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第一章
3 救世使召喚
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ここはどこで、あの人たちは誰で、俺に何が起きたんだ!?そもそもここは日本なのか?俺は中庭にいたはずだ。なのに校舎もない、桜の木もない、制服を着たやつらもいない、くまのぬいぐるみもない。……いやぬいぐるみはどうでもいいだろ!思わず自分自身に突っ込んでしまう。
そうか、これは夢かもしれない。立ったまま寝たことなんてないが……夢だと思い込むことで少し落ち着いてきた。そんな思考を巡らせていると、白いローブを着て、背丈以上長さの杖を持った年配の男性が近づいてきた。
「救世使様。私は大司祭を務めておりますイワン・グラシュミーと申します。混乱はごもっともかと存じ上げますが、どうか我々を、この世界を救っていただきたいのです」
きゅうせいし?救うってことは救世使……か?今俺のことをそう呼んだのだろうか。話の意味が分からず、ただ無言で白いじいさん……イワンさんを見つめ返すと、イワンさんは話を続けた。
「ここは救世使様の世界とは次元を隔てた異なる世界。“異世界”と言えば分かりやすいかもしれません。宝剣を媒体に、救世使様をこちらの世界へ召喚させていただきました」
「異世界……召喚……?」
本やゲームでは聞き慣れている言葉も、自分の身に降りかかるとひどく違和感がある。
「“黒の病”と呼ばれる病がございます。治癒魔法も効かず、わずかに進行を遅らせることしか対処ができず、ゆっくりと死を待つだけの恐ろしい病。それがこの国のみならず全世界で猛威を振るっており、死者の数ばかりが増えていく。他国とも協力し原因を探っておりますが、一向につかめません」
俺はいっそう困惑した。この世界が大変な状況にあることはなんとなく分かった。どうやらここには魔法が存在するらしい。そんな世界で俺に何ができるというんだ?俺が救世使?何かの間違いじゃないのか?
イワンさんはそんな俺の困惑をよそに話を進める。
「古来より伝わる伝承の中で、『黒の悪魔が世を喰らい 全てが黒に染まるとき 光の剣に導かれし救世使 不死の鳥と共に世を救わん』という一節があります。黒の悪魔とは黒の病、そしてその救世使こそがあなたなのです!このままではこの世界全てが黒の病に侵されてしまいます。どうかお願いです。世界をお救いください!」
イワンさんは膝をつき深く頭を下げ、周りで見ていた人々も同じように頭を下げ始めた。この人たちが、救いを求めて必死になっていることは十分伝わってきた。でもさすがにもう俺の思考回路はショート寸前。
「少し……時間をください。急にいろんなことが起こりすぎて……」
俺は救世使じゃない!……なんてこの状況で言えるはずもなく、慌てたイワンさんたちの案内で、やっとこの魔方陣の上から移動できたのだった。
そうか、これは夢かもしれない。立ったまま寝たことなんてないが……夢だと思い込むことで少し落ち着いてきた。そんな思考を巡らせていると、白いローブを着て、背丈以上長さの杖を持った年配の男性が近づいてきた。
「救世使様。私は大司祭を務めておりますイワン・グラシュミーと申します。混乱はごもっともかと存じ上げますが、どうか我々を、この世界を救っていただきたいのです」
きゅうせいし?救うってことは救世使……か?今俺のことをそう呼んだのだろうか。話の意味が分からず、ただ無言で白いじいさん……イワンさんを見つめ返すと、イワンさんは話を続けた。
「ここは救世使様の世界とは次元を隔てた異なる世界。“異世界”と言えば分かりやすいかもしれません。宝剣を媒体に、救世使様をこちらの世界へ召喚させていただきました」
「異世界……召喚……?」
本やゲームでは聞き慣れている言葉も、自分の身に降りかかるとひどく違和感がある。
「“黒の病”と呼ばれる病がございます。治癒魔法も効かず、わずかに進行を遅らせることしか対処ができず、ゆっくりと死を待つだけの恐ろしい病。それがこの国のみならず全世界で猛威を振るっており、死者の数ばかりが増えていく。他国とも協力し原因を探っておりますが、一向につかめません」
俺はいっそう困惑した。この世界が大変な状況にあることはなんとなく分かった。どうやらここには魔法が存在するらしい。そんな世界で俺に何ができるというんだ?俺が救世使?何かの間違いじゃないのか?
イワンさんはそんな俺の困惑をよそに話を進める。
「古来より伝わる伝承の中で、『黒の悪魔が世を喰らい 全てが黒に染まるとき 光の剣に導かれし救世使 不死の鳥と共に世を救わん』という一節があります。黒の悪魔とは黒の病、そしてその救世使こそがあなたなのです!このままではこの世界全てが黒の病に侵されてしまいます。どうかお願いです。世界をお救いください!」
イワンさんは膝をつき深く頭を下げ、周りで見ていた人々も同じように頭を下げ始めた。この人たちが、救いを求めて必死になっていることは十分伝わってきた。でもさすがにもう俺の思考回路はショート寸前。
「少し……時間をください。急にいろんなことが起こりすぎて……」
俺は救世使じゃない!……なんてこの状況で言えるはずもなく、慌てたイワンさんたちの案内で、やっとこの魔方陣の上から移動できたのだった。
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