ALL MY THINGS 〜耳鳴りが止まるまで〜

初夜

「ちょっとぉー！何で一緒の部屋なのよぉ！」
「仕方ないだろ、２人とも金欠で個室に泊まれないんだから！」

幾らか割安の２人部屋に泊まる事になった。割安な２人部屋とは言え、１８畳程の広さにバス、トイレ付き。オマケに冷暖房完備とくれば文句を言うのは贅沢だ。

因みにこのゲーム、オレ達に限らず金欠になるのは、珍しい事では無い。
モンスターを倒しても得られるのは経験値と装備品やアイテムだけで、お金は落とさない。
モンスターは買い物などしないので、お金を持っていないのは当たり前と言えば当たり前なのだ。
で、戦利品を武器屋等で換金するのだが、これがなんとも渋い。
一日中モブ狩りをして、良くて１万円くらい。あ、日本限定版だからなのか通貨の単位は円なのだ。

「変な事しないでよ！いい？この線からコッチに来たら責任取って貰うからね！」
「ん？責任取ればイイの？」

「・・・」

「なんか間違ったじゃない！」

～　かわいいっ！　～

「さっさと寝るわよっ！」
「はいはい、おやすみ～。」
「おやすみっ！」

～　んー、ビール飲んだからかな　～
～　オシッコしたい。トイレっと　～

尿意で目が覚めたオレは半ば寝ボケたままトイレに入ったつもり、と言うか間違いなくトイレに入ったのだが、まぁ、よく有るバスとトイレが一緒なタイプなのだ。我慢も限界だったオレは速攻、ズボンを下ろして放尿しようとしたその瞬間．．．

シャー！

バス側のカーテンが開いた。
そこには下半身まる出しの男と、バスタオルを取ろうとしている全裸の女がいた。

「あの、その、責任取るから．．．」

放心状態だったのか、数秒後．．．

「要らないわよぉ～！早く出てけぇー！」
「やっ、あの、まだ出してない．．．」
「何出す気よ！この変態！痴漢！露出魔ー！」
「分かった、分かったから！早く替わってくれよ、ホント限界だから。」
「うるさいっ！」

慌ててオレはバスルームから飛び出した。

“あずき”はオレが寝入るのを待ってシャワーを浴びていたらしい。

～　カギ掛けとけよ。うん。オレは悪くない！　～

しばらくして出て来た”あずき”はプンスカしたまま一言も話さず寝てしまった。

思わぬラッキースケベに遭遇したオレは興奮して眠れぬ夜を過ごしたのだった．．．