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貴女こそどなた?
「貴女、アシェル様の何なんですか?」
「何と、問われましても…?」
移動教室の途中、その美少女に話しかけられた時に最初、アリエットはなんの事だろうと首を傾げてしまった。
アシェル・ランドーソンにとっての何か、なんて聞かれたことが今まで一度もなかったからだ。それに、なんだと聞かれたところで、異性の友達とも言えない関係としか言いようがない。
そもそも。
「…どなたでしょうか?」
「…失礼いたしましたわ。私、ナディア・テストレンと申します」
(あ、そこは謝るのね。)
テストレンと言えば、東の地方に領地を持つ男爵のお名前じゃなかっただろうか。アリエットの家の領地とは王都を挟んで反対側である。なので面識は全くない。
アリエットは伯爵位の娘なので、高位貴族に対して先に話しかけてくる行為は褒められたものでは無いけれど、学生のうちはまだ許されているという事もある。(学園は交流の場として考えられているし)
それでも、常識的な考え方をしている貴族の子供達は、今後のことを考えて下手な事はしないのだけれど、つい最近似たようなことがあったな、と考えてそれがリエナだった事を思い出したアリエットは思わず遠い目をしてしまった。
「それで、アシェル様とはどう言ったご関係で?」
「…何故そんなことをお聞きになりたいのかしら?」
「聞いてしまったのです!貴女がアシェル様より夜会のパートナーのお誘いを受けているところを!」
(……?
…あー!
なんか前から見た事ある気がしていたけれど。あの時、彼の後ろに見えていたふわふわした金髪はこの子だわ。)
そうなのだ。意識的にアシェルへと視線を向けるようになって以降、ちょいちょい視界に入ってきていたこの少女、以前から彼の周辺にいたことにその時になってアリエットは気がついた。
彼女の視界には入ってきていたが、興味がなかったので認識していなかっただけだったらしい。
「絶対におかしいと思うのです!貴女みたいな、普通な方がアシェル様から声をかけられるなんて!」
「はあ…」
(普通で悪かったわねえ…)
「どんな手を使ったんですか?」
「手?」
見るからに華奢で可憐な金髪青い目の美少女が目を潤ませて、アリエットに物申している様子は他にも移動をしている生徒からも興味をひくもののようで。
通り過ぎながら、皆ちらちらとこちらを見ている。アリエットの黒髪に黒目のエキゾチックな見た目は、この国ではそれでなくても少し浮くので辞めて欲しいのだけれど。
「わたくし、アシェル様へと嫁ぎたいのです」
(ええ、そんな事ここで言ってしまうの?というか、家同士で話をしているということ?)
そう思った後に、それなら彼がアリエットにパートナーの誘いをかけてくるのはおかしな話で。貴族の婚約や結婚は契約事としての意味合いが大きい。嫁ぎたいです、はいそうですかで決まる事もあるだろうが、大体の場合はお互いの家柄や状況に応じて変わるものだ。
テストレン男爵家がランドーソン男爵家に釣り合うような功績を持ち、裕福な貴族であれば良いのだが、並び立つ男爵位の家柄をアリエットは知らない。
ランドーソン男爵家と釣り合うのは唯一地位位のものでは無いだろうか?
恐らく、目の前の少女の拗らせた恋の片思いなのだろうとアリエットは予想した。
「だから、何らかの手を使ってあの方に近づく貴女に辞めて頂きたくて」
私から特に近づいていないわよ?と思いながら。
「…ナディア様と仰ったかしら?それが私に何の関係があるのでしょう?」
「!ひ、酷い!関係あるかなんて…私はただ聞いているだけなのに…」
(酷いとは?)
「私に聞くのではなく、ランドーソン様に直接聞かれたら良いではありませんか?」
(どんな関係なのか私自身も把握していないのよ。贈物に関してもまだ何も聞けてないし)
通常、美少女に距離を詰められれば男女関係なく少しくらいは動揺するものだろう。
けれど、近くにメーベリナという更に貴族然としたオーラのある美形の友がいるアリエットにとっては、目の前で涙目になってこっちを訴えるように見つめる少女を白けた目で見返すくらいには、なんともない事だった。
「ア、アシェル様の傍には何時もリエナ様がいらっしゃって話しかけれないので…」
(あ、やっぱり一方通行なんだわ)
「…嫁ごうと思っている方の妹に話しかけられないというのは、どういうご状況なんです?」
(性格悪いかしら?でも、あちらに相手にされていないからと言ってこちらに絡んでくるのも違うということを今言っておかないと後からも面倒そうだし…)
図星であったのか、カッとナディアの顔色が赤くなった。プルプルと細い身体を震わせている。
「!あ、貴女には関係ないでしょう?!」
「ええ、その通りです。ですので、直接ランドーソン様にお伺い下さい。」
「…貴女が彼に近づかなければ問題ないのよ!」
「私からは一切近づいておりませんけど」
「じゃあ何?彼から貴女に接触してるとでもいいたいの?」
「だから、それをご本人にお尋ねしたらよろしいでしょう?それとも、そうできない理由でもあるのですか?」
「…!!なによ!!」
その瞬間、何を思ったのかナディアは此方に掴みかかろうとしてきた。
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