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3章 シャフラ旅行
6 シャフラの市場
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シャフラ到着翌朝にクロードは街の治安隊の確認をした。半分は、春の北からの侵攻で出兵した者たちである。
武器の扱いは十分だし、動きは比較的まとまっている。
春の戦いで亡くなった者も多く、ようやく夏の終わりごろに治安隊復帰して形を取り戻しつつあったという。
また北の侵攻の際、治安に必要な人手が足りなくなってしまう。
ギルド登録している傭兵もいたが、戦争の方が稼ぎはいい為活動者がごっそりと減ってしまっていた。
治安に必要な部隊要員、傭兵の減少が、密猟の巣窟に繋がってしまった。
(シャフラのギルドの様子も確認しておくか)
時間をみてまだライラを迎えに行くにはまだ時間がある。
医者のいる治療院にも確認したいが、まだ情報は集まっていないだろう。
「お前たちは治安隊の訓練に付き合っておいてくれ」
ついてきた騎士に指示をしてクロードはギルドへと向かう。護衛について行こうとする騎士がいたが、跳ねのけようとした。
一人で動いた方が楽だったが、立場が立場であると説得され渋々一人だけ護衛でついてくることになった。
「シャフラ・ギルド」、名前がついていないがギルドを示す看板がついた館へと到着した。
戦争の影響で、人手が足りなくなっていたという訴えを耳にした。
治安維持の為に人手が足りなくなるのは困る。
依頼内容と依頼料を確認する。市から出す内容は危険度や厄介さの割に依頼料が少な目であった。
依頼料が安い為、高い方へ飛びつかれてしまうのは当然だろう。
国境防衛に協力してもらうのはありがたいが、それでシャフラの治安が悪化するのも困る。
場合によってこの街はライラが1年の3分の1は滞在する可能性がある。
市から出す依頼料金の設定も見直してもらうべきだ。
負傷兵や負傷した傭兵の療養地として人気の場所であるので、それに合わせた制度も考えてみる。
例えば、市からの依頼を受けることで治療費用を一部市が負担する。
これに必要なことは自分では思い浮かばない。
早々に医療に関して詳しい秘書官や役人を呼び寄せるべきだろう。
(結局金と人が必要だな)
当たり前のことにクロードはため息をついた。元々自分には領地経営など向いていない。
秘書官がいなければとっくに投げ出してしまっていた。
それでもなってしまったのだから最低限領地内の問題は目を通し考えていく責任はある。
「こんにちはー」
隣の受付で二十歳ほどの女性が明るい口調で挨拶した。少しなまりが気になる。
クロードは提出された書類へ目を通しながら、女性の声に首を傾げた。
どこのなまりだろう。
「はぁ、折角わざわざ来たのに北天狐の情報はないんですね」
女性のぶつくさ言う言葉にクロードは顔をあげた。
黒髪に青い瞳をした女性であった。肌の色はバターがかかったような肌である。
東側の特徴である。北の異民族だとハン族に近い。
「それならチェチェさんも密猟者狩りの仕事をしてみるかい?」
「ぶー、荒事はしない主義なんです」
そうはいうが、彼女が請け負った仕事の内容は害獣討伐である。身のこなしから戦いにも慣れている印象だった。
「何でしょうか? 私に何か用でしょうか?」
クロードからの視線に気づいたのか、チェチェと呼ばれる女性は振り返った。彼女が耳にかけている装飾品をみるとこの国にはない技術のものだなと感じた。
「いや、どこのなまりかなと気になったもので」
クロードは素直に応えた。北の異民族の戦いに応対できるようにあえて北の異民族の血が混じっている傭兵を利用することもあるが、ほとんどがアルベルでの生活に慣れ公国の言葉を問題なく使用できる。
若干なまりが残っている者もいるが、ここまで強いなまりは初めてだった。
