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「井上さん、無味無臭って感じだったのにね。これ、香水でしょ」
「はひ!? シャンプーじゃないかなと!」
「こんな香りのシャンプーなんてないわよ。ぶっちゃけ、井上さん、乾き物系? 乾物女子って感じだったのに。いきなりこんなセンシュアルな香りまとってきちゃって、おばちゃん感動してるわ♡」
「か、かんぶつ!」
佐山さんが耐えきれなかったのか、ふきだした。
「ねえねえ。それより、TGFさ、本当は当初の変更通り井上さんが行くんだったんじゃないの?」
「どうしたんですか、いきなり」
「だって、様子変だったし」
「でも、入ったばかりの新人が、棚ぼたで抜擢されたにしても荷が重すぎたので、当然かと」
「そぉ? 井上さんが納得してるならいいけど」
「私より多田さんですよ。せっかく作ったアレンジも、レシピごと持っていかれちゃって」
「まあでもあの二人付き合ってたんじゃなかったっけ? ねえ。佐山ちゃん」
「芦田さん。それ、多田さんがいる時に話しちゃダメなやつですからね」
「……聞かなかったことにします」
血の気が引いた。本人の目の前で彼氏? 元彼? の悪口言っちゃった。えー。嘘でしょ先に教えてよ。多田さんも人が悪い。いや、悪口言っちゃった私が悪いけど!
「井上さん……。夜練、出来ないですよね?」
「え、どうしたの? するよ。できるできる」
「本当ですか! よかった。ありがとうございます。デートの予定とか入ってるんじゃないかと思ってー」
「だ、大丈夫!」
「無理しなくていいんだよ? 私、代わってもいいし」
と、芦田さん。
「大丈夫ですって」
「それにしても彼氏がセレブってどんな感じ? やっぱりプリティ・ウーマン?」
「いや、わかんないです。てか、プリティ・ウーマンってなんですか?」
「嘘でしょ、プリティ・ウーマン知らないの?」
「私も知りません。なんですかそれ?」
私が頷いたあとの佐山さんの無邪気な追撃に芦田さんは仰け反るほどのショックを受けていた。
「私の憧れが古典になっている……」
「なんか、すみません……」
喋っている間にトリートメントのリンシングも終わっていて、施術のアドバイスも出来ず、佐山さんの練習台になった意味がなかったことを謝ると、彼女は楽しかったですと嬉しそうに言った。いや、それじゃダメなんだけど。
「井上さんってストイックだよね。昼食とかも削れるだけ削って施術するし、休日の講習会も必ず参加してるじゃない? そのうち身体壊しちゃうよ? 三十五辺りから変わってくるから、あんまり無理しないようにね?」
と、芦田さんに言われた。
「ありがとうございます」
そうだ。私、もうすぐ三十だ。今、二十代最後なんだ。三十と二十五って、隔たりすごい。
「そういえば芦田さん。うちの会社、寮ありましたよね?」
「あるよ。二人部屋か四人部屋だったかな。ねえ、佐山ちゃん」
「ちなみに私四人部屋です。トイレもお風呂もキッチンも冷蔵庫も共有です。慣れればなんとかイケます。コンテストの時とか皆で練習できていいですよ」
「そっか」
「え。なに、どうしたの? いきなり寮なんて」
「それが、今住んでるアパート、来月いっぱいで取り壊しになるんです。だから住む所探さなくちゃいけなくて……」
「マジで! 大変じゃない。なら、早めに申請しとかなきゃね」
「はい」
職場でこんなに誰かと話したの、いつぶりだろう。今まで吉沢さんくらいだったもんな。話すって、結構体力使うなぁ。声帯と口疲れた。はじめて開店時間までお喋りで費やした。
「はひ!? シャンプーじゃないかなと!」
「こんな香りのシャンプーなんてないわよ。ぶっちゃけ、井上さん、乾き物系? 乾物女子って感じだったのに。いきなりこんなセンシュアルな香りまとってきちゃって、おばちゃん感動してるわ♡」
「か、かんぶつ!」
佐山さんが耐えきれなかったのか、ふきだした。
「ねえねえ。それより、TGFさ、本当は当初の変更通り井上さんが行くんだったんじゃないの?」
「どうしたんですか、いきなり」
「だって、様子変だったし」
「でも、入ったばかりの新人が、棚ぼたで抜擢されたにしても荷が重すぎたので、当然かと」
「そぉ? 井上さんが納得してるならいいけど」
「私より多田さんですよ。せっかく作ったアレンジも、レシピごと持っていかれちゃって」
「まあでもあの二人付き合ってたんじゃなかったっけ? ねえ。佐山ちゃん」
「芦田さん。それ、多田さんがいる時に話しちゃダメなやつですからね」
「……聞かなかったことにします」
血の気が引いた。本人の目の前で彼氏? 元彼? の悪口言っちゃった。えー。嘘でしょ先に教えてよ。多田さんも人が悪い。いや、悪口言っちゃった私が悪いけど!
「井上さん……。夜練、出来ないですよね?」
「え、どうしたの? するよ。できるできる」
「本当ですか! よかった。ありがとうございます。デートの予定とか入ってるんじゃないかと思ってー」
「だ、大丈夫!」
「無理しなくていいんだよ? 私、代わってもいいし」
と、芦田さん。
「大丈夫ですって」
「それにしても彼氏がセレブってどんな感じ? やっぱりプリティ・ウーマン?」
「いや、わかんないです。てか、プリティ・ウーマンってなんですか?」
「嘘でしょ、プリティ・ウーマン知らないの?」
「私も知りません。なんですかそれ?」
私が頷いたあとの佐山さんの無邪気な追撃に芦田さんは仰け反るほどのショックを受けていた。
「私の憧れが古典になっている……」
「なんか、すみません……」
喋っている間にトリートメントのリンシングも終わっていて、施術のアドバイスも出来ず、佐山さんの練習台になった意味がなかったことを謝ると、彼女は楽しかったですと嬉しそうに言った。いや、それじゃダメなんだけど。
「井上さんってストイックだよね。昼食とかも削れるだけ削って施術するし、休日の講習会も必ず参加してるじゃない? そのうち身体壊しちゃうよ? 三十五辺りから変わってくるから、あんまり無理しないようにね?」
と、芦田さんに言われた。
「ありがとうございます」
そうだ。私、もうすぐ三十だ。今、二十代最後なんだ。三十と二十五って、隔たりすごい。
「そういえば芦田さん。うちの会社、寮ありましたよね?」
「あるよ。二人部屋か四人部屋だったかな。ねえ、佐山ちゃん」
「ちなみに私四人部屋です。トイレもお風呂もキッチンも冷蔵庫も共有です。慣れればなんとかイケます。コンテストの時とか皆で練習できていいですよ」
「そっか」
「え。なに、どうしたの? いきなり寮なんて」
「それが、今住んでるアパート、来月いっぱいで取り壊しになるんです。だから住む所探さなくちゃいけなくて……」
「マジで! 大変じゃない。なら、早めに申請しとかなきゃね」
「はい」
職場でこんなに誰かと話したの、いつぶりだろう。今まで吉沢さんくらいだったもんな。話すって、結構体力使うなぁ。声帯と口疲れた。はじめて開店時間までお喋りで費やした。
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