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第十八章 帝国大乱。

第379話 たまにはマッタリとしたかったのに。

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    午前中に、神刀流の技稽古を済まし、昼食の寸前に屋敷に戻った。各種スキルが上がっていた事もあり、使えなかった技も使える様になっていた。まぁ、最高難度の〈麒麟陣〉は、まだまだ駄目だが。

    一旦自室に戻り、部屋着に着替えた後に一息つくと、タイミング良くサウルが昼食の用意が整ったと言ってくる。
この後には、役所とその後に教会に顔を出して、詳しく話を聞かないといけないな。このまま放っておくとまた、スラム化しても困るからな。
多分明日には、『仮面の神官』が現れる必要があるだろうな。

    しかし、帝国からの流民か。良く帝国領内で捕まらなかった物だ。帝国では獣人族は、ヒト扱いされないらしいし、捕まると奴隷にされてしまう。村単位で捕まると何十人も捕まえる事が出来るわけだ。
獣人族は女であっても戦闘力は高い為、兵士としては数が揃え易いのだろうね。
始祖王の時代、仲間に獣人がいたそうだ。その為、彼は建国の後にその協力した獣人の部族に対して、かなり高い自治権を与えたそうだ。
ルーナやライガから教えて貰った事がある。他にエルフやドワーフといった精霊種も同じだ。
だから王国には多種族が共存している訳だ。

    始祖王が私が思っているように日本人であるなら他種族に対して、無用な偏見は無いであろう。

何てことを思いながら、昼食の山鳥のトマトソース煮込みを平らげていく。
皆もひたすらに静かに食べている。アルメイダはお代わりしているな。こうして、無事に昼食を済ませると、いつもの様に挨拶を済ませた。

「頂きました(にゃ)。」

さて、腹も満た所で、お仕事をしましょうかね。

(本当、貧乏隙なしだよ。)


暫くぶりに役場に来た。
街が大きくなっている為か、活気が益々以前よりあるようだ。役場に活気があるとは、変な表現だが、まるで、一昔前の築地市場の様に中の人々はそれぞれが自分の仕事で忙しく動き回っているからだ。

    三階にある行政長官の執務室に向かう。そこは以前とは異なり、三名のスタッフと言うか秘書が長官のハザル卿の手伝いをしていた。

コンコン♪

「ハザル君はいるかい?」

そう謂いながら、中に入ると、ハザル卿が机に積まれている報告書等の書類をチェックしていた。

私の言葉に顔を上げて、私を確認すると、顔に笑顔を浮かべて聞いてくる。

「これは閣下。良くいらっしゃいました。何のご用件でしょうか?」
「忙しそうだね。ちょっと話が出来るかな?」
「・・・では、隣の会議室でお話を伺いましょう。宜しいですか?」
「済まないね。急にで。」

二人して隣の部屋に移動した。そこは以前は前の代官の私室だった所で、今は寝具の類いを撤去して、代わりにソファーセットをいれたちょっとした会議室となっていた。

「早速、お話をお聞きしましょうか?」

ソファーに座りながら、ハザル卿は切り出した。

「うん。教会から報告がきて、以前の外壁の回りに再び流民がテント村を作っているそうだ。一番外の外壁は最近私が造ったばかりなので、このままでは、テント村はそのままスラムと化してしまう恐れがあるとの報告だ。役場には報告は来ているのかな?」
「ああ、新しいテント村のことですね。報告は来ています。近日中にこちらでの詳しい情報が纏まり次第、ご相談に伺う予定でした。」
「では、詳しくはまだ知らないのかな?」
「はい。調査中です。」
「教会からは、既に結構な数にまでふくらんでいると報告が来ている。今回の殆どが帝国からの流民らしいね。教会に頼まれて、再び『仮面司祭』として、テント村の者を街の中に取り込もうと考えている。恐らく貧しい者達ばかりだと思う。急いで、低賃金の賃貸住宅の増設をして欲しいのだが。」
「承知しました。早速、大工にその旨を伝えて、今の仕事が終わり次第、そちらに振り分けますね。今の所、既に完成している住宅は十件程ありますので、今月中には後五件は完成する予定です。」
「分かった。それと戸籍の作成を引き続き進めてくれ。街もそれなりに大きくなって来たからね。今のところどの位の割合が戸籍化出来ているのかな?」
「はい。年末から年明けにかけて、かなり進んでいて、市街地に住んでいる者は、ほぼ登録が済んでいます。今回の流民がどの位居るのかは分かりませんが、以前に比べれば余裕がありますね。」
「そうか。彼らがあの場所に居着く前に何とかしたいものだな。あと、職業の斡旋も合わせて頼むよ。以前のように役場に手続きに向かうように言っておくからね。」
「承知しました。それぞれの適正を見て、割り振っていきますよ。」
「うん。頼んだよ。あと報告だが、前の外壁の更に外側に注文のあった新しい外壁を作っておいた。これで人口増加も関心だ。少なくとも今年一杯は大丈夫だろうな。」
「有り難うございました。普通なら年単位の時間がかかる所なんですがね。閣下のお陰で間に合いましたよ。」
「まぁ、ちょっと慌ただしくてバタバタしたけどね。」
「職員が既に見たそうで、王都の外壁並みに立派だとか。あと門とかの防御施設や地均しはお任せかださい。あと、序でに再来月までに、イミル大河に今よりも立派な橋を渡して欲しいのですが、出来ますでしょうか?川向こうの開発に必要なのですが。」
「成る程ね。川向こうの領地にある町や村は街道の取り締まり以外は手付かずだったね。五の月一杯の内に完成させるよ。」
「宜しくお願いします。」
「最後に、今月末の報告書宜しくね。実はこれから暫くは忙しくて、私自身が外出することが多いから、留守を確りと頼むよ。特に治安についてね。街が大きくなると目の行き届かない部分が彼方此方と出てくるからね。頼んだよ。」
「はい。分かっております。お任せください。」

 話を切り上げて後の事を任すと、次の教会に向かうためにソファーから立ち上がった。
街が大きくなるにつれて、規模の大きな相談事も多く成ってきた。
五月中に橋を通さ無くてはいけなくなったし。五月中に工事を終わらせなくてはならないしね。さて次のお仕事と。



















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