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俺、異世界に行くの!?①
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銀行なんていつぶりに来ただろうか。最後に来たのは確か半年前だったか、今日だって、いつものようにコンビニのATMで下ろせば済む話だったのだが、たまたま銀行が見えたのでそこに入ったのだった。
「いらっしゃいませ~」
自分でそう脳内再生しながら、久しぶりの銀行に入ることの緊張をほぐし、ATMへと向かう。
カードを入れて、さて下ろそうかというその時だった。
『全員手を挙げろ!!!!』
銀行内に怒声が響き渡る。
『キャーー!!!』
普段なら嬉しいはずの黄色い声が、悲鳴だと認識するまで、数秒の時間を要した。
「全員床に伏せろ!!」
なおも怒声は続く。
「お前はこれに金を詰めろ!ありったけだ!」
いらっしゃいませなんて軽く言ってたら余計なものまでどうやら入ってきてしまったようだ。
こんな時、ハリウッド映画の主人公ならきっと・・・なんてことを考えてみるものの、そんなことを俺がしたら即射殺だろう。
「まいったな・・・」
ただの26歳サラリーマンに打つ手などなく、関節が外れそうなほどに震える膝を押さえつけるしかない。
「おい、そこのお前。」
俺のすぐ隣で誰かが指名される。
(おいおいやめてくれ!俺はまだ死にたくねえぞ!)
しかし、なかなか隣の指名された奴が動かない。
(やばい!やばいって!死にてえのか!?)そう思いながら恐る恐る隣を見る。
可哀想なことに、指名を受けたのは銀行員らしき服装の若い女性だった。
「おい!お前だよ。そこの女!」
怒鳴られたことでその女性は、やっと顔を上げた。
「こいつは驚いた。なかなかの上物じゃねえか。」
強盗犯の一人がそうボヤいた。
顔を上げた女性は、まだ若く新入社員といったところだろうか。整った顔に見事なスレンダーな・・・いや、今はそれどころではない。
「奥の金庫を見に行く。ついて来い。」
強盗犯の1人が、その顔を醜く歪ませながらそう吐き捨てるように言った。
若い銀行員は助けを求めるかのように狼狽した目で周りを見る。
だが、当然ヒーローなんて現れない。ただ、虚しく視線をそらされるだけだった。
「はやくしねえか!」
痺れを切らした男が、その子の髪を掴み怒鳴る。
「お、おい・・・やめない・・・か」
辺りがどよめくのを感じた。
(俺は何をしてるんだ!?)
気がつくと俺は立ち上がり、若い銀行員の髪を掴む男の腕を掴んでいた。
一瞬の静寂が店内を包む。
「あ?なんだお前?」
男は一瞬何が起きたのかわからないとでもいうような目で俺を見る。
「い、いや・・・そういうのはちょっと・・・」
(だから俺は何をしてるんだよ!?)
なおも俺は言葉を続けた。
「大体お前らなんなんだよ。俺はただ給料下ろそうとしただけなんだぞ・・・なんでこんなことになるんだよ!?」
もう何がなんだが分からなくなっていた。
ドンッ!!
不意に強い衝撃を頭に感じた。
視界が歪み、遅れて激しい痛みが襲う。
「くっ!・・・っあ」
どうやら頭を銃で殴られたようだった。
冷たいはずの床が、流れ出る血によって熱を帯び始める。
「お前舐めてんのか・・・いや、どうやら死にたがりのようだな。」
店内の空気が凍りついた。
次に俺を襲うのは、終焉という名の鉛だろう。
店内に流れる死の雰囲気を感じ取ったのであろう。皆、息を潜め視線を逸らしたのがわかる。
「あっ・・・はぁ・・・」
意識が遠のいていく。身体が冷えていく感じがする。血が流れすぎたのか。
何も考えられない。俺は死ぬのか。
倒れる瞬間に見えた若い銀行員の顔は、罪悪感と悲壮感とが混ざり合ったかのような表情をこびりつけたまま固まっていた。
(ははっ・・・俺、何してんだろうな)
バカなことをした。ヒーローに夢見るほど若くはなかったはずなのに・・・
何故あの時、いつものようにコンビニに行かなかったのだろう・・・今となっては時既に遅しというやつか。
こういう時は走馬灯が見えるというが、見えるのは俺に終焉をもたらすであろう男の足と、崩れ落ちた若い銀行員のスカートの中・・・いや、何も見えない。
「〇〇〇!」
何かを叫ぶ声が聞こえる。
誰の声かもわからない。
その直後、低く乾いた音を最後に、俺の意識はテレビを消したかのように途切れた。
「いらっしゃいませ~」
自分でそう脳内再生しながら、久しぶりの銀行に入ることの緊張をほぐし、ATMへと向かう。
カードを入れて、さて下ろそうかというその時だった。
『全員手を挙げろ!!!!』
銀行内に怒声が響き渡る。
『キャーー!!!』
普段なら嬉しいはずの黄色い声が、悲鳴だと認識するまで、数秒の時間を要した。
「全員床に伏せろ!!」
なおも怒声は続く。
「お前はこれに金を詰めろ!ありったけだ!」
いらっしゃいませなんて軽く言ってたら余計なものまでどうやら入ってきてしまったようだ。
こんな時、ハリウッド映画の主人公ならきっと・・・なんてことを考えてみるものの、そんなことを俺がしたら即射殺だろう。
「まいったな・・・」
ただの26歳サラリーマンに打つ手などなく、関節が外れそうなほどに震える膝を押さえつけるしかない。
「おい、そこのお前。」
俺のすぐ隣で誰かが指名される。
(おいおいやめてくれ!俺はまだ死にたくねえぞ!)
