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「罠か……」
二人が来た方角からは複数の足音と鎧の擦れる金属音が近付き、地下空間の為音が響き渡り思っている以上に恐怖心を煽る物だった。それも次第に大きくなり、音から敵兵の数をある程度把握するマリアンは危険を感じる。通路は一本道に加え身を隠す場所すらなく、言い換えると袋の鼠だった。
「慎重に進め! 敵は逃れる事は出来ない!!」
「おうっ!!」
指揮官と思われる男の声が二人にも届く。それに応える兵士の威勢の良い声が二人を窮地に陥らせる。この様な事態に直面する事が初めての孝雄実は脚に力が入らず、マリアンに不安な瞳で見る事しか出来なかった。
「孝雄実、生き残りたければ戦うしかない」
「で、でも……」
「でもじゃない。いいか、ここで捕まれば死よりも恐ろしい出来事が待っている」
マリアンは怯える孝雄実をしっかり見つめ語り掛ける。尤も、恐ろしい出来事は男の孝雄実よりも彼女なのだが、敢えてそこは省き、分り易い言葉で分らせる選択を行う。
「ここで戦ってマルベールに戻る。今はそれだけを考えろ」
「あ、ああ……」
何とか動ける程度に正気を取り戻させたが、根本的な問題が在った。この狭い空間で戦う為には剣などの近接武器が求められるが、孝雄実はそれを一切所持していない事だ。この様な事態を想定していない事から彼女も武器は義姉サラを守る為の剣一本のみと非常に心許無い。
それでもマリアンはやらなければならないと決意を新たにし、生きて再びサラと会う事を希望としたのだ。
「降伏しろ! 僅か二人でこの状況を切り抜ける事は出来ない!! 今なら適切な待遇を約束する!!」
窮地に於いてこの言葉はとても甘美に聞こえる孝雄実だった。それを示す様にマリアンに視線を向けどうするのか尋ねるが、彼女はそれを言葉なく首を横に振るだけに留める。このような場合、適切な待遇こそ問題が在り、それを知らない彼は彼の基準で物事を考えてしまった。日本には基本的人権の尊重などという言葉が在り、刑務所に入っている者にも人らしい生活が保障されている。孝雄実はそれを考えてしまった。
「わかった。ではお前らの命は保証しない。覚悟しろ!!」
その瞬間、敵の足音が駆け足に変わった。マリアンは鞘から剣を抜き、真正面の敵に対峙する。幸いな事に後ろの部隊は迫っておらず、当面戦う相手は真正面の部隊と決まる。
「孝雄実は私の後ろに居ろ。前に出るなよ」
「わかってる!!」
それでも孝雄実は近くに転がっている小石を手に持ちマリアンを援護する気持ちが在った。何もせずに居るよりも戦う気持ちだけでも行動に表した事に対し彼女は笑みを浮かべる。
「居たぞ!! 掛かれー!!」
先頭を駆ける敵兵は大声を上げると真っ先に斬りかかる。マリアンも彼を最初のターゲットと決めると丁度良い塩梅の力加減で剣を振り抜いた。敵兵は彼女の一刀の下綺麗に斬られると、その光景に兵士は足を止める。この剣はサラを護る為の物で、特殊な金属を用いて造られている事から軽い力でも滑らかな切れ味が持ち味と為っている。
一兵士との戦闘では彼女の相手にもならなかった。そしてこれこそ彼女が求めた状況だった。数の優位と勢いに任せた戦闘では万が一にも勝機は無いからだ。どんなに力量が勝ろうと腕は二本しかなく、隙が生じる。結局は数の多さで負けると分っていた為、初撃で相手の度肝を抜き動揺させる戦い方を選んだのだった。
「はっ! はぁっ!!」
彼女は好機を逃さず、あらん限りの力と素早さで敵を葬り去っていく。それが相手の動揺に拍車を掛けるが、この様なボーナスタイムが長続きするはずがない。
「狼狽えるな! 相手は一人!! 落ち着いて対処すれば早々に倒せる!!」
この一言で敵兵は冷静さを取り戻し、体が動き始めると彼女の剣にも対応する者が現れ始める。どんな凄腕の者でも剣の腕前を披露すれば、まだ戦っていない者も目で見て頭でイメージしてしまい、身体能力に長ける者が防いでしまう。それが出来ると不思議と他の兵士も対応し始め、一進一退の攻防へと場面は変わる。
