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第十四章 イーストン解放編

第265話 さて、帝都に着いたがどうするかな。

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    関所を抜けて二日後。

    目の前の彼方には、帝国帝都クロイツェルの高い城壁が見える。今朝は馬を連れてこなかった。城門を抜けるにも、人質を解放するにも、邪魔になるからだ。

    十一の月の一週間目の今朝、やっと帝都に到着する。さすがに帝都だけあり、人の出入りはそれなりに多いや。
街道の様子を考えると、冒険者の護衛の仕事が多いようだな。一旦、道の脇にそれて二人と相談を始める。

    「レナードとイチモンジ殿。物は相談だが、城門をどうやって抜けるかなんだが、どうする?普通にギルド証で通過するか。それとも関所を通った時のように、見えなくなる魔法を使うか。どっちにする?」
「イチモンジ殿、どうしたものかな?」
「レナード殿。出来るだけ、我々が帝都に潜入した痕跡は残さない方が良いので、関所のとき同様で参りましょう。伯爵様、お願いできますか?」
「それは構わないよ。あと人質が幽閉されている場所は分かっているの?」
「おおよその所は判っているのですが、正確な場所は判りません。済みません。」
「帝都に入ったら、今日の早い内にツールに連れ出す?それとも、夜まで待つかい?」
「安全を考えると、ここはやはり夜に決行した方が良いかと。」
「分かった。中に入ったら、昼間はどこかでブラついて時間を潰して、夜潜入しようか。詳しい幽閉先は仕方ない私の方で調べるよ。それでいいかな?」
「お願いします。」
「了解です閣下。」

    周囲を見て、人の目が無いのを確認すると、呪文を詠唱する。

「〈マルチロック〉〈テレホン〉。」

(私の言葉が伝わっているかな?)
「なに?」
「ええっ?」

驚きに、声をあげる二人に慌てて叱る。

    (こら、静かに!声をあげるな。これは念話の魔法だ。喋らずとも、頭の中で呟けば伝わる。二人とも練習だ。)

    そう二人に伝えると、初め怖々と頭の中で話し出す。
要領を得て、念話になれたころを見計らって一声かけてから姿が消える魔法をつかう。

「〈マルチロック〉〈スルーサイト〉。」

    (魔法はかけたよ。城門を抜けるぞ。声は絶対出すなよ。)
(承知しました。)
(了解です。)

    貴族専用の出入口に都合よく馬車と騎馬の群が扉が開くのを待っている。

    (この、貴族の列の後ろについて中に入るぞ。入ったらすぐ近くの建物の脇道にそれて、魔法を解くから。そのまま着いて行かない様にね。)
(承知。)
(了解です。)

    何故か、声を発しないと、皆言葉数が少なくなる様で面白かったが、笑い声を立てないように我慢する。
貴族の専用の門だけあり、衛兵は頭を下げて、ノーチェックだったので、助かる。

    途中で脇に外れると、建物の影に隠れる。周囲を見回して近くに誰もいないことを確認してから、魔法を消す。
「〈マルチロック〉〈マジックブレイク〉。」

    その途端に姿が現れて、無事に通り抜けられたことに、安堵のため息をはいた。

    「ふぅ、さて何とか入ったが、この後どうする?もう一時間もすると、昼時になるが、少し早いがメシにするか?一旦ツールに戻るか。どうする?」
「そうですね。地理を良く知らないで、ブラ付くのは、色々と危険かと思いますので、転移する場所を確保したら、一旦戻りましょう。食事はゆっくりと食べたいですから。」
「分かった。そうしようか。〈マップ表示・オン〉。」

帝都のマップを表示させて、街全体を更新して表示させて、人目につかない場所を探す。

「うーん、さすがに人が多い為か、良さげな場所がないな。」
「でしたら、宿屋を一泊借りて、その部屋から移動しては?」
「そうするか。〈サーチ・安全な宿屋〉。」

四つの光点が現れる。一軒一軒〈鑑定〉をして、宿の情報を集める。

    この中で、安全で良心的な『森の樵亭』という、宿を選ぶ。二人を引き連れて、その宿の場所に向かった。

    「ここがくだんの宿屋か。二人とも、用意は良いな。」
同時に頷くと私の後に続く。

    「いらっしゃい。お泊まりですか、お食事ですか?」
「一泊頼む。食事はいい。」
「ですと、三人部屋で一泊銀貨十五枚になります。宜しいですか?」
「ああ、それで頼むよ。」

宿屋の主人に銀貨十五枚を渡して、部屋の鍵を貰う。

    「部屋は三階の手前です。」
「わかった。宜しく頼む。」
そのまま、鍵を持って三階へ上っていく。

    鍵で開けて中に入ると、三人部屋にしては、やや狭い部屋だった。銀貨十五枚は高いなと感じた。
内側から鍵を懸けて勝手に入って来られないようにしてから、二人と向き合う。

    「さて、転移用の拠点も用意したし、後は夜になるのを待つだけだな。」
「今更ながら、伯爵様の魔法のお力に、唯驚くばかりです。」
「まあ、敵を倒すだけが魔法ではないからね。
さて、この後の予定だが、一旦ツールに戻り夕方前にここに戻ってくる。幽閉先には、悪いが私とイチモンジ殿の二人でいく。初対面の私では、相手が信用しない場合もあるので、説得役をイチモンジ殿に頼む。レナードは済まないが、潜入は外してくれ。いいね?」
「閣下をお一人には・・・。」
「いや、逆に人数が増えるほど、潜入に失敗する可能性が高まるから、悪いが私達二人に任せてくれ。いいね?」
「そう言う理由なら仕方ありません。但し、呉々もお気を付け下さい。」
「ああ、任しておけ。では、一旦ツールに戻るか。集まってくれ。行くぞ〈テレポート〉。」

    こうして、夜までの間をツールに戻るのだった。




    

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