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第24話『触媒にまつわるエトセトラ』
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望郷可視化薬の件から早3日が経ち、レンリエッタはピラリカの練習を欠かさず行いつつも、魔術指南書を読み漁る日々を過ごしていた。最初は火花と煙だけだったピラリカもだいぶ形になって来た。
唱えれば杖先からバシッという音ともにいくらかの火が散るようになり、形状は不安定ながら着々と上達していた。
それと学んだ事もあった……決してベッドの中でピラリカを使ってはいけない…と。
「はぁ~あぁ……昨日は災難だったなぁ…」
「お嬢様…魔法の練習をする時は周囲に気を配り、環境をよく考えるようにしてくださいね…」
「うん…もうたくさんだよ、火あぶりなんて…」
昨晩、ボヤ騒ぎを起こしてしまったレンリエッタはいつもより気を沈めて朝を過ごしていた。だが危うくこんがりと焼けてしまうところだったので、無傷で済んだのは幸いだった。
もしかすれば朝を過ごす事も出来なかった…なんて事もあり得たので、考えるだけでも恐ろしい事である。
朝食のオーツリゾットをスプーンでかき混ぜながら、レンリエッタはため息を吐いた。
「はぁ……」
「どうかしましたか、お嬢様…今朝は食欲が見受けられませんが…」
「ううん、ちょっとね……ねぇ砂糖ちょうだい」
「ええどうぞ。ですが健康のため掛け過ぎには気を付けてくださいね」
レンリエッタはリゾットに砂糖をサーッと振りかけると、少し混ぜてから一口食べた。甘いせいか、少し元気が湧いて来た気がした。
続いてふたくち、みくち食べているとエラフィンがキッチンへ入って来た。今日はいつになく、朝から元気そうだった。
「レンリエッタ、急に聞くがどこか悪かったりしないだろうね?」
「ぐぷっ……せ、先生急にどうしたの…」
「何やら今朝はいつもより調子が良さそうですが…」
「ふふふ、まぁちょっと今日は行くところがあるからね。」
エラフィンはいつもより軽い足取りでキッチンへ着くと、グリスにコーヒーを淹れさせた。今日はやたらと上機嫌だ…
レンリエッタは一体どこへ連れって行ってくれるのか聞いてみた。事前の準備も無しに怪物の巣穴にだけは連れて行かれたくないのだ。
「先生、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「ちょっと遅い気もするが、アンタの触媒を探そうと思ってね。行きつけの触媒店に連れて行ってやるさ。」
「ほほう…そう言えばお嬢様は自分の触媒を持った事がありませんでしたね…」
「でも、もう持ってるよ。ほら、杖を。」
エラフィンは触媒の店へと連れて行ってくれるらしいが、レンリエッタは既に先人の杖を自分の触媒として所有している。これだけでも充分に事足りるのだが…どうやらそうもいかないらしい。
エラフィンはオーツミールに砂糖をドバドバ掛けながら説明し始めた。
「いいかい?触媒ってのは初級魔術を扱う程度じゃ相性ってのはそう分かりにくいんだ。ロッドにしろ、ワンドにしろ人には相性ってもんがあるからね。今後の事も踏まえて質の良い適正品を持たせておきたいのさ。」
人に扱える魔法の得意不得意があるように、人には触媒によって向き不向きが存在する。ちなみに触媒と言うのは魔法を扱う際に必ず持つべきものであり、詠唱によって魔力原子を魔法へと変換させる道具である。
エラフィン曰く、初級魔法の類は術者に合わない触媒でも多少は発動可能らしいが、中級以上となればそうともいかない。魔法というのは複雑化すればするほど魔力の扱いに繊細な注意を払う必要があるので、合わない触媒を使用すると上手くコントロールできず、発動できないどころか不運な事故を引き起こす可能性すらあるのだ。
「でも…良い触媒って…高いでしょ?」
「そりゃあね、だから出世払いで返してもらうよ。いつの日かアンタが魔術師として金を稼いだらキッチリ取り立てさせてもらうから。」
「でも私、遺産とか持ってるし…」
「ダメダメダメ!せっかくアイツが遺してくれた金なんだ、そう野暮に使うもんじゃないよ」
「そっかぁ…ありがとう、先生。」
料金に関してはエラフィンがひとまず負担してくれる様だ。出世払いと言うが、おそらく何十年も後になる話だろうし、もしかしたら彼女なりの気遣いなのかもしれない……あるいは本当に取り立てて来るのかも…
ちょっとばかり未来が楽しみになって来た。
「そんじゃ!こいつをやっつけたらさっさと出掛けるよ!」
「うん!そういえば、お店があるのって…やっぱりサタニズム街なの?」
「いいや!今日行くのはそっちとは反対方向だ。」
「急ぐのはよろしいですが、お二人ともよく噛んでくださいね。」
何処へ行くのかは分からなかったが、危険な場所ではないらしいのでレンリエッタは一安心するとエラフィンと共に朝食を片付け、外出の準備を始めるのだった…
今回のお出かけも残念ながらグリスはお留守番である。寂しそうだが、レスペル故に触媒の店に行ってもしょうがないのだ。
「お帰りはいつ頃になるのでしょうか。」
「今日はあんまり時間も掛からないだろうし、昼飯時かそれ以前には戻るわ。」
「グリス…か、勝手に私の部屋を掃除しないでね…?」
「それはそれは…肝に銘じておきますよ。」
「そんじゃ!行くよ!!ハイ、ヤァー!!」
そして二人は杖に跨りながらグリスと一言二言話してから一気に空へと飛び上がった。この世界も、もう4月の真っ只中…春の陽光は存分に全身を温め、上空では爽やかな風がヒューヒューと吹き付ける。
青く晴れ渡る空、陽に照らされる緑色の草原…今日はとてもいい日ではないか。
此処へ来てから乗ること数回…レンリエッタはもう景色を楽しめるほど飛行杖に慣れていた。
「はぁ~…なんだか飛行杖もだいぶ慣れちゃったし、こうしてみると結構爽快だなぁ」
「でしょう?今日みたいな日は鬱憤を晴らすために暴走飛行しまくるには最適なんだけど…まぁやめとこうかしら。」
「さ、さすがにそこまで慣れてないので…遠慮しておきます…」
