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祭 2
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途中、何度か「イチャイチャ」だの「ラブラブ」だのと冷やかされながら、オレ達は”やすお”さんの屋台に向かっていた。
「おーい、”よーすけ”くーん!」
“しういち”さんだ。
「”やすお”さんのところに行くのかい?」
「はい。おでん食べながら”祭”が終わるまで飲もうかなって。それより、何ですか?ソレ。」
「あぁ、コレ?たこ焼きだよ。」
~ たこ焼き?!なんとも不細工な ~
「流石に、たこ焼きの鉄板なんてココには無いみたいで、平らな鉄板の上で、ソレっぽく見える様に頑張って焼いてたよ。」
~ お好み焼きじゃダメだったのか? ~
「へ、へ~涙ぐましい努力ですね。」
「だよねー。お好み焼きにすれば良かったのにねー。」
~ やっぱり、そう思うか.. ~
「オヤッサン、来ましたよ。」
「おぅ!待ってたぜー!”しういち”も、一緒か?2人とも、いつものヤツでいいか?」
「はい、お願いします!」
「”あずき”ちゃんも、いつもの烏龍茶でいいかい?」
「うーん、今日は焼酎のウーロン割で。」
「だよなぁ、祭だもんなぁ!」
飲み始めてから結構な時間が経った。
とっくに日付は変わっていたが、公園を出る人は少なかった。屋台の人達も、今日はお客さんが居なくなるまで営業するつもりの様だ。
「いやぁ、みんな楽しんでくれたみてぇだなぁ。」
「はい。大成功じゃないですか?」
「だな。オレも最後に良い思い出になったよ。」
~ えっ...? ~
「最後って..?」
「あー、言って無かったか。オレな、2~3日中に”昭和”に行く事にしたんだわ。」
「え?どうして..?」
「まぁ、なんだ、需要と供給ってヤツだな。ココでの稼ぎに不満が有る訳じゃねぇんだけどな、”しういち”の話だとよ、昭和の街はプレイヤーの数の割には屋台が少ねぇみたいなんだよ。」
~ なるほど。 ~
「儲かるとイイですね。」
「そうだなぁ。オレな、夢っつーか、ココでの目標が出来たんだわ。」
「へー、何ですか?」
「街を繋ぐ街道に宿場町みてぇの作れねぇかなって。みんな、何かしらの事情があって街の間を行き来してると思うんだよ。そんなヤツらの安らげる場所、作りてぇなぁ..と思ってな。」
~ そんな事、考えてたんだ.. ~
「イイですね、ソレ。きっと、皆んな喜ぶと思いますよ。でも、昭和には1人で行くんですか?落武者に襲われたら..」
「ソレな!前に今のハナシしたら”しういち”が一緒に来てくれるってんだよ。なっ!」
「はい。ボクで良ければ。落武者退治は得意ですから。よほど運が悪く無ければ、無傷で昭和まで行けますよ。」
「それなら安心ですね。んっ?運が悪いと、どうなるんですか?」
「昭和の手前の辺りでオークに遭遇して仲良く御臨終かな..まぁ、今は往来が多いから、きっと誰かが気付いて蘇生してくれるよ。」
「なぁ、あずき?」
オレは小声で話しかけた。
「何よ?」
「あのさ...」
「あー、もう、分かってるわよ!昭和に行くって言うんでしょ!?」
「うん、なんかさ..」
「私だって、今のハナシ聞いちゃったら、旅のご無事を祈ってます。とか言って、すました顔して送り出せないわよ..」
「じゃあ、いいんだね?」
「イイわよ。」
「オヤッサン!」
「どしたい?」
「オレ達も行きますっ!一緒に行っても良いですか?!」
「そりゃあ、お前さん達が来てくれりゃ心強えけどよ、良いのかい?」
「はい!その、オレも何て言うか、ココで..」
「あーっ、焦ったい!私、昭和の街に行ってみたいんです!なんか、景気イイらしいし。」
「そうかい、ありがとよ..」
「コレでイイのよ!」
“あずき”がオレにだけ聴こえる様に小声で言った。ホントに良く出来たヨメ(願望)である。
「それじゃあ、出発は3日後の朝だから、必要な物、準備しといてくれよ!コレはサービスだ。」
お礼のつもりだろうか、他に客の居なくなった屋台で、オレ達3人に飲み物を振る舞ってくれた。
その後、東の空が薄ら明るくなり始めた頃、オレ達は公園の芝生の上で眠りについたのだった...
