目覚めれば異世界へ

今野常春

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006 拠点確保

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 ハーシュは元々この屋敷を中心にコミュニティーが広がった。当時は人口百名に戦闘員五十名程度が籠る小さな砦だったが、この地が思いの外に重要だと判明するとあっと言う間に数が増えた。
 当初は柵程度が設けられていたが次第に強化な物へと更新され、現在の大きさと造りに為ってから百年ほどが経過している。それでも随所に拡張の跡が見受けられ、今尚この街は発展し続けていることが窺える。
 すると当然この街へ押し寄せる不埒者が増加し、必然と守備兵の数も増える事となる。
 しかし、残念な事に大規模な訓練施設はには存在し得なかった。

 そこで時の領主はこの地が丘を中心に街造りが為されている事に着目する。
 不測の事態に備え、兵士を郊外で訓練させるのも不安であるとの事から地下を掘ってそこを訓練場にしようという発案が為されたのだ。
 しかし、この工事は大事業だった。
 何しろ資金と資材が一領主でどうにかなるわけでもなく、何とか資金と資材を集め、建設に着工したのは次の領主となってからだった。
 そして完成したのはオリマッテの先々代というから驚きである。
 だからこそこの街は今の平和があり、領民は安心して暮らせるのだ。何かあればこの訓練場は避難場所となるからだ。





「でかい……」

 孝雄実は地下訓練場へと連れてこられ、開口一番飛び出た感想がそれだった。
 地下空間と言えば日本でも大規模な構造物があるが、テレビで見た程度ではその迫力は伝わってこない。しかし、今立っている場所はそれに匹敵するのではないかと思うほど巨大だった。

 訓練場は楕円形に成形され、一部には観客席が設けられている。その場所を幾つかの部隊が定期的に訓練を行う場として使用し、時には模擬戦が行われる。
 現在も兵士たちが訓練に励むのだが、オリマッテが姿を現し、ロドムの命令で急遽全員がこの場から追い出されてしまった。





「では近藤よ、始めてくれ」
「は、はい」

 距離は五十メートルと本番の半分と短いが、これでもあり得ないと考えられている。
 事前にその当時の環境に近付けさせる為敢えて石は仔犬に選ばせるなど、かなり真剣に真偽を確認しようとしている。
 その様に感じた孝雄実は前方に臨む的となる鎧に目をやる。

 随分と遠くに感じるけど……、まあやるしかないよな

 大きく息を吐き出した孝雄実は石を拾い握り締める。

 やっぱり軽い、どうなっているんだ……

 今の孝雄実は経験が無いほど感覚が研ぎ澄まされている様に感じている。
 何しろここで失敗すればこの先がどうなるのか不明であり、かなりの重圧が掛けられているのだ。
 しかし、今の彼は笑みすら浮かべるほど失敗という二文字が縁遠いと思っている。

「しかし、投石であの距離から破壊出来るのか?」
「分らないわ。でもあの時、私達が助かったのは彼が居てこそよ」

 オリマッテ達は全てが見渡せる場所まで移動していた。孝雄実が準備を行っている最中、アランは隣に座るエレオノーラに疑問を投げ掛けたのだ。
 投石は城壁から投げ落とす事で威力を増し、死に到る兵器というのがここでの常識だ。正面に投げるだけでは痛みと怪我は与えられる程度の認識しかない。

 そうしている間にも準備は整い、孝雄実は投球体勢に入る。その瞬間、この場の音が消えた。
 ワインドアップから左足を上げ、体の覚えている距離分に足を思い切り踏み出し力を上半身へと伝える。

「随分と変わった投げ方だな」
「はい、しかし理にかなっている様に思えるのが不思議です」

 左腕はグローブがある感覚で右腕の加速を促し、右手に持つ石へ全ての力を与え放った。
 そして、見ている者たちは我が目を疑った。
 瞬きをしていれば見逃すほど、僅かの間に石は孝雄実の指先を離れ、鎧へと命中し爆散させた。
 この場所が地下である事と、反響し易い石材で囲われていた事が災いし、凄まじい爆発音と衝撃音が響き渡った。

