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そうか。今日TGFか。だからあの二人、気を使ってくれたのかな。私が外されてたのは、私以外周知の沙汰だったってこと? まあ、たしかにそう親しくもない新人のことをいちいち構ってられるほど暇な店じゃないもんね。あの二人は例外で。それに、新人に任せるくらいなら、系列店の経験者を選ぶよ。っていうか、最初からそうしたらいいじゃない。
あー。私、自覚が足りなかったけど、結構悔しいんだな。仕方ないと思っていたけど、なんか、やっぱり、こういう仕打ち、悔しいな。かといって、別に何ができるわけでもないけど。モヤモヤしつつ、開店時間とほぼ同時にカットとカラーの指名予約が入ったり、飛び込みの新規さんが来たり、いつも通りあっという間に時間は過ぎていく。
昼は昨日のデリの残りを持ってきたのでいつもより豪華だ。淳くんに今日は練習で遅くなると連絡を入れて、急いで食事を終わらせて、午後の予約に備える。そして閉店後の練習をして終わったら、二十三時を回っていた。今から麻布に帰るのちょっと億劫だな……。自分の家に帰ろうかな……。遅くなっちゃったし、まあ仕方ないよね。とスマホを見ると、終わったら教えてと淳くんからメッセージがきていた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
店の戸締りをして解散する。店の前にやけに大きな白い車が停まっていて、ちょっと怖い。アシスタントの子たちは例のたこ焼き屋さんに行くらしい。
〖遅くなったので、今夜は自分の家に帰ります〗
送信、と。
歩いていると、五分も経たずに淳くんから電話がかかってきた。
「もしもし?」
『栞乃さん今日こっち帰ってこないの?』
「あー。うん。遅くなっちゃったし」
『でも迎えやっちゃったよ。店の近くに白いSUV停まってなかった?』
白いSUV? もしかして、さっきのいかついアレ? 店の方を振り返る。
「白い車って、なんかすごく大きいの?」
『んー。わかりやすいように目立つやつにしたんだけど』
と私でも聞いたことのあるアメリカ大統領と同じ名前がでてきた。胴の長い車だけじゃないんだ。
『おれ、ちょっと仕事の都合で出れなくて、代わりにマネージャーに行ってもらったんだ』
「マネージャー?」
『うん。斉藤さんの息子で、柊一くんっていうんだけど、スケジュール管理とか車の運転とかしてもらってる。気弱だから優しめに接してあげて。でもかっこいいから好きになっちゃダメだよ』
「ほお~……。そんなにかっこいいの?」
『うん。男前だね』
「へえ~。で、気弱なの?」
『うん。ちょっと繊細というか……。え。なに? 栞乃さん、柊一くんに興味津々?』
「淳くんが男前っていうから……」
『うわー。でもダメだから! 柊一くん、超怖がりだから、グイグイいくの無理だからね!』
「いや、いかないし……。私の信頼度低くない?」
『だって……。おれ、栞乃さんに付き合ってもらってるって感じだし……。本当はもっと年上のいい人とかいたんじゃないかって思うし……』
「今さらそういうこと言うのどうかと思うよ」
『う。ごめん、なさい……』
「それに私が今まで全く縁がなかったのわからなかった?」
『興味無いと思われてたんじゃないかな?』
「そうかも。早く美容師になりたかったし、って、こんな長話してて大丈夫?」
『あ、そうだ。なるべく早く終わらせて帰るからあっちで待っててほしいな』
「わかった」
『じゃあ、仕事戻るね。変なこと言ってごめんね。栞乃さんも遅くまでお疲れ様。おやすみ』
「ううん。淳くんも。じゃ、おやすみ」
『ん。またあとでね』
「はーい」
『声聞けてよかった。このあともう少し頑張れる』
「遅くまで頑張っててえらい」
『ありがとう。帰ったら栞乃さんがいると思うと俄然やる気出た』
「それはよかった。じゃあ、また後で。寝てるかもだけど」
『また襲っちゃったらごめんね』
「ごめんじゃないです。襲わないでください。ほら早く戻って」
『触れる距離に栞乃さんがいたら無理です。ほんとごめんなさい。抑えられない。足りないもん。あー。もう帰りたい』
「ほら、もういいから仕事に戻ってください」
『はーい……。じゃあ、またあとでね』
「はいはい。おやすみなさい」
『ちゅーしたい。抱きしめたい。あーもうヤダ。帰りたい。いま会いたい。今すぐ抱……』
「はーい。じゃあね。おうちで待ってるね。バイバーイ」
と一方的に通話を切る。ポコポコとメッセージの通知音が。
〖ひどい〗
〖かぶせ気味に切らなくても〗
〖やる気萎えた〗
〖かなしい〗
わー。なかなかめんどくさい子。恋愛中じゃなかったら引いてる。
〖電話で話すより早く帰ってきてほしいから仕事頑張って〗
送信。そして、待つこと五秒。
〖そっこーで終わらせる!!〗
素直で可愛いなあ。なんでこんな可愛い子が私と付き合ってんだろう。