「うーん、確かに珍しいかも」
自分の言語がまだまだだと実感しているためチェチェは頷いた。
「騎士の方、私はアルティナ帝国から来たのです」
にこりと笑い、自己紹介する。入国許可証も、身分証明書もギルドに提出済らしい。
「チェチェ・ブレダ。アルティナ帝国の商人で、ここへは弟の付き添いで来ました」
基本は装飾品の売買をしている。
色んな国を転々とするため、護衛の仕事もするし、害獣退治の仕事も請け負っているという。
「弟?」
「そうです。弟は変人……じゃなくて、ちょっと変わった研究者で探求の為にアルベルへ来ました」
チェチェとしてはクリスサァム帝国の書籍も手に入れたいがアルティナ帝国の出身者は出入りできない。
クリスサァム帝国はアルティナ帝国を野蛮国と呼び警戒していた。
「アルティナ帝国と同盟結ぶのがお得ですがうまくいかないものですね」
確かにクリスサァム帝国はアルティナ帝国の敵対国のミン帝国と友好関係を築いていたと思う。
「アルティナ帝国はハン族と繋がりがあると聞いたが」
「はい、祖先が同じですからね。勿論交易で行き来しています」
クロードはしばらく考えた。
3つの部族はアラン・ヒリス卿に情報収集してもらっているが、アルティナ帝国人の方が別側面の情報が得られるかもしれない。
完全に信用するわけではないが参考程度に聞くのも良いだろう。
「ハン族の情報を買いたい。ギルドを通した方がいいか?」
「そうですね。一応登録中の身ですので、面倒ですが後々のことを考えたらそちらの方がいいでしょう。北のスパイだと言われたらたまったもんじゃありませんし、アルベル閣下」
チェチェからの呼び名にクロードは警戒した。
「入国の際、あなたが魔物討伐する帰りを見かけたので」
チェチェは何でもないことのように言った。
「弟も紹介しましょう。きっとあなたの役に立つでしょう」
◆◆◆
シャフラの宿屋にて、リリーはライラに、クロードが戻ってくるまで温泉の湯につかるよう勧めた。
ライラは首を傾げながらも、折角自室のバスルームで温泉湯を入れてくれたのだしと言われるまま湯につかった。
ぽかぽかしてあたたかいし汗を流せたので良かったのかもしれない。
お湯からあがった後はリリーが用意してくれたを水を飲み、ふぅっとため息を吐いた。
ブランシュがすぴすぴとソファで眠っている姿を眺めていた。それ以外はとても静かだ。
窓の外を眺めるとちらちらと小さな雪が降ってきているのが見られる。
今頃はジーヴルでは雪が降り積もってきているかもしれない。
水を飲み終えて、時計の針を確認した。
そろそろクロードが戻ってくる頃合いだろう。
リリーが外出用のドレスと防寒具を用意してくれたが、またまんまる状態にされるのかとライラは困った表情を浮かべた。
それでも自分のことを心配しての行動なので、文句は言えない。
準備が整ってしばらく経過したところでクロードが戻ってきた。
金色の髪が乱れ、結んだ部分がほつれていた。外は寒いというのに汗ばんで見える。
「待たせた」
慌てて戻ってきたのか息を切らしていた。
ライラはリリーに水と汗を拭くものを持ってきてもらった。
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
ライラはクロードに少し休むように伝えた。
ソファに腰かけたクロードが水を飲み、汗を布でぬぐった。
しばらくしてクロードはライラの表情を確認し安心した。
ライラの顔色が昨日より良くなっているのがわかったからだ。
これなら市場へでかけることは可能だろう。
クロードはライラの手を取りでかけた。リリーとブランシュはお留守番である。眠っているので助かった。
二人の傍らに一定の距離で騎士が待機してあった。
クロードは自分一人の移動であれば特に不用と感じているが、街中で何が起きるかわからないためライラの為に護衛を頼むこととした。
シャフラはジーヴルに比べると小さい町であるが、温泉街として賑わっていた。