「領主様!!」

 全ての者を一時追い出した上で行ったため、周囲の入り口付近には兵士が多数待機している状況だった。その為、あり得ない音を聞いた兵士が駆け付けたのだ。

「大丈夫だ、問題ない!」

 とはいえ、土埃の充満する訓練場を見て問題ない、と言われても説得力が無い。

「大丈夫だ。この場にいる者、全員が無事。この光景もあと少しで収まる」

 隊長のロドムの言葉も加わっては兵士たちも従うしかなかった。そこで今一度命があるまで出る様に促された。

「兎に角、皆確認したな?」
「はっ、この目でしかと」

 ロドムが返事を行うと、オリマッテは満足げに頷き孝雄実に労いの言葉を掛け、先ほどの部屋へと戻る。
 一同孝雄実の凄まじいまでの投石に驚きを隠せず、移動中は無言であった。
 だが、これで孝雄実の言葉が証明されたのである。

「ひゅー、しかし凄かったな!」
「だね。僕、驚いちゃったよ」

 そして部屋に戻るとこの場にいる騎士の中でも年若いアランとダンは先ほどの光景を思い出し話が弾む。ウォーレンやロドム、そしてオリマッテとエレオノーラにしても興奮気味な気持ちを抑え付けるのに必死だった。

「オホンッ!」

 主人の頃合いを見計らった咳払いに一同は静まり返る。
 それでも先ほどの興奮冷めやらぬ面々は顔を紅潮させている。

「これで近藤の言葉が正しいと分ったな」
「はい。まさかあれほどの威力が有るとは思いもしませんでした」
「ああ、しかしあれが無ければ盗賊どもは倒せなかった」

 オリマッテの言葉に彼等は頷いた。

「近藤、帰る宛ては在るかね?」
「ありません。そもそもここがどこなのかも解らないのに……」
「私としては君がどこから来たのか詮索するつもりはない。それに私とエレオノーラを救ってくれたのだ。しばらくの間、ここで暮らしてはどうかね?」
「えっ、でも迷惑ではありませんか?」

 当然孝雄実にとっては嬉しい言葉だった。

「迷惑なんて思う筈がないだろう。君はそれ相応の行動を見せ、我らを救ったのだ。それに対し何もしないとあれば、私が最低の人間と為ってしまう」
「近藤くん、君が遠慮する気持ちも解らなくはない。だがここは素直に受け取るべきだ。それに元居た場所に帰る宛ては無いのだろ?」

 普通ならオリマッテの言葉で靡くと思ったが、どうにも決断の鈍いと感じたロドムが援護を行った。

「うっ、ありません……」
「ならば旦那様の願いを受け入れては頂けないだろうか。これは我らの願いでもあるのだ。旦那様はここヘーシュを治められる領主。そして領民の信頼厚い御方でもある。その御方を護った者に感謝を示したいのだ」

 嘘偽りの無い眼で語るロドムに孝雄実も「否」とは言えない。加えてここが何処の世界なのかも分らず、行く宛ての無い旅が出来るほど物資と経験を持ち合わせていない彼にとっては渡りに船である。

「分りました。すみませんが、暫くお世話に為ります」
「うむ、暫くと言わず好きなだけ滞在してくれて構わない。と、言うわけだ、エレオノーラ、彼の面倒は任せるぞ」
「承知致しました、旦那様。……えっ?」

 いつもの流れで言葉を返したエレオノーラだったが、冷静に考えてあり得ないという言葉が浮かび上がる。

「しかし、旦那様。近藤……殿は男性ですよ」
「だが、彼の事を知りこの中で最も触れあった者と言えばエレオノーラしか居るまい。私に面倒を見よと言うのかね?」
「い、いえ、滅相も御座いません」

 言葉を交わしただけでも接すると言えば次点で主人のオリマッテが挙げられるが、客人として遇するに当たり、面倒をその主人に見させるなどあってはならない。

「それにアランとダンには暫く街を出て働いて貰わねばならない。ウォーレンも同様に私の使いを頼まなければならん。ロドムは兵士の訓練と防衛の任を担って貰う。すると空いているのはエレオノーラしかいないのだ」
「は、はい……」
「ではそう言う事で頼むぞ。近藤、彼女の世話に為りなさい。それと困った事があれば遠慮なく言う事だ」
「何から何まで有難う御座います。よろしくお願い致します!」