スマホをしまって、店の前に戻ると、やっぱりまだ白のでっかいSUVがある。これだよね? とウロウロしてたら運転席から人が降りてきた。
あー。私、自覚が足りなかったけど、結構悔しいんだな。仕方ないと思っていたけど、なんか、やっぱり、こういう仕打ち、悔しいな。かといって、別に何ができるわけでもないけど。モヤモヤしつつ、開店時間とほぼ同時にカットとカラーの指名予約が入ったり、飛び込みの新規さんが来たり、いつも通りあっという間に時間は過ぎていく。
昼は昨日のデリの残りを持ってきたのでいつもより豪華だ。淳くんに今日は練習で遅くなると連絡を入れて、急いで食事を終わらせて、午後の予約に備える。そして閉店後の練習をして終わったら、二十三時を回っていた。今から麻布に帰るのちょっと億劫だな……。自分の家に帰ろうかな……。遅くなっちゃったし、まあ仕方ないよね。とスマホを見ると、終わったら教えてと淳くんからメッセージがきていた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
店の戸締りをして解散する。店の前にやけに大きな白い車が停まっていて、ちょっと怖い。アシスタントの子たちは例のたこ焼き屋さんに行くらしい。
〖遅くなったので、今夜は自分の家に帰ります〗
送信、と。
歩いていると、五分も経たずに淳くんから電話がかかってきた。
「もしもし?」
『栞乃さん今日こっち帰ってこないの?』
「あー。うん。遅くなっちゃったし」
『でも迎えやっちゃったよ。店の近くに白いSUV停まってなかった?』
白いSUV? もしかして、さっきのいかついアレ? 店の方を振り返る。
「白い車って、なんかすごく大きいの?」
『んー。わかりやすいように目立つやつにしたんだけど』
と私でも聞いたことのあるアメリカ大統領と同じ名前がでてきた。胴の長い車だけじゃないんだ。
『おれ、ちょっと仕事の都合で出れなくて、代わりにマネージャーに行ってもらったんだ』
「マネージャー?」
『うん。斉藤さんの息子で、柊一くんっていうんだけど、スケジュール管理とか車の運転とかしてもらってる。気弱だから優しめに接してあげて。でもかっこいいから好きになっちゃダメだよ』
「ほお~……。そんなにかっこいいの?」
『うん。男前だね』
「へえ~。で、気弱なの?」
『うん。ちょっと繊細というか……。え。なに? 栞乃さん、柊一くんに興味津々?』
「淳くんが男前っていうから……」
『うわー。でもダメだから! 柊一くん、超怖がりだから、グイグイいくの無理だからね!』
「いや、いかないし……。私の信頼度低くない?」
『だって……。おれ、栞乃さんに付き合ってもらってるって感じだし……。本当はもっと年上のいい人とかいたんじゃないかって思うし……』
「今さらそういうこと言うのどうかと思うよ」
『う。ごめん、なさい……』
「それに私が今まで全く縁がなかったのわからなかった?」
『興味無いと思われてたんじゃないかな?』
「そうかも。早く美容師になりたかったし、って、こんな長話してて大丈夫?」
『あ、そうだ。なるべく早く終わらせて帰るからあっちで待っててほしいな』
「わかった」
『じゃあ、仕事戻るね。変なこと言ってごめんね。栞乃さんも遅くまでお疲れ様。おやすみ』
「ううん。淳くんも。じゃ、おやすみ」
『ん。またあとでね』
「はーい」
『声聞けてよかった。このあともう少し頑張れる』
「遅くまで頑張っててえらい」
『ありがとう。帰ったら栞乃さんがいると思うと俄然やる気出た』
「それはよかった。じゃあ、また後で。寝てるかもだけど」
『また襲っちゃったらごめんね』
「ごめんじゃないです。襲わないでください。ほら早く戻って」
『触れる距離に栞乃さんがいたら無理です。ほんとごめんなさい。抑えられない。足りないもん。あー。もう帰りたい』
「ほら、もういいから仕事に戻ってください」
『はーい……。じゃあ、またあとでね』
「はいはい。おやすみなさい」
『ちゅーしたい。抱きしめたい。あーもうヤダ。帰りたい。いま会いたい。今すぐ抱……』
「はーい。じゃあね。おうちで待ってるね。バイバーイ」
と一方的に通話を切る。ポコポコとメッセージの通知音が。
〖ひどい〗
〖かぶせ気味に切らなくても〗
〖やる気萎えた〗
〖かなしい〗
わー。なかなかめんどくさい子。恋愛中じゃなかったら引いてる。
〖電話で話すより早く帰ってきてほしいから仕事頑張って〗
送信。そして、待つこと五秒。
〖そっこーで終わらせる!!〗
素直で可愛いなあ。なんでこんな可愛い子が私と付き合ってんだろう。
スマホをしまって、店の前に戻ると、やっぱりまだ白のでっかいSUVがある。これだよね? とウロウロしてたら運転席から人が降りてきた。
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