9 / 15
第一章
8 冒険者ギルド
しおりを挟む
「居住区、職人街、酒場通りなどございますが、ここメインストリートは特別で様々な店が建ち並ぶ、街で一番賑わうところです!冒険者ギルドもこの通りにあるんですよ」
パティの言う通り、鎧を着たいかにも冒険者らしき人、親子で買い物に来た風な人、頭からローブを羽織った怪しい人など、職種様々な人達で賑わっている。けれど、想像よりも活気というものが無いような気がするが……
「あの猫耳の人とか獣の耳や尻尾を生やした人達は獣人族……とか?」
少し離れたところの猫耳の人に視線を向ける。
「そうですよ!アキラさんの世界にもいらっしゃったんですか?」
「いや、人間しかいないよ。国ごとに人種の差はあるけど、獣の耳や尻尾を持つ人はいなかった」
ゆらゆらと動く尻尾につい目がいってしまう。もしかしてエルフとか巨人なんかもいるんだろうか?
「リューズの人々には種族の違いがあります。一番多い種族が人間族。次いで獣人族にドワーフ族。そして数は少ないですがエルフ族に人魚族ですね!大昔には巨人族や小人族もいたようですが、今ではもうその血は絶えてしまったと云われています」
巨人と小人はいないのか。でも人魚!?もしかしたら人魚に会える日がくるのか!?人魚を想像していてふと気づく。なぜ今まで疑問に思わなかったのか……
「そういえば……言語の違いはないのか?」
俺は日本語しかしゃべれない。なのにこちらに来てから普通に会話が成立している。まさか日本語……な訳ないよな。
「種族固有の言語や地域での訛りの差はありますが、基本みなナクル語で話しますね。アキラさんもナクル語ですし、異世界といえど言語は同じなのですね!」
いやいやいや!ちょっと待って俺ナクル語(?)しゃべってんの!?
「いや俺……」
「あ!アキラさん!あちらの剣と盾のエンブレムがある建物が冒険者ギルドですよ!」
会話を遮られナクル語に突っ込むタイミングを失う。どうせ考えても分からない。言葉が分かるなら良いじゃないか!そう思い、パティが指差す方を見る。
赤く塗られた大きな建物。そこは周りの店と比べても遥かに大きく、人の出入りも多く様々だった。エンブレムは遠目で見るとシンプルなのに、近づいて見ると細工が細かく、職人技だと見てわかる。
中に入るとそこは老若男女問わず人でごった返していた。左右にカウンターが並び、次々に人を捌いていく。入口近くのボードにある貼り紙は依頼だろうか。紙はどんどん増えていき、減る勢いが負けている気がする。
貼り紙をよく見ると、アルファベットに近いようでどこか違う文字が並んでいた。……と思ったら内容が頭の中で変換されるように理解できる。これは薬草の採取依頼、あちらは洞窟の魔獣討伐依頼……なんで分かるんだよ俺!?
思わずパティにこの疑問をぶつけようとしたが、彼女は慣れた足取りで空いたカウンターに近づいていた。
「リルさんおはようございます!ダルトンさんはいらっしゃいますか?」
「パティちゃん!護衛の話よね?ちょっと待ってて~」
リルと呼ばれたショートが似合う女性は、奥のドアへとさっと駆けていった。
文字なんて読めるんだから問題ない!ここは異世界!もう気にするものか!そう俺は意気込んで、パティのもとへと行く。
するとリルさんがドアから顔を出しこちらを手招きしていたので、パティと共に奥へと進んだ。
「そっちの男の子はあまり見かけない顔だね。新しい調査の人なの?」
「はい!今回の調査のために来てくださいました、アキラさんです!」
「アキラ・ジンノです。よろしくお願いします」
こちらの世界ではこう名乗るのが良いと、ついさっき教えてもらった。
「ここの受付のリルよ。よろしくね!」
最奥の部屋へと案内され、リルさんがドアをノックする。
「マスター!パティちゃんと調査の人が来ましたよ~」
『おう!入っていいぞ!』
中から低い男性の声がした。
「じゃあ中に入っちゃって!私はもう戻らないと、今は人手不足でね……パティちゃん、アキラくん、またね!」
リルさんはそう言うと、またもやさっと駆けていった。
「失礼します」
パティと共に中へ入ると、2メートル近くありそうな巨体に隆々とした筋肉、百戦錬磨と呼ぶに相応しい大男がそこにいた。
パティの言う通り、鎧を着たいかにも冒険者らしき人、親子で買い物に来た風な人、頭からローブを羽織った怪しい人など、職種様々な人達で賑わっている。けれど、想像よりも活気というものが無いような気がするが……
「あの猫耳の人とか獣の耳や尻尾を生やした人達は獣人族……とか?」
少し離れたところの猫耳の人に視線を向ける。
「そうですよ!アキラさんの世界にもいらっしゃったんですか?」
「いや、人間しかいないよ。国ごとに人種の差はあるけど、獣の耳や尻尾を持つ人はいなかった」
ゆらゆらと動く尻尾につい目がいってしまう。もしかしてエルフとか巨人なんかもいるんだろうか?
