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42 チェスとフェアリー
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次の日、庭で土魔法についてあれこれ考えていたけど、飽きてお腹も空いてきたのでリビングに戻ってきた。珍しいことに、アルス・イルダ・フレアの3人が揃って何かをやっている。
「珍しいわね、三人揃ってなんて」
と声を掛ける。そもそも、アルスとイルダが部屋の中で何かをしているのが珍しい。いつも外で剣を振り回しているかと思ったけど。
「そうだ、ユーカはこれ知ってるか?」
「…チェスね」
「やっぱり知ってたか。昔、女神が伝えたと言われてるんだよ。千年以上前らしいけど」
アルスが言う。異世界に持ち込むゲームとしてはありがちか。しかし、ピアノもそうだったけど、千年以上前だと時代が合わない気がする。
「で、何でいきなりチェスなんてやってるのよ。アルスなんか全然似合わないじゃない」
「なっ、俺だってチェスぐらいやるぞ。親父が好きだったしな」
「あたしも子供の頃から『嗜み』として…」
「嗜み?」
「あ、いや、ほら淑女の嗜みってやつだよ…」
イルダが何故か焦っている、
「伝説のようなお話ですが、大昔に、争っている二つの大国があって、その争いを止めさせるために女神様が伝えたとか」
ああ、実際の戦争の代わりにチェスをやれと。いかにもな話だ。
「で、俺達がチェスをやってる理由だけど、来週チェスの大会があるんだってさ」
「大会?ここで?」
「そ、トレンタの町主催。毎年やってるらしいぜ」
「といってもフェアリーチェスだけどな。あたしはあまり得意じゃないんだよな」
「普通のチェスもあるらしいですよ?」
「フェアリーチェス?」
「女神様の伝えたチェスと異なる駒や盤を使うチェスのことですね。駒は魔物のグリフォンやバッファローが人気ですよ。盤は大きいのとか球形のものとかありますね」
なんか面倒くさそうだけど。それより、
「名前に使うぐらいだから、この世界にはフェアリーがいるの?」
剣と魔法の世界なら、妖精は外せないわよね。
「はあ?あんなの実際にいる訳ないだろ。そもそもおとぎ話みたいに小さかったら、人間と話せるだけの頭はないだろ。虫みたいなもんじゃん」
「あたしは、あれは軟弱な男共が、自分にとって都合の良い理想の女性を押し付けた想像の存在だと思うんだよ」
「フェアリーチェスは、『妖しい』とか『奇妙な』という意味で『妖精』という名を付けているので、実在していたら、ちょっと失礼かもしれませんね」
…そうだった、この人達は夢がないんだった。
「あっはっは、確かにフェアリーの存在は確認されていませんねー」
ケヴェスンさんは大笑いして言った。土魔法が魔工の役に立つかも、という話を思い出して、ケヴェスンさんの休みの日に工房兼自宅に寄ってみたのだ。魔力が高いほど硬くて加工しにくいものも加工出来るそうで、中々有用らしい。ただ、魔工に使うには精密な加工が必要な場合が多いので、私としては制御の方に難点があるかもしれない。攻撃に使うとすれば、イルダの言っていたゴーレムとかメテオみたいな物騒なものの他に、相手の剣や盾を壊してしまうなどという方法もあるのではないかとのこと。
まあ、そんな話をして、休憩がてら世間話のようにフェアリーの件を話したら笑われてしまったというわけだ。
「それで、みなさんはその大会に出場されると?」
「フレアとイルダはね。私とアルスは残念だけどあまり強くないから」
特にフレアはとても強く、私も一度対戦してみたけど、白番を譲ってもらったのにまったく歯が立たなかった。アルスには「そっちの記憶も目覚めてないのかよ」とか言われるし。パソコンでも持って来てれば、優勝なんだろうけどなあ。
「フレアとイルダは、勘を取り戻すため、とか言って毎日対戦してるわ。アルスは飽きちゃって剣の練習に戻ったみたい」
「アルスさんはともかく、ユーカさ…んが出場されないのは残念ですね。あの大会は若い女性がたくさん出場されるので人気が高いのですが」
男女別になっているのかしら。
