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第6章 エルフの船
第6章 エルフの船 3~ボクのギャグがマジになりそう
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第6章 エルフの船 3~ボクのギャグがマジになりそう!?
●S-1 ぺんぎん海岸:シロナガスクジラの中
ルゥは子供とは思えないしっかりした面持ちで話し始めた。
カッコいい美少年は絵になるなあ。
「クローリーさんの予測通り僕たちは空に住む民です。主に洋上や大きな雲の陰なのでそちらから見ることはほとんどできませんが」
「マジっスか!」
「ええ。遠い昔は地上の人々とも交流が少しはあったそうですよ」
「なんだって?……そんな記録は……あ!?」
クロちゃんが目を見開いた。
「少し判った気がするっスな」
「えー!?なになにー!?」
「さにゃもそうっスが。賢者や他のエルフたちも共通してることがあるじゃないスか」
「んー?んー?ボクがせくしぃ美少女なことー?」
「ちげー」
クロちゃんは蔑むような眼でボクを見た。
「エルフが使うという噂の大魔法とかを誰も持ってないことっスよ」
「あー、うん。それはー……夢の中でくらい無敵でチートなスキルとか欲しいのにねー」
「いいスか?」
クロちゃんが真面目顔だ。
珍しい。
「オレが知る帝国の歴史にもエルフが出てくるっス。だいたい何か凄い魔法とか使うってことなんスが」
「うん」
「でも、さにゃたちは使えない。少なくとも今は」
「だから、どーしたのさー」
「エルフの記録は帝国創成期でほとんど終わってるっス。でも、今でもエルフの大魔法とか桁違いの戦闘力の伝説はあるっス」
「だーかーらー?」
「さにゃたちのように今現在でエルフと呼ばれる存在と、元々のエルフは別なんじゃないかって思ってるんスよ」
「うー?」
そして、クロちゃんはアイリさんとルゥに向き直った。
「千年前のエルフっていうのはさにゃたち異世界召喚者のことじゃなくて、あんたたちの事じゃないかって考えたんス」
「へ?」
「凄いな……」
ルゥが心底驚いた顔をしていた。
「よくそこへたどり着けましたね」
「いやあ……」
クロちゃんは鼻を掻いた。
「さにゃのように伝説のような魔力も何もないエルフと呼ばれる存在と、伝承にあるエルフが今までどうしても結び付かなかったんス」
アイリさんが眉を顰めている。
「で、蛮族の攻撃で飛行魔獣の集団を見たとき……オレらは対策が無かったっス。おそらく千年前の帝国建国の時の大戦争でも同じような敵を相手にしたはずなのにっス」
「ええ」
「だーかーらー!クロちゃん何言ってるのー!?」
「そしてあんたらの登場とこの船っス」
クロちゃんは船内をを見回してみせた。
「空飛ぶ魔獣と戦うには空飛ぶ乗り物。これが何隻もあったらスゲー戦力っスよな。それと大魔法かなにか凄い武器を持ってそうス」
「なんでそう思うんです?」
「銃っス。アイリさんが持ってたっしょ」
みんなの視線がアイリさんの腰に集中する。
うん。だって、ボクが持ってるファンタジックなデリンジャーと違ってすごく現代的だった。
なんて言えばいいのかな。
日本のお巡りさんが持ってるようなのじゃなくて、軍人とかが使ってそうなやつ。
オートマチックのピストル。
「銃はオレらにもあるけども。見て判るくらい洗練されたデザインに見えるんスな。もっとなんか凄そうな……さにゃがすぐ手を挙げたことからもその銃が強力なモノだって何となく想像できるっスな」
「む……」
アイリさんの表情が曇った。
事実を言い当てられたからだろう。
2発しか撃てないファンタジック・デリンジャーと10何連発の軍用銃じゃ相手にならないもん。
「と、するとっスなー。もっと凄い武器持ってても驚かねーっス」
「いや……それは……」
これは大砲とか持っててもおかしくなさそう。
というかー。レーザー砲とか超電磁砲とかあっても驚かない。