「リューズの人々には種族の違いがあります。一番多い種族が人間族。次いで獣人族にドワーフ族。そして数は少ないですがエルフ族に人魚族ですね!大昔には巨人族や小人族もいたようですが、今ではもうその血は絶えてしまったと云われています」
巨人と小人はいないのか。でも人魚!?もしかしたら人魚に会える日がくるのか!?人魚を想像していてふと気づく。なぜ今まで疑問に思わなかったのか……
「そういえば……言語の違いはないのか?」
俺は日本語しかしゃべれない。なのにこちらに来てから普通に会話が成立している。まさか日本語……な訳ないよな。
「種族固有の言語や地域での訛りの差はありますが、基本みなナクル語で話しますね。アキラさんもナクル語ですし、異世界といえど言語は同じなのですね!」
いやいやいや!ちょっと待って俺ナクル語(?)しゃべってんの!?
「いや俺……」
「あ!アキラさん!あちらの剣と盾のエンブレムがある建物が冒険者ギルドですよ!」
会話を遮られナクル語に突っ込むタイミングを失う。どうせ考えても分からない。言葉が分かるなら良いじゃないか!そう思い、パティが指差す方を見る。
赤く塗られた大きな建物。そこは周りの店と比べても遥かに大きく、人の出入りも多く様々だった。エンブレムは遠目で見るとシンプルなのに、近づいて見ると細工が細かく、職人技だと見てわかる。
中に入るとそこは老若男女問わず人でごった返していた。左右にカウンターが並び、次々に人を捌いていく。入口近くのボードにある貼り紙は依頼だろうか。紙はどんどん増えていき、減る勢いが負けている気がする。
貼り紙をよく見ると、アルファベットに近いようでどこか違う文字が並んでいた。……と思ったら内容が頭の中で変換されるように理解できる。これは薬草の採取依頼、あちらは洞窟の魔獣討伐依頼……なんで分かるんだよ俺!?
思わずパティにこの疑問をぶつけようとしたが、彼女は慣れた足取りで空いたカウンターに近づいていた。
「リルさんおはようございます!ダルトンさんはいらっしゃいますか?」
「パティちゃん!護衛の話よね?ちょっと待ってて~」
リルと呼ばれたショートが似合う女性は、奥のドアへとさっと駆けていった。
文字なんて読めるんだから問題ない!ここは異世界!もう気にするものか!そう俺は意気込んで、パティのもとへと行く。
するとリルさんがドアから顔を出しこちらを手招きしていたので、パティと共に奥へと進んだ。
「そっちの男の子はあまり見かけない顔だね。新しい調査の人なの?」
「はい!今回の調査のために来てくださいました、アキラさんです!」
「アキラ・ジンノです。よろしくお願いします」
こちらの世界ではこう名乗るのが良いと、ついさっき教えてもらった。
「ここの受付のリルよ。よろしくね!」
最奥の部屋へと案内され、リルさんがドアをノックする。
「マスター!パティちゃんと調査の人が来ましたよ~」
『おう!入っていいぞ!』
中から低い男性の声がした。
「じゃあ中に入っちゃって!私はもう戻らないと、今は人手不足でね……パティちゃん、アキラくん、またね!」
リルさんはそう言うと、またもやさっと駆けていった。
「失礼します」
パティと共に中へ入ると、2メートル近くありそうな巨体に隆々とした筋肉、百戦錬磨と呼ぶに相応しい大男がそこにいた。
0
あなたにおすすめの小説
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる