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第 四章 家庭教師な日々と初めての錬金術。
第 53話 家庭教師10・11日目。
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今日で家庭教師を始めて十日目になる。相変わらず防御の練習が続いているが、七日目辺りから動きの無駄も大分減り、その分訓練時間が長くなってきている。もし今日で二時間もったら、次のステップに進めよう。
「是非とも今日は二時間もってもらいたいな。まずは柔軟から始めよう。」
「はい、コーチ。あとご報告ですが、身体強化の魔法を覚えましたわ。」
「よし、良くやった。大会前に身体強化を掛けた状態での最終訓練をするまで訓練中は使うなよ。」
「了解です、コーチ。」
柔軟体操を終え、準備が整うといつもの様に円を描き、真ん中に立って貰う。
「大分慣れて来たので、もう少しスピードを上げる。早くなったからと言って、慌てない様に。相手の攻撃を良く観察して最小限の動きで避けること。では始めるぞ。」
お嬢様の前後左右から攻撃を仕掛ける。始めはゆっくりと五分過ぎからスピードアップしていく。
そしていつもの訓練で使うスピードからもう一つ上のスピードにあげた。
お嬢様はさすがにギリギリなのか、回避に余裕がなくなってきた。それでも以前の様に慌てて急に乱れることはなくなった。三十分、一時間と続きいまだ足下をフラつかせず避けている。
一時間半、さすがに体がぶれ始めてきたが、目はまだまだ気力が満ちている。
あと、三十分頑張れと思いながら、スピードを落とすことなく、攻撃を四方八方から加える。
「残り五分気力を振り絞れ。」
「はい。」
ラスト五分。よろめきながらも、攻撃を捌いていく。
ついに二時間攻撃を捌ききった。
「よし、時間だ。ここまで。」
終了の言葉と共にペタンと座り込む、セイラお嬢様。訓練当初に比べれば、かなり持久力もつき回避の動きも洗練されてきた。これで第二段階に進めるな。
「よく、十日でここまで来た。当初の予定では二週間かかる予定だったが、お嬢様の頑張りで十日でこれた。明日からは更にもう一段階パワーアップした訓練を始める。二週間かけてそれを克服してもらう。勿論短時間になる分には問題ないので頑張れ。そして、最後の一週間で攻撃を含めた仕上げをする。これが今後の予定だ。ともあれ、今日はゆっくりと体を休める様にな。では解散。」
「有り難うございました。」
予定よりも早く第一段階をクリアしてきたな。この調子でいければいいのだが、無理はさせないが負荷はかかるようにしていこう。
翌日、昼過ぎ。
「さて、今日からまた一段階あげた訓練を行う。両手足にこれをまくように。」
インベントリィから鉛の板を四枚取り出す。
セイラお嬢様に渡して、早速着けさせた。
「思ったよりも、重くないですわね。」
手足を動かしながら、そう嘯くセイラお嬢様。
「そんな事言ってられるのも初めの内だ。先に言っておくぞ。先の十日間よりもキツイってな。さ、始めるぞ。」
いつもは直径三メートルだが、今日からは二メートルの円で攻撃を避けなくてはいけない。より速く攻撃を見極め、より速く回避する必要性がある。
「さあ、行くぞ!」
「お願いしますわ。」
流石に三十分は平気な様子だったが、三十分過ぎから追加した重りがジワジワ効いてくたようで、まずは腕の動きが鈍くなり始める。
一時間過ぎた辺りから、ガクンと足の動きが鈍くなり、避けかたの動作が大きくなり、二メートルの円から踏み出してしまう。
「どうした?円から出るな。動きに無駄が多いからだぞ。この位の重りなんか大したことないんだろ。」
一時間半になると足が動かなくなり、剣で受け流そうとしだしたので、〈技・強打〉で体ごと吹き飛ばす。