「ならばオレの仮定も結論は……帝国創成期に一緒に蛮族と戦ったエルフってーのは、つまりあんたたちじゃないかってことなんスなー」
クロちゃんは自信ありげに語った。
でも、多分だけど。
クロちゃんは元々エルフの存在にいくつか疑問を持っていたんだと思う。
それが何時で何が切欠だったのかは判らない。
歴史の記録を見ているうちに辻褄の合わない部分を幾つも見つけていたのかもしれない。
ただ、一つボクが言えることは、クロちゃんは何も考えていないようで何時も良く考えている。
目の前で起きた現象をそのまま受け入れつつも、自分の中で論理的な決着をつけようとするんだ。
そしてきっと、このシロナガスクジラとアイリさんたちを見て何かを確信したんだと思う。
「ま、まて……私たちは」
「アイリさん。クローリーさんは僕たちが考えているよりも理性的な人みたいですよ」
ルゥは感心したというよりも尊敬に近い目でクロちゃんを見ていた。
「僕たちは職務規定を逸脱するレベルでお話してます。ですからその上でお願いしたいのです」
「お願いっスか?」
「はい。見て判るようにこの船は故障しています。その修理のために必要な素材を提供して欲しいのです。今まで話したことがその代価と思っていただけると幸いですが……」
「なるほど。油断できない子っスなー」
クロちゃんが笑った。
どちらにしても説明は必要なはずだけど、それを取引材料に持ってくるなんてね。
「相手を観察して、誠意を見せることで譲歩を勝ち取れると踏んだんスな。なかなかお上手で」
クロちゃんは基本的には魔術師だ。
知識を手に入れることは何よりも喜びだろう。
もちろん魔術師であることに気付いているかは判らないけど、交渉材料になることには気付かれていたみたい。
賢い美少年。ポイント高いぞ。
クロちゃんの弟のリシャルんもだけど、ルゥはもふもふできそうな大きさなのがより好感度高い。
「でも、何処まで用意出来るものっスかね」
「ミスリル」
これはアイリさんだ。
「え?」
「ミスリルはこの地上にもあるはずだ。それは確認されているから問題はないはずだ」
「ん。まあ、沢山はないっスがね」
「それと……こっちが問題なのだが。ある種のガスが必要なのだ」
「ガス?」
「ああ。軽く極めて燃えにくい特殊なものだ。ごく一部の地層に僅かに採取できるもので……こっちは時間がかなり掛かると思うのだが」
「それってボクたちにも判るようなガスなのー?」
「ああ。この船を浮かべるために必要な最も重要な要素なのだが。太陽の元素とも呼ばれている」
「へー」
ボクはちょっと不思議に思った。
太陽を構成するって言ったら水素なんだけど、水素は可燃性で燃えやすいんだ。
辻褄が合わないよね。
クロちゃんみたいに何か歴史や伝説から推測できないかな……。
あ、あれ?まって。もしかして、アレ?
「太陽……神……ヘリオス……」
「へ?」
「え?」
みんなの不思議そうな視線がボクに集まった。
「ボクの世界にある神話に出てくる太陽の神様なんだけどね。その名前が語源になったのがヘリウム」
「っ!?」
「ほら、ぺんぎんを飛ばした時のガスだよー」
「あるのか!」
アイリさんが食いつかんばかりにボクに迫った。
「ヘリウムは水素と並んで太陽を構成する物質って言われてるんだ」
これはボクたちの理科知識でだけどね。
太陽の構成要素の多くは水素だけど2割くらいはヘリウムだったはず。
詳しい理由は判らないけど、スペクトル分析とかがそうなんじゃないかな。
それが正しいかどうかは判らないけど、今現在はそう推測されているハズ。
「極めて微量しか含有されないものなのだぞ」
「うん。でも、ファンタジーなことにかなりの純度のものが取れるんだよー。吸うと変な声になって面白いけど゙ー」
「……まさか。確認してみないと何ともいえないな」
そりゃそーだ。
最もヘリウム含有量の多いガスが出るアメリカの……なんだっけ?いう地層でとれるガスですらヘリウムは2%くらいなんだ。
うむ。それがかなりの純度で採取できるのは流石のファンタジー!