傷病兵たちの療養地として栄えていると聞いていた。
行き来する人の数は多く、騎士だったり、傭兵だったり商人だったりとわかる。
さらに歩いてみると市場へとたどり着いた。ここでは、多くの出店が開いていた。
装飾品や衣類、飲食が売買されている。アルベル特有の模様をこしらえた細工箱が並んでおりライラは目を奪われた。
よく考えればアルベルに来てからの市場はこれがはじめてだったように思う。
ジーヴルでは色々あってまだ市場へ行ったことがなかった。
「良い匂い」
出店からこおばしい肉の匂いにつられてしまう。串を刺したソーセージのグリルであった。
「ケリュネイアの肉を使っているらしい」
「ケリュネイア?」
聞いたことのない名前である。
「鹿型の魔物だな」
忘れかけていたが、アルベルでは魔物を捕まえて利用できる部分は利用する。
肉も食用として使われていた。
クロードは一本購入して口にした。がぶっと大口で食べて、肉汁がわずかに飛びこおばしい香りが強くなる。
「鹿タイプの魔物だから、味は……少し癖が強い程度だな。観光客用に食べやすく味付けされてある。辛さは、それほどない」
「大丈夫と思います」
新しく一本を購入してもらいライラは手にとった。
はぐっと口にしてみると、ライラは目を閉ざし眉をひそめた。
クロードはそれほど辛くないと言っていたが、ライラには十分辛かった。それでも買ってくれた手前完食しなければ。
「無理はするな」
一本食べ終えたクロードがライラから串を取り上げた。
「この辛さでもダメだったか」
「すみません」
折角購入したものなのに食べられなかったのが申し訳ない。
「気にするな。ほら、あちらの方は山羊の乳で作った甘味がある」
クロードはライラの手を握り、別の屋台の方へと連れて言ってくれた。
昼の市場は人がそれなりに多く、目を離した隙にいなくなってしまいそうだ。
ライラが興味をひきそうなものを見つけてはクロードはライラの手を引いた。
歩き疲れて、町中に置かれてある椅子に腰をかけた。クロードが購入してくれた飲み物を口にしてライラは昔を思い出した。
雰囲気は違うが、イセナの市場も珍しい食べ物の出店が開いていて友人に手を引かれて食べ歩いたものだ。
あそこでも、ここでもライラには見たことのないものばかりで埋め尽くされている。
「クロード様はいろいろご存じなのですね」
彼がいなければきっとライラはどうすればいいかと立ち往生していたことだろう。
「まぁ、傭兵時代は屋台で飲食していたことがしょっちゅうだった」
オズワルドの作る飯はまずくて食べられたものじゃなかったしなぁとクロードは苦い顔をした。
「クロード様の傭兵時代というのはどのような生活だったのですか?」
ライラの質問にクロードはうーんとしぶい顔をした。
もしかするとあまり聞いてはいけない内容だったのか。
ライラが不安を感じていると、クロードは払しょくするように応えてくれた。
クロードは過去のことを思い出しながらライラに語り掛けた。
アルベルの主要都市ジーヴルにたどり着いてまず行ったことはギルドでの傭兵登録であった。ここから傭兵の仕事を斡旋してもらいながら生活基盤を整えていく。
すぐにでも異民族との戦場へ向かおうと思ったが、オズワルドとしては準備も、経験も整っていない状態で行っても足手まといにしかならないと言われた。
正規軍、アルベルの騎士団の兵士になれれば備品は配給されるがクロードは騎士団の兵士になれなかった。
一般兵士として登録するには身元証明が必要になる。
クロードは修道院から抜け出した孤児、何者でもないクロードでしかないのである。
戦場で活躍するには無頼者が多くいる傭兵団で活動するしかない。しかし、必要なものは全部自分で用意しなければならない。
今の状態で戦前に行きたいと言ってもギルドスタッフに自殺行為だと止められるだろう。
オズワルドから戦の知識を詰め込まされながら、傭兵としての仕事を行っていった。