いつものようにクランクス王国の城下町へと近づいて行くが、今日はサタニズム街に向かうのではないと、レンリエッタは思い出した。
何やら逆の方へ行くと言っていたが…
「ねぇ先生、今日は何処に行くの?サタニズム街じゃ無いんだよね?」
「ああもちろん。行きつけの店は西側の街にあるんだ、サタニズムよりよっぽど魔法らしい場所だよ」
「あそこより魔法らしい場所があるんだ…」
それを聞いてレンリエッタは大いにワクワクし始めた。
レンリエッタにとってサタニズム街は魔法に溢れた素敵な街であったが、今日向かう先はそれよりもさらに魔法だらけらしい。そうなってくると想像にも難しいが……行けば分かるだろう。
ちなみにサタニズム街は一流街を中心に東側に位置するので、今回向かう先はそれとは真逆の西側である。もちろん向かうのは初めてだ、というより二流街はサタニズム以外に行った事など無かった。
しばらくの間、爽やかな春のフライトを楽しんだレンリエッタはやがて見慣れない街の広場へと到着した。
首のない石像が建てられた、大きな広場だった。
「な、なんか…すごい所だね…」
「此処はリージャスト街、宗教と魔法に溢れた所さ。サタニズムに比べて幾分か地味だけど専門的な魔術道具なんかはここで揃えてるのさ。」
レンリエッタは周囲を見回し、街並みをよーく眺めた。
確かにサタニズム街のような活気は見られず、通りを行く人は少ないし、道行く人の殆どがローブを羽織った魔術師または顔を隠している聖職者だと分かった。それに店もどこか変だ。
カフェやレストランは殆ど無く、並ぶ店の多くが魔法や宗教用具の店ばかりだった。占い用の水晶玉や風水に使用する水盆、宗教絵画やタリスマン専門店など見慣れないものが多い…
「知らないお店ばかりだなぁ……あ、CWPの支店だ!」
「まぁ、ああ言うチェーン店なんかは幾らかあるだろうね。」
だが全てが知らないものばかりではなく、CWPの支店や飛行杖専門店なんかもちゃんとあった。
レンリエッタは様々な店たちに目を奪われつつも、エラフィンの後を追って通りを歩いて行った。サタニズム街のような大通りは無く、迷路のように入り組んだ狭い通路ばかりだが、どこを曲がっても絶えず店が続いていた。
「ねぇ…どこまで歩いて行くの…?」
「いやぁ悪いね…実を言うとあんまりここいらは得意じゃないのよ…」
「まさか道に迷ってるんじゃないよね…」
「あはははは!そんなわけ……ないよ、たぶんね。」
どうやらエラフィンは久々に此処へ訪れたらしく、同じような場所を何度も回っているのは必死に頭の中で順路を思い出していたからだった。
頼りない彼女の発言にレンリエッタはギョッとして不安な気持ちに駆られたが、少しするとエラフィンはピーンッと閃いたように思い出し、先ほどより急ぎ足で歩き出した。レンリエッタも急いで足を動かしてその後を追って行った。
「えぇーっと…そうだ!たしか、この角を右に曲がって少し行って…」
「えっほえっほ……あ!あれじゃないの?」
「うーん?」
エラフィンと共に歩いて向かった先に建っていたのは『マンシーズ』と看板を掲げる触媒専門ショップであった。たしか同名の店をサタニズム街にもあったはずだ。
意外とちゃんとした店構えにレンリエッタはホッと安心したが…
「マンシーズ?違うよ、こんなのじゃない。」
「え?じゃあどこに…」
「そのマンシーズを行って曲がった先さ!」
「えぇー!?」
エラフィン曰く、目的の店はマンシーズでは無く、その先を行って曲がったところにあるらしい。惜しい気持ちでマンシーズの前を通り過ぎたレンリエッタ…到着した先は、なんとも暗くて陰鬱な雰囲気を漂わせるところだった…
一言で表すなら…寂れたバーの様な店構えだ。ツタが這うレンガの壁、不愛想な黒鉄の扉、そしてその上部には『黒鷲屋』の文字が並んだネオン看板……ハッキリ言って人を選ぶようなところだ。
点滅する看板の字を見てレンリエッタは絶句した。
「さぁここで間違いないね!黒鷲屋…やっぱり触媒は此処じゃなくちゃ!」
「う、うそでしょ…こんな怪しい店で買うの…?」
「なに言ってんだい?そんなに店構えが……まぁ、良くないけど…此処はホントに腕利きの職人が居るんだよ。」
「………」
「そんな目をせずとも平気さ!大丈夫!私のお墨付きさ!」
「まぁ…そこまで言うなら…」
中々疑心が晴れなかったレンリエッタだったが、エラフィンのお墨付きとなれば…8割程度信用できた。しかし…こんな怪しい店で触媒が買えるのだろうか…
怪しむレンリエッタを後ろに、エラフィンは奇妙な模様が浮かぶ扉をドンドン!と大きな音を鳴らして叩いた。周囲は閑散とした通りなので扉を叩く音はかなり響いた。
「ほーら!客だよ!さっさと開けな!」
「…ほ、ほんとに営業してるの?」
「してるはずだよ……記憶が正しければ…」
エラフィンは数回、間を置いて扉を叩いたが…まるで返事はない。不思議な事にドアノブが付いていないので自ら開ける事も出来なかった。
本当に営業しているのかとレンリエッタが心の中で疑っていると……突然、扉の奥から声が聞こえて来た。
『申し訳ございません、今開けますから…』
「ほーら!やってただろ?」
「う、うん…」
驚くことに店は営業中らしい。中から声が聞こえてから少しすると、ギギーッと重い扉が開かれ、中から背の低い者が一人顔を出した……獣人だ、ネコ型の小さな獣人だった。
獣人はショボショボと目を細めながら、エラフィンを見上げて言った。
「どちら様で?申し訳ございませんが当店は紹介制で…」
「なぁーに寝ぼけた事言ってんのさ!アタシだよ、エラフィンだよ!」
「エ、エラフィン!?ホントに貴女なの!?」
「当たり前でしょう?……メガネはどうしたんだい?」
「ごめんねぇ、ついうたた寝してて…慌てて起きたもんだから……さぁ早く上がってよ。」
彼女?はエラフィンを店の中へと招くと、レンリエッタもその後を付いて入店した。するとどうだろうか、店構えとは裏腹に内部は凝った造りで温かなものだった。
よく磨かれたマホガニーの床、賞や写真で埋め尽くされた壁、小綺麗なカウンター…そして店中を埋め尽くすのはありとあらゆる触媒の数々だ!