「いえ、フェアリーチェスは何故か女性のほうが強くてですね。男性の参加は元々少ないのですよ。…ああ、そうするとちょうど良かったかな?」
「え?」
「いえ、今ギルドに、人気がなくて受ける冒険者がいない依頼が一つありまして。ユーカさ…ん向きかと思うのですよ」
「一人で出来る依頼?」
「ええ、町外れの林の草地に、色濃く繁茂したり、逆に枯れたりして、綺麗な輪がたくさん描かれているという話がありまして。気味が悪いだけでなく、隣接する畑の作物も同じような形で倒れていて、迷惑なので原因を調べて欲しいと。冒険者は、そういう調査的なことは苦手な人が多いですからね。魔物のせいではないかって噂も出ているので放っておくわけにもいかず…。あれ、頭を抱えてどうなさいました?」
「ケヴェスンさんも冗談きついわー」
問題の林に向かいつつ、私は呟いた。もっとも、ケヴェスンさんは、悪い冗談のつもりはなかったらしい。地球でもよくあるフェアリーリングやフェアリーサークルという現象を聞いたことがないのかもしれない。
「フェアリーリング」といったら、草地に丸い輪が出来ることで、フェアリーが輪になって踊った跡、という話がある。繁茂するのは良い妖精が踊った跡、枯れるのは悪い妖精が踊った跡、というわけだ。
「フェアリーサークル」というのは、輪ではない円形の異常現象の総称で、砂漠の草原に草が生えていない直径十数メートルの円形が規則的に点在していたり、融けかけた湖の氷が綺麗な円形になったり、麦畑の麦が円形に倒れていたり、と色々ある。
残念ながら、どれもフェアリーではなく単なる自然現象-風や普通の生物の仕業で説明できる。最後のは生物といっても人間だけど。15,6世紀ぐらいから記録があり、殆どの人は「どうせ人間の悪戯だろう」と思っていながら、「UFOの仕業だー」等と楽しんでいたこともあったらしい。
「でもこの世界なら、あるいは本当にフェアリーが…、ってのはやっぱりないのかしらね」
草地の方は、それで説明できても、畑の方は納得してもらうためには、悪戯をした人間を見つけなければいけない。結構難しい依頼のような気がしてきた。
「まあ、あまり被害はないんだけどなー」
「そうなんですか?」
林の横の麦畑に先に行って見ると、ちょうど畑の持ち主と思われるおじさんがいたので、サークルについて聞いてみるとそんな事を言う。
「ああ、倒れているだけで折れているわけでもないからな。収穫も近いし、刈り取るときに起こしてやれば済む話さ」
「なるほど」
「いや、それより気味が悪いんだよ!きっと魔物の仕業で…」
「え、えーと、誰かの悪戯とかじゃないですか?魔物の仕業にしては平和的というか何というか」
「いや、俺も悪戯かと思って夜見回りに来たんだよ。そうしたら、何の気配もしないのに、麦が自然に倒れて、さらに若い女の笑い声が聞こえて…」
女の子の悪戯かしら。
「それで、そーっと声の方を見てみたら、…誰もいないんだよ」
怪談調になってきた。
「あ、あれはきっと女の幽霊に違いない!」
…さっきは魔物の仕業って言ってたじゃないの。
あまり役に立たないおじさんの話をひとしきり聞いた後、林の方に行ってみた。木々の間から差し込む光が煌き、芝生のように綺麗に生え揃った草を照らしている。妖精が輪踊りしてもおかしくない…かもしれない。ピクニックに良さそうだ。
「しかし、これは…」
周りよりも濃くなった草が綺麗に輪を描いている。それがあちこちに、十数個以上あるだろうか。噂になるはずだ。
噂を聞いたのか、見に来ている人もいるようで、奥のほうでは10歳ぐらいの女の子が、リングを木の枝でつんつんと突っついている。
しかし、輪の形に花でも咲いていれば面白かったのだけど、草の色が濃いだけでは、やはり自然現象か。つまらないなあ。
『…今回のように、綺麗に生えそろった草地に、緑の色の濃いリング状の模様が現れることがあります。良く観察すると、色の濃い部分は、他の場所よりも草が成長してそう見えるということが分かります。これを小さな妖精が輪になって踊った跡だとして、フェアリーリング(妖精の輪)と呼ぶ人もいます。大きさは数十センチメートルから、十メートル以上のものもあります。庭の芝生なども、発見しやすい場所の一つです。
