不死鳥と救世使~異世界冒険記~

紅葉 楓

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第一章

13 テミスの村

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テミスの村に着いたのは日が傾き始めた頃。ずいぶん長い距離を歩いたはずだが、不思議とそこまで疲れを感じていなかった。魔法道具マジックアイテムホントにすごい。

テミスの村は想像していた村のイメージよりは賑わいがあって、下町のような雰囲気を感じさせる。

「みんなお疲れ様。ひとまず無事に着けてよかったわ。私とゼルはここの自警団に顔を出してくるけど、二人は宿屋に行っとく?」

ギルドが無い村などでは、自警団がギルドの代わりを担っているらしい。

「私は道具屋に届け物があるのでそちらへ行きます。アキラさんはどうされますか?できれば私かサーラさんたちと一緒がいいのですが」

「じゃあ……パティについていこうかな」

こちらの世界でどんなものが売られているのか気になる。用事が済んでから宿屋で落ち合うことになり、パティと共に道具屋へ向かう。

「けっこう人もいるし、村ってよりは街って印象だな」

「テミスの村は冒険者が立ち寄ることが多いので、人は多い方だと思います!」

「確かに村人っぽくない人も見かけるな。道具屋って言ってたけど、買いに行くんじゃなくて届け物なのか?」

「はい!薬を……」
「あ!パティねーちゃん!」

パティの言葉を遮り、駆け寄ってきたのは5歳くらいの男の子。

「トバルくん!今からトバルくんのおうちに行くところなんですよ」

「そうなんだ!ぼくもいまかえるところだよ!いっしょにいこう!」

トバルと呼ばれた男の子はパッと笑顔になって、ふとこちらに気づいた。

「あれ?そっちのにーちゃんはだあれ?」

「こちらはアキラさん。すごーく遠いところから来てくれて、私たちの調査のお手伝いをしてくれているんですよ」

「ふーん。じゃあここははじめてだよね?テミスでのかいものは、どうぐやリードにおまかせあれ!くすりにぶきにまじっくあいてむ、なんでもそろってございます!」

元気いっぱいの口上におもわず頬もゆるむ。トバルの家が道具屋なのか。

「じゃあおすすめの魔法道具マジックアイテムでも教えてもらおうかな。よろしくなトバル」

そう言って俺がトバルの頭を撫でると、張り切って俺たちの前を歩いて先導していく。

「この村にはフィカロの森の調査のため何度か来ているんです。その時に道具屋の息子さんのトバルくんとも仲良くなって、商売上手なのでついいろいろ買ってしまいます」

パティが笑いながら教えてくれた。少し歩いた先の、緑の屋根の建物を指差してトバルが駆けていく。

「あそこだよ!」

すると突然、トバルが足から力が抜けたように不自然に転んだ。パティと共に急いで駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

「えへへ。へいきだよ!けど、あしにへんなあざができてから、よくころんじゃうんだ」

幸いトバルは軽いすり傷だけのようだが、アザと聞いてパティの顔色が変わった。

「トバルくん、そのアザを見せてもらってもいいですか?」

「いいよ!」

トバルがズボンの裾をまくって見せると、右足の膝から太ももにかけて皮膚が黒く変色していた。

「あれー?なんかまえよりおっきくなってる」

パティが一瞬険しい表情になった。

「トバルくん、歩けそうですか?ひとまずおうちに帰ってから怪我の治療をしましょう」

「うん!」

トバルは立ち上がろうとするが、右足に力が入らないのかよろけてしまう。

「よし!早く怪我の手当をして、おすすめ商品を教えてくれ!」

俺はわざと明るくそう言って、トバルを抱き上げた。

「ありがとう!アキラにーちゃん!」

パティのあの表情、トバルの黒いアザ。もしかしてあれが黒の病なのか?こんな小さな子供が?トバルの前で聞くことはできず、緑の屋根の建物、道具屋リードに入っていった。
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