魔物を退治してその報酬で武器や防具、食糧や応急処置の備品を整えていった。
住居は、ギルドの紹介で傭兵用の集合住宅の一室を借りてオズワルドと共用した。
部屋といっても寝る為のベッドが2つと簡単なキッチンがあるだけの空間で、トイレ・風呂は共用であった。
はじめは二人で分担し料理を行っていたが、オズワルドの料理は壊滅的であった。
クロードは簡単な料理を作ることはできたが、日が経過するうちにだんだん面倒となり近くの店で購入した料理や保存食で過ごすことになった。必要出費である。
窓際には購入した干し肉を干し、野菜のピクルスの瓶、酒瓶が並んでいた。
キッチン備え付けの暖炉は冬の暖をとることとお湯を沸かす程度しか利用したことはなかった。
「俺もアルベルに来てはじめて魔物の肉は食べたな」
話を聞いた時は驚いたが、アルベルの食糧が不足しやすく獣や魔物の肉で賄うというのは事前情報で聞いていたからある程度は受け入れられた。
食べてみると獣肉に近く、意外にうまく感じたのですぐに抵抗は感じなかった。
修道院でほとんど食事をとることができなかった日もあるので、すぐに食文化を受け入れられた。
アルベルの考えも同時に身に着けた。
「俺の常識はすっかりアルベルが基本になってしまったな」
アルベルはクロードが初めて知った修道院の外の世界であった。
だが、クロードとしては心が晴れやかな気分であった。
窮屈に感じられた修道院よりも、自由に過ごせる傭兵生活が一番クロードにはなじんだ。
その分自己での責任を背負わなければならない。
ただクロードの身に着けた常識はあくまでアルベルの地のみで通用する。公都はまだ理解してもらえるだろう。
帝国からみるとクロードの振る舞いは野蛮なものであった。
公都で特に気にしてはいなかったが、帝国からの賓客が来た時微妙な反応をされたことがある。
内心帝国の貴族には嫌な気分を感じていた。公国の歴史のこともあるが、妙に鼻につく。隠しているつもりであるが公国全体を蛮国とみなしていることがわかり交流を深める気は起きなかった。
クロードの在り方をみては、彼らは社交辞令の苦笑いをして距離を置くようになった。
彼らの中にはライラの兄、トラヴィスもいた。
クロードの活動拠点はあくまでアルベルであり、アルベルは公国の北の辺境にある。帝国とは反対の位置である。
帝国相手は公都の人間に任せればいいと理解する気もなかった。
クロードが帝国貴族に良い感情を抱いていなかったのもあった。
ぺテラス修道院の特に嫌な思い出を持つ司祭が帝国貴族出身だった。
彼を断罪した時、帝国貴族と揉めそうになったのを今でも覚えている。
搾取されるだけの孤児の様子をつまびらかにしたことで、世間はぺテラス修道院の在り方を非難し風向きが悪くなったと感じた帝都貴族は引っ込んでいった。
オズワルドから度々帝国のことも学んでいく必要があると言われていたが、こればかりは面倒になり放棄した。
それがそのままライラへの対応に影響してしまったと気づいた時には反省した。
ライラとの初対面の時は別に非礼を働こうとしていたわけではない。
どうしていいか悩んで、普段のアルベルでのやり方で接してしまった。
初対面のライラの卒倒を目の当たりにしてようやく自分の行動の愚かさに気づいた。
初夜でのこともライラの立場を危うくしてしまったと後から気づかされた。
それでもライラはクロードを責めることをせず、クロードにできる限り合わせようとする。
魔物の肉もなるべく慣れるようにと公都で試食を繰り返し、アルベルのしきたりを勉強している。
それを聞いたクロードは自身もライラのことを考えることとした。
「雪ムカデを退治をしたのはいつの頃でしょうか」
クロードのアルベルでの暮らしぶりを聞いた後、ライラは目を輝かせてクロードに話をねだった。
以前より気になっていたクロードの英雄譚のはじまりの物語である。
ライラの目の輝きをみてクロードは思わず笑みをこぼし、ライラの頬に触れた。