さて、このフェアリーリングですが、残念ながらこれを作ったのはフェアリーではなく、きのこです。きのこがどのようにリングを作るかお教えしましょう。まず、きのこの胞子がどこからともなく飛んできて、一つのきのこが生えます。そのきのこは自分の周りに胞子を撒き、しぼんでいきます。最初のきのこの撒いた胞子により、周りに新しい複数のきのこが輪になって生えます。その新しいきのこはまた周りに胞子を撒きますが、内側はしぼんだきのこが残っているために、胞子が地面に届きません。結局、きのこの輪の外側に、さらに新しいきのこの輪が出来ることになります。この繰り返しにより、きのこの輪はどんどん大きくなっていきます。きのこが芝生などの草地に生えるには、雨で地面が適度に湿っているなどの条件があり、この条件が満たされている間だけきのこの輪は大きくなっていきます。しぼんでしまったきのこは芝生などの草の養分となり、そこだけ草が元気良く濃い色を示すわけです。
多くのフェアリーリングにきのこの痕跡が認められないのは、次のような理由によるのでしょう。つまり、天気が悪くきのこが輪を大きくしているときには誰も草地など見ません。多くの人は雨が上がって太陽が顔を出し、きのこがしぼんでなくなってから、雨上がり後の晴天を楽しむためにピクニックなどに行きます。そこで草地に腰を降ろして、お弁当を広げてはじめてフェアリーリングを発見します。そして、「ああ、妖精も雨が上がってうれしくて、ここで輪踊りをしていったんだな」と思うのです…』
ざっと書いてみたけど、まあ、こんな感じかなあ。実際は土の中の菌糸が重要だったり、きのこ本体が栄養になるのではなく、菌糸についている化合物が成長ホルモンになったりしてるらしいけど、細かいことは良いだろう。
「あ、しまった!」
何気なく日本語で書いてしまったけど、これ、この世界の人は読めないじゃない。異世界補正というべきか、会話は自然と翻訳されているらしいし、こちらの本も文字は分からないのに意味が分かるので読めるのだけど、書くことは出来ないのだった。オクトーで気付いたとき、こちらの言葉も勉強しようかと思ったのだけど、自然と読めてしまうので、逆に勉強のしようがないのだ。
「あー、生物学的なことも含めて、明日コンラートさんにでも相談しようかしら」
畑の方の犯人を見つける問題も残っているしね。
「珍しいわね、三人揃ってなんて」
と声を掛ける。そもそも、アルスとイルダが部屋の中で何かをしているのが珍しい。いつも外で剣を振り回しているかと思ったけど。
「そうだ、ユーカはこれ知ってるか?」
「…チェスね」
「やっぱり知ってたか。昔、女神が伝えたと言われてるんだよ。千年以上前らしいけど」
アルスが言う。異世界に持ち込むゲームとしてはありがちか。しかし、ピアノもそうだったけど、千年以上前だと時代が合わない気がする。
「で、何でいきなりチェスなんてやってるのよ。アルスなんか全然似合わないじゃない」
「なっ、俺だってチェスぐらいやるぞ。親父が好きだったしな」
「あたしも子供の頃から『嗜み』として…」
「嗜み?」
「あ、いや、ほら淑女の嗜みってやつだよ…」
イルダが何故か焦っている、
「伝説のようなお話ですが、大昔に、争っている二つの大国があって、その争いを止めさせるために女神様が伝えたとか」
ああ、実際の戦争の代わりにチェスをやれと。いかにもな話だ。
「で、俺達がチェスをやってる理由だけど、来週チェスの大会があるんだってさ」
「大会?ここで?」
「そ、トレンタの町主催。毎年やってるらしいぜ」
「といってもフェアリーチェスだけどな。あたしはあまり得意じゃないんだよな」
「普通のチェスもあるらしいですよ?」
「フェアリーチェス?」
「女神様の伝えたチェスと異なる駒や盤を使うチェスのことですね。駒は魔物のグリフォンやバッファローが人気ですよ。盤は大きいのとか球形のものとかありますね」
なんか面倒くさそうだけど。それより、
「名前に使うぐらいだから、この世界にはフェアリーがいるの?」
剣と魔法の世界なら、妖精は外せないわよね。
「はあ?あんなの実際にいる訳ないだろ。そもそもおとぎ話みたいに小さかったら、人間と話せるだけの頭はないだろ。虫みたいなもんじゃん」
