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祭 1
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それから数日、”あずき”が待ちに待った祭の日がやって来た。
「おぉー、随分と賑やかだなぁ」
「すっごーい!ココって、こんなに人いたんだねー!」
屋台の数は5軒だけなのだが、公園の3分の1を埋め尽くそうかという数の人達で賑わっていた。”祭”だ。屋台があるだけで、特にイベントがある訳でも無い様だが、確かに、そこにあるのは”祭”の光景だった。
ちなみに、雑貨屋から果ては武具屋まで探してみたが、何処にも浴衣は売っていなかった。半分、冗談だったらしく、今日の”あずき”は特に怒るでも無く、むしろ、祭の雰囲気に上機嫌の様だ。
「行こうか。」
「うん!私、ヤキソバ食べたーい!」
「ははは、でも最初に”やすお”さんのところに挨拶に行こうよ。」
「ぷぅー!仕方ないわねぇ、その後はヤキソバだからねっ?」
「分かった、分かった。」
“あずき”は少しだけ不機嫌そうな顔になった。
オレは不思議だった。なんで、この世界にヤキソバやら、たこ焼きが有るのか...
まぁ、答えは簡単だったのだが、市場に行けば大抵の、少なくとも食材は手に入るのだった。だから、加工法を知っていたり、調理方法が身についている人なら自炊生活も可能な訳だ。
「オヤッサーン!」
「よう!来たな、”よーすけ”!大根、イイ感じに染みてるぞ!」
食べたい!オレは、おでんの大根が大好きなのだ。しかし...
「あ、とりあえず挨拶だけ、後でゆっくり来ます。」
「そうかい!待ってるぜー!おや?”あずき”ちゃん、なんか機嫌悪そうだなぁ。同棲生活も倦怠期かい?」
真っ赤な顔をして”あずき”は言い返した。
「ど、ど、ど、同棲じゃありません!節約の為に仕方なく2人部屋に泊まっているだけです!」
「ありゃ?!ホントに怒らせちまったか?でもよ、毎晩、宿屋に泊まれるなんて流石、高レベルプレイヤーだよなぁ。おっと、イヤミじゃねえよ、ココってよ、ある意味で弱肉強食、実力主義だからなぁ。」
「それじゃあ、後でまた来ます。」
苦笑いしながらオレ達は、その場を後にした。
「同棲じゃ無いよね..?」
「他の人には、そう見えるのかもね。」
「・・・バカ...」
「ヤキソバ。食べるんでしょ?」
「うん!ヤキソバ!私、お祭り行ったら必ず食べるんだっ。」
元気な”あずき”に戻っていた。
「うーん、美味しかったー!あの人、プロよ。うん、間違いないわ、プロよ。」
こういう所で食べると、大体、2割増しくらいで美味しく感じるものだ。実際、”おでん”の為に腹を空けておこうと、オレは注文しなかったので”あずき”に少し貰って食べたが、いたって普通の味だった。
~ 普通?現実ではないココで、普通って貴重な事なのかも知れないな... ~
おでんの為の腹は空けておきたいが、オレにも”祭”に行ったら必ず食べる物が有る。フランクフルトだ。実はオレは加工肉推進派なのだ。生肉と違い、味に当たり外れが無いのが素晴らしいと思っている。フランクフルトは細いより太い方がイイ。何故ならケチャップとマスタードをタップリ目に乗せても落ちにくいからだ。口を大きく開けなくてはならないが、その分、食べ応えがあって良い。
「フランク下さーい!」
「はいよー!ケチャップとマスタードは其処に有るから、好きなだけ使ってイイよー!」
「ありがとうございまーす!」
「ソレもなかなか美味しそうね..」
「祭と言えば、コレだよ、コレ!」
温かい内に食べよう。まず、一口。
「マ・イ・ウ・ー!!」
「ナニそれ?古っ!」
「いや、そう言いたくなる程ウマイんだよ。あの人プロだな。うん、間違いなくプロだ。」
「焼いただけでしょ?誰が焼いたって同じじゃない」
「そうでもないよ?例えば、焼き足りないと当然ヌルいし、中の脂肪の部分がそのまま白く残ってたりするし、焼き過ぎると脂が全部落ちちゃって、干からびて固くなっちゃう。パリッとジューシーなのがイイんだよ。」
「よく分かんないけど、そんなに美味しいんなら私にも食べさせてよ、アンタのフランク。ヤキソバあげたでしょ?」
~ 食べさせてよ、アンタのフランク ~
「もう一回、言ってくれる?」
「だからぁ、アンタのフランク...って、ホントにバカねっ!もういい、要らない!」
お年頃の女子の正常な妄想力を持っている”あずき”であった。
「おぉー、随分と賑やかだなぁ」
「すっごーい!ココって、こんなに人いたんだねー!」
屋台の数は5軒だけなのだが、公園の3分の1を埋め尽くそうかという数の人達で賑わっていた。”祭”だ。屋台があるだけで、特にイベントがある訳でも無い様だが、確かに、そこにあるのは”祭”の光景だった。
ちなみに、雑貨屋から果ては武具屋まで探してみたが、何処にも浴衣は売っていなかった。半分、冗談だったらしく、今日の”あずき”は特に怒るでも無く、むしろ、祭の雰囲気に上機嫌の様だ。
「行こうか。」
「うん!私、ヤキソバ食べたーい!」
「ははは、でも最初に”やすお”さんのところに挨拶に行こうよ。」
「ぷぅー!仕方ないわねぇ、その後はヤキソバだからねっ?」
「分かった、分かった。」
“あずき”は少しだけ不機嫌そうな顔になった。
オレは不思議だった。なんで、この世界にヤキソバやら、たこ焼きが有るのか...
