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1 マコモ
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【モリノミ】山の人気のない道(道といえないものだが)の先には滝と泉があった。
この泉はたいへん綺麗なのに、人の手が全く加えられていない。
この泉にやってきた少女は時折神社を抜けてはこの泉に水浴びをするのが数少ない楽しみであった。
少女の名はマコモ。
幼い頃から【モリノミ】山に住んでいる。その為、山の中はある程度熟知していた。
マコモは木の枝に自分のお召し物をかけ、裸になり思い切って泉の中へ飛び込む。しばらく沈んだままにして一気に頭を水面から出した。その時飛沫が舞い木々の間から入ってくる光にあたって綺麗であった。
マコモは人目を気にせず水浴びに没頭した。
ここに人が来ることなどないとわかっているからできることである。
「はぁ、良い気持ち」
特に暑い日の続く中、泉の水は程良い温度で彼女の気分を良くした。
「毎日、偉い人たちの挨拶やら、何やらで忙しかったしなぁ」
彼女はうーんと背伸びして、水の中を泳いだり、滝の近くに寄ったりした。
しばらく水遊びに堪能していると、がさがさと足音を耳にしマコモは身構えた。
そして、緊張し音のする方へ目を向ける。
(?………ここには誰も来ないはずなのに)
まさか、自分の居所を捜している神社の者たちがここまで嗅ぎまわって来たと言うのか。
折角の自分だけのお気に入りの場所なのに、自分以外の、それも神社の者が来るのはなんだかおもしろくない。
しかし、そこに現れたのは神社の者ではなかった。服装は神社の者と明らかに異なる。
マコモの知らない人である。それも男性。
彼はマコモを見て、驚いたように一瞬だけ瞳を見開いた。
(ど、どうしよう。このときの対応はえーっと)
困ったときは笑顔だ、そう誰かから教わったような気がする。
マコモはにこりと男に笑顔を振りまいた。
突然笑いかけたマコモに男はますます驚いた表情を見せた。
「………」
しばらくして我に戻った男は顔を背け、その場を立ち去った。
「び、………! びっくりした」
まさか、人が――それも見ず知らずの男に遭遇してしまうなんて。
しかも、男に裸を見られてしまうなんて何と言う失態。
人が来ないものと安心していた自分が悪いとはいえ。
「………ここでまた誰かが来たら困るわ」
水浴びを名残惜しいと思いつつもマコモは木の枝にかけておいた服を取りだす。
それに着替えたマコモは急いで神社に戻ることにした。
◇ ◇ ◇
「姫様!」
マコモは自分の世話係の巫女のタカクにみつかってバツの悪そうな顔をした。
マコモにとって三つ年上の姉的存在である。
「今までどこに行っていたのです。探しましたよ」
「ちょっと………散歩を」
「神社の外を出る際は必ず供の者をつけるようにあれだけ仰ったでしょう!」
「ごめんなさい。ちょっと行って戻るつもりだったから」
タカクは困ったように眉を寄せて言う。
「確かにここ最近、行事で忙しかったので息抜きは必要だと思います。しかし、神社の外何があるかわかりません。あなたを殺そうとする他国の刺客がいないとも限りません」
「そんなモノ、山の神が許さないわ」
聞く耳を持たない楽観的な思考を示すマコモにため息をつきながら言った。
「もっと自分の立場を考えて下さい」
あなたは大事な姫巫女なのですから。
その言葉にマコモは苦笑いした。
マコモはこの国にとって大事な人間。おそらくこの国の王と同等、いやそれ以上の存在なのである。
タカクの言う通り、彼女は古くより存在する【モリノミ】の姫巫女なのだ。
その為彼女の日々の生活はほとんど山神の為に捧げなければならない。
この泉はたいへん綺麗なのに、人の手が全く加えられていない。
この泉にやってきた少女は時折神社を抜けてはこの泉に水浴びをするのが数少ない楽しみであった。
少女の名はマコモ。
幼い頃から【モリノミ】山に住んでいる。その為、山の中はある程度熟知していた。
マコモは木の枝に自分のお召し物をかけ、裸になり思い切って泉の中へ飛び込む。しばらく沈んだままにして一気に頭を水面から出した。その時飛沫が舞い木々の間から入ってくる光にあたって綺麗であった。
マコモは人目を気にせず水浴びに没頭した。
ここに人が来ることなどないとわかっているからできることである。
「はぁ、良い気持ち」
特に暑い日の続く中、泉の水は程良い温度で彼女の気分を良くした。
「毎日、偉い人たちの挨拶やら、何やらで忙しかったしなぁ」
彼女はうーんと背伸びして、水の中を泳いだり、滝の近くに寄ったりした。
しばらく水遊びに堪能していると、がさがさと足音を耳にしマコモは身構えた。
そして、緊張し音のする方へ目を向ける。
(?………ここには誰も来ないはずなのに)
まさか、自分の居所を捜している神社の者たちがここまで嗅ぎまわって来たと言うのか。
折角の自分だけのお気に入りの場所なのに、自分以外の、それも神社の者が来るのはなんだかおもしろくない。
しかし、そこに現れたのは神社の者ではなかった。服装は神社の者と明らかに異なる。
マコモの知らない人である。それも男性。
彼はマコモを見て、驚いたように一瞬だけ瞳を見開いた。
(ど、どうしよう。このときの対応はえーっと)
困ったときは笑顔だ、そう誰かから教わったような気がする。
マコモはにこりと男に笑顔を振りまいた。
突然笑いかけたマコモに男はますます驚いた表情を見せた。
「………」
しばらくして我に戻った男は顔を背け、その場を立ち去った。
「び、………! びっくりした」
まさか、人が――それも見ず知らずの男に遭遇してしまうなんて。
しかも、男に裸を見られてしまうなんて何と言う失態。
人が来ないものと安心していた自分が悪いとはいえ。
「………ここでまた誰かが来たら困るわ」
水浴びを名残惜しいと思いつつもマコモは木の枝にかけておいた服を取りだす。
それに着替えたマコモは急いで神社に戻ることにした。
◇ ◇ ◇
「姫様!」
マコモは自分の世話係の巫女のタカクにみつかってバツの悪そうな顔をした。
マコモにとって三つ年上の姉的存在である。
「今までどこに行っていたのです。探しましたよ」
「ちょっと………散歩を」
「神社の外を出る際は必ず供の者をつけるようにあれだけ仰ったでしょう!」
「ごめんなさい。ちょっと行って戻るつもりだったから」
タカクは困ったように眉を寄せて言う。
「確かにここ最近、行事で忙しかったので息抜きは必要だと思います。しかし、神社の外何があるかわかりません。あなたを殺そうとする他国の刺客がいないとも限りません」
「そんなモノ、山の神が許さないわ」
聞く耳を持たない楽観的な思考を示すマコモにため息をつきながら言った。
「もっと自分の立場を考えて下さい」
あなたは大事な姫巫女なのですから。
その言葉にマコモは苦笑いした。
マコモはこの国にとって大事な人間。おそらくこの国の王と同等、いやそれ以上の存在なのである。
タカクの言う通り、彼女は古くより存在する【モリノミ】の姫巫女なのだ。
その為彼女の日々の生活はほとんど山神の為に捧げなければならない。
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