「くそっ……」
彼女はあの一言が誤算だと考える。
「いいぞ、その調子で攻めるんだ!!」
「おうっ!!」
最後方から部下を励ます声が轟くとますます敵兵の士気が盛り上がる。その反面マリアンは焦りが色濃く出始める。見える範囲に大勢の敵兵が居る為、現状の体力からかなり厳しいと予想した。敵兵は隊列を組み、四人で一斉に襲い掛かる。一人がやられれば後ろの兵士が穴を埋め、二人やられればさらに穴を埋める。体力と集中力の差は拡がるばかりで、時間が経つほど孝雄実とマリアンは追い込まれるようになる。
その光景を守られるばかりの孝雄実は忸怩たる思いだった。小石を持ってはいるが、何も出来ない状況に悔しさが滲んでいる。狭い空間で動きが速すぎ、正確な狙いが付けられず投げる機会を掴めなかった。
「くそ、何とか投げられる状況が得られれば……」
こうする間にもマリアンの体力は敵兵の命を代償に削られ、結果として押され始めていた。
「相手は疲れ始めている! あと一歩だ!!」
「おうっ!!」
敵の指揮官は非常に状況を窺う才能に長けていた。兵士の気持ちを的確に盛り上がり、戦況圧倒的有利ともなれば逸る者も現れるが最高の場面での言葉からそれをさせなかった。
「孝雄実! 何でも良いから援護してくれ!!」
とうとう一人では厳しいと悟ったマリアンは孝雄実に援護を求めた。しかし、素早く動く戦いの中で落ち着いて狙いを定める事が出来ず、手に持つ小石が悲しく握られていた。
「何でも良いって、狙いが付けられないんだ!!」
「それでも構わない! 良いから投げろ!!」
「そうは言っても……」
戦闘などまずあり得ない世界で生きて来た孝雄実にとって臨機応変という言葉は厳しい物だった。
「殺すなど考えるな! ただ動きを止めるだけで良い!!」
「っ!?」
その言葉に孝雄実の中で電気が走る。
今までは投げ親しんだ投球フォームから全力で投げて相手を倒す事を考えて来た。マリアンの述べる動きを止めるという考えがごっそりと抜け落ちていたのだ。相手の行動を止める事が出来れば、最大四人同時が限度の空間で一人の動きを止めれば今の彼女ならまだ十分に息の根を止められると考えたのだ。
「そうか…… 分った!」
孝雄実は左に幾つかの小石を持ち、右手に一つの小石を持つと右足を後ろに引き、若干体重を乗せる。野球に於いて投手はボールを投げ終えると、捕手を除けば最もバッターに近い守備位置に変化する。守備機会を得た際、彼は投球時とは異なりサイドスロー気味に投げ、クイックスローでアウトを狙う。速さと威力は劣るが、この方がコントロールは良く自らの中で型にはまった安定感を覚えていた。
「行くぜっ!!」
一呼吸置いたのち、孝雄実は大きく息を吐き出すと脳裏に敵兵の残像を残し小石を投げ始める。
「ギャッ!?」
「グエッ……」
最初に当たった兵士は右腕に当たり、石の勢いで体が仰け反る。二投目の相手は当たり所が悪くそのまま絶命する。この光景にあと一歩で勝利と高を括っていた彼等は浮足立つ。
「よくやった!!」
マリアンにとっては降って湧いた好機に力を込めて剣を振るい、生き残った者も含め三人纏めて斬り伏せた。そして、孝雄実もこの機会を逃す事は無かった。信じられない状況に直面した敵兵士は動きを止め、孝雄実は的と見なして連続して小石を投げ続ける。狙いは多少ずれたが、概ね敵兵士の動きを止め怪我を負わせることに成功する。ある程度敵兵を仕留めた事でマリアンが孝雄実に礼を述べ相手に向かって吶喊を行う。
「助かった!」
「お、おい!?」
突然相手に向かって飛び込み斬りかかるマリアンに対し、驚く孝雄実を他所にあっと言う間に敵兵の数を減らして行く。思った以上に相手の数が多かったが予想外の事態に直面した彼等は彼女の相手にはならなかった。
