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第一章
7 いざ街へ行かん
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パティさんと共に城で朝食を頂いて、街へ出るために城門へ向かっていた。
ちなみにこちらの世界の食事は、見た目には俺の知る食べ物と違いはないように見えた。パンにサラダ、スープ、肉料理にフルーツ。
けれど材料を聞くとそうでもなかった。キャベツにタマネギ、リンゴにバナナ。多少言い方は違うものもあるが、これらは俺もよく知る食べ物だ。けれどグレイプ鳥の肉、タロック芋、キキムの実など見たことも聞いたこともない食材もあった。
パティさんに聞いたところ、俺の馴染みのあるものは家畜として育てていたり、畑で栽培ができるもの。それ以外は冒険者が採取してくるものらしい。採取でしか採れないものは、やはり普通よりも値が張るようで、庶民には贅沢品。それらがふんだんに使ってあったのだからさすが王城だな。
「私たちは今からギルドに向かいます!」
「ギルドですか?」
広い庭園を城門目指して歩きながら、パティさんが説明してくれる。
「アキラ様の護衛は冒険者ギルドの方にお願いしてあります。もちろん王城直々の依頼なので、ギルドマスターに腕の確かな信頼のおける人物を選んでいただきました」
「……やっぱり、モンスターとか危険な生き物がいるんですよね?」
「はい!そのための護衛です!」
にっこり笑って返された。
「それとアキラ様、これから街に出る上で少しお願いがございます」
「なんですか?」
「まずアキラ様が異世界からいらっしゃったことはご内密にしていただきたいのです。“異世界”の存在を知る者はごくわずかです。黒の病の脅威がある今、異世界の存在を知られることがプラスとなるかマイナスとなるか判断が出来かねますので……」
まぁ異世界から来たなんてわざわざ言うことでもないしな。確かに異世界人なんて宇宙人と似たようなもんか。
「それは構わないんですけど、俺たぶんこっちの一般常識も知りませんし大丈夫ですか?」
下手したら『地球って何?』レベルの質問をしかねない。
「そこは私たちがフォロー致します!王城の魔導士、それと今から会うギルドマスターと護衛の2名には詳細を話してございますので、なんでもお聞きください!」
じゃあさっそく……といろいろ聞きたいところだが、後にしておくか。
「分かりました。ご迷惑をかけますがよろしくお願いします」
そう言うと彼女は慌てて頭を振る。
「とんでもないです!むしろアキラ様にご迷惑をかけているのは私たちの方ですし……アキラ様はとてもお優しい方ですね!」
優しいというか空気をよんだというか……断り切れなかったというのもあるが黙っておこう。
「もうひとつ、これは私個人のお願いなんですが、どうか私に敬語を使うのはお止めください。名前にも敬称は必要ありません」
「それは……俺の世界では年上の人に対して、くだけた話し方をするのは少し抵抗があるんですけど……」
目上年上の人には自然と敬語になってしまう日本人。少なくとも俺はそうだ。
「アキラ様はおいくつですか?」
「17です」
「私は19歳ですのでアキラ様とそう変わりません。それに私たちが敬語を使う相手は王族・貴族の方、大祭司様など身分の高い方に対してがほとんどです。なのでアキラ様が私に敬語ですとかえって不自然になってしまいます。どうか私を助けると思って聞き入れてくださいませんでしょうか?」
そ、そう言われてしまうと断れない日本人。
「じゃあ俺にも敬語を使うのは止めてください。俺は身分が高いわけでもないですし、様付けされるのもむず痒くて仕方ないです」
「私はこの話し方が普通ですので、アキラ様が慣れてくださいね!ただ、確かに様でお呼びするのは目立つかも知れませんので、恐れ入りますがアキラさんと呼ばせていただきます」
有無を言わせぬ笑顔でそう言われてしまう。もういい!ここは日本じゃない、異世界なんだ!
「わかっ……た。よろしくパティ」
諦めてそう言うと、パティは再びにっこりと微笑んだ。
広すぎる庭園を抜け、やっと王城の入口へとたどり着く。改めて王城を見返すと、とてつもない大きさだ。俺の高校3つ分はあるんじゃないだろうか。
「さぁアキラさん!ここから先が王都セントフレアの街です!」
巨大な城門……の隣の通用門から外へ出る。
目の前には大きな噴水と人々の憩いの場のような広場。その奥に見えるのはどこか異国風、ヨーロッパをイメージさせるような街並み。そして様々な商店の並ぶメインストリート。食べ物や衣服が並ぶ店、厳つい鎧や武器を売る店、はたまた入るのをためらうような怪しい店。
そして街行く多くの人々。中には獣の耳や尻尾を生やした人もいる!
