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第 八章 領主就任と町の掃除。

第126話 貴族として武人として。

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    「引き継ぎがあるそうなので、一週間後にツールに到着するようにさせる。」
「承知しました。手続き連絡をお願いします。」
「うむ、わかった。それとな伯爵に頼みが有るのだが。」

    (はて、宰相閣下からの頼みとは何かな?)

    「実はな、お主に指揮権を任せる予定の国軍の隊長達が、いくら貴族であっても、十五の子供に指揮されるのは、承服出来ない。我々を指揮できるだけの力を見せて欲しいと言っているのだよ。何とか対処してもらえないか?」
「はあ?それって、そいつらと戦って勝てばいいのですか?」
「うむ、恐らくな。多分この前のクロイセン帝国との戦いには出動しなかった部隊なのでな、戦いの話をを聞いて、貴族だからかなり話が盛られているのだと勘違いしているか、そなたを倒して名前を売りたいかのどちらかだろう。対処してくれるなら、更に二人の人材を用意するがどうじゃ?」
「まあ、色々納得出来ない所もありますが、人材を更に頂けるのなら悪くない。良いでしょう。対処しますよ。明日午前九時頃に練兵場に行きますので、すぐに始められるようにしておいてください。」
「うむ、わかった。伝えておこう。あと一つ、伯爵の騎士団に入りたいといってくる、貴族の子弟が多くてな。一度入団試験をしてもらえないか?」
「はあ?なぜ、宰相閣下にその様話が回っているのですか?」
「それはな。お主、公式に騎士団の募集しておらぬだろう。いまいる騎士も、たしかレナード卿が直接声をかけて集めた者達だな。お主の戦いでの活躍を聞いて、お主の騎士になりたいと思った貴族の子弟達が多いのだ。まあ、何処まで本音なのかは、分からんがな。試験させて、不適格となればある程度納得するだろう。騎士団の人数を増やすことも出来るから、どうじゃ入団試験やってみないか。」
「うーん。一度家に持ち帰って、レナードらと話してみます。明日また来たおりに、お返事します。」
「わかった。よく考えてみてくれ。」

(なんか、煩わしいことが多いな。マトモな奴が揃っていることを願うよ。)

    「では、明日改めて登城します。また、こちらに顔を出せば良いでしょうか?」
「いや、そうだな。では明日の午前九時に練兵場に直接きてくれ。その時間は大丈夫か?」
「わかりました。練兵場に伺います。では、失礼します。」

    城の裏にある庭に出て、周囲の人気の無いのを確認してから、〈リターン〉の魔法でツールの屋敷の執務室に戻った。その足で、代官屋敷に向かった。


    町の行政を行っている部屋にノックしてから入り、執政官代理のアルトリンゲンを呼び出し、連れだって元代官の執務室に入る。



    「忙しい所済まないね。新しい執政官の件なんだが、二週間程後に赴任してくる事となった。まだ暫くは今の体制で頼むよ。そして、新しい執政官が来たら、行政の組織も大きく三つに改編したいと思っている。一つは民政部、そして現在の民政部が担当する。財政部これは執政官が当面兼任する。最後に司法警察部の三つだ。今は政治部の下で一緒になっているが、それがアシリーのような犯罪を招いたと私は思っている。よって、明確に職責を分けて責任の所在を明確化することにする。執政官はその三部所を統括してもらうことになるな。極端なことを言うと、私がいなくても滞ることがない体制にしたい。アルトリンゲン君には民政の部署を任せるつもりなのでそのつもりでいること。」
「はっ。評価頂き有りがたく思います。」
「うむ。財政と治安関係以外は民政が統括するから、民政部の中の組織の形を考えてくれ。」
「わかりました。大任ですがお任せ下さい。」
「うん、頼んだよ。新しい執政官が来る二週間後までに概略でも良いから、考えておくこと。頼むよ。」
「はい。承知しました。」

アルトリンゲン君との話が終わると、昨日頼んだ給料の資料を貰い、昼飯のため一旦屋敷に戻った。

    「お帰りなさいませ、旦那様。」

玄関に入った所でガトーが迎えてくれた。

「サウルは?」
「サウル様は、商会用の店舗物件の確認の為、商業ギルドに行っております。」
「そうか、午後に教会と冒険者ギルドに顔を出したいから、馬車の用意を頼むよ。」
「昼食後でございますね?」
「そう、頼むね。」
「承知しました。」
「食事までは、居間にいるから、時間になったら呼んでくれ。」

用件を言って、居間に移動する。

    いまだに、安物のソファーが置かれている居間ではあるが、それでも日当たりが良い場所であるため、くつろぐには良い場所なのだ。早めに家具を揃えておこう。王女や公爵令嬢が使うには、みすぼらしいからな。代官屋敷の方がよっぽど良い物を使っているよ。
愚痴りながら、ソファーにすわる。

    町政の緊急課題は、国軍一万の受け入れについて、これは宰相からあった話の件もあるので急ぎではあるが、その為にはツールの町の南から西にかけて町の防壁を拡張しないといけない。二万の町に一万の人口が急に増えるのだから、トラブルが起こるのは前提で対策しないといけないな。
    その為にも、司法警察を設立して治安維持を強化しておかなくてはならない。
また、食糧増産と街道の整備や騎士団や国軍による街道の警備や盗賊や海賊対策もまた、町並みの整備も考えないとね。拡張した土地に公営の住宅や団地をたてて、今のスラムを減らしていかなくてはいけないしね。
その為には、新しい産業を興して就業率を上げなくてはいけない。
はあ、冒険者の頃が楽だったぜ。

    (神様、運が良いのか、そうでないのか、最近わからなくなってきました。)

(まあ、悪くはないと思うぞい。)

    うん?何か聞こえたような?


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