偽装結婚のはずが、溺愛なんて聞いてません!

白亜凛

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一、降って湧いた契約結婚

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「いいこと尽くしだというのに兄さんは何を迷っているんだか、なかなか首を縦に振らなくてな。離婚歴くらいどうってことないのに」

「離婚歴?」

「ああ〝たったの二回〟だ。これだけの好条件なんだから、それくらいどうってことないだろ?」

 美咲は(へ? 二回も?)と衝撃を受けたが、叔父の圧が凄くて口にはできず、苦笑交じりに「はい」と頷いた。

 天城隼人は二十八歳とまだ若い。一度だけならまだしもすでに二度の離婚歴だなんて、よほど結婚運が悪いのか。もしくは彼のDVか浮気か。身上書に写真はないが、もしかして耐えられない容貌とか……と考えたところで見透かしたように伯父が言った。

「イケメンだぞ。それもとびきりの」

(えー、とびっきりのイケメンで、離婚歴二回?)

 ますます怪しくて、頬がぴくぴくと引きつる。

 見合いが嫌なわけじゃない。イケメンじゃなくてもいいから、できればごく普通であってほしい。

「あの……離婚の理由は、何なんですか?」

 叔父はきっぱりと「知らん」と切り捨てた。

「美咲、今こそ、育ててもらった恩返しのときだぞ」

 ズキッと胸が痛んだ。〝恩返し〟という言葉が心に深く突き刺さる。その言葉の意味は美咲にとってあまりに大きく重い。心の中の雑念が一瞬で氷の塊になって崩れ落ちた。

 どうせ、好きな人がいるわけじゃないのだ。キリ原のためとなれば、美咲には自分から断る選択はない。ただ一つだけ確認したいことがある。

「ただあの……」と恐る恐る聞いてみた。

「先方は私が養子だと、ご存じなんですか?」

「大丈夫だ。先方もそれはわかっている。そこは心配ない」

 美咲はホッと胸を撫で下ろした。それならばもう迷いはない。キュッと唇を結んでにっこりと顔を上げた。

「わかりました。その縁談お受けします」
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