ビジネスの番なのに運命の番よりも愛してしまったからどうすればいい

子犬一 はぁて

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「……もと、岸本」

「ふあっ!?」

 ジェットコースターから落ちたかのような感覚に体が浮き上がりそうになる。岸本はここが産婦人科だったことを思い出した。

「だいぶ眠そうだな」

 ぺちりと頬を軽く叩かれて頭が冴える。

 そうだった。これから診察の結果を聞くんだった。

 当初の目的を思い出し背筋が伸びる。小鳥遊の後ろにくっついて診察室に足を踏み入れた。そこには40代くらいの女性が軽く微笑みながら椅子に座っていた。

「お久しぶりです」

「あら、今度は新しい子なのね」

 小鳥遊が軽く挨拶をすると女医の瞳が細くなった。再会を喜んでいるように見える。小鳥遊の隣の椅子に促され岸本は腰を下ろした。

「早速だけど岸本さんから結果を報告するわね」

「はい」

 初めて来た産婦人科にどきどきしながら女医の言葉を待つ。

「あなたの精子の運動量は充分です。それにいたって健康みたいですから安心してください」

 問診票にここ最近の体調についての項目があったことを思い出し静かに頷く。まずはほっとした。しかしふとそれじゃあなぜ発情期がやってきてしまったんだろうと女医を仰ぎ見る。

「問題はね小鳥遊さんにあるみたいなの」

 ちょっぴり苦笑しながら女医が告げるのを小鳥遊部長はどんな思いで聞いているんだろう。岸本は端正に整った横顔をじっと見つめた。

「まずね、以前と同じく小鳥遊さんの精液には精子がありませんでした。体質なのでこれから変わる可能性もあります。年齢や生活習慣が関わってくることもありますからね。充分な睡眠は取れていますか?」

「はい。食事もバランスの良いものを心がけています」

 それは俺のおかげだろと岸本は心の中で突っ込みながら女医の話に耳を傾ける。
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