車輪屋男爵~異世界から来たピンク髪で巨乳の女の子が冷蔵庫とかシャワーとか良く分からないことを言ってるので訳してもらっていいッスか?

くさなぎ

文字の大きさ
37 / 135
第3章

第3章 世界へようこそ 6

しおりを挟む
6 ルチア救出作戦

「あんの馬鹿娘!大人しくしてろっス」
 クローリーは頭を掻きむしった。
 暫く水浴びもしていなかったせいで、フケがばらばら散った。
「しかし……連中にはどれだけ疚しいことがあるんだろうな?いきなり襲い掛かってくるとか普通じゃないぜ」
 シュラハトは普段着に長剣ロングソードを腰にぶら下げただけの街中スタイルだ。
 情報集めに出る気満々である。
「教会っていうくらいっスのになあ……」
「さって。俺も早いところ聞きこんでくるぜ」
「あ、オレも出るっス」
「大丈夫なんか?体は?」
「いやこれが肩こりまで取れたような爽快感なんス。バリバリ動くっスよー」
「んじゃ、手分けして行くか」
 2人は立ち上がった。
 どうしようもないくらいお人好しなのだ。

 そこにいきなりドアが開いた。
 叩きつけるような勢いだった。
 まさにクローリーたちが出かけようとしていた時だった。
 そこには息を切らしてしゃがみ込むマリエッラがいた。
 中々の美少女なのに涙で顔がクシャクシャだ。
「おねがい!お兄さんたち!お姉ちゃんを助けてっ!」
 クローリーとシュラハトはお互いの顔を見合わせた。

     *    *    *

 マリエッラから凡その話を聞いたクローリーとシュラハトは目を白黒させた。
 予想外に大きな話になってきたからである。
「……こりゃあ……飛んでもねえ話っスな」
「マジかよ……」
 内容は眉唾な話なのだが泣きじゃくるマリエッラを疑う気持ちは湧かなかった。
「じゃ、まあ、戦争するつもりで魔法協会行ってくるっス」
「何するつもりだ?」
「あー。構成要素マテリアルコンポーネントをがっつり買ってくるんスよ。前回、足りなくて失敗したっスからな」
「金あんのかよ?」
「大丈夫。取って置きがあるっスよ」
 クローリーの最後の隠し財産は純金の腕輪だった。
 最も高価な家宝の一つで、実家からこっそり拝借してきた品だ。
 身分を証明するための魔法石が埋め込まれた逸品だが、バラバラに崩せば同じ重さのドカル金貨と同等の価値になる。
「お兄さん頑張っちゃうぞーっス」

「クローリーさん」
「ん?」
「あたしの全財産も使って」
 それは最初に旅費と思って握りしめてきた小銭だった。
 マリエッラの掌には銀貨1枚と銅貨6枚があった。
「お。こりゃあ……大金っスな。一個師団くらい吹き飛ばせるくらいの魔法の材料が買えるっスよ」  
 クローリーは恭しく小銭を受け取った。
 高額な構成要素マテリアルコンポーネントを買うには足しにもならないが、少女の決死の覚悟を無碍にするような男ではない。
「それと……買ってもらった服と靴を……」
 マリエッラがその場で脱ぎ始めた。
 膨らみかけた幼い胸が露わになる。
「だーーっ!ストップ!ストップー!」
 クローリーが慌てて押しとどめる。
「女の子をすっぽんぽんにさせたら、オレが変態趣味のお兄さんてことにされるっスー。だから、それは勘弁」
「ああ。大丈夫だ。さっきのでお釣りがくるさ」
 シュラハトが頷いた。
 構成要素マテリアルコンポーネントの値段も価値も分からないから口から出まかせだ。
「いいか。今度こそ、ここでお大人しくしてるんだぜ」

     *    *    *

「さーて。ああは言ったが、どうする?」
 物陰に隠れたシュラハトとクローリーがこそこそ話をしていた。
「シュラさん。複雑な作戦は得意っスか?」
「いーや。全然」
「じゃあ、話は簡単っス」
 クロ―リーがにやりと笑う。
「正面突破っス。盛大に花火大会するっスよ」
「……お前に訊いた俺がバカだった。でも……」
 シュラハトは抜き身の大剣グレートソードを軽く振ってみせた。
「俺も暴れたい気持ちなんだ」
「ひっひっひっ」
 クローリーが下卑た笑いをする。
 悪巧みをしようとする時の癖だ。
「魔法の悪用の恐ろしさ。見せてやるっス」

