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第33話『飛行杖と非行少女たち』
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飛行杖を借りるため、レンリエッタは草食ブーツの力を使ってビュンッと一瞬で邸宅へと帰還した。
そのまま急いで広間へ向かってみれば、ティータイムを嗜んでいたであろうエラフィンとグリスがカップを手に驚いた様子でレンリエッタの方を向いた。あまりにも早い帰宅に加え、急いでせいで勢いよく扉を開けてしまったので驚くのも無理はないだろう。
「おっと!なんだい、やけに早いじゃないか。」
「お嬢様、日頃から注意しておりますがご帰宅される際は扉をもう少し丁寧に…」
「あぁ違うの!ちょっと借りたい物があって戻って来たの!」
「借りたい物?まさか…金じゃないだろうねぇ?」
「違う違う!飛行杖!飛行杖を貸してほしくて!」
借りると聞いて良からぬ顔を浮かべるエラフィンだったが、飛行杖と聞けばすぐに表情を戻した。
そして少し落ち着きを取り戻したレンリエッタは二人へ事情を説明し始めた。パンセとクリッツから飛行杖の乗り方を教えてもらうので、余っている物を貸してほしいと。
それを聞いてエラフィンは納得したような表情を浮かべるものの…グリスはあまり良い顔を浮かべなかった。
「なるほど…まぁ飛行杖なら貸してやるさ、なんせいっぱいあるからね。」
「ですがお嬢様…飛行杖はまだ早いのでは…?もし落ちて怪我でもされてしまっては…」
「友達が居るから大丈夫だよ。それに、ちゃんとした場所で練習するから心配しないで。」
「そうさグリス、レンリエッタくらいの子は杖を乗り回すもんよ。懐かしいねぇ……どれ、倉庫の杖を見せてやろうじゃないか。」
「わーい!ありがとう先生!」
グリスはどこか不安を感じていたものの、レンリエッタはエラフィンと共に地下倉庫へと向かい、余っている杖とやらを見せてもらう事にした。一応グリスもその後ろからランプを持って付いて来たが…狭そうだ。
地下倉庫は相変わらず暗く、冷たく、不気味な場所だが面白そうな物品に溢れている。針だらけの椅子や『使用厳禁』の札が貼られたヘルメットに加え、赤い螺旋状の槍なんかもあったが、今回はそんな物に興味を移している場合ではない。
エラフィンは倉庫の隅へと向かい、そこから樽をひとつ持って来た……ただの樽ではない、様々な長杖が無造作にぶち込まれている。
「ふぅ…さて、良い物があると良いんだけど…」
「これって全部飛行杖?すっごいなぁ……あ、これカッコイイ!」
「ふーむ…お目が高いねぇ、それは薔薇と髑髏の杖さ。」
「お嬢様の美的感覚が心配でございます…」
まず最初にレンリエッタが目に付けたのは、薔薇の装飾が施された杖で上部には角付き髑髏があしらわれた逸品。こんなものをカッコイイと思うセンスはともかく、レンリエッタは早速引き抜こうとしたが…尋常じゃないくらいに重くてビクともしなかった。
まるで地面にくっ付いているかのように動かない…
「ふんぬぎーッ!!…はぁ!だ、だめだぁ…持ちあがらないよぉ…」
「なんだって?…あちゃぁ、呪われてるじゃないか…これ…」
「えぇー!?うそ!?触っちゃったよ…どうしよう!」
「安心してくださいお嬢様、呪いは触っただけでは発動致しませんので。」
「あはははは!悪い悪い…昔、安く買って解呪してから高く売ってやろうかと思ったんだけどねぇ…面倒になっちまったんだよ、確か。」
「んもう!そんな危ないものを置いとかないでよ…」
いきなり縁起の悪い物に当たってしまったが、エラフィン曰く呪われた品はもう無いらしいので、レンリエッタは恐る恐る違う杖を手に取った。
今度は白く、飾り気のない杖だ…フレームは木製で軽く、ヘッドには安そうなガラス玉が金具にはめ込まれている。持った感じは軽く、振り回しやすいのでイイ感じ。
「これ良いね、軽くて使いやすいかも。」
「量産品の安物、確かサニーマップのストロベリー34…って名前だったかしら。」
「ス、ストロベリー……やっぱやめとく…」
「やめちゃうのかい?」
いくら使いやすそうでもストロベリーなんて名前を聞けば使う気なんて失せてしまう…
レンリエッタは安物の杖を樽に戻して、その後も次から次へと杖を吟味した。
しかしながらエラフィンのコレクションとあってか、どの杖もクセが強いものばかり…違法改造で亜音速並みの速度を出す杖(使用者は死ぬ)や、生きた金属製の蛇が巻き付いた杖…30種類の武装を積んだ空中戦闘用の杖もあれば、持っていると性別問わずモテまくる杖なんて物もあったが……結局、レンリエッタが満足に使えそうなのはたったの一本だけだった。
「…なら…必然的にこれ、かぁ……一応聞くけど呪われたりしてないよね?改造も毒蛇も無し?」
「何とも無いよ、そりゃ変哲もない杖さ。流れ星の尻尾っていう名前でね、ひと昔前の子供たちの間で大流行してたものよ。」
「ならお嬢様でも扱えそうでございますね。」
レンリエッタが手に持ったのは『流れ星の尻尾』というもので、白樺の少し短いフレームとヘッド部分に埋め込まれた淡く光る石が特徴的な杖であった。子供が乗るのを想定して作られているおかげで軽く、扱いやすいのでレンリエッタにも乗れそうである。
それにしても、なぜエラフィンは子供用の杖など持っているのだろうか……疑問はさておき、とりあえずレンリエッタはこの杖を貸してもらう事にした。
「じゃあ、この杖…借りても良い?」
「もちろん。ぶっ壊れるまで乗り回してくると良いさ。」
「ですがお嬢様、くれぐれもお怪我をなさらないように注意してくださいね?」
「うん、分かった!じゃあもう行くね!二人とも、もう待ってるかも!」
「あぁ!行っといで!」
ということで、レンリエッタは杖を担いで階段を駆け上がり、慌ただしく邸宅の中を駆けずり回ると外へ出てブーツを履き始めた。もう二人とも既に準備を終えて待っているかもしれない…
急いでいても、きちんとベルトをギュッと締め付けたレンリエッタは忘れずに杖を手に…シュバッとその場からサタニズム街へと翔り立った。
レンリエッタは再度サタニズム街へ到着すると、ブーツを脱いでポーチへ仕舞いこみ、走って噴水広場へと向かって行った。広場では二人とも既に到着しており、パンセはシルバーの杖を一本手に持っていた。
「ごめん、遅れちゃった!」
「いやいや大丈夫!私達も今さっき到着したばかりだから。」