「おーい、”よーすけ”くーん!」
“しういち”さんだ。
「”やすお”さんのところに行くのかい?」
「はい。おでん食べながら”祭”が終わるまで飲もうかなって。それより、何ですか?ソレ。」
「あぁ、コレ?たこ焼きだよ。」
~ たこ焼き?!なんとも不細工な ~
「流石に、たこ焼きの鉄板なんてココには無いみたいで、平らな鉄板の上で、ソレっぽく見える様に頑張って焼いてたよ。」
~ お好み焼きじゃダメだったのか? ~
「へ、へ~涙ぐましい努力ですね。」
「だよねー。お好み焼きにすれば良かったのにねー。」
~ やっぱり、そう思うか.. ~
「オヤッサン、来ましたよ。」
「おぅ!待ってたぜー!”しういち”も、一緒か?2人とも、いつものヤツでいいか?」
「はい、お願いします!」
「”あずき”ちゃんも、いつもの烏龍茶でいいかい?」
「うーん、今日は焼酎のウーロン割で。」
「だよなぁ、祭だもんなぁ!」
飲み始めてから結構な時間が経った。
とっくに日付は変わっていたが、公園を出る人は少なかった。屋台の人達も、今日はお客さんが居なくなるまで営業するつもりの様だ。
「いやぁ、みんな楽しんでくれたみてぇだなぁ。」
「はい。大成功じゃないですか?」
「だな。オレも最後に良い思い出になったよ。」
~ えっ...? ~
「最後って..?」
「あー、言って無かったか。オレな、2~3日中に”昭和”に行く事にしたんだわ。」
「え?どうして..?」
「まぁ、なんだ、需要と供給ってヤツだな。ココでの稼ぎに不満が有る訳じゃねぇんだけどな、”しういち”の話だとよ、昭和の街はプレイヤーの数の割には屋台が少ねぇみたいなんだよ。」
~ なるほど。 ~
「儲かるとイイですね。」
「そうだなぁ。オレな、夢っつーか、ココでの目標が出来たんだわ。」
「へー、何ですか?」
「街を繋ぐ街道に宿場町みてぇの作れねぇかなって。みんな、何かしらの事情があって街の間を行き来してると思うんだよ。そんなヤツらの安らげる場所、作りてぇなぁ..と思ってな。」
~ そんな事、考えてたんだ.. ~
「イイですね、ソレ。きっと、皆んな喜ぶと思いますよ。でも、昭和には1人で行くんですか?落武者に襲われたら..」
「ソレな!前に今のハナシしたら”しういち”が一緒に来てくれるってんだよ。なっ!」
「はい。ボクで良ければ。落武者退治は得意ですから。よほど運が悪く無ければ、無傷で昭和まで行けますよ。」
「それなら安心ですね。んっ?運が悪いと、どうなるんですか?」
「昭和の手前の辺りでオークに遭遇して仲良く御臨終かな..まぁ、今は往来が多いから、きっと誰かが気付いて蘇生してくれるよ。」
「なぁ、あずき?」
オレは小声で話しかけた。
「何よ?」
「あのさ...」
「あー、もう、分かってるわよ!昭和に行くって言うんでしょ!?」
「うん、なんかさ..」
「私だって、今のハナシ聞いちゃったら、旅のご無事を祈ってます。とか言って、すました顔して送り出せないわよ..」
「じゃあ、いいんだね?」
「イイわよ。」
「オヤッサン!」
「どしたい?」
「オレ達も行きますっ!一緒に行っても良いですか?!」
「そりゃあ、お前さん達が来てくれりゃ心強えけどよ、良いのかい?」
「はい!その、オレも何て言うか、ココで..」
「あーっ、焦ったい!私、昭和の街に行ってみたいんです!なんか、景気イイらしいし。」
「そうかい、ありがとよ..」
「コレでイイのよ!」
“あずき”がオレにだけ聴こえる様に小声で言った。ホントに良く出来たヨメ(願望)である。
「それじゃあ、出発は3日後の朝だから、必要な物、準備しといてくれよ!コレはサービスだ。」
お礼のつもりだろうか、他に客の居なくなった屋台で、オレ達3人に飲み物を振る舞ってくれた。
その後、東の空が薄ら明るくなり始めた頃、オレ達は公園の芝生の上で眠りについたのだった...
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