俺は初めて見る世界にわくわくしていたが、この街、この世界の人々が背負う暗い影に、まだ気づけずにいるのだった。
ちなみにこちらの世界の食事は、見た目には俺の知る食べ物と違いはないように見えた。パンにサラダ、スープ、肉料理にフルーツ。
けれど材料を聞くとそうでもなかった。キャベツにタマネギ、リンゴにバナナ。多少言い方は違うものもあるが、これらは俺もよく知る食べ物だ。けれどグレイプ鳥の肉、タロック芋、キキムの実など見たことも聞いたこともない食材もあった。
パティさんに聞いたところ、俺の馴染みのあるものは家畜として育てていたり、畑で栽培ができるもの。それ以外は冒険者が採取してくるものらしい。採取でしか採れないものは、やはり普通よりも値が張るようで、庶民には贅沢品。それらがふんだんに使ってあったのだからさすが王城だな。
「私たちは今からギルドに向かいます!」
「ギルドですか?」
広い庭園を城門目指して歩きながら、パティさんが説明してくれる。
「アキラ様の護衛は冒険者ギルドの方にお願いしてあります。もちろん王城直々の依頼なので、ギルドマスターに腕の確かな信頼のおける人物を選んでいただきました」
「……やっぱり、モンスターとか危険な生き物がいるんですよね?」
「はい!そのための護衛です!」
にっこり笑って返された。
「それとアキラ様、これから街に出る上で少しお願いがございます」
「なんですか?」
「まずアキラ様が異世界からいらっしゃったことはご内密にしていただきたいのです。“異世界”の存在を知る者はごくわずかです。黒の病の脅威がある今、異世界の存在を知られることがプラスとなるかマイナスとなるか判断が出来かねますので……」
まぁ異世界から来たなんてわざわざ言うことでもないしな。確かに異世界人なんて宇宙人と似たようなもんか。
「それは構わないんですけど、俺たぶんこっちの一般常識も知りませんし大丈夫ですか?」
下手したら『地球って何?』レベルの質問をしかねない。
「そこは私たちがフォロー致します!王城の魔導士、それと今から会うギルドマスターと護衛の2名には詳細を話してございますので、なんでもお聞きください!」
じゃあさっそく……といろいろ聞きたいところだが、後にしておくか。
「分かりました。ご迷惑をかけますがよろしくお願いします」
そう言うと彼女は慌てて頭を振る。
「とんでもないです!むしろアキラ様にご迷惑をかけているのは私たちの方ですし……アキラ様はとてもお優しい方ですね!」
優しいというか空気をよんだというか……断り切れなかったというのもあるが黙っておこう。
「もうひとつ、これは私個人のお願いなんですが、どうか私に敬語を使うのはお止めください。名前にも敬称は必要ありません」
「それは……俺の世界では年上の人に対して、くだけた話し方をするのは少し抵抗があるんですけど……」
目上年上の人には自然と敬語になってしまう日本人。少なくとも俺はそうだ。
「アキラ様はおいくつですか?」
「17です」
「私は19歳ですのでアキラ様とそう変わりません。それに私たちが敬語を使う相手は王族・貴族の方、大祭司様など身分の高い方に対してがほとんどです。なのでアキラ様が私に敬語ですとかえって不自然になってしまいます。どうか私を助けると思って聞き入れてくださいませんでしょうか?」
そ、そう言われてしまうと断れない日本人。
「じゃあ俺にも敬語を使うのは止めてください。俺は身分が高いわけでもないですし、様付けされるのもむず痒くて仕方ないです」
「私はこの話し方が普通ですので、アキラ様が慣れてくださいね!ただ、確かに様でお呼びするのは目立つかも知れませんので、恐れ入りますがアキラさんと呼ばせていただきます」
有無を言わせぬ笑顔でそう言われてしまう。もういい!ここは日本じゃない、異世界なんだ!
「わかっ……た。よろしくパティ」
諦めてそう言うと、パティは再びにっこりと微笑んだ。
広すぎる庭園を抜け、やっと王城の入口へとたどり着く。改めて王城を見返すと、とてつもない大きさだ。俺の高校3つ分はあるんじゃないだろうか。
「さぁアキラさん!ここから先が王都セントフレアの街です!」
巨大な城門……の隣の通用門から外へ出る。
目の前には大きな噴水と人々の憩いの場のような広場。その奥に見えるのはどこか異国風、ヨーロッパをイメージさせるような街並み。そして様々な商店の並ぶメインストリート。食べ物や衣服が並ぶ店、厳つい鎧や武器を売る店、はたまた入るのをためらうような怪しい店。
そして街行く多くの人々。中には獣の耳や尻尾を生やした人もいる!
俺は初めて見る世界にわくわくしていたが、この街、この世界の人々が背負う暗い影に、まだ気づけずにいるのだった。
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