壁には上等な長柄杖が何本も掛けられ、カウンターのショーウィンドウには短杖が並び、ガラスのケースにはキラキラと様々な色できらめく鎖水晶が厳重に保管されていた。
思わずレンリエッタが見惚れていると、獣人はカウンターに上がり、四角い眼鏡を掛けてからエラフィン…そしてたった今気づいたレンリエッタへ視線を向けた。
「あーらエラフィン、お変わりなくて……そしてあなた!新しいお弟子さんね!」
「え?は、はい!レンリエッタです!」
「元気が良いわね。私はカヴル、カヴル・ブラックヘイロン…この黒鷲屋の店主よ。」
「そして私の大学時代の後輩ってこと!」
「大学時代の?あぁ~…(あの鶏のやつかぁ…)」
黒鷲屋の店主カヴル・ブラックヘイロンはトラ柄の小さなネコ型の獣人だった。パッツンとした髪の毛や、レンリエッタの膝より少し上程度しかない身長は幼さを連想させるが…意外にも彼女はエラフィンの大学時代の後輩である。
なのですごくおばさ…年上でございます。
「それで…エラフィン、此処に来たって事は…」
「もちろん!この子の触媒を探してほしくてね、もちろん作ってくれても構わないよ。」
「そうだと思ったわ!もう何年ぶりかしらぁ、貴女が此処に弟子を連れて来るなんて…」
カヴルは興味津々にキラキラした瞳でレンリエッタを観察し始めた。銀色の髪、茶色い瞳、そして特徴の無い身体…それらを見て彼女はあっという間に言い当てて見せた。
「まぁ、あなたってばデミヘルドね?それも母親が人間の…」
「え?なんで分かるんですか…」
「こう見えても鑑定魔法には自信あるのよ。ふふん!」
「カブルは目利きの達人さ、鑑定魔法の腕に関しちゃ私よりもよっぽど良いよ。」
彼女は鑑定魔法に長けた魔術師だった。それ故に相手を一目見てどんな人物か当てるのには全く持って苦労などしなかった……まぁレンリエッタは分かりやすい方ではあるが…
それはそうと、早速エラフィンはレンリエッタの触媒を探してもらう事にした。
「カヴル、早速だが鑑定してくれるかい?」
「まかせて!レンリエッタ…で合ってるわよね?こっちに来て、椅子に掛けてちょうだい。」
「は、はい…分かりました…」
レンリエッタは言われた通りにカウンターの椅子に座り込んだ。今はあまり良い気持ちでは無い、心の中を言い当てられたようで、どうにも落ち着かなかった。
一方でカヴルは椅子に座ったレンリエッタの周囲を跳ねたり、歩き回ったりして隈無く視線を這わせた。そして彼女はその間、質問をいくつか投げて来た。
「あなた、使いたい魔法はあるの?」
「使いたい魔法……い、糸魔法です…」
「なるほど……糸魔法…だとすればワンドかペンデュラムが好ましいわね…けどこの気の流れ…うーん…」
「どうかしたんですか?」
「…いえ、あなた…精霊とは契約してらっしゃるの?」
「精霊?」
精霊と聞いてレンリエッタは『生後精霊』を思い浮かべたが、そういうものでは無いらしい。返答に困っているとエラフィンが代わりに「してないよ」と答えてくれた。
それから数分…全身を見終え、幾つか質問を繰り返したカヴルは再びカウンターへちょこんと乗り上がった。
「どうだいカヴル、この子に合うものはあるかい?」
「そうねぇ…実を言うとあんまり……初めてだわ、こんなに特殊な魔力の流れを持つ子は…」
「特殊…私が…」
カヴルはどうにも頭を抱えて悩み込み始めた。曰くレンリエッタの魔力は特殊な流れをしているのでイマイチ合う触媒が思い浮かばないらしい…
特殊と聞いて心配に思うレンリエッタだったが、エラフィンは呆気なく喋った。
「特殊なのはしょうがないさ、言い忘れてたがレンリエッタはフォーメンの娘なんだ。」
「フォーメン?……あぁー!!あのガキンチョの娘!?って言うか生き残りが居たの!?」
「ガ、ガキンチョ…」
「通りでおかしいはずだわ!ヘイルホーン家の人達はどれもこれも特殊なのばかりだったし……そう、あなたヘイルホーンの子だったのね…かわいそうに……」
「い、いえ…」
レンリエッタがヘイルホーンの血筋だと知れば、カヴルは納得したように頷いた。どうやらヘイルホーン家は他の魔法貴族と同様に特殊な魔力流を持つらしい…そう聞くと少しレンリエッタは安心した。
カブルはゴニョゴニョと喋りながら店の奥へと入って行くと、何やら古ぼけた台帳を持って戻って来た。そして彼女はカウンターの上でペラペラと台帳を捲り、あるページで止まった…
「そう言えば祖父の祖父の代からヘイルホーン家の人に売った触媒のリストが残ってたわ!」
「なるほど!そのリストを追って片っ端から試せば良いのね!」
「そうよ!分からないならご先祖様の中から一番似てるのを探し出せば良いのよ!あぁー!燃えて来た!!」
「…よ、よく分からないけど……楽しみだなぁ…」
というわけでカヴルは歴代のヘイルホーン家の人々が振るった触媒からレンリエッタに会う物を探し始めた。
まずは長柄杖…曽祖父、クルセイド・ヘイルホーン2世が振るったものだ。上部のヘッドには淡く輝く34番磨きのスターライト水晶、持ち手のフレームはカシモアの若木、下部のボトムには鉛が使用された一級品だ。
レンリエッタは渡された杖を両手で構えた……とても重い…
「試してみて!」
「レンリエッタ、何か呪文を唱えてみな。」
「じゃ、じゃあ……ピラリカ…」
レンリエッタはピラリカを唱えてみると…水晶が少しだけ輝いたものの、火の粉も出なかった…
気まずい沈黙に、レンは何か口を開こうとしたがその前に杖を取られて次の触媒を渡された。今度はワンドだ、先端に薄黄色の石が埋め込まれた杖…
「今度はワンド!貴女から見て大叔母のクロスーダ・ヘイルホーンが使ってたものと同じです!」
「それは興味深いねぇ…素材はなんだい?」
「ストーンには天然のテクタイト、ボディはチーク、ハンドルは飛竜の革。」
「げぇっ!呆れるほど贅沢な杖だねぇ…」
「そ、そんなに良い物なんだ…」
贅沢の限りを尽くしたクロスーダ・ヘイルホーンの杖……レンリエッタはまたしてもグッと力を込めてピラリカを整えてみたが……やはり石が光るだけで何も起きない。
またしても短杖は取り上げられ、箱に納められるとまた次の触媒がジャラッと首に掛けられた。今度はペンデュラム…金色の鎖に巻かれた赤い水晶…その内部には何か小さな欠片が閉じ込められていた。
「お次はペンデュラム!貴女のえーっと…えーっと…祖父の祖母の姉…ともかく!リリシャ・ヘイルホーンが使ってたのと同じもの!チェーンは錬成純金、クリスタルはマキナイトの原石、コアはオクべロスの胆石!」
「え、えーっと……ピラリカ!!」
ボウッ!!
またしてもレンリエッタはピラリカを唱えてみると、今までとは違って今度は炎が燃え上がった。どうやら適合率が高いらしく、エラフィンとカヴルは歓喜した。
レンリエッタの方も今までとは違い、どこか魔法が噛み合うように感じた。
「よし分かったわ!ペンデュラムね!同じものを片っ端から持って来るわ!」
「どうだいレンリエッタ、手ごたえの方は?」
「うん…なんかしっくりする…」
「ペンデュラム型が合っているらしいね。糸魔法が一番扱いやすい触媒だよ!」
「そうなんだ!や、やった!」
というわけで、レンリエッタはその後大量のペンデュラムを試す事となった。だが同じ種の触媒でもかなり手応えを感じる物もあれば、全く合わない物もあるので…改めて触媒の奥深さを痛感させられた。
これを試しては外し、あれを試しては外し……数十分もすればカウンターは大量のペンデュラムで覆い尽くされた。
だがそれでもカヴルは気に喰わないらしく、完全にレンリエッタと適合するペンデュラムを探すのに血眼となっていた。
「うぅーん!!もう!駄目!!これじゃない!……困ったわ…ペンデュラムの種類もほとんど試し尽くしたのに…まだ見つからないなんて…」
「はぁ…!はぁ…!なんかすごく疲れて来た……特に肩の辺りが…」
「うぅーん…ペンデュラムねぇ………そうだ!カヴル!アレが残ってたじゃないか!」
「アレ?…あぁ!アレ……だけど現物は無いのよ…ちょうど品切れで…試験用石ならあるけど…」
「ア、アレってなに…?」
すっかり困り果てていると、エラフィンが『アレ』を試そうと言い出した。アレの正体についてはレンリエッタが聞く前にカヴルが急いで奥まで探しに行ってしまったので聞けなかったが、すぐに彼女は戻って来た。
その手には小さな…青い宝石の欠片が握られていた…
「こ、これ!試してみて!」
「試すって…これって石じゃ…」
「いいから手に持って呪文を唱えてみて!」
「やるんだよレンリエッタ!」
「えぇ!?う、うん……ピラリカッ…!」
シュボウッ!!