「ほら、すぐ立て。強くなるんだろ。倒れていたら強くはなれんぞ。」
ヨロヨロと立ち上がり、円の中に立つ。息は既に上がり、足をもたつかせながも攻撃を避け続ける。
開始二時間経った。セイラお嬢様は立っているのが精一杯の様で、終わりの掛け声と共に崩れ落ちる。
メイドが駆け寄り、人を呼んでお嬢様を連れ出していく。
帰ろうとすると、侯爵様が呼んでいるとセバスさんが伝えてくる。応接室に案内されていくと、侯爵様は先に椅子に座り待っていた。
「椅子に座ってくれたまえ。」
椅子に腰掛けて、侯爵様を見る。
「今まで、君の指導内容について一切干渉してこなかったが、家の者からかなり厳し過ぎるのではないかと私に言ってきたのだよ。」
「ほう、あのメイド辺りかな?」
「いや、誰とは言わないが、そこの所はどうなのだね?」
「侯爵様、そもそも弱い者が強くなりたいと思った時、何の無理もせずに強く成れますか?ましてや、お嬢様は女性です。力では魔物は勿論、男にも敵いません。
まともに剣で打ち合えば五回も打ち合わすことも出来ないでしょう。彼女は力では対抗出来ないのですよ。
なら、何をもって、対抗するべきか。あと、残るはスピードと技しか無いのです。だが技を高めるには一つの技でそれこそ長い時間がかかるのです。それこそ年単位の。であれば残るのはスピードしかないのですよ。ある一定時間動き続けてもへばらない体力。相手の攻撃を受け止めるのではなく、全てを回避し、打ち合うことなく、相手を攻撃する。
お嬢様は強くなりたいと言われました。だから必要な訓練をしているのです。本人が納得しているものを、まわりが邪魔することは止めて頂きたい。止めさせたいなら、まず本人の了解を取ってください。」
そう、言い切ると侯爵様は切ない顔をして諦めた顔をした。
「そうだね。君の言うとおりだな。本人がやめたがっているわけでないのに、周りがとやかく言うのは確かにおかしな話だね。
判ったよ。残り二十日間、宜しく頼むよ。」
納得したのか、侯爵様はそれ以上は言わなかった。
さて、明日からはお嬢様の体調を見ながら負荷をかけますかね。
「是非とも今日は二時間もってもらいたいな。まずは柔軟から始めよう。」
「はい、コーチ。あとご報告ですが、身体強化の魔法を覚えましたわ。」
「よし、良くやった。大会前に身体強化を掛けた状態での最終訓練をするまで訓練中は使うなよ。」
「了解です、コーチ。」
柔軟体操を終え、準備が整うといつもの様に円を描き、真ん中に立って貰う。
「大分慣れて来たので、もう少しスピードを上げる。早くなったからと言って、慌てない様に。相手の攻撃を良く観察して最小限の動きで避けること。では始めるぞ。」
お嬢様の前後左右から攻撃を仕掛ける。始めはゆっくりと五分過ぎからスピードアップしていく。
そしていつもの訓練で使うスピードからもう一つ上のスピードにあげた。
お嬢様はさすがにギリギリなのか、回避に余裕がなくなってきた。それでも以前の様に慌てて急に乱れることはなくなった。三十分、一時間と続きいまだ足下をフラつかせず避けている。
一時間半、さすがに体がぶれ始めてきたが、目はまだまだ気力が満ちている。
あと、三十分頑張れと思いながら、スピードを落とすことなく、攻撃を四方八方から加える。
「残り五分気力を振り絞れ。」
「はい。」
ラスト五分。よろめきながらも、攻撃を捌いていく。
ついに二時間攻撃を捌ききった。
「よし、時間だ。ここまで。」
終了の言葉と共にペタンと座り込む、セイラお嬢様。訓練当初に比べれば、かなり持久力もつき回避の動きも洗練されてきた。これで第二段階に進めるな。
