【完結】ただ好きと言ってくれたなら

須木 水夏

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彼の罪【マルベリア視点】

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わたくしは公爵家の嫡子として十六年間、生きて参りました。
 この国では女性が家を継ぐことが許されております。されど、男児ではなかったという事実が、家族や親族をどれだけ落胆させたのか、よく存じておりました。

 わたくしは人々に認められるために、ありとあらゆる努力をして参りました。

 礼儀作法は元よりも、政治、法律、軍事、そして経営に関する事柄を血反吐を吐く思いで習得して参りました。
 幸いにも、今では無理に取り繕うとせずとも、秀才と周りに呼んで頂けるまでに成長することが出来ました。

 わたくしの才は人並みです。優秀な父と母の血を引きながらも、わたくしは人の倍……いいえ、更にその倍は努力をしなければそれらの全てを得られる程の才を、残念な事に持ち合わせておりませんでした。
 寝る間を惜しみ、そして食事や湯浴み、通学の時間ですら教科書を片手に行ってきてやっと今があるのです。

 わたくしは幼き頃より、自身の時間の全てを公爵家、ひいては王家の為に割いてまいりました。
 マクベス殿下との婚約により、その思いは一層強くなりました。

 最初にお会いしたとき、マクベス殿下はこう仰いました。「どうぞ末永くよろしく」と。

 その言葉を胸に、私は共に王家を支え、家族のために生きていくと決めたのです。はしたないと思われるのかもしれませんが孤独を感じていたわたくしは、マクベス殿下がわたくしと思っていたのです。


 ですが、それはわたくしの思い違いでございました。」




 滔々と。ああ、良い気分だわ、とマルベリアは思った。
 初めて本心を話す。心の内側を全てさらけ出している。

 父はどう思っているのだろう。母はどう思っているのだろう。背を向ける形で蹲る自分の位置から彼らは確認できない。

 目の端に、ずっとの姿を捉えていた。
 学園で出来たお友達。そうね。あそこにいるあの時間だけは全ての事を少しだけ忘れられた。
 彼女に対してそんな顔をしないで、と思う自分も確かにここに居るのに、随分と遠くへ来てしまったような感覚だった。




「マクベス殿下は、仰られました。『お前のように世の中の面白味が何かも知らぬ女と、これからずっと共に暮らすのだと思うと身の毛がよだつ』と。」



 を理解する為に、友人を作った。
 興味も無いのに観劇をし、話を合わせる為にに勧められた本を読んだ。


 くだらない。全て。

 だってそれらをしたところで結局、マクベス殿下は認めてくれなかった。




「私が『面白味とは何か』と尋ねた時、彼は言いました。「つまらないことばかり聞く女だ」と、明らかに不快そうな顔をされて。

 ……わたくしは、きっとそこで諦めていれば良かったのでしょう。」












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