「あぁ!い、今まで一番綺麗な火…!」
言われた通り、レンリエッタは石を握りながらピラリカを唱えると拳の先から勢いよく綺麗な火が一瞬だけ燃え上がった。これまで唱えて来たものの中で一番綺麗なものだった…
それに手から伝わる不思議な熱はグングンと全身を駆け巡るように感じられ、今まで持った触媒の中でも実にしっくり来る…
その様子を見ていた二人もパーッと笑顔を浮かべて喜んだ。
「やっぱりだわ!幽鬼の石がピッタリなのよ!まさかヘイルホーン家からまた石の所有者が出るなんて…!」
「ハッハハハハハ!やっぱりアンタは天才気質だね!フォーメンの娘なだけはあるよ!」
「ど、どういうことなの?何が起きてるの…?この石って…」
大いに喜ぶ二人を見て、レンリエッタは困惑していたが…やがてエラフィンが石の正体について教えてくれた。
「それは幽鬼の石さ!とても貴重な鉱石でそいつを触媒に持つのは数千万にひとり…」
「今までそれを原料とした触媒の使用者は偉大な人ばかりなのよ。グラッグ・カースマン、スプライオ・ヘンツェルゼン…マリーナ・ファングステン……あとそれからドラケン・ヘイルホーン!」
「幽鬼の石……」
石の正体とは幽鬼の石と呼ばれるもので、錬成を用いても作成出来ない最も貴重な鉱石のひとつであった。だが何よりもこの石を使用した触媒の持ち主は悉く歴史に名を残した偉人ばかりなのだ。
ヘイルホーン家3代目当主、ドラケン・ヘイルホーンは一族の中でも唯一の石の所有者であり、彼は当時磁力魔法を編み出した王国随一の魔術師だったのだ。
そんな素晴らしい石であるが……レンリエッタは納得できなかった。
「何かの間違いだよ…私、天才なんかじゃない…魔法も全然扱えないし…」
「レンリエッタ…ちょっと前まで人間の世界で暮らしてた子供が今じゃ魔法を使ってんだよ?同じ環境の子が居たとしてもアンタほど上手く扱えるヤツは居ないさ!」」
「それに貴女、普通の子より魔力が太いのよ。これからいっぱい勉強すれば誰にも負けない魔法使いになれるわ。」
天才と聞いて納得できないレンリエッタだったが、二人に励まされると…すぐに気を取り直した。ヘイルホーンの末裔として相応の力を持つ事を自認しなくては、成長など出来ないのである。
さて、この石だが…先ほどもカヴルが言ったように試験用の石のみで触媒は置いて無いらしい。なんせ売れても数百年に一度のペース…仕入れ値もバカにならないし、置いてある店の方がよっぽど珍しいとのこと。
「困ったねぇ…出来ればアンタに作って欲しかったんだけど…」
「原石があれば加工できるけど…最近じゃどこにも流通してなくて…」
「直接掘りに行くってのは……ダメだよね…?」
「まぁね。幽鬼の石は貴重なものでね、クランノースの古代墓地から採取するしか無いんだ。」
「それに神聖な場所だから入るためには許可が必要なの。」
こうなると困ったのは石の調達方法である。近年では流通数がめっきりと減っており、そう易々と仕入れられる状況に無いのだ。
それに加えて幽鬼の石は決して鉱山から掘り起こせる代物では無い。クランノース山の神聖なる古代墓地から採取する必要があり、しかも墓地を訪れるには許可が必須。
その許可自体も王国がどうこうできるものではなく、墓地を管理する一族から直接許可をもらう必要があるのだ。近年流通数が減っているのはその面倒な手順もあるからだろう…
「じゃあ直接、その人達に会って…許可を貰うってのは?」
「どうだろうねぇ…山に住む奴等は大抵頭のおかしい連中ばっかりよ……墓地をぶっ飛ばして無理に侵入するっていう手もあるけど、そうなると確実にヤバイ事になるし…」
「なら会って話をするしかないわ。私が紹介状を書いてあげる、もしかしたら昔のよしみで聞き入れてくれるかも。」
無理に侵入すると大問題どころの話では無くなるので、結局直接会って話をする他なかった。カヴルはかつての交流もあったので紹介状を書くと言うが、そんなものが役に立つのかはわからない。
ともかく、幽鬼の石を手に入れるためには楽な道など残されていないのだ。
紹介状を受け取ったエラフィンは嫌そうな顔をしながら紙をピラピラと靡かせた。
「やだねぇ…噂じゃ奴ら、外の連中を嫌うって言うじゃないか。」
「彼等にも文化や暮らしがあるのよ、しょうがないわ。」
エラフィンは直接会った事が無いものの、聞いて来た噂は決して良いものではなかった。山の中腹に壁で囲んだ集落を築き、外からやって来る者に対して敵対的であり、ヤバイ呪いや禁忌魔法を扱うとまで言われている…
まぁ最後のはともかく、前者二つはおそらく事実なので行く気がおきないのも無理ないだろう。
「そんじゃ…クランノース山に行くとするかね。」
「え、えぇ!?今から行くの!?」
「まさか!一旦帰って支度をするよ、あそこは結構厄介なの…」
「けれど今の時期ならまだフロストマンキュラスも冬眠中よ、だから行くなら打って付けね!」
「無責任なこと言ってくれるねぇ……カヴル、聞いとくが加工の腕はまだ錆びついて無いだろうね?石を取って来たら真っ先にアンタの所へ行くよ?」
「もちろん任せなさいな!こう見えてもきちんと一族の腕は受け継いでるんだから!」
ということで幽鬼の石を手に入れるべく、クランノース山へ行く事になったレンリエッタとエラフィンはさっそく準備を行うため帰る事に。
エラフィンは【モルセド】の呪文を唱えると、ペンデュラムは独りでに浮いて元の場所へと戻って行った。この便利な呪文もいつか教えてもらいたいものだ。
(それにしても魔法使いというのは案外出不精なのかもしれない…)
「それじゃカヴル、私達は帰るよ。」
「今日は色々とありがとうございました。」
「こちらこそ!とびきり上等な原石を待ってるからね!」
二人は別れを告げてから店を出た。レンリエッタは魔法を多く使ったせいか疲れ気味であるが、これから休む暇はあまり無いだろう…