まさに夢の中だから可能なことでしょ?
「大丈夫だと思うけどねー。ボクがぺんぎん風船何個も作って飛ばしたしー」
ちなみにヘリウムは風船の中身だけじゃなくてめっちゃ重要で有用な工業資材なんだけどね。
でもボクたちの現状ではパーティーグッズ以外の使い道がない。
この場では今のところ風船の中身どまり。
それと、ミスリルは何に使うんだろーね。
「ま、話は判ったっス。ただ……オレたちだけでは対処できねーんで、一部の仲間だけでも呼んで良ーっスか?」
「む……」
あー。ヒンカ婆ちゃんやマーチスの知恵は欲しいし、ミスリルはドワーフの親方のガイウスっちじゃないとねえ。
「ミスリルはドワーフ族の鍛冶師以外は判らねーし手に入れる方法もなねーっス。だから仕方ねーんスよ」
「それは……止むを得ないな……」
アイリさんは不承不承という感じだった。
うーん。
どうして地上との接触は避けたいんだろー?
ルゥたちの世界がどういうところかは想像もできないけど、今回みたいに助け合う必要はできたりするはずだし。
食料とか何とか色々と取引してもいいじゃない。
WIN―WINな関係になりそうなのにね。
「そういう顔をしないでくれ」
アイリさんがボクに言った。
何か顔に出ちゃったみたい。
「違う世界同士は交流を慎重に行う必要があるんだ」
「色々あるっスしなー」
クロちゃんは何か納得したみたい。
でも、ボクはいま、新しい疑問が湧いたよ。
この世界の言葉は英語っぽい何かの言語。
まるっきり同じというわけじゃないし、文字も少し違う。
キリル文字みたいなのも混じってるし。
でも、大まかな用法は似ている。
だからこそ何とか意思疎通ができてるんだけど……たった今、聞き捨てならない言葉を耳にしたんだ。
今、世界を『ワールド』ではなくて『ユニヴァース』って言ったんだ。
用法がおかしいというわけじゃない。
『ワールド』は人間世界を意味するけど、『ユニヴァース』はもう一つの意味がある。
宇宙のことだ。
コスモス(秩序)やスペース(大気外)とかもあるけど、ユニヴァースっていうのは宇宙を意味する典型的な言葉なんだ。
多元宇宙をオムニヴァスっていうのと同じね。
もしかして……ルゥやアイリさんたちのエルフって……。
『ワレワレハ、ウチュウジンダ』のギャグが本当になってきてるんじゃ……?
ちょっとおおおお!
ファンタジー冒険モノがSFちっくになってきたー!?
ほんとにレーザー砲やワープ航法や光子魚雷の世界になっちゃうううう!
ボクの中で『副長、光子魚雷』って命令する宇宙船の船長が思い浮かんだ。
スキンヘッドだったりちょっとお腹が弛んだ二枚目のおじさんか!
まずいぞ。
ああいうSFって女子は体の線がばっちり見えるピチピチスーツとかぱんつ見せ見せな格好させられるんだよー?
