不死鳥と救世使~異世界冒険記~

紅葉 楓

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第一章

8 冒険者ギルド

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「居住区、職人街、酒場通りなどございますが、ここメインストリートは特別で様々な店が建ち並ぶ、街で一番賑わうところです!冒険者ギルドもこの通りにあるんですよ」

パティの言う通り、鎧を着たいかにも冒険者らしき人、親子で買い物に来た風な人、頭からローブを羽織った怪しい人など、職種様々な人達で賑わっている。けれど、想像よりも活気というものが無いような気がするが……

「あの猫耳の人とか獣の耳や尻尾を生やした人達は獣人族……とか?」

少し離れたところの猫耳の人に視線を向ける。

「そうですよ!アキラさんの世界にもいらっしゃったんですか?」

「いや、人間しかいないよ。国ごとに人種の差はあるけど、獣の耳や尻尾を持つ人はいなかった」

ゆらゆらと動く尻尾につい目がいってしまう。もしかしてエルフとか巨人なんかもいるんだろうか?

「リューズの人々には種族の違いがあります。一番多い種族が人間族。次いで獣人族にドワーフ族。そして数は少ないですがエルフ族に人魚族ですね!大昔には巨人族や小人族もいたようですが、今ではもうその血は絶えてしまったと云われています」

巨人と小人はいないのか。でも人魚!?もしかしたら人魚に会える日がくるのか!?人魚を想像していてふと気づく。なぜ今まで疑問に思わなかったのか……

「そういえば……言語の違いはないのか?」

俺は日本語しかしゃべれない。なのにこちらに来てから普通に会話が成立している。まさか日本語……な訳ないよな。

「種族固有の言語や地域での訛りの差はありますが、基本みなナクル語で話しますね。アキラさんもナクル語ですし、異世界といえど言語は同じなのですね!」

いやいやいや!ちょっと待って俺ナクル語(?)しゃべってんの!?

「いや俺……」

「あ!アキラさん!あちらの剣と盾のエンブレムがある建物が冒険者ギルドですよ!」

会話を遮られナクル語に突っ込むタイミングを失う。どうせ考えても分からない。言葉が分かるなら良いじゃないか!そう思い、パティが指差す方を見る。
赤く塗られた大きな建物。そこは周りの店と比べても遥かに大きく、人の出入りも多く様々だった。エンブレムは遠目で見るとシンプルなのに、近づいて見ると細工が細かく、職人技だと見てわかる。

中に入るとそこは老若男女問わず人でごった返していた。左右にカウンターが並び、次々に人を捌いていく。入口近くのボードにある貼り紙は依頼だろうか。紙はどんどん増えていき、減る勢いが負けている気がする。

貼り紙をよく見ると、アルファベットに近いようでどこか違う文字が並んでいた。……と思ったら内容が頭の中で変換されるように理解できる。これは薬草の採取依頼、あちらは洞窟の魔獣討伐依頼……なんで分かるんだよ俺!?

思わずパティにこの疑問をぶつけようとしたが、彼女は慣れた足取りで空いたカウンターに近づいていた。

「リルさんおはようございます!ダルトンさんはいらっしゃいますか?」

「パティちゃん!護衛の話よね?ちょっと待ってて~」

リルと呼ばれたショートが似合う女性は、奥のドアへとさっと駆けていった。
文字なんて読めるんだから問題ない!ここは異世界!もう気にするものか!そう俺は意気込んで、パティのもとへと行く。
するとリルさんがドアから顔を出しこちらを手招きしていたので、パティと共に奥へと進んだ。

「そっちの男の子はあまり見かけない顔だね。新しい調査の人なの?」

「はい!今回の調査のために来てくださいました、アキラさんです!」

「アキラ・ジンノです。よろしくお願いします」

こちらの世界ではこう名乗るのが良いと、ついさっき教えてもらった。

「ここの受付のリルよ。よろしくね!」

最奥の部屋へと案内され、リルさんがドアをノックする。

「マスター!パティちゃんと調査の人が来ましたよ~」

『おう!入っていいぞ!』

中から低い男性の声がした。

「じゃあ中に入っちゃって!私はもう戻らないと、今は人手不足でね……パティちゃん、アキラくん、またね!」

リルさんはそう言うと、またもやさっと駆けていった。

「失礼します」

パティと共に中へ入ると、2メートル近くありそうな巨体に隆々とした筋肉、百戦錬磨と呼ぶに相応しい大男がそこにいた。
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