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第 十章 拡大する町。始動する商会。

第153話 壁を造ろう。

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    朝飯の後に、助け出した女性の再就職先を決め、一旦寝室へ戻り冒険者スタイルに着替える。この後は、土木工事に出かけないと。

    近々大工さん達が国軍の兵舎を建てる為やって来るので、町の周囲を囲んでいる防壁を各方向に二キロずつ拡張する。手順としては、まず、新しい 防壁を造り、次に古い防壁を壊す。あと、北、西、南側の書く街道を拡張する。簡単に言うとこんな感じだ。さあ、行こうか。


    今、私は町の西の街道を二キロ程進んだ所に来ている。色々考えた末にどうやれば、効率良く出来るか思い付いた。

「〈マップ表示・オン〉。〈サーチ・町の外壁から二キロの場所〉表示白。」

目に映る地図の上に白い線が町を囲う。そして実際の平原に薄く白く輝くラインが南北に伸びているのが見える。

(よーし、ここまでは思った通り。サブの職業を錬金術士にしてと、メインを魔術士にしてと。)

「〈マルチロック〉〈アースウォール〉!」

ズゴゴゴ!と地鳴りがしたかと思うと、目の前の地面が凹んで空堀の様になり、その向こうに白い線の上に沿って厚さ三メートル高さが十メートルの土の壁が盛り上がっていき私のイメージした形になっていく。

〈アースウォール〉にはいつもの二倍の魔力を込めた為か高さが十メートル程になった。コレだけの魔法を使ったのに、消費した魔力は、たった二十ほどだった。スキル〈魔力消費半減〉と〈マルチロック〉の効果だね。

(ピロ~ン♪『魔導の極み』により、『職業・魔術士』、『職業・錬金術士』が上がりました。〈土属性魔法〉が上がりました。新しい魔法を覚えました。)

「ハハハ。」

今更ながら乾いた笑いを出すのを止められないな。
ただ、この壁は今はあくまでも土の壁なので、まだ脆い。そこで

「〈マルチロック〉〈整形〉。」

    再びゴゴゴと大きな音がすると、土の壁が形を整えて石積の壁のような模様になっていく。

   (ピロ~ン♪『魔導の極み』により、『職業・魔術士』、『職業・錬金術士』が上がりました。)

    そこに更に硬くする為に魔法をかける。

「〈マルチロック〉〈硬化〉。」

壁が締まっていき、積んでないのに石積の壁のように変化する。

(ピロ~ン♪『魔導の極み』により、『職業・魔術士』、『職業・錬金術士』が上がりました。)

    最近覚えたばかりの錬金術魔法を組み合わせると土の壁が締まって一枚岩の様になった。
このままでは街道も壁で塞がれているので通れない状態だ。そこで全力疾走して町の北側の道まで行き、道幅の分だけ壁を壊す。門を取り付けられる様に整形してから西の街道に戻る。北口と同じ様に壁を一部壊して門を設置出来ように整形する。作業をしている中で何度かチャイムが鳴っていく。

    たまに街道を旅人が通るが、皆足を止めて目を見開いて見ていった。西口も終わると、南の街道に移動する。コレだけの走っても息が上がらないとは、我が体ながら、なんてチートなんだと驚いてしまうな。
    南口も他二ヶ所と同様に門が設置出来るようにしておく。

    次に町から延びる道を幅十五メートル程に拡げて馬車二台が余裕を持って擦れ違えるようにしたい。
ステータスを開いて、クラスを錬金術士かろ精霊士にかえる。
「〈召喚・土の精霊さん〉。」

目の前にパイプを持った小柄なお爺さんが現れた。

(ほう、お主人間なのに我らが見えるとは珍しいのう。ワシは〈レプラコーン〉じゃ。何用かのう?)

「この道の幅を十五メートルに拡げて町までの二キロを道の真ん中を少し高くしてしてほしい。こんなイメージで。」

(ほほう、そうすると、魔力がざっと八百必要だぞ。やるのかい?)

「お願いします。やっちゃって。」

(よかろう、ホホイッ!)

体から魔力がガリガリ減っていく。

(くうー、あと残りの魔力は四千ほどか。何とか道までは作れるかな。)

    再び職業を精霊士から錬金術士に変える。

「〈マルチロック〉〈硬化〉。」

道が一瞬光ると土の道がまるで石畳を敷いた道のような変わった。同じ事を西口と北口で行い、門をそれぞれに取り付けていって今日の工事は終わった。

    残りの魔力が三百程しかなく、頭がフラフラしてきたので屋敷に〈リターン〉で戻り、執務机の椅子に座り込み、スキルの〈瞑想〉を発動して、目を閉じて回復に努めていた。

    扉が開く音がしたが、目を開けるのが億劫なので、そのままでいると、扉から入ってきた人物が話し出した。

    「相変わらず、無茶をしているのね。精霊達が話していたわよ。人間が精霊を使って、道を作っているとね。私に手伝えることなら、遠慮なく言いなさい。精霊魔法については貴方よりも私の方が上なのだから。」

    声の主はアイリスだったようだ。どうやら精霊から俺のことを聞いて、心配して来てくれたようだ。

「ありがとう、アイリス。そうだね、今度は手伝って貰うよ。どうやら、私は気負っていたようだな。」
「そうよ、皆貴方の力になりたいと思っているわ。でも、貴方は何でも自分でやろうとする。出来るからやるのは分かるけど、貴方はもっと人を使うことを覚えなさい。でないと、いつか潰れてしまうわよ。」
「ああ、そうだね。私の悪い癖だな。気を付けよう。」
「もう少ししたら、夕ご飯だから、それまで休んでいなさいね。」

それだけ言うと、アイリスは出ていった。

    さすが、俺よりも長く生きているお姉さんだ。見た目は十歳だが、しっかりしているぜ。言われた通り、夕飯まで今日は瞑想を続けよう。

「あ、ショウ兄ちゃんがいた!」

    また、扉が開いたようだが、今度はアルメイダのようだ。目を瞑っている所にいきなり、膝の上に飛び乗ってきた。勿論シェイプチェンジして子供の虎の姿の様だが。

「こら、行儀が悪いぞ。」
「構わないのにゃ。夕飯までここで一緒にいるのにゃ。」

相変わらずフリーダムな事を言うと、膝の上で丸くなる。いつものように喉を掻いてやると、ゴロゴロ言い出した。

(あー癒されるなぁ。)

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    お気に入り五百達成!!
拙作の駄文をお気に入りしていただき、誠にありがとうございます。これを励みに、今後も活動していきます。              著者(拝)



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