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8.クリスマスツリー
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仕事を終わらせた俺は、今度はちゃんとコートを羽織ってエレベーターホールへと向かう。遠藤も同じタイミングで終わったようだったが、誰かからかかってきた電話につかまっていた。
濱田くんと約束した時間に少し遅れてしまったので、エレベーターを待っている間にメールを送る。
『今、仕事が終わったから、待ってて』
送信し終わった俺は上ってくるエレベーターの階数表示に目を向ける。待っている時ほど、遅く感じるのは、いつものことだが、今日ほど、遅すぎる、と苛ついたのは久しぶりかもしれない。
「お、間に合った」
俺の背後に遠藤がコートのボタンを留めながら立っていた。
「誰からだったんだ」
「あ、いや、プライベートなんで」
「そうか」
遠藤のプライベートは、実際、あまりよく知らない。あの八巻さんのことにしても、彼女がうちにくるまで知らなかった。
ちょうどエレベーターのドアが開いた。誰も乗っていない箱に乗り込み、俺たちは1階へと降りていく。
「山本課長、このあと、飯でもどうですか」
遠藤は腕時計の時間を見ながら、俺に声をかけてきた。俺は濱田くんとの約束があることもそうだけれど、下手に遠藤についてこられると、落ち着いて話もできないだろうと思い、「いや、今日は遠慮しとく」と答える。
「この時間に、家で弁当ですか?」
遠藤が呆れたように言いながら、話を続ける。
「ダメっすよ。ちゃんと食べないと」
「ああ、うん」
エレベーターが一階につくと、俺たちはすでに閉まっている表側ではなく、裏手にある出口へと向かう。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様~」
警備員のおじさんに声をかけ、外に出る。さっき外に出た時よりも、一段と気温が下がっているようだ。俺はコートの襟元をグッと上げる。裏手からだと、濱田くんと約束した店は、少し周り込まないとならない。
「じゃ、俺、こっちだから」
「えっ?」
遠藤にそう言うと、いつもよりも少し速足で歩きだす。裏道のようなここは、あまり通る人間も多くはない。店までは、あっという間についたが、若干、自分の息があがってしまったのは、仕方がない。息を整えてから店のドアを開けると、すぐに、カウンターに一人座る濱田くんを見つけた。濱田くんは嬉しそうな顔で立ち上がろうとしたので、俺は片手をあげて、そのままでいるように伝える。
「お待ち合わせですか?」
昼間にはいない少し若い女の子が、俺に声をかけてきた。
「ああ」
そう返事をしてカウンターの濱田くんのほうを指さす。すると彼女のほうも、微かに微笑んで頷いた。すると、背後のドアが再び開いた。そこにいたのは。
「課長、歩くのはやいっすね。この店よく来るんですか?」
なぜか、楽し気な表情の遠藤だった。
濱田くんと約束した時間に少し遅れてしまったので、エレベーターを待っている間にメールを送る。
『今、仕事が終わったから、待ってて』
送信し終わった俺は上ってくるエレベーターの階数表示に目を向ける。待っている時ほど、遅く感じるのは、いつものことだが、今日ほど、遅すぎる、と苛ついたのは久しぶりかもしれない。
「お、間に合った」
俺の背後に遠藤がコートのボタンを留めながら立っていた。
「誰からだったんだ」
「あ、いや、プライベートなんで」
「そうか」
遠藤のプライベートは、実際、あまりよく知らない。あの八巻さんのことにしても、彼女がうちにくるまで知らなかった。
ちょうどエレベーターのドアが開いた。誰も乗っていない箱に乗り込み、俺たちは1階へと降りていく。
「山本課長、このあと、飯でもどうですか」
遠藤は腕時計の時間を見ながら、俺に声をかけてきた。俺は濱田くんとの約束があることもそうだけれど、下手に遠藤についてこられると、落ち着いて話もできないだろうと思い、「いや、今日は遠慮しとく」と答える。
「この時間に、家で弁当ですか?」
遠藤が呆れたように言いながら、話を続ける。
「ダメっすよ。ちゃんと食べないと」
「ああ、うん」
エレベーターが一階につくと、俺たちはすでに閉まっている表側ではなく、裏手にある出口へと向かう。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様~」
警備員のおじさんに声をかけ、外に出る。さっき外に出た時よりも、一段と気温が下がっているようだ。俺はコートの襟元をグッと上げる。裏手からだと、濱田くんと約束した店は、少し周り込まないとならない。
「じゃ、俺、こっちだから」
「えっ?」
遠藤にそう言うと、いつもよりも少し速足で歩きだす。裏道のようなここは、あまり通る人間も多くはない。店までは、あっという間についたが、若干、自分の息があがってしまったのは、仕方がない。息を整えてから店のドアを開けると、すぐに、カウンターに一人座る濱田くんを見つけた。濱田くんは嬉しそうな顔で立ち上がろうとしたので、俺は片手をあげて、そのままでいるように伝える。
「お待ち合わせですか?」
昼間にはいない少し若い女の子が、俺に声をかけてきた。
「ああ」
そう返事をしてカウンターの濱田くんのほうを指さす。すると彼女のほうも、微かに微笑んで頷いた。すると、背後のドアが再び開いた。そこにいたのは。
「課長、歩くのはやいっすね。この店よく来るんですか?」
なぜか、楽し気な表情の遠藤だった。
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