せめてファンタジックなビキニアーマーくらいで勘弁してもらいたい。
あ。ぱんちらミニスカはえろかわいい女子の嗜みだからOKだけど。
ボクはクロちゃんを見た。
言葉に気付いていないみたい。
ファンタジー世界の住人なクロちゃんに宇宙の概念はないのかもしれない。
そういえば異世界を意味する世界の単語が面を意味する『プレーン』だし。
むむむ。
何でボクの夢はこう……ごった煮の世界なんだ……。
深夜アニメと海外ドラマがごちゃ混ぜだ。
「最低限の人数に絞るっスから安心して欲しいっス」
そう真剣な顔を見せクロちゃんの最低限の人数は……異世界召喚者大集合だった。
●S-1 ぺんぎん海岸:シロナガスクジラの中
ルゥは子供とは思えないしっかりした面持ちで話し始めた。
カッコいい美少年は絵になるなあ。
「クローリーさんの予測通り僕たちは空に住む民です。主に洋上や大きな雲の陰なのでそちらから見ることはほとんどできませんが」
「マジっスか!」
「ええ。遠い昔は地上の人々とも交流が少しはあったそうですよ」
「なんだって?……そんな記録は……あ!?」
クロちゃんが目を見開いた。
「少し判った気がするっスな」
「えー!?なになにー!?」
「さにゃもそうっスが。賢者や他のエルフたちも共通してることがあるじゃないスか」
「んー?んー?ボクがせくしぃ美少女なことー?」
「ちげー」
クロちゃんは蔑むような眼でボクを見た。
「エルフが使うという噂の大魔法とかを誰も持ってないことっスよ」
「あー、うん。それはー……夢の中でくらい無敵でチートなスキルとか欲しいのにねー」
「いいスか?」
クロちゃんが真面目顔だ。
珍しい。
「オレが知る帝国の歴史にもエルフが出てくるっス。だいたい何か凄い魔法とか使うってことなんスが」
「うん」
「でも、さにゃたちは使えない。少なくとも今は」
「だから、どーしたのさー」
「エルフの記録は帝国創成期でほとんど終わってるっス。でも、今でもエルフの大魔法とか桁違いの戦闘力の伝説はあるっス」
「だーかーらー?」
「さにゃたちのように今現在でエルフと呼ばれる存在と、元々のエルフは別なんじゃないかって思ってるんスよ」
「うー?」
そして、クロちゃんはアイリさんとルゥに向き直った。
「千年前のエルフっていうのはさにゃたち異世界召喚者のことじゃなくて、あんたたちの事じゃないかって考えたんス」
「へ?」
「凄いな……」
ルゥが心底驚いた顔をしていた。
「よくそこへたどり着けましたね」
「いやあ……」
クロちゃんは鼻を掻いた。
「さにゃのように伝説のような魔力も何もないエルフと呼ばれる存在と、伝承にあるエルフが今までどうしても結び付かなかったんス」
アイリさんが眉を顰めている。
「で、蛮族の攻撃で飛行魔獣の集団を見たとき……オレらは対策が無かったっス。おそらく千年前の帝国建国の時の大戦争でも同じような敵を相手にしたはずなのにっス」
「ええ」
「だーかーらー!クロちゃん何言ってるのー!?」
「そしてあんたらの登場とこの船っス」
クロちゃんは船内をを見回してみせた。
「空飛ぶ魔獣と戦うには空飛ぶ乗り物。これが何隻もあったらスゲー戦力っスよな。それと大魔法かなにか凄い武器を持ってそうス」
「なんでそう思うんです?」
「銃っス。アイリさんが持ってたっしょ」
みんなの視線がアイリさんの腰に集中する。
うん。だって、ボクが持ってるファンタジックなデリンジャーと違ってすごく現代的だった。
なんて言えばいいのかな。
日本のお巡りさんが持ってるようなのじゃなくて、軍人とかが使ってそうなやつ。
オートマチックのピストル。
「銃はオレらにもあるけども。見て判るくらい洗練されたデザインに見えるんスな。もっとなんか凄そうな……さにゃがすぐ手を挙げたことからもその銃が強力なモノだって何となく想像できるっスな」
「む……」
アイリさんの表情が曇った。
事実を言い当てられたからだろう。
2発しか撃てないファンタジック・デリンジャーと10何連発の軍用銃じゃ相手にならないもん。
「と、するとっスなー。もっと凄い武器持ってても驚かねーっス」
「いや……それは……」