まぁ、答えは簡単だったのだが、市場に行けば大抵の、少なくとも食材は手に入るのだった。だから、加工法を知っていたり、調理方法が身についている人なら自炊生活も可能な訳だ。
「オヤッサーン!」
「よう!来たな、”よーすけ”!大根、イイ感じに染みてるぞ!」
食べたい!オレは、おでんの大根が大好きなのだ。しかし...
「あ、とりあえず挨拶だけ、後でゆっくり来ます。」
「そうかい!待ってるぜー!おや?”あずき”ちゃん、なんか機嫌悪そうだなぁ。同棲生活も倦怠期かい?」
真っ赤な顔をして”あずき”は言い返した。
「ど、ど、ど、同棲じゃありません!節約の為に仕方なく2人部屋に泊まっているだけです!」
「ありゃ?!ホントに怒らせちまったか?でもよ、毎晩、宿屋に泊まれるなんて流石、高レベルプレイヤーだよなぁ。おっと、イヤミじゃねえよ、ココってよ、ある意味で弱肉強食、実力主義だからなぁ。」
「それじゃあ、後でまた来ます。」
苦笑いしながらオレ達は、その場を後にした。
「同棲じゃ無いよね..?」
「他の人には、そう見えるのかもね。」
「・・・バカ...」
「ヤキソバ。食べるんでしょ?」
「うん!ヤキソバ!私、お祭り行ったら必ず食べるんだっ。」
元気な”あずき”に戻っていた。
「うーん、美味しかったー!あの人、プロよ。うん、間違いないわ、プロよ。」
こういう所で食べると、大体、2割増しくらいで美味しく感じるものだ。実際、”おでん”の為に腹を空けておこうと、オレは注文しなかったので”あずき”に少し貰って食べたが、いたって普通の味だった。
~ 普通?現実ではないココで、普通って貴重な事なのかも知れないな... ~
おでんの為の腹は空けておきたいが、オレにも”祭”に行ったら必ず食べる物が有る。フランクフルトだ。実はオレは加工肉推進派なのだ。生肉と違い、味に当たり外れが無いのが素晴らしいと思っている。フランクフルトは細いより太い方がイイ。何故ならケチャップとマスタードをタップリ目に乗せても落ちにくいからだ。口を大きく開けなくてはならないが、その分、食べ応えがあって良い。
「フランク下さーい!」
「はいよー!ケチャップとマスタードは其処に有るから、好きなだけ使ってイイよー!」
「ありがとうございまーす!」
「ソレもなかなか美味しそうね..」
「祭と言えば、コレだよ、コレ!」
温かい内に食べよう。まず、一口。
「マ・イ・ウ・ー!!」
「ナニそれ?古っ!」
「いや、そう言いたくなる程ウマイんだよ。あの人プロだな。うん、間違いなくプロだ。」
「焼いただけでしょ?誰が焼いたって同じじゃない」
「そうでもないよ?例えば、焼き足りないと当然ヌルいし、中の脂肪の部分がそのまま白く残ってたりするし、焼き過ぎると脂が全部落ちちゃって、干からびて固くなっちゃう。パリッとジューシーなのがイイんだよ。」
「よく分かんないけど、そんなに美味しいんなら私にも食べさせてよ、アンタのフランク。ヤキソバあげたでしょ?」
~ 食べさせてよ、アンタのフランク ~
「もう一回、言ってくれる?」
「だからぁ、アンタのフランク...って、ホントにバカねっ!もういい、要らない!」
お年頃の女子の正常な妄想力を持っている”あずき”であった。
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