最高の兄妹

古明地 蓮

文字の大きさ
1 / 1

終わりの一日

しおりを挟む
僕には、2人の妹がいる。

ゆかりと綾香だ。

僕の家には、親がいないため、いつも兄妹3人で頑張ってきた。

2人は双子だから、とても似ているけど、綾香の方が優しく、ゆかりは頭がいい。

僕にとっては、どちらも甲乙をつけがたい良い妹だ。

今日は、妹と一緒に遊びに行くことにした。

2人ともゲーセンで遊ぶのが大好きなので、休日に行こうと約束していた。

そうして、とうとう休日になった僕は、すごくうきうきしていた。

別に、恋愛的な感情ではないが、妹たちのことは大好きだ。

僕のために、家事もしてくれるし、朝も起こしてくれる。

今日の朝も、綾香が僕のことを起こしてくれている間に、ゆかりは朝ご飯を作ってくれていた。

しかも僕の大好きなスクランブルエッグをたくさん作ってくれていた。

朝からそんな浮かれている僕は、てきぱきとゲーセンに行くための準備をした。

といっても、顔を洗い、歯を磨き、髪を整えたぐらいだ。

食器や調理器具を洗っている2人に比べればすぐ終わることだ。

そうこうしているうちに、洗い物が終わったようで、出発の準備をし始めていた。

とっくに準備を終えていた僕は、遠足に行く前の子供みたいに落ち着かない様子だった。

こうやって遊びに行ける日々が続けば、それでいいと思ってた。

ようやく2人の準備も終えたようなので、3人そろってゲーセンまで歩いて行った。

家からそう遠く離れていないところにあるので、友達たちともよく行っていた。

雑談をしていると、あっという間にゲーセンの入り口についてしまった。

中に入ると、ゲーセンらしい音楽が、耳に流れ込んできた。

「さて何からする?」

と2人に問いかけると、2人は、

「クレーンゲーム!」

と答えたので、クレーンゲームのコーナーへ向かった。

そこには、有名なアニメやラノベのキャラクターのぬいぐるみやフィギアが入っていた。

妹たちは、その中から、有名アニメの脇役のキャラをとろうとしていたので、少し欠けをしてみようと思った。

「なあ、綾香」

「なに、兄さん?」

「少し賭けをしないか?」

「いいよ。

 どんな内容?」

「3人で交互に遊んで、誰が最初に取ることができるかを当てる」

「それって自分に入れない人いる?」

「多分いないと思う」

「じゃあさ、ゆかりも誘わない?」

「いいね」

ということで、ゆかりも誘うことにした。

「なあ、ゆかり」

「どした、兄さん?」

「一緒にかけをしないか?」

「綾香はやるの?」

「やるといってるよ」

「内容は?」

「誰が最初に取れるか」

「いいよ」

ということで、みんなで賭けをすることになった。

ちなみに、勝者には誰かに1つ命令できる特権がもらえるということなので、何としても勝とうと思った。

最初は、綾香だった。

ただ、最初に取れることは、ほとんどないので、安心していた。

なのに、何と綾香は一発で取ってしまった。

アームの力は弱いが、ちょうどいいところにはまったらしく、ぎりぎりアームから落ちずにとれていた。

さて、命令は、どうなるのか。

「それじゃ、お兄ちゃんが、私のために、紅茶を買ってくる」

「紅茶を買ってくるだけでいいの?

 作らなくてもいいの?」

「当たり前じゃん。

こないだ、作らせたら、ひどい味だったから、もう期待しない」

「期待しないって」

そこまでいわれることなのか。

確かにこないだ作ったときは、味がないのに、微妙な苦みだけが残った。

あれは自分で飲んでもきつかった。

「いつ買いに行けばいいの?」

「ゲーセンで遊びきったら」

「わかった」

そのあと、僕らはいろんなゲームをやって遊んだ。

久しぶりにゲーセン来たので、みんな少しはっちゃけていたのかもしれない。

気づいたら正午が近づいていたので、帰ることにした。

「楽しかったねー」

「すごい楽しかった。

 それじゃ、僕は、紅茶を買ってから帰るから」

「わかった。

 先に帰るからね」

「いいよー。

 コンビによって来るから」

「おさき―」

そう言って、僕らは分かれた。

僕はコンビニ行って、紅茶を買ったので、外に出ようとしたら、雨が降ってきた。

さて、どうしたものか。

急げば間に合いそうだが、ゲリラ豪雨なので、びしょ濡れは確定だ。

そう僕が迷っていると、綾香から電話が来た。

「もしもし?」

「もしもし、兄さん!

 ゆかりが!!!」

「ゆかりがどうした?!」

そう僕が焦って聞くと、電話から、

「ふふっ」

笑い声が聞こえてきた。

「え?」

「ゆかりがね、兄さんが濡れてないか心配してるんだよ。

 だから、ちゃんと傘買って、濡れないで帰ってきてね」

「わかった」

「じゃあね」

「それじゃあ」

そう言って、僕は電話を切った。

最初に、「ゆかりが!!!」って言った時はさすがに焦った。

ただ単に、命令として紅茶を買わせて、ゲリラ豪雨にあった僕へのやさしさだろう。

妹に言われてしまったので、ちゃんと傘を買おう。

踵を返して、コンビニに入った。

そんなに迷うこともなく傘を見つけられたので、すぐに買って外に出た。

妹が待っているので、早く帰ろうと思った。

特に何も考えずに歩いていると、すぐに家に着いた。

扉を開けようとして、違和感があった。

玄関の鍵が開いていたのだ。

とにかく戸締りに厳しい綾香がいるので、空いてることはないと思った。

家に入ったら、いつもと違うにおいがした。

何だろう。

いつもの華やかなにおいに対して、血なまぐさい感じがした。

しかも、お帰りの挨拶がない。

どういうことだろう。

リビングの扉を開けた瞬間、絶対にあってほしくない事実が待ってた。

壁には血しぶきの後。

床は血の海。

そして、僕の家族が倒れていた。

その時、すべてを悟った。

あの時、電話をもらった時、この家には殺人鬼がいたのだ。

そして、きっとゆかりが襲われていたので、綾香が僕に助けを求めてきたのだ。

でも、僕には死んでほしくなかったのだろう。

だから、僕の帰りが遅くなるようにするために、傘を買わせたのだろう。

知って何になるだろう。

僕にとってのすべての生きる意味が妹だったのに。

そうして死んでしまったんだ。

しかも、自分がもう少し早く帰ってきていれば。

最初の悲鳴ですべてを察していれば。

もう僕に生きる意味なんてない。

綾香の体に刺さってるナイフを引き抜いた。

「本当に、ごめんな」

そう言って、僕は自分の首を掻っ切った。

その時感じたのは、1瞬で死ぬなら、特に痛くないんだなという、感想だった。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~

銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。 自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。 そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。 テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。 その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!? はたして、物語の結末は――?

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

私の夫は妹の元婚約者

彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...