 孝雄実はオリマッテの親身な態度に感動し深々と頭を下げて礼を述べる。その時、彼等は礼儀の良さに好感を抱いた。だが、エレオノーラだけはこれからの事を想像し若干くたびれた雰囲気を纏わせるのであった。
 その後、エレオノーラと孝雄実を外させ、真剣な雰囲気を纏わせるオリマッテが口を開く。

「さて、彼の処遇も決まったところで本題に入ろう」

 オリマッテは懐から掌サイズの用紙を取り出した。

「これは盗賊のリーダーが所持していた、我らの移動経路だ」
「なっ!?」

 用紙が小さい事もあったが、淡々と述べる彼の内容に大きな衝撃を受け、席を立ち上がる。

「この移動経路はブラスト辺境伯が暮らすブラストルアイクから此処までの帰還経路だ。しかし、この経路などはそもそも存在しない」
「だがここに書かれてあるものは真実ですな」
「そうだ。まあ間違いなくドーソン男爵の嫌がらせだな」
「いや、これは嫌がらせの域を超えております」

 笑って答えるオリマッテに対し、顔面蒼白の状況で答えるロドムは主人ながら怒りを覚えるほどだ。

「そう怒るな。私だって腸が煮えくり返っているのだ」
「では、報復に出ますか!」
「駄目だ。それでは他者の思う壺となろう」
「どう言う事でしょうか?」

 オリマッテの言葉にロドムはおろか、アラン達も首を傾げる。この場にエレオノーラが居れば言い当てただろうが、今は孝雄実の世話で忙しい。

「本来盗賊が襲撃を行う際に手掛かりと為る物を所持すると思うか?」
「っ!! そうですな、あり得ない。失敗した場合情報漏洩は確実となる。それでは……まさか!!」
「この情報が漏れる様に依頼した者がいる筈だ」
「二重依頼ですか……」
「そうだ。しかも相手は私とドーソンの関係を知る者だと思われる。でなければむざむざと証拠を残させる様な事はさせないだろう」

 その言葉に余計複雑化した案件に変化したからか湯気を登らせる者が出始める。

「アランとダンには難しすぎたかな」
「い、いいえ、そんなことは……」
「ありません!!」
「お前たちも何れ部下を指揮する立場になる。となれば何時までも命令を受けるだけではいかんのだ。物事を冷静に考え、相手の立場に為りさらに考える。加えて状況把握と情報収集に励み最適な判断を下さねばならなくなる」

 これは次代の育成でもあった。オリマッテは少なくともこの実践を二人の訓練にも活かそうと考えていた。この問題を解決するだけならロドムとウォーレンが居ればいずれ解決する。しかし、それだけでは下の人間が育って来ない為、敢えて将来有望と見做されている二人を加えたのだ。

「はっ! 肝に銘じて!!」

 オリマッテの叱咤激励に対し、二人は期待されていると感じ取り目の色が明らかな変化を見せる。空回りするかどうかは別として、その辺はロドム達の指導に期待するオリマッテであった。

「旦那様、この問題は如何なされますか?」
「本来ならブラスト辺境伯に報告するのだが、纏まっていない段階で報告する必要もあるまい。しばらくは此方で調べる事とする。そこでだ、ダンとアランには使者として此処へ出向いてもらいたい」

 オリマッテが示した場所に皆の目が集まる。
 そして一同色好い返事が出来なかった。

「旦那様、そこは難しい、いや危険ではありませんか?」
「だがこの二人ならば成し得ると思うのだ」
「私もロドムの意見に賛成です。そもそも先にドーソン男爵家に使者を出されるべきかと」

 年長者二人は二人の能力に疑いを持っているわけではない。
 オリマッテが示した場所が問題なのだ。

「いや、おそらくドーソン男爵家は終わりだ。あの者の性格からして私が死んだと思い何某かの行動を起こそうと画策しているだろう。当然それを止めるべく執事のヘッケン・ポールトンが阻止する。だが、盗賊に依頼し、成功間違いなしと確信している中で不快な言葉に耳を傾ける筈が無い」
「すると彼の老人は出奔しますかな?」
「するだろう。先代、先々代に対しての忠誠心の高かった彼だが当代は違うと見ている。先のお二人があってこそ付き合っていると見るべきだ」