「宿屋に戻ろう。話はそこで」
空をみると端の方が赤く染まっていた。もう少しすれば日が落ちて気温が下がっていく。
市場の方では出店を片付ける様子がみえた。
武器の扱いは十分だし、動きは比較的まとまっている。
春の戦いで亡くなった者も多く、ようやく夏の終わりごろに治安隊復帰して形を取り戻しつつあったという。
また北の侵攻の際、治安に必要な人手が足りなくなってしまう。
ギルド登録している傭兵もいたが、戦争の方が稼ぎはいい為活動者がごっそりと減ってしまっていた。
治安に必要な部隊要員、傭兵の減少が、密猟の巣窟に繋がってしまった。
(シャフラのギルドの様子も確認しておくか)
時間をみてまだライラを迎えに行くにはまだ時間がある。
医者のいる治療院にも確認したいが、まだ情報は集まっていないだろう。
「お前たちは治安隊の訓練に付き合っておいてくれ」
ついてきた騎士に指示をしてクロードはギルドへと向かう。護衛について行こうとする騎士がいたが、跳ねのけようとした。
一人で動いた方が楽だったが、立場が立場であると説得され渋々一人だけ護衛でついてくることになった。
「シャフラ・ギルド」、名前がついていないがギルドを示す看板がついた館へと到着した。
戦争の影響で、人手が足りなくなっていたという訴えを耳にした。
治安維持の為に人手が足りなくなるのは困る。
依頼内容と依頼料を確認する。市から出す内容は危険度や厄介さの割に依頼料が少な目であった。
依頼料が安い為、高い方へ飛びつかれてしまうのは当然だろう。
国境防衛に協力してもらうのはありがたいが、それでシャフラの治安が悪化するのも困る。
場合によってこの街はライラが1年の3分の1は滞在する可能性がある。
市から出す依頼料金の設定も見直してもらうべきだ。
負傷兵や負傷した傭兵の療養地として人気の場所であるので、それに合わせた制度も考えてみる。
例えば、市からの依頼を受けることで治療費用を一部市が負担する。
これに必要なことは自分では思い浮かばない。
早々に医療に関して詳しい秘書官や役人を呼び寄せるべきだろう。
(結局金と人が必要だな)
当たり前のことにクロードはため息をついた。元々自分には領地経営など向いていない。
秘書官がいなければとっくに投げ出してしまっていた。
それでもなってしまったのだから最低限領地内の問題は目を通し考えていく責任はある。
「こんにちはー」
隣の受付で二十歳ほどの女性が明るい口調で挨拶した。少しなまりが気になる。
クロードは提出された書類へ目を通しながら、女性の声に首を傾げた。
どこのなまりだろう。
「はぁ、折角わざわざ来たのに北天狐の情報はないんですね」
女性のぶつくさ言う言葉にクロードは顔をあげた。
黒髪に青い瞳をした女性であった。肌の色はバターがかかったような肌である。
東側の特徴である。北の異民族だとハン族に近い。
「それならチェチェさんも密猟者狩りの仕事をしてみるかい?」
「ぶー、荒事はしない主義なんです」
そうはいうが、彼女が請け負った仕事の内容は害獣討伐である。身のこなしから戦いにも慣れている印象だった。
「何でしょうか? 私に何か用でしょうか?」
クロードからの視線に気づいたのか、チェチェと呼ばれる女性は振り返った。彼女が耳にかけている装飾品をみるとこの国にはない技術のものだなと感じた。
「いや、どこのなまりかなと気になったもので」
クロードは素直に応えた。北の異民族の戦いに応対できるようにあえて北の異民族の血が混じっている傭兵を利用することもあるが、ほとんどがアルベルでの生活に慣れ公国の言葉を問題なく使用できる。
若干なまりが残っている者もいるが、ここまで強いなまりは初めてだった。
「うーん、確かに珍しいかも」
自分の言語がまだまだだと実感しているためチェチェは頷いた。
「騎士の方、私はアルティナ帝国から来たのです」