「急がなくてもヘーキヘーキ!どうせパークはいつも空いてるし。…それにしても、その杖…見たこと無いけど、なんていう杖なの?」
「先生に貸してもらったんだけど…流れ星の尻尾って言うの。」
パークへ向かう前に、早速クリッツはレンリエッタの杖へ興味を沸かせた。杖を貸してみれば、クリッツはまじまじと杖のフレームやヘッドを眺めまわした。
飛行杖に詳しいクリッツでも見たこと無いのはもちろんだろう、この杖は時代遅れの型落ち品なのだ。
「よく分かんないけど、良い杖みたい。製造元もステラクイーンズだし。」
「ステラクイーンズ?」
「飛行杖メーカーよ、女の子向けの杖が多いの。レンリエッタの先生ってば意外と乙女趣味なんだね?」
「どうかなぁ…だって先生が…乙女?うーん……なんかイヤだなぁ…」
乙女趣味のエラフィンを想像してレンリエッタは心底気持ちの悪さを覚えた。おそらくは自分ではなく弟子に買い与えたものだろう……そう信じたい。
それはそうと、早速三人は飛行杖を乗り回すのに適した公園…ケインパークを目指して歩き始めた。空を見れば、今日はいい天気なおかげで街中でも飛行杖の数は多かった。
道中でレンリエッタはパンセにひとつ聞いてみた。
「そう言えば…パンセは飛行杖、上手なの?」
「え!?私?まさか…普通だよ…ヘタじゃ無いと思うけど、上手って程でも無いよ。今でも曲がるときに身体が傾くの、苦手だもん。」
「なんだか怖そうだね…クリッツはどーぉ?」
「自分で言うのもなんだけど、結構得意だよ。立ち乗りだって出来るよ、先生に怒られるからあんまりやらないけどね。」
「立ち乗り…(想像したくも無いよ…)」
パンセは乗りこなす程度には嗜んでおり、クリッツは立ち乗りを出来るほどには上手らしい。しかし…飛んでいる杖に立ち乗りとは想像したくも無い光景だ…もしバランスを崩せば文字通り命を落とすことになるだろう…もっとも、この世界では全治10年ほどで済みそうだが…
三人はひとしきり歩き、やがてケインパークへと到着した。パークはレンリエッタの想像していた緑豊かな公園などではなく、平坦な石畳が敷かれ、高い柵に囲まれた大きな平地であった。
今日は休日とあってか、人も多く、皆ビュンビュンと飛び交っている。少なからず練習中だと思われる子供も居たが、レンリエッタよりずっと年下だった。
「よかった、今日はあんまり人が多くないよ。練習するにはうってつけだね。」
「なら早速始めましょ。まず聞くけど…レンリエッタは飛行杖についてどのくらい知ってるの?」
「全然…どうやって飛ぶのかも分からないよ…いつも先生の後ろに乗せてもらってるから。」
早速練習に移りたいところだが、レンリエッタは飛行杖に対する知識など皆無である。知っている事と言えば、妙な呪文を唱えて浮かばせ、後は空を飛ぶ…なんて基本的な事で呪文すらもよく覚えていない。
「なら私がお手本を見せるから真似してね。」
「うんうん、齧るように見るよ。」
「それはちょっと恥ずかしいかなぁ…」
ともかく、まずはパンセが手本を見せてくれる様だ。三人はパークへと入ると、隅の人が少ない場所へ向かい、そこで練習する事にした。
レンリエッタは一度周囲を眺めようとしたが、ふと『負傷した場合は最寄りの診療所へ』というポスターが目に入ると、直ぐに顔を戻した。不吉なものは見ないし関わらない方がずっと良いのだ。
ちなみに杖を持っていないクリッツはパーク内の貸し出し所へと向かい、傷だらけの杖たちを見比べている。時間が掛かりそうなので、二人はその間に練習を始めた。
「ここら辺なら大丈夫そうかも…えっと、まずは杖を持って。」
「うん…それから?」
「飛行杖に起動呪文を唱えるの。…グリーフ!ほら、こうすると杖が光るでしょ。」
パンセは杖を手に持ち【グリーフ】の呪文を唱えれば、杖の上部に装着されたガラス玉がボーッと薄ぼんやりと光り始めた。レンリエッタはその様子を眺めた後、真似して杖を構えて呪文を唱えてみた。
「こうやって…グリーフ!……おぉ!光った!」
「うんうん!イイ感じ、一回で起動させられるなんてすごいよ。」
「えへへへ」
すると杖のヘッド部分である淡く光る石がさらにギラリと輝きを放った。レンリエッタは呪文と聞いて不安を感じたが、取り越し苦労だったようだ。
「それで、次はどうすれば良いの?乗るの?」
「うん。まずはこうやって…跨いでみて、ヘッド部分は後ろにするの。」
「跨ぐ…こう……おわぁあッ!?」
「あぁ!?レンリエッタ!」
次にレンリエッタはパンセのやったように杖を跨ごうとしたが、足を上げる際に杖を持っていた方の手を傾けてしまった。するとその瞬間グワンッと杖が動き出し、レンリエッタは石畳へビターンッと叩き付けられた。
あまりにも強く顔面から落ちたのでパンセは慌てて駆け寄った。
「ぐげー!!」
「レンリエッタ!大丈夫!?」
「だ、大丈夫……なんか、全然痛くないや…」
「良かったぁ…パークの床は衝撃吸収の魔法が掛かってるんだけど…たまに発動しない事もあるから…」
「それを早く言って欲しかったなぁ…」
しかし、石畳に掛けられた衝撃吸収の魔法によってレンリエッタは全くの無傷で済んだ。魔法が掛かっているなら色々と心配が湧く前に言って欲しかったが、稀に発動しない事もあるらしいのであまり当てにしない方が良さそうだ。
それはそうとパンセに手を貸してもらい、立ち上がったレンリエッタは投げ出された杖を拾い上げた。杖の方も無事だ、傷一つない。
周囲の人々も先ほどの光景を見ていたのか、数人ほどレンリエッタの方をチラチラと見ていたが…クリッツはまだ貸し出し所に居り、全然気付いていない様子…
「それにしても…さっきのは一体何が原因だったの?」
「たぶん杖を傾けたせいだと思うよ…最近のは安全装置が掛かってるけど、それ…古いから掛かって無いみたい…」
「そうなんだ…じゃあ今度は気を付けないと…」
「うん、気を付けてね……そう、そんな感じ。」
気を取り直し、レンリエッタは細心の注意を払いながら杖へ跨った。可もなく不可も無く…投げ出される事も無い…
一方でパンセも自身の杖へ、すらりと跨った。
「じゃあ浮かばせるよ。こうやって、ちょっとずつ杖の先端を上に向けてみて。すると…ほら、こうやって浮かぶから。」
「う、うん……お、おぉ…!浮かんでる!私、乗れてるよ!」
パンセの見よう見まねでレンリエッタは杖に跨った状態で柄の先端を上げるように傾けると、スーッと杖は浮き始めた。段々と地面へ着いていた靴裏は離れて行き、やがて完全に離れた。
レンリエッタは飛んでいる、自分の力で…杖を使い、飛んでいる!
