わせて誤字増えたらごめんなさい…!
修正修正!=͟͟͞͞ (    ˙꒳​˙)イソグズォォォ




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「ああ、やらかした……。」


 ガーヴィンが部屋を出ていった後、一人取り残されたハーヴェイは、低く呟いた。その声には怒りも後悔も滲んでいる。

 影から状況を知らされた時、耳を疑った。
 あり得ない。サラの護衛には王家の騎士団の中から自ら選び抜いた五人の精鋭を配置していた。加えて、彼女の影として二人の隠密が時間交代で監視していたのだ。
 ここまで手を尽くして、なお突破されるなど……想像もしていなかった。


「くそ……。」


 ハーヴェイは唇を噛みしめた。油断していたのだ。いや、過信だ。自分の計算が甘かったのだと、ハーヴェイはきつく形の良い唇を噛んだ。



 事態が不穏に動き始めたことに気づいたのは、四年前のことだった。
 あの女ローゼマリア――ハーヴェイが忌々しい記憶とともに思い出すその女の行動が、突如変化したのだ。

 それまでは無差別だったと、ハーヴェイの影には伝えられていた。平民も貴族も問わず、まるで思考を放棄したように誰彼構わず接触を図り、時に関係を持つ。
 その行動を時折影の報告で聞きながら、彼女への軽蔑と嫌悪を募らせていた。

 だが、ある時から状況が変わった。
 ローゼマリアが接触する相手は、貴族の男性だけになり、彼女に関わりをある一定の男たちの婚約者や妻が次々と襲われるという事件が発生するようになったのだ。

 ――標的にされたのはの者たちばかりだった。

 十二件――これはに起きた貴族令嬢、夫人の襲撃事件の数だ。
 早朝や夕刻、そして連れている従者や侍女が少ないタイミングを狙っての卑劣な犯行だ。被害者の中にはその者を見ている者もいる筈なのに、と口を揃えて言う。

 そして第二王子マクベスへの秋波。あっさりと庶子の妹の手の中へと堕ち、みっともなく女に擦り寄る彼のその姿は、威厳もへったくれもなかった。

 それ迄、ローゼマリアという女は、王の血を引いていながらも、王位継承権がない。王宮においては誰にも相手にされず、寂しさを埋める為に男に媚びる。男を覚えて盛っている。ただそれだけの存在だと思っていた。

 それだけでは無いのかもしれないと、ふと気がついた時、ハーヴェイはゾッとした。

 そこに浮かび上がった共通点と意図――それは王族派閥の結束を揺るがし、王族そのものに不信感を植え付ける国家転覆を企む何者かの存在を思わせるものだったから。
 それは、どう転んだとしても王太子フレデリック兄様の足枷にしかならない。

 ガーヴィンを囮にしたのは、彼が王族派閥に属する貴族であり、サラ・ウィントマンという婚約者を持つが故だった。そして、その婚約者が襲われる可能性も十分予測していた――だが、その危険を未然に防げるだけの策を講じたつもりでいた。

 ローゼマリアが男性に接触してから、その婚約者が襲われるまでには、これまで必ず二週間ほどの猶予があった。それが時間的な余裕を生むという目算があったし、これまでのパターンが続くと高を括っていたのだ。

 しかし今回は、その裏を完全にかかれた形になった。一体何が、そんなにを急がせたのか検討もつかない。

 ただ、ハーヴェイは自分が失敗したのだということだけを、悟っていた。






 
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