 オリマッテの言葉に皆が頷いた。
 この話はロットロン男爵家の騎士であるならば知っている基礎知識の発展というべき内容であり、アランとダンも容易に想像出来る話だった。

「あの家はポールトン家が付き従ってこそ維持されていると誰もが知っている。その屋台骨が消滅すれば自滅への坂を転げ落ちるだけだ」
「盗賊どもはそこを見越して依頼を受けたのでしょうか……」

 ウォーレンの問い掛けにオリマッテは首を横に振る。

「さてな、そこまでを読み依頼を受けたかどうかは分らん。だが、この問題に精通している者であれば容易に絵を描く事が出来る。ドーソン領は我が領地に匹敵するほど豊かではないが、見る者がみれば欲しいと言い出す程度には魅力がある」

 オリマッテはその様に述べるが、内心でそれだけが目的で盗賊に身分ある者が依頼を行うとは到底考えられなかった。つまり、この失脚劇は彼自身も対象に為っている可能性があると考えていて、敢えてこの件は話さなかった。

「兎に角、二人にはこの場所へ出向いてもらう。危険と判断すればこの軍資金をばらまき逃げてきなさい」
「承知致しました。アラン、ダン両名は準備を整えたのち、即刻出発いたします!!」
「頼んだぞ」

 此処まで話し、この日の会議は幕を閉じた。



 一方、早々と席を外した孝雄実とエレオノーラの二人と言えば、とある平屋建へとやって来ていた。周囲にも似た様な家が立ち並び建売住宅の様な雰囲気が在る。

「ここは?」
「私の家よ」
「えっ!?」
「いいから入りなさい。そこにいると周囲の目が……」

 彼女にしてみれば予想外の客に内心イライラと周囲の目に晒されるハラハラが入り混じっていた。
 特に家の前で男を立たせることであらぬ誤解を生み出しかねないのだ。この地はその様な話の種を好む者たちが生息している。
 しかし、そう考えていると現実に訪れてしまう。

「あら、エレオノーラちゃん、帰ったのね!」
「あ、ええ、先ほど帰還致しました」
「無事で何よりだわ! ところで、隣の殿方は?」
「えっ、えっと……」

 事情をどこまで話そうか悩んでいると、目の前の恰幅の良いマダムはああだ、こうだと話してもいない内容を想像で口に出し始める。
 この女性の欠点であり、更なる欠点は声が大きい事だ。その捏造報道に周囲のマダムが食い付く事に然して時間はかからなかった。

「まあまあ、とうとう身を固めるのね!」
「男が出来たと聞いて!!」
「つばめ、つばめを飼うのね!!」
「あら、この男は奴隷にするのかしら!!」

 などなど、ワイドショーの雰囲気すら漂わせる事態にエレオノーラは辟易する。

「違います! 全て違いますから!! この方は旦那様が客人として迎えると宣言された方です! 当面私が面倒を見る事と為り、暫くの間私の家で暮らすだけです!!」
「あ、あらそうだったの。領主様のご命令で、御客人だったのね……」

 彼女達もオリマッテの名が出ると及び腰と為る。
 幾ら領民に優しい領主とはいえ一定の線引きが存在し、度を過ぎれば処罰の対象と為る領民からすると恐ろしい相手なのだ。

「ええ、ですから私の婚約相手だとか、恋人だとかではありません!! ほら家に入るわよ!! 
では皆さま、ごきげんよう!!」
「うわっ、押すなよ、エレオノーラ!!」
「いいから、入りなさいよ! 口応え禁止よ!!」

 そのやり取りにマダムたちははどう見ても痴話喧嘩に近しい物だと受け取る。否、そうとしか受け取れなかった。

「あの男嫌いのエレオノーラが、あの様に接しては否定出来ないと思うのだけれど」
「同感ね。たとえ否定しても言葉と態度がねー」
「説得力が無いわよ……」
「でも領主様の御客人とあれば失礼な振る舞いは出来ないわね……」

 そして決まった事は生暖かい目で静観するという事だった。「頑張れエレオノーラ!」を合言葉に声の大きいマダムが解散を宣言し何時もの街並みが戻るのであった。
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