「あたしは、あれは軟弱な男共が、自分にとって都合の良い理想の女性を押し付けた想像の存在だと思うんだよ」
「フェアリーチェスは、『妖しい』とか『奇妙な』という意味で『妖精』という名を付けているので、実在していたら、ちょっと失礼かもしれませんね」
…そうだった、この人達は夢がないんだった。
「あっはっは、確かにフェアリーの存在は確認されていませんねー」
ケヴェスンさんは大笑いして言った。土魔法が魔工の役に立つかも、という話を思い出して、ケヴェスンさんの休みの日に工房兼自宅に寄ってみたのだ。魔力が高いほど硬くて加工しにくいものも加工出来るそうで、中々有用らしい。ただ、魔工に使うには精密な加工が必要な場合が多いので、私としては制御の方に難点があるかもしれない。攻撃に使うとすれば、イルダの言っていたゴーレムとかメテオみたいな物騒なものの他に、相手の剣や盾を壊してしまうなどという方法もあるのではないかとのこと。
まあ、そんな話をして、休憩がてら世間話のようにフェアリーの件を話したら笑われてしまったというわけだ。
「それで、みなさんはその大会に出場されると?」
「フレアとイルダはね。私とアルスは残念だけどあまり強くないから」
特にフレアはとても強く、私も一度対戦してみたけど、白番を譲ってもらったのにまったく歯が立たなかった。アルスには「そっちの記憶も目覚めてないのかよ」とか言われるし。パソコンでも持って来てれば、優勝なんだろうけどなあ。
「フレアとイルダは、勘を取り戻すため、とか言って毎日対戦してるわ。アルスは飽きちゃって剣の練習に戻ったみたい」
「アルスさんはともかく、ユーカさ…んが出場されないのは残念ですね。あの大会は若い女性がたくさん出場されるので人気が高いのですが」
男女別になっているのかしら。
「いえ、フェアリーチェスは何故か女性のほうが強くてですね。男性の参加は元々少ないのですよ。…ああ、そうするとちょうど良かったかな?」
「え?」
「いえ、今ギルドに、人気がなくて受ける冒険者がいない依頼が一つありまして。ユーカさ…ん向きかと思うのですよ」
「一人で出来る依頼?」
「ええ、町外れの林の草地に、色濃く繁茂したり、逆に枯れたりして、綺麗な輪がたくさん描かれているという話がありまして。気味が悪いだけでなく、隣接する畑の作物も同じような形で倒れていて、迷惑なので原因を調べて欲しいと。冒険者は、そういう調査的なことは苦手な人が多いですからね。魔物のせいではないかって噂も出ているので放っておくわけにもいかず…。あれ、頭を抱えてどうなさいました?」
「ケヴェスンさんも冗談きついわー」
問題の林に向かいつつ、私は呟いた。もっとも、ケヴェスンさんは、悪い冗談のつもりはなかったらしい。地球でもよくあるフェアリーリングやフェアリーサークルという現象を聞いたことがないのかもしれない。
「フェアリーリング」といったら、草地に丸い輪が出来ることで、フェアリーが輪になって踊った跡、という話がある。繁茂するのは良い妖精が踊った跡、枯れるのは悪い妖精が踊った跡、というわけだ。
「フェアリーサークル」というのは、輪ではない円形の異常現象の総称で、砂漠の草原に草が生えていない直径十数メートルの円形が規則的に点在していたり、融けかけた湖の氷が綺麗な円形になったり、麦畑の麦が円形に倒れていたり、と色々ある。
残念ながら、どれもフェアリーではなく単なる自然現象-風や普通の生物の仕業で説明できる。最後のは生物といっても人間だけど。15,6世紀ぐらいから記録があり、殆どの人は「どうせ人間の悪戯だろう」と思っていながら、「UFOの仕業だー」等と楽しんでいたこともあったらしい。
「でもこの世界なら、あるいは本当にフェアリーが…、ってのはやっぱりないのかしらね」
草地の方は、それで説明できても、畑の方は納得してもらうためには、悪戯をした人間を見つけなければいけない。結構難しい依頼のような気がしてきた。
「まあ、あまり被害はないんだけどなー」
「そうなんですか?」
林の横の麦畑に先に行って見ると、ちょうど畑の持ち主と思われるおじさんがいたので、サークルについて聞いてみるとそんな事を言う。
「ああ、倒れているだけで折れているわけでもないからな。収穫も近いし、刈り取るときに起こしてやれば済む話さ」
