月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛

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◆嘘でも真実でも * 弥衣

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 夜十一時過ぎ。

 尊さん、今夜も遅いのかなぁ?

 などと思いながら、のんびりとお風呂に入り、冷蔵庫の中から取り出したミネラルウォーターを飲んでいる時だった。

 カチャと玄関の扉が開く音がして、「大丈夫ですか?」という女性の声がする。
 と同時にガタガタと物がぶつかるような音が響いた。

 何事かと廊下から覗くと、壁に手をあてて寄りかかる尊さんと以前ここで見かけた女性秘書がいる。

「あ、奥様」

「どうしたんですか?」

 慌てて駆け寄ると、尊さんからプンと酒の匂いがする。
 体調が悪いわけではなく、どうやら酔っているらしい。

「すみません。奥様」
「あ、い――」
「来るなっ! いいからお前は来るなっ」

 私の言葉を遮るように言い放った尊さんは、鋭くキッと私を睨んだ。
 あまりの剣幕にずきっと心が痛み、その目に圧倒されて思わず固まる。

「あ、お、奥様。私が」

 尊さんは彼女に肩を借りるようにして廊下を歩きはじめた。

 彼の手は彼女の肩をしっかりと抱いている。
 見せつけるような仕草に、再びずきずきと心に刃が刺さる。

「すみません――。お願いします」
 彼の寝室に入っていくふたりに、私はなすすべもなく頭をを下げて、彼らに背中を向けた。

 こんなの、絶対に変だ。

 秘書とはいえ妻を下がらせてふたりで寝室に入っていくなんて普通じゃない。

 彼が本当の夫なら、私は彼を怒るし、女性秘書には玄関先で帰ってもらう。
 あがってもらってコーヒーの一杯を出すにしても、彼の手を引いて彼女から引きはがすだろう。

 だけど、私はそんな行動にはでなかった。

 心のどこかで、いつかこうなるとわかっていたんだと思う。
 その証拠に、意外な気はせず、事実を受け止めている。

 でも、せめて、私がいない時にいちゃつくくらいの配慮があるべきじゃない?

 明日、それだけは言わせてもらおう。

 来るとわかっていれば、ホテルに泊まるとかなんとかできるのに。
 いくらなんでも目と鼻の先で“そういうこと”をするとか、ひど過ぎるではないか。
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