にこりと笑い、自己紹介する。入国許可証も、身分証明書もギルドに提出済らしい。
「チェチェ・ブレダ。アルティナ帝国の商人で、ここへは弟の付き添いで来ました」
基本は装飾品の売買をしている。
色んな国を転々とするため、護衛の仕事もするし、害獣退治の仕事も請け負っているという。
「弟?」
「そうです。弟は変人……じゃなくて、ちょっと変わった研究者で探求の為にアルベルへ来ました」
チェチェとしてはクリスサァム帝国の書籍も手に入れたいがアルティナ帝国の出身者は出入りできない。
クリスサァム帝国はアルティナ帝国を野蛮国と呼び警戒していた。
「アルティナ帝国と同盟結ぶのがお得ですがうまくいかないものですね」
確かにクリスサァム帝国はアルティナ帝国の敵対国のミン帝国と友好関係を築いていたと思う。
「アルティナ帝国はハン族と繋がりがあると聞いたが」
「はい、祖先が同じですからね。勿論交易で行き来しています」
クロードはしばらく考えた。
3つの部族はアラン・ヒリス卿に情報収集してもらっているが、アルティナ帝国人の方が別側面の情報が得られるかもしれない。
完全に信用するわけではないが参考程度に聞くのも良いだろう。
「ハン族の情報を買いたい。ギルドを通した方がいいか?」
「そうですね。一応登録中の身ですので、面倒ですが後々のことを考えたらそちらの方がいいでしょう。北のスパイだと言われたらたまったもんじゃありませんし、アルベル閣下」
チェチェからの呼び名にクロードは警戒した。
「入国の際、あなたが魔物討伐する帰りを見かけたので」
チェチェは何でもないことのように言った。
「弟も紹介しましょう。きっとあなたの役に立つでしょう」
◆◆◆
シャフラの宿屋にて、リリーはライラに、クロードが戻ってくるまで温泉の湯につかるよう勧めた。
ライラは首を傾げながらも、折角自室のバスルームで温泉湯を入れてくれたのだしと言われるまま湯につかった。
ぽかぽかしてあたたかいし汗を流せたので良かったのかもしれない。
お湯からあがった後はリリーが用意してくれたを水を飲み、ふぅっとため息を吐いた。
ブランシュがすぴすぴとソファで眠っている姿を眺めていた。それ以外はとても静かだ。
窓の外を眺めるとちらちらと小さな雪が降ってきているのが見られる。
今頃はジーヴルでは雪が降り積もってきているかもしれない。
水を飲み終えて、時計の針を確認した。
そろそろクロードが戻ってくる頃合いだろう。
リリーが外出用のドレスと防寒具を用意してくれたが、またまんまる状態にされるのかとライラは困った表情を浮かべた。
それでも自分のことを心配しての行動なので、文句は言えない。
準備が整ってしばらく経過したところでクロードが戻ってきた。
金色の髪が乱れ、結んだ部分がほつれていた。外は寒いというのに汗ばんで見える。
「待たせた」
慌てて戻ってきたのか息を切らしていた。
ライラはリリーに水と汗を拭くものを持ってきてもらった。
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
ライラはクロードに少し休むように伝えた。
ソファに腰かけたクロードが水を飲み、汗を布でぬぐった。
しばらくしてクロードはライラの表情を確認し安心した。
ライラの顔色が昨日より良くなっているのがわかったからだ。
これなら市場へでかけることは可能だろう。
クロードはライラの手を取りでかけた。リリーとブランシュはお留守番である。眠っているので助かった。
二人の傍らに一定の距離で騎士が待機してあった。
クロードは自分一人の移動であれば特に不用と感じているが、街中で何が起きるかわからないためライラの為に護衛を頼むこととした。
シャフラはジーヴルに比べると小さい町であるが、温泉街として賑わっていた。
傷病兵たちの療養地として栄えていると聞いていた。
行き来する人の数は多く、騎士だったり、傭兵だったり商人だったりとわかる。
