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白い王族(2)
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「そなたのことだよ」
白く濁った瞳と目が合ったような気がした。そんなはずはないのに。フュンの視線はふらふらとさまよっている。白狼は息を飲む。
「用心棒を選ぶこと。それがわたしのたった1つの自由なのだよ」
「……そうか」
「そなたには早めに伝えておきたかった。この生活は、飽きてしまうだろうと。用心棒には野党の中でも腕っ節の強い人間を頼んだから、そなたのような豪気な人間はもっと強い刺激を求めるだろうと思ってね。ここの生活は甘ちゃんだろう? わたしのようになよなよとした若者がする隠居生活だ」
白狼には言葉が出なかった。実際、フュンの言う通りだった。ここでの生活は飯には困らないが、何か物足りなさを感じる。それは剣を使わなくていい満ち足りた暮らしだからだった。命の危険が少ないここは、山から下りてきたばかりの獣のような白狼には有難い環境すぎて慣れないのだ。
「わたしのための用心棒は必ずそなたではないといけない、ということはない。そなたが生きたい武の道があるとするならば、そちらを優先してもらって構わない。わたしの代わりはきくが、そなたの代わりはいないからな」
「んなことねえよ」
白狼の珍しく大きな声にフュンがぴくりと肩を揺らす。
「自分の代わりはきくなんてこと言うもんじゃない」
「白狼……」
しばらく沈黙が流れた。弱々しげにフュンが聞いてくる。
「そなたはわたしの用心棒でいてくれるか?」
その顔が大切なペットを取り上げられそうになる子どものような顔に見えて白狼は思わず笑ってしまいそうになる。それを堪えて
「ああ。お前の隣にいるよ」
白狼は努めて優しい声を出した。それに甘んじたのかフュンが布団を鼻先まで被ってこんなことを言う。
「そうか……そうしたらこんなお願いも可能か?」
「ん? なんだ言ってみろ」
「わたしのことを白狼に、だ、抱っこして寝て欲しいのだ……」
「……抱っこして寝る? 俺がか?」
「ああ……嫌、か?」
「嫌じゃねえが俺は身体がでかいからお前を潰してしまうかもしれないから怖い」
「大丈夫だっ。そこはわたしが小柄だから相性はいいだろう」
もう2人で寝る気満々なのか、フュンが寝台の隅っこに布団にくるまって待機している。仕方がないため白狼がフュンの後ろから腕を回して横になる。寝台がぎゅうぎゅうだ。自然とフュンの身体に触れると、とても平熱が低いことがわかった。白狼は野党の本能が滲み出てしまい、冷たい者がいれば温める習性がある。それを、白狼は無意識のうちにフュンに対して行っていた。フュンは白狼に触れられ、温められてしまい口元があわあわとする。寒いというほどではないのだが、湯たんぽ代わりには素晴らしいと感じて、抱きしめられることに甘んじた。
白く濁った瞳と目が合ったような気がした。そんなはずはないのに。フュンの視線はふらふらとさまよっている。白狼は息を飲む。
「用心棒を選ぶこと。それがわたしのたった1つの自由なのだよ」
「……そうか」
「そなたには早めに伝えておきたかった。この生活は、飽きてしまうだろうと。用心棒には野党の中でも腕っ節の強い人間を頼んだから、そなたのような豪気な人間はもっと強い刺激を求めるだろうと思ってね。ここの生活は甘ちゃんだろう? わたしのようになよなよとした若者がする隠居生活だ」
白狼には言葉が出なかった。実際、フュンの言う通りだった。ここでの生活は飯には困らないが、何か物足りなさを感じる。それは剣を使わなくていい満ち足りた暮らしだからだった。命の危険が少ないここは、山から下りてきたばかりの獣のような白狼には有難い環境すぎて慣れないのだ。
「わたしのための用心棒は必ずそなたではないといけない、ということはない。そなたが生きたい武の道があるとするならば、そちらを優先してもらって構わない。わたしの代わりはきくが、そなたの代わりはいないからな」
「んなことねえよ」
白狼の珍しく大きな声にフュンがぴくりと肩を揺らす。
「自分の代わりはきくなんてこと言うもんじゃない」
「白狼……」
しばらく沈黙が流れた。弱々しげにフュンが聞いてくる。
「そなたはわたしの用心棒でいてくれるか?」
その顔が大切なペットを取り上げられそうになる子どものような顔に見えて白狼は思わず笑ってしまいそうになる。それを堪えて
「ああ。お前の隣にいるよ」
白狼は努めて優しい声を出した。それに甘んじたのかフュンが布団を鼻先まで被ってこんなことを言う。
「そうか……そうしたらこんなお願いも可能か?」
「ん? なんだ言ってみろ」
「わたしのことを白狼に、だ、抱っこして寝て欲しいのだ……」
「……抱っこして寝る? 俺がか?」
「ああ……嫌、か?」
「嫌じゃねえが俺は身体がでかいからお前を潰してしまうかもしれないから怖い」
「大丈夫だっ。そこはわたしが小柄だから相性はいいだろう」
もう2人で寝る気満々なのか、フュンが寝台の隅っこに布団にくるまって待機している。仕方がないため白狼がフュンの後ろから腕を回して横になる。寝台がぎゅうぎゅうだ。自然とフュンの身体に触れると、とても平熱が低いことがわかった。白狼は野党の本能が滲み出てしまい、冷たい者がいれば温める習性がある。それを、白狼は無意識のうちにフュンに対して行っていた。フュンは白狼に触れられ、温められてしまい口元があわあわとする。寒いというほどではないのだが、湯たんぽ代わりには素晴らしいと感じて、抱きしめられることに甘んじた。
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