エラフィン曰くクランノース山は過酷な場所らしく、毎年何人もの登山客が失踪しているのだとか。雪崩巻き込まれたり、遭難した挙句に餓死したり、凶暴な怪物に引き千切られたり…聞くも恐ろしい末路を辿る者が絶えないがそれでも人々は山に登る事を止めないのだ。
レンリエッタは街を去る前にグッと意気込み、死地への突入を覚悟するのだった…
つづく…
唱えれば杖先からバシッという音ともにいくらかの火が散るようになり、形状は不安定ながら着々と上達していた。
それと学んだ事もあった……決してベッドの中でピラリカを使ってはいけない…と。
「はぁ~あぁ……昨日は災難だったなぁ…」
「お嬢様…魔法の練習をする時は周囲に気を配り、環境をよく考えるようにしてくださいね…」
「うん…もうたくさんだよ、火あぶりなんて…」
昨晩、ボヤ騒ぎを起こしてしまったレンリエッタはいつもより気を沈めて朝を過ごしていた。だが危うくこんがりと焼けてしまうところだったので、無傷で済んだのは幸いだった。
もしかすれば朝を過ごす事も出来なかった…なんて事もあり得たので、考えるだけでも恐ろしい事である。
朝食のオーツリゾットをスプーンでかき混ぜながら、レンリエッタはため息を吐いた。
「はぁ……」
「どうかしましたか、お嬢様…今朝は食欲が見受けられませんが…」
「ううん、ちょっとね……ねぇ砂糖ちょうだい」
「ええどうぞ。ですが健康のため掛け過ぎには気を付けてくださいね」
レンリエッタはリゾットに砂糖をサーッと振りかけると、少し混ぜてから一口食べた。甘いせいか、少し元気が湧いて来た気がした。
続いてふたくち、みくち食べているとエラフィンがキッチンへ入って来た。今日はいつになく、朝から元気そうだった。
「レンリエッタ、急に聞くがどこか悪かったりしないだろうね?」
「ぐぷっ……せ、先生急にどうしたの…」
「何やら今朝はいつもより調子が良さそうですが…」
「ふふふ、まぁちょっと今日は行くところがあるからね。」
エラフィンはいつもより軽い足取りでキッチンへ着くと、グリスにコーヒーを淹れさせた。今日はやたらと上機嫌だ…
レンリエッタは一体どこへ連れって行ってくれるのか聞いてみた。事前の準備も無しに怪物の巣穴にだけは連れて行かれたくないのだ。
「先生、今日はどこに連れて行ってくれるの?」
「ちょっと遅い気もするが、アンタの触媒を探そうと思ってね。行きつけの触媒店に連れて行ってやるさ。」
「ほほう…そう言えばお嬢様は自分の触媒を持った事がありませんでしたね…」
「でも、もう持ってるよ。ほら、杖を。」
エラフィンは触媒の店へと連れて行ってくれるらしいが、レンリエッタは既に先人の杖を自分の触媒として所有している。これだけでも充分に事足りるのだが…どうやらそうもいかないらしい。
エラフィンはオーツミールに砂糖をドバドバ掛けながら説明し始めた。
「いいかい?触媒ってのは初級魔術を扱う程度じゃ相性ってのはそう分かりにくいんだ。ロッドにしろ、ワンドにしろ人には相性ってもんがあるからね。今後の事も踏まえて質の良い適正品を持たせておきたいのさ。」
人に扱える魔法の得意不得意があるように、人には触媒によって向き不向きが存在する。ちなみに触媒と言うのは魔法を扱う際に必ず持つべきものであり、詠唱によって魔力原子を魔法へと変換させる道具である。
エラフィン曰く、初級魔法の類は術者に合わない触媒でも多少は発動可能らしいが、中級以上となればそうともいかない。魔法というのは複雑化すればするほど魔力の扱いに繊細な注意を払う必要があるので、合わない触媒を使用すると上手くコントロールできず、発動できないどころか不運な事故を引き起こす可能性すらあるのだ。
「でも…良い触媒って…高いでしょ?」
「そりゃあね、だから出世払いで返してもらうよ。いつの日かアンタが魔術師として金を稼いだらキッチリ取り立てさせてもらうから。」
「でも私、遺産とか持ってるし…」
「ダメダメダメ!せっかくアイツが遺してくれた金なんだ、そう野暮に使うもんじゃないよ」
「そっかぁ…ありがとう、先生。」
料金に関してはエラフィンがひとまず負担してくれる様だ。出世払いと言うが、おそらく何十年も後になる話だろうし、もしかしたら彼女なりの気遣いなのかもしれない……あるいは本当に取り立てて来るのかも…
ちょっとばかり未来が楽しみになって来た。
「そんじゃ!こいつをやっつけたらさっさと出掛けるよ!」
「うん!そういえば、お店があるのって…やっぱりサタニズム街なの?」
「いいや!今日行くのはそっちとは反対方向だ。」
「急ぐのはよろしいですが、お二人ともよく噛んでくださいね。」
何処へ行くのかは分からなかったが、危険な場所ではないらしいのでレンリエッタは一安心するとエラフィンと共に朝食を片付け、外出の準備を始めるのだった…
今回のお出かけも残念ながらグリスはお留守番である。寂しそうだが、レスペル故に触媒の店に行ってもしょうがないのだ。
「お帰りはいつ頃になるのでしょうか。」
「今日はあんまり時間も掛からないだろうし、昼飯時かそれ以前には戻るわ。」
「グリス…か、勝手に私の部屋を掃除しないでね…?」
「それはそれは…肝に銘じておきますよ。」
「そんじゃ!行くよ!!ハイ、ヤァー!!」
そして二人は杖に跨りながらグリスと一言二言話してから一気に空へと飛び上がった。この世界も、もう4月の真っ只中…春の陽光は存分に全身を温め、上空では爽やかな風がヒューヒューと吹き付ける。
青く晴れ渡る空、陽に照らされる緑色の草原…今日はとてもいい日ではないか。
此処へ来てから乗ること数回…レンリエッタはもう景色を楽しめるほど飛行杖に慣れていた。
「はぁ~…なんだか飛行杖もだいぶ慣れちゃったし、こうしてみると結構爽快だなぁ」
「でしょう?今日みたいな日は鬱憤を晴らすために暴走飛行しまくるには最適なんだけど…まぁやめとこうかしら。」
「さ、さすがにそこまで慣れてないので…遠慮しておきます…」
いつものようにクランクス王国の城下町へと近づいて行くが、今日はサタニズム街に向かうのではないと、レンリエッタは思い出した。
