彼がスーツに着替えたら

森野きの子

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蟷螂の斧

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「あ、あの、社長……、ちょっと待って下さい。ちょっ、ぁっ……」
 冴子の訴えを無視して、右手がボタンを外し、ベストとジャケットの前を広げる。
「や、やだ、やめて、やめて。どうしたんですか? 離してください」
「嫌です」
「冗談はやめてください。公私混同しないって言ってたじゃないですか」
 身を捩ったり、立ち上がろうとしたが、その度に腕に強く拘束されて離してもらえない。
「これはあなただけに行う特別指導なので諦めてください」
「そんな、社長……、んんっ……!」
 シャツの上から乳房を両手で持ち上げられ、大きな円を描くように撫で回される。ゆっくり大きな動きで五指を使って乳房全体の性感を刺激される。冴子はいけないと思いつつ快楽に絆されていく。
「ね、社長……、もう……、終わりに……」
「そういえば昔、ピアノの先生にラフマニノフみたいな手をしてると言われたことがありました」
「な、なんですか、いきなり……。っ! んっ、んんぅっ」
 乳首をピンポイントで捉えられたが、布越しの刺激では物足りない。誰か来たらどうしようと危惧しながら亮介の手から離れられない。
「おれの手もかなりデカい方なんだけど、さえちゃんのおっぱい、指からはみ出してこぼれそうだったなぁって」
 まるでお手玉のように手のひらの上で弾ませる。あの夜の快楽を思い出し、下腹の奥が疼いた。そのタイミングを見計らったかのように、グッと片手がスカートの中の中心へ差し込まれた。
「ひぅっ……! あ、あ……、りょうさん……、あっ、あっ、あんっ、だめ……」
「会社でこんなことされて素直に喘いじゃって。さえちゃん、社会人として大丈夫?」
 胸を弄んでいた手が、中指が下着の上からクリトリスを刺激する。巧妙な手つきが冴子を容易く絶頂へと追い上げた。
「ああっ! やだやだやだ! いじわる……! あああん」
 両手で口を押え、声量をなんとか押し殺しながら、冴子は腰をびくびくと震わせる。
「いくの早い。いやらしくて、可愛いね」
「ひ、……ひどい……」
 絶頂の余韻で痙攣しながら、公の場で辱められた羞恥に目尻が濡れた。
「お仕事が嫌になったらいつでも言って。こうして可愛がってあげるから。公的な仕事は大槻さんに任せて、君は社長おれ愛玩用ペットとして頑張ってくれればいい」
 腕の拘束から解放され、覚束ない足取りで立ち上がり、座ったまま、皮肉っぽい薄い笑みを浮かべた亮介を睨む。
「お断りします! 私だってちゃんとした秘書の仕事やれます!」
 そう息巻いて啖呵を切ると、亮介はにっこりと愛想笑いともいえる笑顔を作った。
「そうですか。それは結構。どちらでも期待してます」
「さいってい!」
「なんとでも」
「セクハラ大魔王!」
「言葉のセンスが小学生レベルで可愛いねえ」
「うわ。完全に馬鹿にしてる」
「可愛いって言ってるのに」
「そういうの結構です。私、絶対に松原さん達に負けない秘書になりますから!」
「楽しみにしてます」
 亮介が微笑む。冴子はこの男を憎めないでいる自分を悔しく思いながら睨む。両足の奥は余韻でしとどに潤い、下着を汚している。
「では。午後の業務も頑張りましょうね。桐原さん」
「分かりました。社長。でも、会社ではああいったセクハラ行為はやめてください」
「そうですか。それはつまり会社じゃなければいいんですね」
 グッと言葉につまる。
「お答えいたしかねます」
「黙秘は肯定とみなしますが」
「存じ上げません」
「つれないなぁ」
「この後、十六時からアインホルンホテルで英翔社様のビジネス誌『Azienda』の取材が入っています。大槻さんから原稿を預かっておりますので、持って参ります」
「では準備ができ次第、ここを出ましょう」
 何事も無かったかのような涼しい顔をして頷く亮介を横目に見て、冴子は社長室をあとにした。

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