しかし、なかなか隣の指名された奴が動かない。
(やばい!やばいって!死にてえのか!?)そう思いながら恐る恐る隣を見る。
可哀想なことに、指名を受けたのは銀行員らしき服装の若い女性だった。
「おい!お前だよ。そこの女!」
怒鳴られたことでその女性は、やっと顔を上げた。
「こいつは驚いた。なかなかの上物じゃねえか。」
強盗犯の一人がそうボヤいた。
顔を上げた女性は、まだ若く新入社員といったところだろうか。整った顔に見事なスレンダーな・・・いや、今はそれどころではない。
「奥の金庫を見に行く。ついて来い。」
強盗犯の1人が、その顔を醜く歪ませながらそう吐き捨てるように言った。
若い銀行員は助けを求めるかのように狼狽した目で周りを見る。
だが、当然ヒーローなんて現れない。ただ、虚しく視線をそらされるだけだった。
「はやくしねえか!」
痺れを切らした男が、その子の髪を掴み怒鳴る。
「お、おい・・・やめない・・・か」
辺りがどよめくのを感じた。
(俺は何をしてるんだ!?)
気がつくと俺は立ち上がり、若い銀行員の髪を掴む男の腕を掴んでいた。
一瞬の静寂が店内を包む。
「あ?なんだお前?」
男は一瞬何が起きたのかわからないとでもいうような目で俺を見る。
「い、いや・・・そういうのはちょっと・・・」
(だから俺は何をしてるんだよ!?)
なおも俺は言葉を続けた。
「大体お前らなんなんだよ。俺はただ給料下ろそうとしただけなんだぞ・・・なんでこんなことになるんだよ!?」
もう何がなんだが分からなくなっていた。
ドンッ!!
不意に強い衝撃を頭に感じた。
視界が歪み、遅れて激しい痛みが襲う。
「くっ!・・・っあ」
どうやら頭を銃で殴られたようだった。
冷たいはずの床が、流れ出る血によって熱を帯び始める。
「お前舐めてんのか・・・いや、どうやら死にたがりのようだな。」
店内の空気が凍りついた。
次に俺を襲うのは、終焉という名の鉛だろう。
店内に流れる死の雰囲気を感じ取ったのであろう。皆、息を潜め視線を逸らしたのがわかる。
「あっ・・・はぁ・・・」
意識が遠のいていく。身体が冷えていく感じがする。血が流れすぎたのか。
何も考えられない。俺は死ぬのか。
倒れる瞬間に見えた若い銀行員の顔は、罪悪感と悲壮感とが混ざり合ったかのような表情をこびりつけたまま固まっていた。
(ははっ・・・俺、何してんだろうな)
バカなことをした。ヒーローに夢見るほど若くはなかったはずなのに・・・
何故あの時、いつものようにコンビニに行かなかったのだろう・・・今となっては時既に遅しというやつか。
こういう時は走馬灯が見えるというが、見えるのは俺に終焉をもたらすであろう男の足と、崩れ落ちた若い銀行員のスカートの中・・・いや、何も見えない。
「〇〇〇!」
何かを叫ぶ声が聞こえる。
誰の声かもわからない。
その直後、低く乾いた音を最後に、俺の意識はテレビを消したかのように途切れた。
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