圧倒的優位は崩壊し、彼女の大逆転劇が幕を開けたのだった。
二人が来た方角からは複数の足音と鎧の擦れる金属音が近付き、地下空間の為音が響き渡り思っている以上に恐怖心を煽る物だった。それも次第に大きくなり、音から敵兵の数をある程度把握するマリアンは危険を感じる。通路は一本道に加え身を隠す場所すらなく、言い換えると袋の鼠だった。
「慎重に進め! 敵は逃れる事は出来ない!!」
「おうっ!!」
指揮官と思われる男の声が二人にも届く。それに応える兵士の威勢の良い声が二人を窮地に陥らせる。この様な事態に直面する事が初めての孝雄実は脚に力が入らず、マリアンに不安な瞳で見る事しか出来なかった。
「孝雄実、生き残りたければ戦うしかない」
「で、でも……」
「でもじゃない。いいか、ここで捕まれば死よりも恐ろしい出来事が待っている」
マリアンは怯える孝雄実をしっかり見つめ語り掛ける。尤も、恐ろしい出来事は男の孝雄実よりも彼女なのだが、敢えてそこは省き、分り易い言葉で分らせる選択を行う。
「ここで戦ってマルベールに戻る。今はそれだけを考えろ」
「あ、ああ……」
何とか動ける程度に正気を取り戻させたが、根本的な問題が在った。この狭い空間で戦う為には剣などの近接武器が求められるが、孝雄実はそれを一切所持していない事だ。この様な事態を想定していない事から彼女も武器は義姉サラを守る為の剣一本のみと非常に心許無い。
それでもマリアンはやらなければならないと決意を新たにし、生きて再びサラと会う事を希望としたのだ。
「降伏しろ! 僅か二人でこの状況を切り抜ける事は出来ない!! 今なら適切な待遇を約束する!!」
窮地に於いてこの言葉はとても甘美に聞こえる孝雄実だった。それを示す様にマリアンに視線を向けどうするのか尋ねるが、彼女はそれを言葉なく首を横に振るだけに留める。このような場合、適切な待遇こそ問題が在り、それを知らない彼は彼の基準で物事を考えてしまった。日本には基本的人権の尊重などという言葉が在り、刑務所に入っている者にも人らしい生活が保障されている。孝雄実はそれを考えてしまった。
「わかった。ではお前らの命は保証しない。覚悟しろ!!」
その瞬間、敵の足音が駆け足に変わった。マリアンは鞘から剣を抜き、真正面の敵に対峙する。幸いな事に後ろの部隊は迫っておらず、当面戦う相手は真正面の部隊と決まる。
「孝雄実は私の後ろに居ろ。前に出るなよ」
「わかってる!!」
それでも孝雄実は近くに転がっている小石を手に持ちマリアンを援護する気持ちが在った。何もせずに居るよりも戦う気持ちだけでも行動に表した事に対し彼女は笑みを浮かべる。
「居たぞ!! 掛かれー!!」
先頭を駆ける敵兵は大声を上げると真っ先に斬りかかる。マリアンも彼を最初のターゲットと決めると丁度良い塩梅の力加減で剣を振り抜いた。敵兵は彼女の一刀の下綺麗に斬られると、その光景に兵士は足を止める。この剣はサラを護る為の物で、特殊な金属を用いて造られている事から軽い力でも滑らかな切れ味が持ち味と為っている。
一兵士との戦闘では彼女の相手にもならなかった。そしてこれこそ彼女が求めた状況だった。数の優位と勢いに任せた戦闘では万が一にも勝機は無いからだ。どんなに力量が勝ろうと腕は二本しかなく、隙が生じる。結局は数の多さで負けると分っていた為、初撃で相手の度肝を抜き動揺させる戦い方を選んだのだった。
「はっ! はぁっ!!」
彼女は好機を逃さず、あらん限りの力と素早さで敵を葬り去っていく。それが相手の動揺に拍車を掛けるが、この様なボーナスタイムが長続きするはずがない。
「狼狽えるな! 相手は一人!! 落ち着いて対処すれば早々に倒せる!!」
この一言で敵兵は冷静さを取り戻し、体が動き始めると彼女の剣にも対応する者が現れ始める。どんな凄腕の者でも剣の腕前を披露すれば、まだ戦っていない者も目で見て頭でイメージしてしまい、身体能力に長ける者が防いでしまう。それが出来ると不思議と他の兵士も対応し始め、一進一退の攻防へと場面は変わる。