「よく、十日でここまで来た。当初の予定では二週間かかる予定だったが、お嬢様の頑張りで十日でこれた。明日からは更にもう一段階パワーアップした訓練を始める。二週間かけてそれを克服してもらう。勿論短時間になる分には問題ないので頑張れ。そして、最後の一週間で攻撃を含めた仕上げをする。これが今後の予定だ。ともあれ、今日はゆっくりと体を休める様にな。では解散。」
「有り難うございました。」
予定よりも早く第一段階をクリアしてきたな。この調子でいければいいのだが、無理はさせないが負荷はかかるようにしていこう。
翌日、昼過ぎ。
「さて、今日からまた一段階あげた訓練を行う。両手足にこれをまくように。」
インベントリィから鉛の板を四枚取り出す。
セイラお嬢様に渡して、早速着けさせた。
「思ったよりも、重くないですわね。」
手足を動かしながら、そう嘯くセイラお嬢様。
「そんな事言ってられるのも初めの内だ。先に言っておくぞ。先の十日間よりもキツイってな。さ、始めるぞ。」
いつもは直径三メートルだが、今日からは二メートルの円で攻撃を避けなくてはいけない。より速く攻撃を見極め、より速く回避する必要性がある。
「さあ、行くぞ!」
「お願いしますわ。」
流石に三十分は平気な様子だったが、三十分過ぎから追加した重りがジワジワ効いてくたようで、まずは腕の動きが鈍くなり始める。
一時間過ぎた辺りから、ガクンと足の動きが鈍くなり、避けかたの動作が大きくなり、二メートルの円から踏み出してしまう。
「どうした?円から出るな。動きに無駄が多いからだぞ。この位の重りなんか大したことないんだろ。」
一時間半になると足が動かなくなり、剣で受け流そうとしだしたので、〈技・強打〉で体ごと吹き飛ばす。
「ほら、すぐ立て。強くなるんだろ。倒れていたら強くはなれんぞ。」
ヨロヨロと立ち上がり、円の中に立つ。息は既に上がり、足をもたつかせながも攻撃を避け続ける。
開始二時間経った。セイラお嬢様は立っているのが精一杯の様で、終わりの掛け声と共に崩れ落ちる。
メイドが駆け寄り、人を呼んでお嬢様を連れ出していく。
帰ろうとすると、侯爵様が呼んでいるとセバスさんが伝えてくる。応接室に案内されていくと、侯爵様は先に椅子に座り待っていた。
「椅子に座ってくれたまえ。」
椅子に腰掛けて、侯爵様を見る。
「今まで、君の指導内容について一切干渉してこなかったが、家の者からかなり厳し過ぎるのではないかと私に言ってきたのだよ。」
「ほう、あのメイド辺りかな?」
「いや、誰とは言わないが、そこの所はどうなのだね?」
「侯爵様、そもそも弱い者が強くなりたいと思った時、何の無理もせずに強く成れますか?ましてや、お嬢様は女性です。力では魔物は勿論、男にも敵いません。
まともに剣で打ち合えば五回も打ち合わすことも出来ないでしょう。彼女は力では対抗出来ないのですよ。
なら、何をもって、対抗するべきか。あと、残るはスピードと技しか無いのです。だが技を高めるには一つの技でそれこそ長い時間がかかるのです。それこそ年単位の。であれば残るのはスピードしかないのですよ。ある一定時間動き続けてもへばらない体力。相手の攻撃を受け止めるのではなく、全てを回避し、打ち合うことなく、相手を攻撃する。
お嬢様は強くなりたいと言われました。だから必要な訓練をしているのです。本人が納得しているものを、まわりが邪魔することは止めて頂きたい。止めさせたいなら、まず本人の了解を取ってください。」
そう、言い切ると侯爵様は切ない顔をして諦めた顔をした。
「そうだね。君の言うとおりだな。本人がやめたがっているわけでないのに、周りがとやかく言うのは確かにおかしな話だね。
判ったよ。残り二十日間、宜しく頼むよ。」
納得したのか、侯爵様はそれ以上は言わなかった。
さて、明日からはお嬢様の体調を見ながら負荷をかけますかね。
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