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一九六一年 初夏 ウィーン
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それとも、貴方は私に頼られることに驚いているのかしら。社民党にだって伝手があるだろうに、とか? ああ、それこそ時代の流れというものよ。もう、ハプスブルクのもと皇女だなんて存在に、どう接したら良いか分からない人ばかりだから。夫を介して知り合った人たちならば、まだ古い時代の空気を知っていたし、個人的にも親しくできた人もいたのだけれど。個人的な集まりでは、宮廷での舞踏会のようにワルツを披露したりもしたのだけど──そんな人たちは、もうとても少なくなってしまった。みんな、年を取ってもいるしね。あまりにも大げさに礼儀を尽くされたり、構えて畏まって接せられたりはうんざりしてしまうの。それに、そんなことはすべきではないでしょう。帝国はとうになくなってしまったし、私はさらにその前から皇族ではなかったのだもの。そう思えば、貴方みたいに不躾な好奇心を剥き出しにした人の方が今の時代には適っているのかもしれないわね。
そうね、もちろん、私にはヨーロッパ中に知り合いや親戚がいるのだけれど。でも、その人たちに政治的なお話を尋ねるのも貴方が言うほど簡単なことではないのよ。時間は誰にでも平等に過ぎていくものだから、私が直接知っている人たちは身分や出自を問わずにどんどん地上から去ってしまっているの。それに、何度も言うけれど時代は変わったのよ。かつては国を支配した王族や貴族だった人たちも、その立場を保っていられるとは限らない。中には財産や、命でさえも奪われてしまった人たちもいる。連絡を取ったとしても、愚痴をこぼし合うことくらいしかできないかもしれないのよ。
それに何より──私は嫌われて、憎まれているから。ずっと昔からそうだったのよ。ハプスブルクの宗家に生まれながら、あらゆる特権をあっさりと投げ出した私のことが、許せない人たちも多いの。きっと、あのオットー・フォン・ハプスブルクもそうでしょうね。実のところ、私がそう仕向けたのだけれど。だって、帝国が滅びようとしているのに、皇族や貴族との関わりなんて無用でしょう。願い下げ、とさえ言えたでしょうね。ええ、私は二十歳になる前からずっと考えて仕組んでいたのよ。
そうだわ、私がどうやって宮廷から飛び出したのかを話してあげましょう。帝国を、沈みゆく船を見捨ててどう羽ばたいたのか。祖母も母も、そこまではしなかったことをどう成し遂げたのか。貴方が気に入りそうなゴシップも関わってくることよ。ねえ、話し終わったら、代わりに会談の裏の話をこっそり教えてくれないかしら?
そうね、もちろん、私にはヨーロッパ中に知り合いや親戚がいるのだけれど。でも、その人たちに政治的なお話を尋ねるのも貴方が言うほど簡単なことではないのよ。時間は誰にでも平等に過ぎていくものだから、私が直接知っている人たちは身分や出自を問わずにどんどん地上から去ってしまっているの。それに、何度も言うけれど時代は変わったのよ。かつては国を支配した王族や貴族だった人たちも、その立場を保っていられるとは限らない。中には財産や、命でさえも奪われてしまった人たちもいる。連絡を取ったとしても、愚痴をこぼし合うことくらいしかできないかもしれないのよ。
それに何より──私は嫌われて、憎まれているから。ずっと昔からそうだったのよ。ハプスブルクの宗家に生まれながら、あらゆる特権をあっさりと投げ出した私のことが、許せない人たちも多いの。きっと、あのオットー・フォン・ハプスブルクもそうでしょうね。実のところ、私がそう仕向けたのだけれど。だって、帝国が滅びようとしているのに、皇族や貴族との関わりなんて無用でしょう。願い下げ、とさえ言えたでしょうね。ええ、私は二十歳になる前からずっと考えて仕組んでいたのよ。
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