「すごいすごい!上手いよレンリエッタ!」
「あは、あはは!やった!初めてなのに乗れたよ!…あはは、どんどん上がってく、どんどん……ねぇ!これどうやって降りるの!?」
「お、落ち着いてレンリエッタ!逆にすれば良いの!杖の先を下ろせば降りるから!」
「はぁ…!よ、良かったぁ……また地面に叩き付けられるところだったぁ…」
軽いハプニングはあったものの、レンリエッタは浮いて地面に戻るという基本的な動作をやってのけた。初歩的とは言え、自分の力でここまで出来れば誇らしい気持ちすらも湧いて来た。
レンリエッタはこの基本的な動作をパンセと共に何回か練習して、スムーズに上り下りが可能になって来ると、ようやくクリッツがボロっちい杖を片手にやって来た。
「わー!レンリエッタ、乗れてるじゃん!」
「あ、クリッツ!ふふふ、どうよ。パンセのおかげで乗れちゃってるよ、私。」
「私は教えただけよ、レンリエッタってば初めてなのにもう一人で上り下り出来るようになってるし。」
「へぇ~…じゃ、今度はボクが教える番だね!進み方はもう教えてもらったの?」
「ううん、そう言えばまだ上がるのと下がる方法しか知らないや。」
浮いたという実感のせいですっかり忘れてしまっていたが、肝心な事に進み方はまだ知らない。なので今度はクリッツから杖の進み方について教えてもらう事になった。
しかしクリッツ曰く、あまり難しくは無いらしい。
「杖に跨るまでは一緒だよ、こうやって跨って…とりあえず浮いた状態で進む方法から教えるよ。」
先ほどと同じく、見よう見まねでレンリエッタは杖に跨り、少し浮いた状態を維持した。ここから進む方法だが…クリッツは「見て」と言い、両手でしっかり杖を握ると、少し屈んだ。
「こうやって屈むと…ほら、前に進むってこと。」
「なるほど…かがむ…」
「急に屈んじゃダメだからね、少しずつやるの。」
「柵には魔法…掛かってなさそうだもんね…」
レンリエッタは杖に跨った状態で身を少しだけ屈めると…スーッと杖は少しずつ前に進み始めた。少し進んだところで、姿勢を戻せばもちろん杖はピタリと止まった。
直感的な操作が可能な点を見れば、自転車よりかは実に簡単ではないか。
「わはははは!すごいやレンリエッタ!ボクが見て来た下級生の中で一番上手だよ!」
「か、下級生って…とりあえず…ありがとう?」
「止まる方法も分かったみたいね。どう、飛行杖ってあんまり怖くないでしょ?」
「うん!慣れれば全然怖くないよ、浮いてる状態でも安定してるし。」
ということで、レンリエッタは初日ながらも飛行杖をある程度自在に操れるほどに成長した。まだエラフィンほどのスピードは出せないが、それでも広いパーク内を一周する程には乗りこなせている。
散々怖がっていた割にはあっさり乗れてしまい、まるで怯えていたのがバカだと思えるくらいだ。
パーク内をぐるりと飛び回る中で、レンリエッタはパンセから飛行杖の基礎的な規則なども教えてもらった。
「街中を飛ぶときは必ず建物の上じゃないと駄目だよ、厳密には周囲の屋根より少し高いくらいかな。それから降りる時もちゃんと広い場所で、標識のある所で降りてね。」
「飛ぶときは建物の上、降りるときは広くて標識のある場所…うん、覚えたよ。…ところで、もしもそれを破ったらどうなるの?」
「想像したくも無いよ……多分、衛兵の人達にすごく怒られると思う…」
「怒られるだけじゃないよ、ザックは社会奉仕活動ってのをやらされたみたいだし。飛行規制掛けられる事もあるよ。」
「やっぱりこの世界でも交通ルールは厳しいんだなぁ…」
「(世界?)」
飛行杖は便利だが、その分守るべき規則も多いのだ。例えばパンセの言うように建物の多い場所で飛行する時は周囲よりも少し高く飛ぶ必要があるし、降りられる場所も決まっている。
さらにスピードを出し過ぎたり、夜間に明かりを点けなかったり、規定以上の改造を行うのも無論…違法である。
それを聞いてレンリエッタはエラフィンの罪の重さを増々知ってしまったが、自分で飛ぶ分には厳守しようと誓うのだった…
「だから、飛行杖に乗るときは必ず安全と周囲の気配りを心がけて、それから…」
「ねぇー!見てよ、レンリエッタ!パンセ!ボク、逆立ち乗り出来るよー!」
「……ああいう風に危険な乗り方だけはしないでね。」
「う、うん…」
パンセは教えるのが上手だったがクリッツはもっと上手だ、良い反面教師になれるだろう…少なくとも、飛行杖においては…
さて、そのようにしばらくの間飛び回っていると…やがて春の温かさに中てられた三人は汗ばみ始めた。燦々と輝く太陽は前日よりかは穏やかながら、その陽光は身体の水分を奪うには充分なのだ。
なので三人は一旦地上へ降り、場所を移すことにした。
「ふぅー…こうも温かいと…喉が渇いて来るね…」
「じゃあパーラーに行きましょうよ、今の時間帯ならそんなに混んでないかも。」
「賛成!クリッツはどう?」
「ボクも大賛成!杖を返して来るから待ってて!置いてかないでよね!」
こんなに暑い日はもちろんパーラーに決まり。冷たい飲み物が味わえるし、アイスサンデーやパフェも置いてあるのでそこ以外に決める場所など無い。
というわけでレンリエッタとパンセはクリッツが杖を返却するまで待つことにした。待つと言っても返すだけなのでそれほど待たないだろう…きっと何も起きないに決まっている…
だが…そんな希望をを打ち砕くように、ヤツ等は現れた…
「あれぇ?パンセ、こんな所で何やってんのさ?」
「誰の許可を貰って此処にいるワケ?」
「うわ…最悪…」
「こ、この前の…」
二人の高揚感を一気に地へ叩き落とすように現れたのは…この間、パンセをいじめていた二人組であった。赤肌に黒髪と白肌に角縁メガネの二人組…紅白とはめでたいものだが、今この状況においてはちっともめでたくなかった。
パンセは怯える…というよりも、がっかりした様な表情を浮かべ、二人組は相変わらず舐め腐ったような顔をしていたが、レンリエッタに気が付けば二人とも分かりやすく顔を引きつらせた。
「うん?……あ、あんた…なんで此処に…!」
「よ、よそ者のくせに誰の許可を得て遊んでるつもりなのさ?」
「アンタ達こそ何様なのよ、此処は公共の施設でしょ。」