さらに歩いてみると市場へとたどり着いた。ここでは、多くの出店が開いていた。
装飾品や衣類、飲食が売買されている。アルベル特有の模様をこしらえた細工箱が並んでおりライラは目を奪われた。
よく考えればアルベルに来てからの市場はこれがはじめてだったように思う。
ジーヴルでは色々あってまだ市場へ行ったことがなかった。
「良い匂い」
出店からこおばしい肉の匂いにつられてしまう。串を刺したソーセージのグリルであった。
「ケリュネイアの肉を使っているらしい」
「ケリュネイア?」
聞いたことのない名前である。
「鹿型の魔物だな」
忘れかけていたが、アルベルでは魔物を捕まえて利用できる部分は利用する。
肉も食用として使われていた。
クロードは一本購入して口にした。がぶっと大口で食べて、肉汁がわずかに飛びこおばしい香りが強くなる。
「鹿タイプの魔物だから、味は……少し癖が強い程度だな。観光客用に食べやすく味付けされてある。辛さは、それほどない」
「大丈夫と思います」
新しく一本を購入してもらいライラは手にとった。
はぐっと口にしてみると、ライラは目を閉ざし眉をひそめた。
クロードはそれほど辛くないと言っていたが、ライラには十分辛かった。それでも買ってくれた手前完食しなければ。
「無理はするな」
一本食べ終えたクロードがライラから串を取り上げた。
「この辛さでもダメだったか」
「すみません」
折角購入したものなのに食べられなかったのが申し訳ない。
「気にするな。ほら、あちらの方は山羊の乳で作った甘味がある」
クロードはライラの手を握り、別の屋台の方へと連れて言ってくれた。
昼の市場は人がそれなりに多く、目を離した隙にいなくなってしまいそうだ。
ライラが興味をひきそうなものを見つけてはクロードはライラの手を引いた。
歩き疲れて、町中に置かれてある椅子に腰をかけた。クロードが購入してくれた飲み物を口にしてライラは昔を思い出した。
雰囲気は違うが、イセナの市場も珍しい食べ物の出店が開いていて友人に手を引かれて食べ歩いたものだ。
あそこでも、ここでもライラには見たことのないものばかりで埋め尽くされている。
「クロード様はいろいろご存じなのですね」
彼がいなければきっとライラはどうすればいいかと立ち往生していたことだろう。
「まぁ、傭兵時代は屋台で飲食していたことがしょっちゅうだった」
オズワルドの作る飯はまずくて食べられたものじゃなかったしなぁとクロードは苦い顔をした。
「クロード様の傭兵時代というのはどのような生活だったのですか?」
ライラの質問にクロードはうーんとしぶい顔をした。
もしかするとあまり聞いてはいけない内容だったのか。
ライラが不安を感じていると、クロードは払しょくするように応えてくれた。
クロードは過去のことを思い出しながらライラに語り掛けた。
アルベルの主要都市ジーヴルにたどり着いてまず行ったことはギルドでの傭兵登録であった。ここから傭兵の仕事を斡旋してもらいながら生活基盤を整えていく。
すぐにでも異民族との戦場へ向かおうと思ったが、オズワルドとしては準備も、経験も整っていない状態で行っても足手まといにしかならないと言われた。
正規軍、アルベルの騎士団の兵士になれれば備品は配給されるがクロードは騎士団の兵士になれなかった。
一般兵士として登録するには身元証明が必要になる。
クロードは修道院から抜け出した孤児、何者でもないクロードでしかないのである。
戦場で活躍するには無頼者が多くいる傭兵団で活動するしかない。しかし、必要なものは全部自分で用意しなければならない。
今の状態で戦前に行きたいと言ってもギルドスタッフに自殺行為だと止められるだろう。
オズワルドから戦の知識を詰め込まされながら、傭兵としての仕事を行っていった。
魔物を退治してその報酬で武器や防具、食糧や応急処置の備品を整えていった。
住居は、ギルドの紹介で傭兵用の集合住宅の一室を借りてオズワルドと共用した。
