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目覚めると、まだ真っ暗だった。がっつり抱き込まれていて、身動きが取れない。身体がガチガチ。い、痛い……。違和感がすごい。
少し開いたカーテンから注ぐ外灯がぐっすり寝入った小野塚くんを照らす。あどけない寝顔が可愛い。
今何時? うわ。腕、重た。這い出ようとすると、ガッと腰を抱き込まれた。寝起きとは思えない瞬発力と力強さ。
「ダメ離して」
「……う~……やだ……」
「やだじゃない。離して」
「いかないで……」
「離してくれないなら口きかない」
「それは嫌だ……」
パッと離されて前のめりになる。危な! 伸びた腕を軽く叩く。うわあ。裸だ。ブランケットを巻いて、トイレに直行する。
その途中、食器棚のお母さんの遺影が視界に入り、胸の中がざわめく。
気まずいというか、すごい罪悪感。信心深いとかではなく、生前の、あの視線を思い出したせいだ。
記憶の残像を無理やり頭の隅に押しやり、気づかないふりをしてトイレに行き、その後、浴室でシャワーを浴びていると、小野塚くんがこちらにくる足音がした。洗面台のところで物音がする。
小野塚くんも使うかな、と、シャワーを止めて、ドアを開けると、歯磨きをしているところだった。コンドームのみならず、歯ブラシセットまで買っていたなんて。つくづく私は彼の思うつぼだったのだ。
「ぅおはよぉ、からだだいじょうぶ?」
歯を磨きながら、くぐもった声でいう。
「うん。小野塚くんも浴びる?」
「うん」
歯磨きを終わらせ、小野塚くんが浴室に入ってきた。入れ違いで出ようとしたら腕で止められた。小野塚くんは脱いでも、筋肉質で、均整のとれた、きれいな身体をしている。他人の体温、というか、小野塚くんの肌は驚くほど熱い。抱き込まれて、顔に唇が寄せられる。その顔を手でおしのける。
「ひどい」
「私も歯磨きしたいから離して」
「はぁい」
と、渋々解放される。
小野塚くんがシャワーを浴びる音を聞きながら、タオルで身体を拭いて歯磨きをする。私以外の人がたてる音がする。ひとりじゃないって、いいな。
ドアを開ける音。見れば、湿ったぬるい空気をまとって、濡れた小野塚くんが立っている。新しいタオルを手渡すと、「ありがとう」って言われる。ばさばさと大雑把に身体を拭きながら、私を見る。
「どうしたの?」
「自分以外の人がいるっていいなって思って」
「ほんと? おれ、一緒にいてもいいんだ」
あらためて言われると照れる。
「ん」
「やった」
頷くと、小野塚くんは嬉しそうに微笑んだ。
私の両親も、こんなふうに見つめい、笑いあった時もあったんだろうか。
そして彼も、そのうち今の情熱が失せて私の元を去るのだろうか。父が母にしたように。
少し開いたカーテンから注ぐ外灯がぐっすり寝入った小野塚くんを照らす。あどけない寝顔が可愛い。
今何時? うわ。腕、重た。這い出ようとすると、ガッと腰を抱き込まれた。寝起きとは思えない瞬発力と力強さ。
「ダメ離して」
「……う~……やだ……」
「やだじゃない。離して」
「いかないで……」
「離してくれないなら口きかない」
「それは嫌だ……」
パッと離されて前のめりになる。危な! 伸びた腕を軽く叩く。うわあ。裸だ。ブランケットを巻いて、トイレに直行する。
その途中、食器棚のお母さんの遺影が視界に入り、胸の中がざわめく。
気まずいというか、すごい罪悪感。信心深いとかではなく、生前の、あの視線を思い出したせいだ。
記憶の残像を無理やり頭の隅に押しやり、気づかないふりをしてトイレに行き、その後、浴室でシャワーを浴びていると、小野塚くんがこちらにくる足音がした。洗面台のところで物音がする。
小野塚くんも使うかな、と、シャワーを止めて、ドアを開けると、歯磨きをしているところだった。コンドームのみならず、歯ブラシセットまで買っていたなんて。つくづく私は彼の思うつぼだったのだ。
「ぅおはよぉ、からだだいじょうぶ?」
歯を磨きながら、くぐもった声でいう。
「うん。小野塚くんも浴びる?」
「うん」
歯磨きを終わらせ、小野塚くんが浴室に入ってきた。入れ違いで出ようとしたら腕で止められた。小野塚くんは脱いでも、筋肉質で、均整のとれた、きれいな身体をしている。他人の体温、というか、小野塚くんの肌は驚くほど熱い。抱き込まれて、顔に唇が寄せられる。その顔を手でおしのける。
「ひどい」
「私も歯磨きしたいから離して」
「はぁい」
と、渋々解放される。
小野塚くんがシャワーを浴びる音を聞きながら、タオルで身体を拭いて歯磨きをする。私以外の人がたてる音がする。ひとりじゃないって、いいな。
ドアを開ける音。見れば、湿ったぬるい空気をまとって、濡れた小野塚くんが立っている。新しいタオルを手渡すと、「ありがとう」って言われる。ばさばさと大雑把に身体を拭きながら、私を見る。
「どうしたの?」
「自分以外の人がいるっていいなって思って」
「ほんと? おれ、一緒にいてもいいんだ」
あらためて言われると照れる。
「ん」
「やった」
頷くと、小野塚くんは嬉しそうに微笑んだ。
私の両親も、こんなふうに見つめい、笑いあった時もあったんだろうか。
そして彼も、そのうち今の情熱が失せて私の元を去るのだろうか。父が母にしたように。
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