彼がスーツに着替えたら

森野きの子

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過ぎたるは及ばざるが如し9

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「んっ、んぅ、んんっ……」

「やば。さえちゃんエロすぎ」

「あんっ、私、こんなんじゃ、なかったのにぃ……!」

「いやぁ、備えあれば憂いなしだわ。いつでもできるようにゴム、ポケットに入れてて良かった」

 指を引き抜くと、デニムの前を開く。

「さえちゃん、お尻、こっち向けて」

 冴子が鉄製の新聞受けに手をつくと、臀部と足の付け根の間あたりをめくるように持ち上げられ、亮のぺニスで一気に突き上げられた。

「ひぃんッ……」

「っあ~……。中、うねってる……。すっげー締めつけ。おれのチンポも好きになってくれた?」

「う、ううっ、んん、んっ、んっ、ん」

 頷いているが、クリトリスを弄られながら激しめに揺さぶられて、声にならない。ガタガタと振動が鉄製の扉へ伝わる。

「あああッ、あああッ、あああッ」

「ちょ、声、さえちゃん、声抑えて」

 と、掌で口を塞がれる。

「ここ。防音対策とか皆無だからさえちゃんの気持ちよさそうな声、隣近所に聞かれちゃう」

 くちゅ、と耳朶を舐められる。不躾にいやらしく鼓膜を侵す水音に頭がぐちゃぐちゃになる。口寂しくなって腰と同時に出し入れされる指をしゃぶる。冴子は声にしないよう熱く蒸れた荒い呼吸をくり返しながら、亮の荒々しい律動に没頭する。膣壁の最奥の神経叢をひたすら突かれ、脳内麻薬が過剰分泌されているのか、もう肉体で起こっている刺激以外、何も考えられない。だらしなく繰り返すうわ言は、亮の唇と舌で塞がれた。
 一度冴子は玄関で果てたが、ベッドへ連れていかれ、脚を肩に担がれ、ひたすら突き上げられ、再び頭の中が真っ白に爆ぜた。

 気がつくと部屋は暗く、テレビでは何かの映画が映っている。掛け布団に包まって亮の隣で爆睡していたようだ。亮は上体を起こして、オールド・ファッションド・グラスを片手に映画を眺めていた。冴子に気づくとグラスを置いて指で頬を撫でると、立ち上がり、別のコップに昨夜買っていたレモンの清涼飲料水を注いで手渡す。冴子はそれを受け取って一気に飲み干した。

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