「そ、そうよ!此処はみんなの場所よ、別に良いじゃない…いても…」
まるで此処を仕切っているかのような口ぶりの二人に言い返せば、パンセもそれに乗じて口を開いてくれた。レンリエッタの後ろに隠れてはいるが、以前の光景からは考えられないような成長だ。
あるいは単に二対二で調子に乗っているだけなのかもしれないが…
「なんですって?陰湿メガネの分際で私に言い返す気ィ!?チョー頭に来るんだけど?」
「それ以上怒らない方が良いよ、ただでさえ顔が赤いんだから。」
「ムキーッ!!ムカつく!こんの白髪頭!」
「なによ!茹でトマト!」
この間の事もあってか、黒髪はただでさえ赤い顔をさらに赤くさせてレンリエッタへギィーッと睨みを利かせた。しかし、レンリエッタからすればそんな睨みなどまるで屁でも無い。
散々色んな目に遭っているので、今更子供が凄んだ表情を浮かべたくらいではビビりもしないのだ。
それどころか負けじとレンリエッタもムッと強張らせた顔を浮かべては互いに睨み合い、ジリジリと怒りをぶつけ合う無言の戦いに持ち込んでみせた。
すると…
「ちょっとあなた達!此処で何やってるんです!!」
「へ?…うわぁ!?ウビィ先生!?なんでこんな所に居るんですか!?」
「わ、私達はその…」
「あれ、この前の先生…」
そこへ現れたのは、この間レンリエッタを学校まで担いで行ったキツネ教師のウビィ先生であった。突如として現れた教師にレンリエッタはキョトンとしてしまい、黒髪とメガネはギョッとしていたが…パンセはまるで気にしていない様子。それどころか薄く笑みを浮かべている…
「このような所でいじめを行うなんて……校長先生に報告させて頂きますからね!」
「違うんです先生!私達は…その…ただ一緒に遊んでて…」
「そうなんです、いじめだなんてそんな…」
二人はすっかりビビり散らかしてしまい、先ほどまでの威厳は何処へやら…ガクガクと震えながら教師相手に言い訳を散々垂れ始めた。
何が起きているのかまるで理解できていないレンリエッタだったが、この光景を見て愉快だと思わない方がおかしかった。どんなにイキって見せても所詮はただの子供なのだ。
「もう充分です!あなた達のような生徒は学校には不要です、退学処分にしてもらいますからね!」
「えぇ!?それだけはやめてください先生!お願いしますぅ~!」
「パパとママに殺されちゃうよぉ~!!」
「……ククク…あははははは!!バーカバーカ!騙されてやんのー!!」
そして二人が涙目になったところでようやくネタバラシ…ウビィ先生が大きく笑うと、次の瞬間ドロンッと煙に包まれ、姿を現したのは……クリッツ。
クリッツが先生に化けていたのだ。相変わらずの変身テクニック…レンリエッタは思わず感心してしまった。
騙された二人も思わずしばらく硬直していたが、状況を理解すると直ぐにまた怒り始めた。
「そっか!クリッツが化けてたのか…」
「なにぃ!?くっ…!んもう!!マジで頭に来た!この犬ガキ!」
「あっはははは!傑作!パパとママに殺されちゃうよぉ、怖いよぉ~…だって!」
「うっ…ぐぐぐ…!」
黒髪は心底胸糞悪そうに歯をギシギシと鳴らしながらギロッと睨みつけ、メガネの方は……少し安心しつつも、羞恥心か怒りか…顔を赤く染め上げていた。
そしてその二人をおちょくるかのようにクリッツは二人の真似をして、さらに怒らせる…
するとついに黒髪が背負っていた長杖を手に取り、同じくメガネも取って構えた。飛行杖なのだろう…しかし、杖とある以上触媒としても使えるので、流石のレンリエッタもポケットの杖を手に取ろうとした。
だが…
「おっとっと!ボクに手を出したらホントに先生が黙って無いよ!」
「このっ…!くぅっ!」
「捨て子のくせに生意気よ!…クンちゃん!行こうよ…」
「チッ……親が捨てた理由もよく分かるわね!」
「へへーん!そっちこそ捨てられたら面倒見てやるよ!」
流石に手を出せないと判断した二人はそう吐き捨てると、杖を浮かばせてそのまま飛び去ってしまった。何事も起きなくて良かったと思う反面、レンリエッタは二人の言っていた捨て子という言葉が引っかかった…
しかし当の本人は何も気にしていないように立っている。
「とりあえず…何も起きなくて良かった……パンセ、大丈夫?」
「うん、大丈夫……ねぇクリッツ、あの二人が言った事だけど…」
「別に気にしてないって!何度も言ってるじゃん。」
「そうだよね…うん。」
パンセは心配していたが、それでもクリッツはまるで堪えていないように振舞ってみせた。色々と過去があるのだろうが、レンリエッタはとりあえずポケットから手を抜くと、ふぅーッと一息吐いて忘れることにした。
すっかり嫌な気分になってしまったが、災いの元は過ぎ去ったので終わりよければ全てよし…
「それよりさ!二人とも!早くパーラーに行こうよ、ボクもうパフェが食べたくて堪らないよ…」
「うん、そうしよっか。嫌な事は甘いもので忘れた方が良いよね。」
「でも…はぁ……鬱になりそう…学校であの二人に遭った時、また言い返せるかな…」
「その時は私が居るって思い出してよ、パンセが辛い時はいつでも助けるから。」
「あはは…レンリエッタって……なんかでっかいね、うつわ。」
問題は過ぎ去ったのでレンリエッタとクリッツとパンセはパークを出てパーラーへ向かい始めた。
結局、嫌な事はあってもその日は大変すばらしい一日であり、レンリエッタは初めて友達と遊ぶ感覚を味わい、大いに友達付き合いを満喫した。
書店で同期紙の連絡帳を買おうとして値段にギョッとしたり、パティスリーでは店主にイチゴドーナツを勧められて危うく命の危機に瀕したりなどもしたが、本当に充実した日であった。
毎日がこんな日になれば良いのにと考えても、必ず終わりはやって来る……レンリエッタが帰り際、名残惜しい感情に襲われたのは言うまでもなかった…
つづく…
そのまま急いで広間へ向かってみれば、ティータイムを嗜んでいたであろうエラフィンとグリスがカップを手に驚いた様子でレンリエッタの方を向いた。あまりにも早い帰宅に加え、急いでせいで勢いよく扉を開けてしまったので驚くのも無理はないだろう。