これは大砲とか持っててもおかしくなさそう。
というかー。レーザー砲とか超電磁砲とかあっても驚かない。
「ならばオレの仮定も結論は……帝国創成期に一緒に蛮族と戦ったエルフってーのは、つまりあんたたちじゃないかってことなんスなー」
クロちゃんは自信ありげに語った。
でも、多分だけど。
クロちゃんは元々エルフの存在にいくつか疑問を持っていたんだと思う。
それが何時で何が切欠だったのかは判らない。
歴史の記録を見ているうちに辻褄の合わない部分を幾つも見つけていたのかもしれない。
ただ、一つボクが言えることは、クロちゃんは何も考えていないようで何時も良く考えている。
目の前で起きた現象をそのまま受け入れつつも、自分の中で論理的な決着をつけようとするんだ。
そしてきっと、このシロナガスクジラとアイリさんたちを見て何かを確信したんだと思う。
「ま、まて……私たちは」
「アイリさん。クローリーさんは僕たちが考えているよりも理性的な人みたいですよ」
ルゥは感心したというよりも尊敬に近い目でクロちゃんを見ていた。
「僕たちは職務規定を逸脱するレベルでお話してます。ですからその上でお願いしたいのです」
「お願いっスか?」
「はい。見て判るようにこの船は故障しています。その修理のために必要な素材を提供して欲しいのです。今まで話したことがその代価と思っていただけると幸いですが……」
「なるほど。油断できない子っスなー」
クロちゃんが笑った。
どちらにしても説明は必要なはずだけど、それを取引材料に持ってくるなんてね。
「相手を観察して、誠意を見せることで譲歩を勝ち取れると踏んだんスな。なかなかお上手で」
クロちゃんは基本的には魔術師だ。
知識を手に入れることは何よりも喜びだろう。
もちろん魔術師であることに気付いているかは判らないけど、交渉材料になることには気付かれていたみたい。
賢い美少年。ポイント高いぞ。
クロちゃんの弟のリシャルんもだけど、ルゥはもふもふできそうな大きさなのがより好感度高い。
「でも、何処まで用意出来るものっスかね」
「ミスリル」
これはアイリさんだ。
「え?」
「ミスリルはこの地上にもあるはずだ。それは確認されているから問題はないはずだ」
「ん。まあ、沢山はないっスがね」
「それと……こっちが問題なのだが。ある種のガスが必要なのだ」
「ガス?」
「ああ。軽く極めて燃えにくい特殊なものだ。ごく一部の地層に僅かに採取できるもので……こっちは時間がかなり掛かると思うのだが」
「それってボクたちにも判るようなガスなのー?」
「ああ。この船を浮かべるために必要な最も重要な要素なのだが。太陽の元素とも呼ばれている」
「へー」
ボクはちょっと不思議に思った。
太陽を構成するって言ったら水素なんだけど、水素は可燃性で燃えやすいんだ。
辻褄が合わないよね。
クロちゃんみたいに何か歴史や伝説から推測できないかな……。
あ、あれ?まって。もしかして、アレ?
「太陽……神……ヘリオス……」
「へ?」
「え?」
みんなの不思議そうな視線がボクに集まった。
「ボクの世界にある神話に出てくる太陽の神様なんだけどね。その名前が語源になったのがヘリウム」
「っ!?」
「ほら、ぺんぎんを飛ばした時のガスだよー」
「あるのか!」
アイリさんが食いつかんばかりにボクに迫った。
「ヘリウムは水素と並んで太陽を構成する物質って言われてるんだ」
これはボクたちの理科知識でだけどね。
太陽の構成要素の多くは水素だけど2割くらいはヘリウムだったはず。
詳しい理由は判らないけど、スペクトル分析とかがそうなんじゃないかな。
それが正しいかどうかは判らないけど、今現在はそう推測されているハズ。
「極めて微量しか含有されないものなのだぞ」
「うん。でも、ファンタジーなことにかなりの純度のものが取れるんだよー。吸うと変な声になって面白いけど゙ー」
「……まさか。確認してみないと何ともいえないな」
そりゃそーだ。
最もヘリウム含有量の多いガスが出るアメリカの……なんだっけ?いう地層でとれるガスですらヘリウムは2%くらいなんだ。
うむ。それがかなりの純度で採取できるのは流石のファンタジー!