「なるほど」
「いや、それより気味が悪いんだよ!きっと魔物の仕業で…」
「え、えーと、誰かの悪戯とかじゃないですか?魔物の仕業にしては平和的というか何というか」
「いや、俺も悪戯かと思って夜見回りに来たんだよ。そうしたら、何の気配もしないのに、麦が自然に倒れて、さらに若い女の笑い声が聞こえて…」
女の子の悪戯かしら。
「それで、そーっと声の方を見てみたら、…誰もいないんだよ」
怪談調になってきた。
「あ、あれはきっと女の幽霊に違いない!」
…さっきは魔物の仕業って言ってたじゃないの。
あまり役に立たないおじさんの話をひとしきり聞いた後、林の方に行ってみた。木々の間から差し込む光が煌き、芝生のように綺麗に生え揃った草を照らしている。妖精が輪踊りしてもおかしくない…かもしれない。ピクニックに良さそうだ。
「しかし、これは…」
周りよりも濃くなった草が綺麗に輪を描いている。それがあちこちに、十数個以上あるだろうか。噂になるはずだ。
噂を聞いたのか、見に来ている人もいるようで、奥のほうでは10歳ぐらいの女の子が、リングを木の枝でつんつんと突っついている。
しかし、輪の形に花でも咲いていれば面白かったのだけど、草の色が濃いだけでは、やはり自然現象か。つまらないなあ。
『…今回のように、綺麗に生えそろった草地に、緑の色の濃いリング状の模様が現れることがあります。良く観察すると、色の濃い部分は、他の場所よりも草が成長してそう見えるということが分かります。これを小さな妖精が輪になって踊った跡だとして、フェアリーリング(妖精の輪)と呼ぶ人もいます。大きさは数十センチメートルから、十メートル以上のものもあります。庭の芝生なども、発見しやすい場所の一つです。
さて、このフェアリーリングですが、残念ながらこれを作ったのはフェアリーではなく、きのこです。きのこがどのようにリングを作るかお教えしましょう。まず、きのこの胞子がどこからともなく飛んできて、一つのきのこが生えます。そのきのこは自分の周りに胞子を撒き、しぼんでいきます。最初のきのこの撒いた胞子により、周りに新しい複数のきのこが輪になって生えます。その新しいきのこはまた周りに胞子を撒きますが、内側はしぼんだきのこが残っているために、胞子が地面に届きません。結局、きのこの輪の外側に、さらに新しいきのこの輪が出来ることになります。この繰り返しにより、きのこの輪はどんどん大きくなっていきます。きのこが芝生などの草地に生えるには、雨で地面が適度に湿っているなどの条件があり、この条件が満たされている間だけきのこの輪は大きくなっていきます。しぼんでしまったきのこは芝生などの草の養分となり、そこだけ草が元気良く濃い色を示すわけです。
多くのフェアリーリングにきのこの痕跡が認められないのは、次のような理由によるのでしょう。つまり、天気が悪くきのこが輪を大きくしているときには誰も草地など見ません。多くの人は雨が上がって太陽が顔を出し、きのこがしぼんでなくなってから、雨上がり後の晴天を楽しむためにピクニックなどに行きます。そこで草地に腰を降ろして、お弁当を広げてはじめてフェアリーリングを発見します。そして、「ああ、妖精も雨が上がってうれしくて、ここで輪踊りをしていったんだな」と思うのです…』
ざっと書いてみたけど、まあ、こんな感じかなあ。実際は土の中の菌糸が重要だったり、きのこ本体が栄養になるのではなく、菌糸についている化合物が成長ホルモンになったりしてるらしいけど、細かいことは良いだろう。
「あ、しまった!」
何気なく日本語で書いてしまったけど、これ、この世界の人は読めないじゃない。異世界補正というべきか、会話は自然と翻訳されているらしいし、こちらの本も文字は分からないのに意味が分かるので読めるのだけど、書くことは出来ないのだった。オクトーで気付いたとき、こちらの言葉も勉強しようかと思ったのだけど、自然と読めてしまうので、逆に勉強のしようがないのだ。
「あー、生物学的なことも含めて、明日コンラートさんにでも相談しようかしら」
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