「おっと!なんだい、やけに早いじゃないか。」
「お嬢様、日頃から注意しておりますがご帰宅される際は扉をもう少し丁寧に…」
「あぁ違うの!ちょっと借りたい物があって戻って来たの!」
「借りたい物?まさか…金じゃないだろうねぇ?」
「違う違う!飛行杖!飛行杖を貸してほしくて!」
借りると聞いて良からぬ顔を浮かべるエラフィンだったが、飛行杖と聞けばすぐに表情を戻した。
そして少し落ち着きを取り戻したレンリエッタは二人へ事情を説明し始めた。パンセとクリッツから飛行杖の乗り方を教えてもらうので、余っている物を貸してほしいと。
それを聞いてエラフィンは納得したような表情を浮かべるものの…グリスはあまり良い顔を浮かべなかった。
「なるほど…まぁ飛行杖なら貸してやるさ、なんせいっぱいあるからね。」
「ですがお嬢様…飛行杖はまだ早いのでは…?もし落ちて怪我でもされてしまっては…」
「友達が居るから大丈夫だよ。それに、ちゃんとした場所で練習するから心配しないで。」
「そうさグリス、レンリエッタくらいの子は杖を乗り回すもんよ。懐かしいねぇ……どれ、倉庫の杖を見せてやろうじゃないか。」
「わーい!ありがとう先生!」
グリスはどこか不安を感じていたものの、レンリエッタはエラフィンと共に地下倉庫へと向かい、余っている杖とやらを見せてもらう事にした。一応グリスもその後ろからランプを持って付いて来たが…狭そうだ。
地下倉庫は相変わらず暗く、冷たく、不気味な場所だが面白そうな物品に溢れている。針だらけの椅子や『使用厳禁』の札が貼られたヘルメットに加え、赤い螺旋状の槍なんかもあったが、今回はそんな物に興味を移している場合ではない。
エラフィンは倉庫の隅へと向かい、そこから樽をひとつ持って来た……ただの樽ではない、様々な長杖が無造作にぶち込まれている。
「ふぅ…さて、良い物があると良いんだけど…」
「これって全部飛行杖?すっごいなぁ……あ、これカッコイイ!」
「ふーむ…お目が高いねぇ、それは薔薇と髑髏の杖さ。」
「お嬢様の美的感覚が心配でございます…」
まず最初にレンリエッタが目に付けたのは、薔薇の装飾が施された杖で上部には角付き髑髏があしらわれた逸品。こんなものをカッコイイと思うセンスはともかく、レンリエッタは早速引き抜こうとしたが…尋常じゃないくらいに重くてビクともしなかった。
まるで地面にくっ付いているかのように動かない…
「ふんぬぎーッ!!…はぁ!だ、だめだぁ…持ちあがらないよぉ…」
「なんだって?…あちゃぁ、呪われてるじゃないか…これ…」
「えぇー!?うそ!?触っちゃったよ…どうしよう!」
「安心してくださいお嬢様、呪いは触っただけでは発動致しませんので。」
「あはははは!悪い悪い…昔、安く買って解呪してから高く売ってやろうかと思ったんだけどねぇ…面倒になっちまったんだよ、確か。」
「んもう!そんな危ないものを置いとかないでよ…」
いきなり縁起の悪い物に当たってしまったが、エラフィン曰く呪われた品はもう無いらしいので、レンリエッタは恐る恐る違う杖を手に取った。
今度は白く、飾り気のない杖だ…フレームは木製で軽く、ヘッドには安そうなガラス玉が金具にはめ込まれている。持った感じは軽く、振り回しやすいのでイイ感じ。
「これ良いね、軽くて使いやすいかも。」
「量産品の安物、確かサニーマップのストロベリー34…って名前だったかしら。」
「ス、ストロベリー……やっぱやめとく…」
「やめちゃうのかい?」
いくら使いやすそうでもストロベリーなんて名前を聞けば使う気なんて失せてしまう…
レンリエッタは安物の杖を樽に戻して、その後も次から次へと杖を吟味した。
しかしながらエラフィンのコレクションとあってか、どの杖もクセが強いものばかり…違法改造で亜音速並みの速度を出す杖(使用者は死ぬ)や、生きた金属製の蛇が巻き付いた杖…30種類の武装を積んだ空中戦闘用の杖もあれば、持っていると性別問わずモテまくる杖なんて物もあったが……結局、レンリエッタが満足に使えそうなのはたったの一本だけだった。
「…なら…必然的にこれ、かぁ……一応聞くけど呪われたりしてないよね?改造も毒蛇も無し?」
「何とも無いよ、そりゃ変哲もない杖さ。流れ星の尻尾っていう名前でね、ひと昔前の子供たちの間で大流行してたものよ。」
「ならお嬢様でも扱えそうでございますね。」
レンリエッタが手に持ったのは『流れ星の尻尾』というもので、白樺の少し短いフレームとヘッド部分に埋め込まれた淡く光る石が特徴的な杖であった。子供が乗るのを想定して作られているおかげで軽く、扱いやすいのでレンリエッタにも乗れそうである。
それにしても、なぜエラフィンは子供用の杖など持っているのだろうか……疑問はさておき、とりあえずレンリエッタはこの杖を貸してもらう事にした。
「じゃあ、この杖…借りても良い?」
「もちろん。ぶっ壊れるまで乗り回してくると良いさ。」
「ですがお嬢様、くれぐれもお怪我をなさらないように注意してくださいね?」
「うん、分かった!じゃあもう行くね!二人とも、もう待ってるかも!」
「あぁ!行っといで!」
ということで、レンリエッタは杖を担いで階段を駆け上がり、慌ただしく邸宅の中を駆けずり回ると外へ出てブーツを履き始めた。もう二人とも既に準備を終えて待っているかもしれない…
急いでいても、きちんとベルトをギュッと締め付けたレンリエッタは忘れずに杖を手に…シュバッとその場からサタニズム街へと翔り立った。
レンリエッタは再度サタニズム街へ到着すると、ブーツを脱いでポーチへ仕舞いこみ、走って噴水広場へと向かって行った。広場では二人とも既に到着しており、パンセはシルバーの杖を一本手に持っていた。
「ごめん、遅れちゃった!」
「いやいや大丈夫!私達も今さっき到着したばかりだから。」
「急がなくてもヘーキヘーキ!どうせパークはいつも空いてるし。…それにしても、その杖…見たこと無いけど、なんていう杖なの?」
「先生に貸してもらったんだけど…流れ星の尻尾って言うの。」
パークへ向かう前に、早速クリッツはレンリエッタの杖へ興味を沸かせた。杖を貸してみれば、クリッツはまじまじと杖のフレームやヘッドを眺めまわした。