何やら逆の方へ行くと言っていたが…
「ねぇ先生、今日は何処に行くの?サタニズム街じゃ無いんだよね?」
「ああもちろん。行きつけの店は西側の街にあるんだ、サタニズムよりよっぽど魔法らしい場所だよ」
「あそこより魔法らしい場所があるんだ…」
それを聞いてレンリエッタは大いにワクワクし始めた。
レンリエッタにとってサタニズム街は魔法に溢れた素敵な街であったが、今日向かう先はそれよりもさらに魔法だらけらしい。そうなってくると想像にも難しいが……行けば分かるだろう。
ちなみにサタニズム街は一流街を中心に東側に位置するので、今回向かう先はそれとは真逆の西側である。もちろん向かうのは初めてだ、というより二流街はサタニズム以外に行った事など無かった。
しばらくの間、爽やかな春のフライトを楽しんだレンリエッタはやがて見慣れない街の広場へと到着した。
首のない石像が建てられた、大きな広場だった。
「な、なんか…すごい所だね…」
「此処はリージャスト街、宗教と魔法に溢れた所さ。サタニズムに比べて幾分か地味だけど専門的な魔術道具なんかはここで揃えてるのさ。」
レンリエッタは周囲を見回し、街並みをよーく眺めた。
確かにサタニズム街のような活気は見られず、通りを行く人は少ないし、道行く人の殆どがローブを羽織った魔術師または顔を隠している聖職者だと分かった。それに店もどこか変だ。
カフェやレストランは殆ど無く、並ぶ店の多くが魔法や宗教用具の店ばかりだった。占い用の水晶玉や風水に使用する水盆、宗教絵画やタリスマン専門店など見慣れないものが多い…
「知らないお店ばかりだなぁ……あ、CWPの支店だ!」
「まぁ、ああ言うチェーン店なんかは幾らかあるだろうね。」
だが全てが知らないものばかりではなく、CWPの支店や飛行杖専門店なんかもちゃんとあった。
レンリエッタは様々な店たちに目を奪われつつも、エラフィンの後を追って通りを歩いて行った。サタニズム街のような大通りは無く、迷路のように入り組んだ狭い通路ばかりだが、どこを曲がっても絶えず店が続いていた。
「ねぇ…どこまで歩いて行くの…?」
「いやぁ悪いね…実を言うとあんまりここいらは得意じゃないのよ…」
「まさか道に迷ってるんじゃないよね…」
「あはははは!そんなわけ……ないよ、たぶんね。」
どうやらエラフィンは久々に此処へ訪れたらしく、同じような場所を何度も回っているのは必死に頭の中で順路を思い出していたからだった。
頼りない彼女の発言にレンリエッタはギョッとして不安な気持ちに駆られたが、少しするとエラフィンはピーンッと閃いたように思い出し、先ほどより急ぎ足で歩き出した。レンリエッタも急いで足を動かしてその後を追って行った。
「えぇーっと…そうだ!たしか、この角を右に曲がって少し行って…」
「えっほえっほ……あ!あれじゃないの?」
「うーん?」
エラフィンと共に歩いて向かった先に建っていたのは『マンシーズ』と看板を掲げる触媒専門ショップであった。たしか同名の店をサタニズム街にもあったはずだ。
意外とちゃんとした店構えにレンリエッタはホッと安心したが…
「マンシーズ?違うよ、こんなのじゃない。」
「え?じゃあどこに…」
「そのマンシーズを行って曲がった先さ!」
「えぇー!?」
エラフィン曰く、目的の店はマンシーズでは無く、その先を行って曲がったところにあるらしい。惜しい気持ちでマンシーズの前を通り過ぎたレンリエッタ…到着した先は、なんとも暗くて陰鬱な雰囲気を漂わせるところだった…
一言で表すなら…寂れたバーの様な店構えだ。ツタが這うレンガの壁、不愛想な黒鉄の扉、そしてその上部には『黒鷲屋』の文字が並んだネオン看板……ハッキリ言って人を選ぶようなところだ。
点滅する看板の字を見てレンリエッタは絶句した。
「さぁここで間違いないね!黒鷲屋…やっぱり触媒は此処じゃなくちゃ!」
「う、うそでしょ…こんな怪しい店で買うの…?」
「なに言ってんだい?そんなに店構えが……まぁ、良くないけど…此処はホントに腕利きの職人が居るんだよ。」
「………」
「そんな目をせずとも平気さ!大丈夫!私のお墨付きさ!」
「まぁ…そこまで言うなら…」
中々疑心が晴れなかったレンリエッタだったが、エラフィンのお墨付きとなれば…8割程度信用できた。しかし…こんな怪しい店で触媒が買えるのだろうか…
怪しむレンリエッタを後ろに、エラフィンは奇妙な模様が浮かぶ扉をドンドン!と大きな音を鳴らして叩いた。周囲は閑散とした通りなので扉を叩く音はかなり響いた。
「ほーら!客だよ!さっさと開けな!」
「…ほ、ほんとに営業してるの?」
「してるはずだよ……記憶が正しければ…」
エラフィンは数回、間を置いて扉を叩いたが…まるで返事はない。不思議な事にドアノブが付いていないので自ら開ける事も出来なかった。
本当に営業しているのかとレンリエッタが心の中で疑っていると……突然、扉の奥から声が聞こえて来た。
『申し訳ございません、今開けますから…』
「ほーら!やってただろ?」
「う、うん…」
驚くことに店は営業中らしい。中から声が聞こえてから少しすると、ギギーッと重い扉が開かれ、中から背の低い者が一人顔を出した……獣人だ、ネコ型の小さな獣人だった。
獣人はショボショボと目を細めながら、エラフィンを見上げて言った。
「どちら様で?申し訳ございませんが当店は紹介制で…」
「なぁーに寝ぼけた事言ってんのさ!アタシだよ、エラフィンだよ!」
「エ、エラフィン!?ホントに貴女なの!?」
「当たり前でしょう?……メガネはどうしたんだい?」
「ごめんねぇ、ついうたた寝してて…慌てて起きたもんだから……さぁ早く上がってよ。」
彼女?はエラフィンを店の中へと招くと、レンリエッタもその後を付いて入店した。するとどうだろうか、店構えとは裏腹に内部は凝った造りで温かなものだった。
よく磨かれたマホガニーの床、賞や写真で埋め尽くされた壁、小綺麗なカウンター…そして店中を埋め尽くすのはありとあらゆる触媒の数々だ!