まさに夢の中だから可能なことでしょ?
「大丈夫だと思うけどねー。ボクがぺんぎん風船何個も作って飛ばしたしー」
ちなみにヘリウムは風船の中身だけじゃなくてめっちゃ重要で有用な工業資材なんだけどね。
でもボクたちの現状ではパーティーグッズ以外の使い道がない。
この場では今のところ風船の中身どまり。
それと、ミスリルは何に使うんだろーね。
「ま、話は判ったっス。ただ……オレたちだけでは対処できねーんで、一部の仲間だけでも呼んで良ーっスか?」
「む……」
あー。ヒンカ婆ちゃんやマーチスの知恵は欲しいし、ミスリルはドワーフの親方のガイウスっちじゃないとねえ。
「ミスリルはドワーフ族の鍛冶師以外は判らねーし手に入れる方法もなねーっス。だから仕方ねーんスよ」
「それは……止むを得ないな……」
アイリさんは不承不承という感じだった。
うーん。
どうして地上との接触は避けたいんだろー?
ルゥたちの世界がどういうところかは想像もできないけど、今回みたいに助け合う必要はできたりするはずだし。
食料とか何とか色々と取引してもいいじゃない。
WIN―WINな関係になりそうなのにね。
「そういう顔をしないでくれ」
アイリさんがボクに言った。
何か顔に出ちゃったみたい。
「違う世界同士は交流を慎重に行う必要があるんだ」
「色々あるっスしなー」
クロちゃんは何か納得したみたい。
でも、ボクはいま、新しい疑問が湧いたよ。
この世界の言葉は英語っぽい何かの言語。
まるっきり同じというわけじゃないし、文字も少し違う。
キリル文字みたいなのも混じってるし。
でも、大まかな用法は似ている。
だからこそ何とか意思疎通ができてるんだけど……たった今、聞き捨てならない言葉を耳にしたんだ。
今、世界を『ワールド』ではなくて『ユニヴァース』って言ったんだ。
用法がおかしいというわけじゃない。
『ワールド』は人間世界を意味するけど、『ユニヴァース』はもう一つの意味がある。
宇宙のことだ。
コスモス(秩序)やスペース(大気外)とかもあるけど、ユニヴァースっていうのは宇宙を意味する典型的な言葉なんだ。
多元宇宙をオムニヴァスっていうのと同じね。
もしかして……ルゥやアイリさんたちのエルフって……。
『ワレワレハ、ウチュウジンダ』のギャグが本当になってきてるんじゃ……?
ちょっとおおおお!
ファンタジー冒険モノがSFちっくになってきたー!?
ほんとにレーザー砲やワープ航法や光子魚雷の世界になっちゃうううう!
ボクの中で『副長、光子魚雷』って命令する宇宙船の船長が思い浮かんだ。
スキンヘッドだったりちょっとお腹が弛んだ二枚目のおじさんか!
まずいぞ。
ああいうSFって女子は体の線がばっちり見えるピチピチスーツとかぱんつ見せ見せな格好させられるんだよー?
せめてファンタジックなビキニアーマーくらいで勘弁してもらいたい。
あ。ぱんちらミニスカはえろかわいい女子の嗜みだからOKだけど。
ボクはクロちゃんを見た。
言葉に気付いていないみたい。
ファンタジー世界の住人なクロちゃんに宇宙の概念はないのかもしれない。
そういえば異世界を意味する世界の単語が面を意味する『プレーン』だし。
むむむ。
何でボクの夢はこう……ごった煮の世界なんだ……。
深夜アニメと海外ドラマがごちゃ混ぜだ。
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