飛行杖に詳しいクリッツでも見たこと無いのはもちろんだろう、この杖は時代遅れの型落ち品なのだ。
「よく分かんないけど、良い杖みたい。製造元もステラクイーンズだし。」
「ステラクイーンズ?」
「飛行杖メーカーよ、女の子向けの杖が多いの。レンリエッタの先生ってば意外と乙女趣味なんだね?」
「どうかなぁ…だって先生が…乙女?うーん……なんかイヤだなぁ…」
乙女趣味のエラフィンを想像してレンリエッタは心底気持ちの悪さを覚えた。おそらくは自分ではなく弟子に買い与えたものだろう……そう信じたい。
それはそうと、早速三人は飛行杖を乗り回すのに適した公園…ケインパークを目指して歩き始めた。空を見れば、今日はいい天気なおかげで街中でも飛行杖の数は多かった。
道中でレンリエッタはパンセにひとつ聞いてみた。
「そう言えば…パンセは飛行杖、上手なの?」
「え!?私?まさか…普通だよ…ヘタじゃ無いと思うけど、上手って程でも無いよ。今でも曲がるときに身体が傾くの、苦手だもん。」
「なんだか怖そうだね…クリッツはどーぉ?」
「自分で言うのもなんだけど、結構得意だよ。立ち乗りだって出来るよ、先生に怒られるからあんまりやらないけどね。」
「立ち乗り…(想像したくも無いよ…)」
パンセは乗りこなす程度には嗜んでおり、クリッツは立ち乗りを出来るほどには上手らしい。しかし…飛んでいる杖に立ち乗りとは想像したくも無い光景だ…もしバランスを崩せば文字通り命を落とすことになるだろう…もっとも、この世界では全治10年ほどで済みそうだが…
三人はひとしきり歩き、やがてケインパークへと到着した。パークはレンリエッタの想像していた緑豊かな公園などではなく、平坦な石畳が敷かれ、高い柵に囲まれた大きな平地であった。
今日は休日とあってか、人も多く、皆ビュンビュンと飛び交っている。少なからず練習中だと思われる子供も居たが、レンリエッタよりずっと年下だった。
「よかった、今日はあんまり人が多くないよ。練習するにはうってつけだね。」
「なら早速始めましょ。まず聞くけど…レンリエッタは飛行杖についてどのくらい知ってるの?」
「全然…どうやって飛ぶのかも分からないよ…いつも先生の後ろに乗せてもらってるから。」
早速練習に移りたいところだが、レンリエッタは飛行杖に対する知識など皆無である。知っている事と言えば、妙な呪文を唱えて浮かばせ、後は空を飛ぶ…なんて基本的な事で呪文すらもよく覚えていない。
「なら私がお手本を見せるから真似してね。」
「うんうん、齧るように見るよ。」
「それはちょっと恥ずかしいかなぁ…」
ともかく、まずはパンセが手本を見せてくれる様だ。三人はパークへと入ると、隅の人が少ない場所へ向かい、そこで練習する事にした。
レンリエッタは一度周囲を眺めようとしたが、ふと『負傷した場合は最寄りの診療所へ』というポスターが目に入ると、直ぐに顔を戻した。不吉なものは見ないし関わらない方がずっと良いのだ。
ちなみに杖を持っていないクリッツはパーク内の貸し出し所へと向かい、傷だらけの杖たちを見比べている。時間が掛かりそうなので、二人はその間に練習を始めた。
「ここら辺なら大丈夫そうかも…えっと、まずは杖を持って。」
「うん…それから?」
「飛行杖に起動呪文を唱えるの。…グリーフ!ほら、こうすると杖が光るでしょ。」
パンセは杖を手に持ち【グリーフ】の呪文を唱えれば、杖の上部に装着されたガラス玉がボーッと薄ぼんやりと光り始めた。レンリエッタはその様子を眺めた後、真似して杖を構えて呪文を唱えてみた。
「こうやって…グリーフ!……おぉ!光った!」
「うんうん!イイ感じ、一回で起動させられるなんてすごいよ。」
「えへへへ」
すると杖のヘッド部分である淡く光る石がさらにギラリと輝きを放った。レンリエッタは呪文と聞いて不安を感じたが、取り越し苦労だったようだ。
「それで、次はどうすれば良いの?乗るの?」
「うん。まずはこうやって…跨いでみて、ヘッド部分は後ろにするの。」
「跨ぐ…こう……おわぁあッ!?」
「あぁ!?レンリエッタ!」
次にレンリエッタはパンセのやったように杖を跨ごうとしたが、足を上げる際に杖を持っていた方の手を傾けてしまった。するとその瞬間グワンッと杖が動き出し、レンリエッタは石畳へビターンッと叩き付けられた。
あまりにも強く顔面から落ちたのでパンセは慌てて駆け寄った。
「ぐげー!!」
「レンリエッタ!大丈夫!?」
「だ、大丈夫……なんか、全然痛くないや…」
「良かったぁ…パークの床は衝撃吸収の魔法が掛かってるんだけど…たまに発動しない事もあるから…」
「それを早く言って欲しかったなぁ…」
しかし、石畳に掛けられた衝撃吸収の魔法によってレンリエッタは全くの無傷で済んだ。魔法が掛かっているなら色々と心配が湧く前に言って欲しかったが、稀に発動しない事もあるらしいのであまり当てにしない方が良さそうだ。
それはそうとパンセに手を貸してもらい、立ち上がったレンリエッタは投げ出された杖を拾い上げた。杖の方も無事だ、傷一つない。
周囲の人々も先ほどの光景を見ていたのか、数人ほどレンリエッタの方をチラチラと見ていたが…クリッツはまだ貸し出し所に居り、全然気付いていない様子…
「それにしても…さっきのは一体何が原因だったの?」
「たぶん杖を傾けたせいだと思うよ…最近のは安全装置が掛かってるけど、それ…古いから掛かって無いみたい…」
「そうなんだ…じゃあ今度は気を付けないと…」
「うん、気を付けてね……そう、そんな感じ。」
気を取り直し、レンリエッタは細心の注意を払いながら杖へ跨った。可もなく不可も無く…投げ出される事も無い…
一方でパンセも自身の杖へ、すらりと跨った。
「じゃあ浮かばせるよ。こうやって、ちょっとずつ杖の先端を上に向けてみて。すると…ほら、こうやって浮かぶから。」
「う、うん……お、おぉ…!浮かんでる!私、乗れてるよ!」
パンセの見よう見まねでレンリエッタは杖に跨った状態で柄の先端を上げるように傾けると、スーッと杖は浮き始めた。段々と地面へ着いていた靴裏は離れて行き、やがて完全に離れた。
レンリエッタは飛んでいる、自分の力で…杖を使い、飛んでいる!