部屋といっても寝る為のベッドが2つと簡単なキッチンがあるだけの空間で、トイレ・風呂は共用であった。
はじめは二人で分担し料理を行っていたが、オズワルドの料理は壊滅的であった。
クロードは簡単な料理を作ることはできたが、日が経過するうちにだんだん面倒となり近くの店で購入した料理や保存食で過ごすことになった。必要出費である。
窓際には購入した干し肉を干し、野菜のピクルスの瓶、酒瓶が並んでいた。
キッチン備え付けの暖炉は冬の暖をとることとお湯を沸かす程度しか利用したことはなかった。
「俺もアルベルに来てはじめて魔物の肉は食べたな」
話を聞いた時は驚いたが、アルベルの食糧が不足しやすく獣や魔物の肉で賄うというのは事前情報で聞いていたからある程度は受け入れられた。
食べてみると獣肉に近く、意外にうまく感じたのですぐに抵抗は感じなかった。
修道院でほとんど食事をとることができなかった日もあるので、すぐに食文化を受け入れられた。
アルベルの考えも同時に身に着けた。
「俺の常識はすっかりアルベルが基本になってしまったな」
アルベルはクロードが初めて知った修道院の外の世界であった。
だが、クロードとしては心が晴れやかな気分であった。
窮屈に感じられた修道院よりも、自由に過ごせる傭兵生活が一番クロードにはなじんだ。
その分自己での責任を背負わなければならない。
ただクロードの身に着けた常識はあくまでアルベルの地のみで通用する。公都はまだ理解してもらえるだろう。
帝国からみるとクロードの振る舞いは野蛮なものであった。
公都で特に気にしてはいなかったが、帝国からの賓客が来た時微妙な反応をされたことがある。
内心帝国の貴族には嫌な気分を感じていた。公国の歴史のこともあるが、妙に鼻につく。隠しているつもりであるが公国全体を蛮国とみなしていることがわかり交流を深める気は起きなかった。
クロードの在り方をみては、彼らは社交辞令の苦笑いをして距離を置くようになった。
彼らの中にはライラの兄、トラヴィスもいた。
クロードの活動拠点はあくまでアルベルであり、アルベルは公国の北の辺境にある。帝国とは反対の位置である。
帝国相手は公都の人間に任せればいいと理解する気もなかった。
クロードが帝国貴族に良い感情を抱いていなかったのもあった。
ぺテラス修道院の特に嫌な思い出を持つ司祭が帝国貴族出身だった。
彼を断罪した時、帝国貴族と揉めそうになったのを今でも覚えている。
搾取されるだけの孤児の様子をつまびらかにしたことで、世間はぺテラス修道院の在り方を非難し風向きが悪くなったと感じた帝都貴族は引っ込んでいった。
オズワルドから度々帝国のことも学んでいく必要があると言われていたが、こればかりは面倒になり放棄した。
それがそのままライラへの対応に影響してしまったと気づいた時には反省した。
ライラとの初対面の時は別に非礼を働こうとしていたわけではない。
どうしていいか悩んで、普段のアルベルでのやり方で接してしまった。
初対面のライラの卒倒を目の当たりにしてようやく自分の行動の愚かさに気づいた。
初夜でのこともライラの立場を危うくしてしまったと後から気づかされた。
それでもライラはクロードを責めることをせず、クロードにできる限り合わせようとする。
魔物の肉もなるべく慣れるようにと公都で試食を繰り返し、アルベルのしきたりを勉強している。
それを聞いたクロードは自身もライラのことを考えることとした。
「雪ムカデを退治をしたのはいつの頃でしょうか」
クロードのアルベルでの暮らしぶりを聞いた後、ライラは目を輝かせてクロードに話をねだった。
以前より気になっていたクロードの英雄譚のはじまりの物語である。
ライラの目の輝きをみてクロードは思わず笑みをこぼし、ライラの頬に触れた。
「宿屋に戻ろう。話はそこで」
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