     *    *    *

 爆音とともに巨大な扉が吹き飛んだ。
 最大火力にブーストした火炎爆発球ファイヤーボールだ。
 金目を惜しまななければ魔法は恐ろしい。
 成績は平凡と呼ばれたクローリーだが、知識だけなら導師級だ。
 普段は使いたがらない攻撃魔法をここぞとばかりにぶっ放す。
 こんな使い方は帝国近衛軍の魔術撃部隊でもなければしない。
 異世界召喚者ワタリの大魔法ならその数百倍の破壊力と聞くが、ここではこれで十分だ。
 不意打ちで魔術師が全力魔法攻撃をしたら、すぐには対応できない。
 対魔法戦闘の訓練を受けてでもいなければ、かなりの精兵でも大混乱なのである。
 魔法で何ができて何ができないかを知るのは、同じ魔術師だけなのだ。
「おーらおらおらー。一列になると死んじゃうっスよー」
 火炎爆発球ファイヤーボールよりも威力で勝る電撃列索ライトニングだ。
 術者から真っすぐ30mほど先まで貫く雷である。
 魔法の周囲にも電撃の触手が伸びるために、通路のような場所だと敵を一掃できるのだった。
 欠点は……大量の宝石を使うこと。
 クローリーも過去に魔術学院で一度練習したっきりで使ったことがない。
 残った敵はシュラハトが次々斬り伏せていく。
「あ。お前は逃がさねーっス」
 最初に会った若い神官を見つけたのだ。
 確実性を増すために必中の攻撃魔法魔法の矢マジックミサイルを放つ。
 クローリーよりも上位の魔術師が魔法を込めて作ったアイテムからなので、数本の礫がまとめて現れる。
 全部命中したら余程頑丈なものでも即死だ。
 魔法の矢マジックミサイルを全弾被弾した若い神官は転がって動かなくなる。
 2人は滅茶苦茶な勢いで奥へと進んでいく。 

「場所分かってるのか?クロ」
「当てずっぽうスけどな」
 クローリーは掌大の水晶を見る。
「こっちに向かってくるのはだいたい敵っス。遠くであんまり動かないののどれかだと思うっスな」
 生命反応を表示する魔法だった。
 水晶に光点として映るが男女などの特徴は表示されない。
 あくまで位置しか判らない。
 あとは動きによって識別するしかない。
「まー。奥に隠すっしょな。勝手に死なれたら困るだろうしー」
 クローリーはこれと思ったら近づき声をかける。
「ルチアさーん。妹さんの依頼で迎えに来たーっス。いらっしゃますかー」
 水晶球を頼りにどんどん突き進む。
「通りすがりの冒険者っスー。ルチアさーん」

 かちゃりと音を立てて、ある部屋の扉が開く。
 若い女性だ。
 聞いていた年齢よりも若く見える。
「あ。えーっと……しまった!顔判らねーっス!」
「……バカか」
「つかぬことをお尋ねしますっスが、ルチアさんっスか?」
「おい」
「……はい」
 ルチアは小さな声で答えた。
 当然だが不審者を見る目で見ている。
「お。おー。訊いてみるもんス」
「バカか。本当かどうか分からねえじゃねえか」
「いやー……だって」
 クローリーは目を細める。
「あの子がもちょっとボイーンでバイーンになって、もう少し大人で美人になったら……似てる気がするっス」
「それ、ほとんど別人だよな?」
「連れて行って会わせりゃ分かるっス」
「雑だな、おい」
 雑なことでは人後に落ちないシュラハトでも呆れるほどだ。

「じゃ。妹さんの名前の最初の文字は何っスか?」
「あ……M……」
「はい!本物っス!」
「雑っ!」
 クローリーはルチアの手を引いて元いた方へ逃げ出した。
 シュラハトも何度か剣を払いながら追いかける。
「魔法で起こした混乱はそう長くは続かないっス。今のうちに逃げるところまでいかないと」
 シュラハトは無言で頷いた。   
 こんな無茶な方法は短期決戦でしか通用しないことを理解しているのだ。
 良く訓練された戦闘員は立ち直りも早い。
 追ってくる敵には容赦なく火炎爆発球ファイヤーボールをぶち込んだ。
「さあ。もうちょっとスよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

処理中です...