「すごいすごい!上手いよレンリエッタ!」
「あは、あはは!やった!初めてなのに乗れたよ!…あはは、どんどん上がってく、どんどん……ねぇ!これどうやって降りるの!?」
「お、落ち着いてレンリエッタ!逆にすれば良いの!杖の先を下ろせば降りるから!」
「はぁ…!よ、良かったぁ……また地面に叩き付けられるところだったぁ…」
軽いハプニングはあったものの、レンリエッタは浮いて地面に戻るという基本的な動作をやってのけた。初歩的とは言え、自分の力でここまで出来れば誇らしい気持ちすらも湧いて来た。
レンリエッタはこの基本的な動作をパンセと共に何回か練習して、スムーズに上り下りが可能になって来ると、ようやくクリッツがボロっちい杖を片手にやって来た。
「わー!レンリエッタ、乗れてるじゃん!」
「あ、クリッツ!ふふふ、どうよ。パンセのおかげで乗れちゃってるよ、私。」
「私は教えただけよ、レンリエッタってば初めてなのにもう一人で上り下り出来るようになってるし。」
「へぇ~…じゃ、今度はボクが教える番だね!進み方はもう教えてもらったの?」
「ううん、そう言えばまだ上がるのと下がる方法しか知らないや。」
浮いたという実感のせいですっかり忘れてしまっていたが、肝心な事に進み方はまだ知らない。なので今度はクリッツから杖の進み方について教えてもらう事になった。
しかしクリッツ曰く、あまり難しくは無いらしい。
「杖に跨るまでは一緒だよ、こうやって跨って…とりあえず浮いた状態で進む方法から教えるよ。」
先ほどと同じく、見よう見まねでレンリエッタは杖に跨り、少し浮いた状態を維持した。ここから進む方法だが…クリッツは「見て」と言い、両手でしっかり杖を握ると、少し屈んだ。
「こうやって屈むと…ほら、前に進むってこと。」
「なるほど…かがむ…」
「急に屈んじゃダメだからね、少しずつやるの。」
「柵には魔法…掛かってなさそうだもんね…」
レンリエッタは杖に跨った状態で身を少しだけ屈めると…スーッと杖は少しずつ前に進み始めた。少し進んだところで、姿勢を戻せばもちろん杖はピタリと止まった。
直感的な操作が可能な点を見れば、自転車よりかは実に簡単ではないか。
「わはははは!すごいやレンリエッタ!ボクが見て来た下級生の中で一番上手だよ!」
「か、下級生って…とりあえず…ありがとう?」
「止まる方法も分かったみたいね。どう、飛行杖ってあんまり怖くないでしょ?」
「うん!慣れれば全然怖くないよ、浮いてる状態でも安定してるし。」
ということで、レンリエッタは初日ながらも飛行杖をある程度自在に操れるほどに成長した。まだエラフィンほどのスピードは出せないが、それでも広いパーク内を一周する程には乗りこなせている。
散々怖がっていた割にはあっさり乗れてしまい、まるで怯えていたのがバカだと思えるくらいだ。
パーク内をぐるりと飛び回る中で、レンリエッタはパンセから飛行杖の基礎的な規則なども教えてもらった。
「街中を飛ぶときは必ず建物の上じゃないと駄目だよ、厳密には周囲の屋根より少し高いくらいかな。それから降りる時もちゃんと広い場所で、標識のある所で降りてね。」
「飛ぶときは建物の上、降りるときは広くて標識のある場所…うん、覚えたよ。…ところで、もしもそれを破ったらどうなるの?」
「想像したくも無いよ……多分、衛兵の人達にすごく怒られると思う…」
「怒られるだけじゃないよ、ザックは社会奉仕活動ってのをやらされたみたいだし。飛行規制掛けられる事もあるよ。」
「やっぱりこの世界でも交通ルールは厳しいんだなぁ…」
「(世界?)」
飛行杖は便利だが、その分守るべき規則も多いのだ。例えばパンセの言うように建物の多い場所で飛行する時は周囲よりも少し高く飛ぶ必要があるし、降りられる場所も決まっている。
さらにスピードを出し過ぎたり、夜間に明かりを点けなかったり、規定以上の改造を行うのも無論…違法である。
それを聞いてレンリエッタはエラフィンの罪の重さを増々知ってしまったが、自分で飛ぶ分には厳守しようと誓うのだった…
「だから、飛行杖に乗るときは必ず安全と周囲の気配りを心がけて、それから…」
「ねぇー!見てよ、レンリエッタ!パンセ!ボク、逆立ち乗り出来るよー!」
「……ああいう風に危険な乗り方だけはしないでね。」
「う、うん…」
パンセは教えるのが上手だったがクリッツはもっと上手だ、良い反面教師になれるだろう…少なくとも、飛行杖においては…
さて、そのようにしばらくの間飛び回っていると…やがて春の温かさに中てられた三人は汗ばみ始めた。燦々と輝く太陽は前日よりかは穏やかながら、その陽光は身体の水分を奪うには充分なのだ。
なので三人は一旦地上へ降り、場所を移すことにした。
「ふぅー…こうも温かいと…喉が渇いて来るね…」
「じゃあパーラーに行きましょうよ、今の時間帯ならそんなに混んでないかも。」
「賛成!クリッツはどう?」
「ボクも大賛成!杖を返して来るから待ってて!置いてかないでよね!」
こんなに暑い日はもちろんパーラーに決まり。冷たい飲み物が味わえるし、アイスサンデーやパフェも置いてあるのでそこ以外に決める場所など無い。
というわけでレンリエッタとパンセはクリッツが杖を返却するまで待つことにした。待つと言っても返すだけなのでそれほど待たないだろう…きっと何も起きないに決まっている…
だが…そんな希望をを打ち砕くように、ヤツ等は現れた…
「あれぇ?パンセ、こんな所で何やってんのさ?」
「誰の許可を貰って此処にいるワケ?」
「うわ…最悪…」
「こ、この前の…」
二人の高揚感を一気に地へ叩き落とすように現れたのは…この間、パンセをいじめていた二人組であった。赤肌に黒髪と白肌に角縁メガネの二人組…紅白とはめでたいものだが、今この状況においてはちっともめでたくなかった。
パンセは怯える…というよりも、がっかりした様な表情を浮かべ、二人組は相変わらず舐め腐ったような顔をしていたが、レンリエッタに気が付けば二人とも分かりやすく顔を引きつらせた。
「うん?……あ、あんた…なんで此処に…!」