壁には上等な長柄杖が何本も掛けられ、カウンターのショーウィンドウには短杖が並び、ガラスのケースにはキラキラと様々な色できらめく鎖水晶が厳重に保管されていた。
思わずレンリエッタが見惚れていると、獣人はカウンターに上がり、四角い眼鏡を掛けてからエラフィン…そしてたった今気づいたレンリエッタへ視線を向けた。
「あーらエラフィン、お変わりなくて……そしてあなた!新しいお弟子さんね!」
「え?は、はい!レンリエッタです!」
「元気が良いわね。私はカヴル、カヴル・ブラックヘイロン…この黒鷲屋の店主よ。」
「そして私の大学時代の後輩ってこと!」
「大学時代の?あぁ~…(あの鶏のやつかぁ…)」
黒鷲屋の店主カヴル・ブラックヘイロンはトラ柄の小さなネコ型の獣人だった。パッツンとした髪の毛や、レンリエッタの膝より少し上程度しかない身長は幼さを連想させるが…意外にも彼女はエラフィンの大学時代の後輩である。
なのですごくおばさ…年上でございます。
「それで…エラフィン、此処に来たって事は…」
「もちろん!この子の触媒を探してほしくてね、もちろん作ってくれても構わないよ。」
「そうだと思ったわ!もう何年ぶりかしらぁ、貴女が此処に弟子を連れて来るなんて…」
カヴルは興味津々にキラキラした瞳でレンリエッタを観察し始めた。銀色の髪、茶色い瞳、そして特徴の無い身体…それらを見て彼女はあっという間に言い当てて見せた。
「まぁ、あなたってばデミヘルドね?それも母親が人間の…」
「え?なんで分かるんですか…」
「こう見えても鑑定魔法には自信あるのよ。ふふん!」
「カブルは目利きの達人さ、鑑定魔法の腕に関しちゃ私よりもよっぽど良いよ。」
彼女は鑑定魔法に長けた魔術師だった。それ故に相手を一目見てどんな人物か当てるのには全く持って苦労などしなかった……まぁレンリエッタは分かりやすい方ではあるが…
それはそうと、早速エラフィンはレンリエッタの触媒を探してもらう事にした。
「カヴル、早速だが鑑定してくれるかい?」
「まかせて!レンリエッタ…で合ってるわよね?こっちに来て、椅子に掛けてちょうだい。」
「は、はい…分かりました…」
レンリエッタは言われた通りにカウンターの椅子に座り込んだ。今はあまり良い気持ちでは無い、心の中を言い当てられたようで、どうにも落ち着かなかった。
一方でカヴルは椅子に座ったレンリエッタの周囲を跳ねたり、歩き回ったりして隈無く視線を這わせた。そして彼女はその間、質問をいくつか投げて来た。
「あなた、使いたい魔法はあるの?」
「使いたい魔法……い、糸魔法です…」
「なるほど……糸魔法…だとすればワンドかペンデュラムが好ましいわね…けどこの気の流れ…うーん…」
「どうかしたんですか?」
「…いえ、あなた…精霊とは契約してらっしゃるの?」
「精霊?」
精霊と聞いてレンリエッタは『生後精霊』を思い浮かべたが、そういうものでは無いらしい。返答に困っているとエラフィンが代わりに「してないよ」と答えてくれた。
それから数分…全身を見終え、幾つか質問を繰り返したカヴルは再びカウンターへちょこんと乗り上がった。
「どうだいカヴル、この子に合うものはあるかい?」
「そうねぇ…実を言うとあんまり……初めてだわ、こんなに特殊な魔力の流れを持つ子は…」
「特殊…私が…」
カヴルはどうにも頭を抱えて悩み込み始めた。曰くレンリエッタの魔力は特殊な流れをしているのでイマイチ合う触媒が思い浮かばないらしい…
特殊と聞いて心配に思うレンリエッタだったが、エラフィンは呆気なく喋った。
「特殊なのはしょうがないさ、言い忘れてたがレンリエッタはフォーメンの娘なんだ。」
「フォーメン?……あぁー!!あのガキンチョの娘!?って言うか生き残りが居たの!?」
「ガ、ガキンチョ…」
「通りでおかしいはずだわ!ヘイルホーン家の人達はどれもこれも特殊なのばかりだったし……そう、あなたヘイルホーンの子だったのね…かわいそうに……」
「い、いえ…」
レンリエッタがヘイルホーンの血筋だと知れば、カヴルは納得したように頷いた。どうやらヘイルホーン家は他の魔法貴族と同様に特殊な魔力流を持つらしい…そう聞くと少しレンリエッタは安心した。
カブルはゴニョゴニョと喋りながら店の奥へと入って行くと、何やら古ぼけた台帳を持って戻って来た。そして彼女はカウンターの上でペラペラと台帳を捲り、あるページで止まった…
「そう言えば祖父の祖父の代からヘイルホーン家の人に売った触媒のリストが残ってたわ!」
「なるほど!そのリストを追って片っ端から試せば良いのね!」
「そうよ!分からないならご先祖様の中から一番似てるのを探し出せば良いのよ!あぁー!燃えて来た!!」
「…よ、よく分からないけど……楽しみだなぁ…」
というわけでカヴルは歴代のヘイルホーン家の人々が振るった触媒からレンリエッタに会う物を探し始めた。
まずは長柄杖…曽祖父、クルセイド・ヘイルホーン2世が振るったものだ。上部のヘッドには淡く輝く34番磨きのスターライト水晶、持ち手のフレームはカシモアの若木、下部のボトムには鉛が使用された一級品だ。
レンリエッタは渡された杖を両手で構えた……とても重い…
「試してみて!」
「レンリエッタ、何か呪文を唱えてみな。」
「じゃ、じゃあ……ピラリカ…」
レンリエッタはピラリカを唱えてみると…水晶が少しだけ輝いたものの、火の粉も出なかった…
気まずい沈黙に、レンは何か口を開こうとしたがその前に杖を取られて次の触媒を渡された。今度はワンドだ、先端に薄黄色の石が埋め込まれた杖…
「今度はワンド!貴女から見て大叔母のクロスーダ・ヘイルホーンが使ってたものと同じです!」
「それは興味深いねぇ…素材はなんだい?」
「ストーンには天然のテクタイト、ボディはチーク、ハンドルは飛竜の革。」
「げぇっ!呆れるほど贅沢な杖だねぇ…」
「そ、そんなに良い物なんだ…」
贅沢の限りを尽くしたクロスーダ・ヘイルホーンの杖……レンリエッタはまたしてもグッと力を込めてピラリカを整えてみたが……やはり石が光るだけで何も起きない。
またしても短杖は取り上げられ、箱に納められるとまた次の触媒がジャラッと首に掛けられた。今度はペンデュラム…金色の鎖に巻かれた赤い水晶…その内部には何か小さな欠片が閉じ込められていた。
「お次はペンデュラム!貴女のえーっと…えーっと…祖父の祖母の姉…ともかく!リリシャ・ヘイルホーンが使ってたのと同じもの!チェーンは錬成純金、クリスタルはマキナイトの原石、コアはオクべロスの胆石!」
「え、えーっと……ピラリカ!!」
ボウッ!!
またしてもレンリエッタはピラリカを唱えてみると、今までとは違って今度は炎が燃え上がった。どうやら適合率が高いらしく、エラフィンとカヴルは歓喜した。
レンリエッタの方も今までとは違い、どこか魔法が噛み合うように感じた。
「よし分かったわ!ペンデュラムね!同じものを片っ端から持って来るわ!」
「どうだいレンリエッタ、手ごたえの方は?」
「うん…なんかしっくりする…」
「ペンデュラム型が合っているらしいね。糸魔法が一番扱いやすい触媒だよ!」
「そうなんだ!や、やった!」
というわけで、レンリエッタはその後大量のペンデュラムを試す事となった。だが同じ種の触媒でもかなり手応えを感じる物もあれば、全く合わない物もあるので…改めて触媒の奥深さを痛感させられた。
これを試しては外し、あれを試しては外し……数十分もすればカウンターは大量のペンデュラムで覆い尽くされた。
だがそれでもカヴルは気に喰わないらしく、完全にレンリエッタと適合するペンデュラムを探すのに血眼となっていた。
「うぅーん!!もう!駄目!!これじゃない!……困ったわ…ペンデュラムの種類もほとんど試し尽くしたのに…まだ見つからないなんて…」
「はぁ…!はぁ…!なんかすごく疲れて来た……特に肩の辺りが…」
「うぅーん…ペンデュラムねぇ………そうだ!カヴル!アレが残ってたじゃないか!」
「アレ?…あぁ!アレ……だけど現物は無いのよ…ちょうど品切れで…試験用石ならあるけど…」
「ア、アレってなに…?」
すっかり困り果てていると、エラフィンが『アレ』を試そうと言い出した。アレの正体についてはレンリエッタが聞く前にカヴルが急いで奥まで探しに行ってしまったので聞けなかったが、すぐに彼女は戻って来た。
その手には小さな…青い宝石の欠片が握られていた…
「こ、これ!試してみて!」
「試すって…これって石じゃ…」
「いいから手に持って呪文を唱えてみて!」
「やるんだよレンリエッタ!」
「えぇ!?う、うん……ピラリカッ…!」
シュボウッ!!