「くそっ……」
彼女はあの一言が誤算だと考える。
「いいぞ、その調子で攻めるんだ!!」
「おうっ!!」
最後方から部下を励ます声が轟くとますます敵兵の士気が盛り上がる。その反面マリアンは焦りが色濃く出始める。見える範囲に大勢の敵兵が居る為、現状の体力からかなり厳しいと予想した。敵兵は隊列を組み、四人で一斉に襲い掛かる。一人がやられれば後ろの兵士が穴を埋め、二人やられればさらに穴を埋める。体力と集中力の差は拡がるばかりで、時間が経つほど孝雄実とマリアンは追い込まれるようになる。
その光景を守られるばかりの孝雄実は忸怩たる思いだった。小石を持ってはいるが、何も出来ない状況に悔しさが滲んでいる。狭い空間で動きが速すぎ、正確な狙いが付けられず投げる機会を掴めなかった。
「くそ、何とか投げられる状況が得られれば……」
こうする間にもマリアンの体力は敵兵の命を代償に削られ、結果として押され始めていた。
「相手は疲れ始めている! あと一歩だ!!」
「おうっ!!」
敵の指揮官は非常に状況を窺う才能に長けていた。兵士の気持ちを的確に盛り上がり、戦況圧倒的有利ともなれば逸る者も現れるが最高の場面での言葉からそれをさせなかった。
「孝雄実! 何でも良いから援護してくれ!!」
とうとう一人では厳しいと悟ったマリアンは孝雄実に援護を求めた。しかし、素早く動く戦いの中で落ち着いて狙いを定める事が出来ず、手に持つ小石が悲しく握られていた。
「何でも良いって、狙いが付けられないんだ!!」
「それでも構わない! 良いから投げろ!!」
「そうは言っても……」
戦闘などまずあり得ない世界で生きて来た孝雄実にとって臨機応変という言葉は厳しい物だった。
「殺すなど考えるな! ただ動きを止めるだけで良い!!」
「っ!?」
その言葉に孝雄実の中で電気が走る。
今までは投げ親しんだ投球フォームから全力で投げて相手を倒す事を考えて来た。マリアンの述べる動きを止めるという考えがごっそりと抜け落ちていたのだ。相手の行動を止める事が出来れば、最大四人同時が限度の空間で一人の動きを止めれば今の彼女ならまだ十分に息の根を止められると考えたのだ。
「そうか…… 分った!」
孝雄実は左に幾つかの小石を持ち、右手に一つの小石を持つと右足を後ろに引き、若干体重を乗せる。野球に於いて投手はボールを投げ終えると、捕手を除けば最もバッターに近い守備位置に変化する。守備機会を得た際、彼は投球時とは異なりサイドスロー気味に投げ、クイックスローでアウトを狙う。速さと威力は劣るが、この方がコントロールは良く自らの中で型にはまった安定感を覚えていた。
「行くぜっ!!」
一呼吸置いたのち、孝雄実は大きく息を吐き出すと脳裏に敵兵の残像を残し小石を投げ始める。
「ギャッ!?」
「グエッ……」
最初に当たった兵士は右腕に当たり、石の勢いで体が仰け反る。二投目の相手は当たり所が悪くそのまま絶命する。この光景にあと一歩で勝利と高を括っていた彼等は浮足立つ。
「よくやった!!」
マリアンにとっては降って湧いた好機に力を込めて剣を振るい、生き残った者も含め三人纏めて斬り伏せた。そして、孝雄実もこの機会を逃す事は無かった。信じられない状況に直面した敵兵士は動きを止め、孝雄実は的と見なして連続して小石を投げ続ける。狙いは多少ずれたが、概ね敵兵士の動きを止め怪我を負わせることに成功する。ある程度敵兵を仕留めた事でマリアンが孝雄実に礼を述べ相手に向かって吶喊を行う。
「助かった!」
「お、おい!?」
突然相手に向かって飛び込み斬りかかるマリアンに対し、驚く孝雄実を他所にあっと言う間に敵兵の数を減らして行く。思った以上に相手の数が多かったが予想外の事態に直面した彼等は彼女の相手にはならなかった。
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