「よ、よそ者のくせに誰の許可を得て遊んでるつもりなのさ?」
「アンタ達こそ何様なのよ、此処は公共の施設でしょ。」
「そ、そうよ!此処はみんなの場所よ、別に良いじゃない…いても…」
まるで此処を仕切っているかのような口ぶりの二人に言い返せば、パンセもそれに乗じて口を開いてくれた。レンリエッタの後ろに隠れてはいるが、以前の光景からは考えられないような成長だ。
あるいは単に二対二で調子に乗っているだけなのかもしれないが…
「なんですって?陰湿メガネの分際で私に言い返す気ィ!?チョー頭に来るんだけど?」
「それ以上怒らない方が良いよ、ただでさえ顔が赤いんだから。」
「ムキーッ!!ムカつく!こんの白髪頭!」
「なによ!茹でトマト!」
この間の事もあってか、黒髪はただでさえ赤い顔をさらに赤くさせてレンリエッタへギィーッと睨みを利かせた。しかし、レンリエッタからすればそんな睨みなどまるで屁でも無い。
散々色んな目に遭っているので、今更子供が凄んだ表情を浮かべたくらいではビビりもしないのだ。
それどころか負けじとレンリエッタもムッと強張らせた顔を浮かべては互いに睨み合い、ジリジリと怒りをぶつけ合う無言の戦いに持ち込んでみせた。
すると…
「ちょっとあなた達!此処で何やってるんです!!」
「へ?…うわぁ!?ウビィ先生!?なんでこんな所に居るんですか!?」
「わ、私達はその…」
「あれ、この前の先生…」
そこへ現れたのは、この間レンリエッタを学校まで担いで行ったキツネ教師のウビィ先生であった。突如として現れた教師にレンリエッタはキョトンとしてしまい、黒髪とメガネはギョッとしていたが…パンセはまるで気にしていない様子。それどころか薄く笑みを浮かべている…
「このような所でいじめを行うなんて……校長先生に報告させて頂きますからね!」
「違うんです先生!私達は…その…ただ一緒に遊んでて…」
「そうなんです、いじめだなんてそんな…」
二人はすっかりビビり散らかしてしまい、先ほどまでの威厳は何処へやら…ガクガクと震えながら教師相手に言い訳を散々垂れ始めた。
何が起きているのかまるで理解できていないレンリエッタだったが、この光景を見て愉快だと思わない方がおかしかった。どんなにイキって見せても所詮はただの子供なのだ。
「もう充分です!あなた達のような生徒は学校には不要です、退学処分にしてもらいますからね!」
「えぇ!?それだけはやめてください先生!お願いしますぅ~!」
「パパとママに殺されちゃうよぉ~!!」
「……ククク…あははははは!!バーカバーカ!騙されてやんのー!!」
そして二人が涙目になったところでようやくネタバラシ…ウビィ先生が大きく笑うと、次の瞬間ドロンッと煙に包まれ、姿を現したのは……クリッツ。
クリッツが先生に化けていたのだ。相変わらずの変身テクニック…レンリエッタは思わず感心してしまった。
騙された二人も思わずしばらく硬直していたが、状況を理解すると直ぐにまた怒り始めた。
「そっか!クリッツが化けてたのか…」
「なにぃ!?くっ…!んもう!!マジで頭に来た!この犬ガキ!」
「あっはははは!傑作!パパとママに殺されちゃうよぉ、怖いよぉ~…だって!」
「うっ…ぐぐぐ…!」
黒髪は心底胸糞悪そうに歯をギシギシと鳴らしながらギロッと睨みつけ、メガネの方は……少し安心しつつも、羞恥心か怒りか…顔を赤く染め上げていた。
そしてその二人をおちょくるかのようにクリッツは二人の真似をして、さらに怒らせる…
するとついに黒髪が背負っていた長杖を手に取り、同じくメガネも取って構えた。飛行杖なのだろう…しかし、杖とある以上触媒としても使えるので、流石のレンリエッタもポケットの杖を手に取ろうとした。
だが…
「おっとっと!ボクに手を出したらホントに先生が黙って無いよ!」
「このっ…!くぅっ!」
「捨て子のくせに生意気よ!…クンちゃん!行こうよ…」
「チッ……親が捨てた理由もよく分かるわね!」
「へへーん!そっちこそ捨てられたら面倒見てやるよ!」
流石に手を出せないと判断した二人はそう吐き捨てると、杖を浮かばせてそのまま飛び去ってしまった。何事も起きなくて良かったと思う反面、レンリエッタは二人の言っていた捨て子という言葉が引っかかった…
しかし当の本人は何も気にしていないように立っている。
「とりあえず…何も起きなくて良かった……パンセ、大丈夫?」
「うん、大丈夫……ねぇクリッツ、あの二人が言った事だけど…」
「別に気にしてないって!何度も言ってるじゃん。」
「そうだよね…うん。」
パンセは心配していたが、それでもクリッツはまるで堪えていないように振舞ってみせた。色々と過去があるのだろうが、レンリエッタはとりあえずポケットから手を抜くと、ふぅーッと一息吐いて忘れることにした。
すっかり嫌な気分になってしまったが、災いの元は過ぎ去ったので終わりよければ全てよし…
「それよりさ!二人とも!早くパーラーに行こうよ、ボクもうパフェが食べたくて堪らないよ…」
「うん、そうしよっか。嫌な事は甘いもので忘れた方が良いよね。」
「でも…はぁ……鬱になりそう…学校であの二人に遭った時、また言い返せるかな…」
「その時は私が居るって思い出してよ、パンセが辛い時はいつでも助けるから。」
「あはは…レンリエッタって……なんかでっかいね、うつわ。」
問題は過ぎ去ったのでレンリエッタとクリッツとパンセはパークを出てパーラーへ向かい始めた。
結局、嫌な事はあってもその日は大変すばらしい一日であり、レンリエッタは初めて友達と遊ぶ感覚を味わい、大いに友達付き合いを満喫した。
書店で同期紙の連絡帳を買おうとして値段にギョッとしたり、パティスリーでは店主にイチゴドーナツを勧められて危うく命の危機に瀕したりなどもしたが、本当に充実した日であった。
毎日がこんな日になれば良いのにと考えても、必ず終わりはやって来る……レンリエッタが帰り際、名残惜しい感情に襲われたのは言うまでもなかった…
つづく…
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