「あぁ!い、今まで一番綺麗な火…!」
言われた通り、レンリエッタは石を握りながらピラリカを唱えると拳の先から勢いよく綺麗な火が一瞬だけ燃え上がった。これまで唱えて来たものの中で一番綺麗なものだった…
それに手から伝わる不思議な熱はグングンと全身を駆け巡るように感じられ、今まで持った触媒の中でも実にしっくり来る…
その様子を見ていた二人もパーッと笑顔を浮かべて喜んだ。
「やっぱりだわ!幽鬼の石がピッタリなのよ!まさかヘイルホーン家からまた石の所有者が出るなんて…!」
「ハッハハハハハ!やっぱりアンタは天才気質だね!フォーメンの娘なだけはあるよ!」
「ど、どういうことなの?何が起きてるの…?この石って…」
大いに喜ぶ二人を見て、レンリエッタは困惑していたが…やがてエラフィンが石の正体について教えてくれた。
「それは幽鬼の石さ!とても貴重な鉱石でそいつを触媒に持つのは数千万にひとり…」
「今までそれを原料とした触媒の使用者は偉大な人ばかりなのよ。グラッグ・カースマン、スプライオ・ヘンツェルゼン…マリーナ・ファングステン……あとそれからドラケン・ヘイルホーン!」
「幽鬼の石……」
石の正体とは幽鬼の石と呼ばれるもので、錬成を用いても作成出来ない最も貴重な鉱石のひとつであった。だが何よりもこの石を使用した触媒の持ち主は悉く歴史に名を残した偉人ばかりなのだ。
ヘイルホーン家3代目当主、ドラケン・ヘイルホーンは一族の中でも唯一の石の所有者であり、彼は当時磁力魔法を編み出した王国随一の魔術師だったのだ。
そんな素晴らしい石であるが……レンリエッタは納得できなかった。
「何かの間違いだよ…私、天才なんかじゃない…魔法も全然扱えないし…」
「レンリエッタ…ちょっと前まで人間の世界で暮らしてた子供が今じゃ魔法を使ってんだよ?同じ環境の子が居たとしてもアンタほど上手く扱えるヤツは居ないさ!」」
「それに貴女、普通の子より魔力が太いのよ。これからいっぱい勉強すれば誰にも負けない魔法使いになれるわ。」
天才と聞いて納得できないレンリエッタだったが、二人に励まされると…すぐに気を取り直した。ヘイルホーンの末裔として相応の力を持つ事を自認しなくては、成長など出来ないのである。
さて、この石だが…先ほどもカヴルが言ったように試験用の石のみで触媒は置いて無いらしい。なんせ売れても数百年に一度のペース…仕入れ値もバカにならないし、置いてある店の方がよっぽど珍しいとのこと。
「困ったねぇ…出来ればアンタに作って欲しかったんだけど…」
「原石があれば加工できるけど…最近じゃどこにも流通してなくて…」
「直接掘りに行くってのは……ダメだよね…?」
「まぁね。幽鬼の石は貴重なものでね、クランノースの古代墓地から採取するしか無いんだ。」
「それに神聖な場所だから入るためには許可が必要なの。」
こうなると困ったのは石の調達方法である。近年では流通数がめっきりと減っており、そう易々と仕入れられる状況に無いのだ。
それに加えて幽鬼の石は決して鉱山から掘り起こせる代物では無い。クランノース山の神聖なる古代墓地から採取する必要があり、しかも墓地を訪れるには許可が必須。
その許可自体も王国がどうこうできるものではなく、墓地を管理する一族から直接許可をもらう必要があるのだ。近年流通数が減っているのはその面倒な手順もあるからだろう…
「じゃあ直接、その人達に会って…許可を貰うってのは?」
「どうだろうねぇ…山に住む奴等は大抵頭のおかしい連中ばっかりよ……墓地をぶっ飛ばして無理に侵入するっていう手もあるけど、そうなると確実にヤバイ事になるし…」
「なら会って話をするしかないわ。私が紹介状を書いてあげる、もしかしたら昔のよしみで聞き入れてくれるかも。」
無理に侵入すると大問題どころの話では無くなるので、結局直接会って話をする他なかった。カヴルはかつての交流もあったので紹介状を書くと言うが、そんなものが役に立つのかはわからない。
ともかく、幽鬼の石を手に入れるためには楽な道など残されていないのだ。
紹介状を受け取ったエラフィンは嫌そうな顔をしながら紙をピラピラと靡かせた。
「やだねぇ…噂じゃ奴ら、外の連中を嫌うって言うじゃないか。」
「彼等にも文化や暮らしがあるのよ、しょうがないわ。」
エラフィンは直接会った事が無いものの、聞いて来た噂は決して良いものではなかった。山の中腹に壁で囲んだ集落を築き、外からやって来る者に対して敵対的であり、ヤバイ呪いや禁忌魔法を扱うとまで言われている…
まぁ最後のはともかく、前者二つはおそらく事実なので行く気がおきないのも無理ないだろう。
「そんじゃ…クランノース山に行くとするかね。」
「え、えぇ!?今から行くの!?」
「まさか!一旦帰って支度をするよ、あそこは結構厄介なの…」
「けれど今の時期ならまだフロストマンキュラスも冬眠中よ、だから行くなら打って付けね!」
「無責任なこと言ってくれるねぇ……カヴル、聞いとくが加工の腕はまだ錆びついて無いだろうね?石を取って来たら真っ先にアンタの所へ行くよ?」
「もちろん任せなさいな!こう見えてもきちんと一族の腕は受け継いでるんだから!」
ということで幽鬼の石を手に入れるべく、クランノース山へ行く事になったレンリエッタとエラフィンはさっそく準備を行うため帰る事に。
エラフィンは【モルセド】の呪文を唱えると、ペンデュラムは独りでに浮いて元の場所へと戻って行った。この便利な呪文もいつか教えてもらいたいものだ。
(それにしても魔法使いというのは案外出不精なのかもしれない…)
「それじゃカヴル、私達は帰るよ。」
「今日は色々とありがとうございました。」
「こちらこそ!とびきり上等な原石を待ってるからね!」
二人は別れを告げてから店を出た。レンリエッタは魔法を多く使ったせいか疲れ気味であるが、これから休む暇はあまり無いだろう…
エラフィン曰くクランノース山は過酷な場所らしく、毎年何人もの登山客が失踪しているのだとか。雪崩巻き込まれたり、遭難した挙句に餓死したり、凶暴な怪物に引き千切られたり…聞くも恐ろしい末路を辿る者が絶えないがそれでも人々は山に登る事を止めないのだ。
レンリエッタは街を去る前にグッと意気込み、死地への突入を覚悟するのだった…
つづく…
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