2 / 11
俺、異世界に行くの!?①
しおりを挟む
銀行なんていつぶりに来ただろうか。最後に来たのは確か半年前だったか、今日だって、いつものようにコンビニのATMで下ろせば済む話だったのだが、たまたま銀行が見えたのでそこに入ったのだった。
「いらっしゃいませ~」
自分でそう脳内再生しながら、久しぶりの銀行に入ることの緊張をほぐし、ATMへと向かう。
カードを入れて、さて下ろそうかというその時だった。
『全員手を挙げろ!!!!』
銀行内に怒声が響き渡る。
『キャーー!!!』
普段なら嬉しいはずの黄色い声が、悲鳴だと認識するまで、数秒の時間を要した。
「全員床に伏せろ!!」
なおも怒声は続く。
「お前はこれに金を詰めろ!ありったけだ!」
いらっしゃいませなんて軽く言ってたら余計なものまでどうやら入ってきてしまったようだ。
こんな時、ハリウッド映画の主人公ならきっと・・・なんてことを考えてみるものの、そんなことを俺がしたら即射殺だろう。
「まいったな・・・」
ただの26歳サラリーマンに打つ手などなく、関節が外れそうなほどに震える膝を押さえつけるしかない。
「おい、そこのお前。」
俺のすぐ隣で誰かが指名される。
(おいおいやめてくれ!俺はまだ死にたくねえぞ!)
しかし、なかなか隣の指名された奴が動かない。
(やばい!やばいって!死にてえのか!?)そう思いながら恐る恐る隣を見る。
可哀想なことに、指名を受けたのは銀行員らしき服装の若い女性だった。
「おい!お前だよ。そこの女!」
怒鳴られたことでその女性は、やっと顔を上げた。
「こいつは驚いた。なかなかの上物じゃねえか。」
強盗犯の一人がそうボヤいた。
顔を上げた女性は、まだ若く新入社員といったところだろうか。整った顔に見事なスレンダーな・・・いや、今はそれどころではない。
「奥の金庫を見に行く。ついて来い。」
強盗犯の1人が、その顔を醜く歪ませながらそう吐き捨てるように言った。
若い銀行員は助けを求めるかのように狼狽した目で周りを見る。
だが、当然ヒーローなんて現れない。ただ、虚しく視線をそらされるだけだった。
「はやくしねえか!」
痺れを切らした男が、その子の髪を掴み怒鳴る。
「お、おい・・・やめない・・・か」
辺りがどよめくのを感じた。
(俺は何をしてるんだ!?)
気がつくと俺は立ち上がり、若い銀行員の髪を掴む男の腕を掴んでいた。
一瞬の静寂が店内を包む。
「あ?なんだお前?」
男は一瞬何が起きたのかわからないとでもいうような目で俺を見る。
「い、いや・・・そういうのはちょっと・・・」
(だから俺は何をしてるんだよ!?)
なおも俺は言葉を続けた。
「大体お前らなんなんだよ。俺はただ給料下ろそうとしただけなんだぞ・・・なんでこんなことになるんだよ!?」
もう何がなんだが分からなくなっていた。
ドンッ!!
不意に強い衝撃を頭に感じた。
視界が歪み、遅れて激しい痛みが襲う。
「くっ!・・・っあ」
どうやら頭を銃で殴られたようだった。
冷たいはずの床が、流れ出る血によって熱を帯び始める。
「お前舐めてんのか・・・いや、どうやら死にたがりのようだな。」
店内の空気が凍りついた。
次に俺を襲うのは、終焉という名の鉛だろう。
店内に流れる死の雰囲気を感じ取ったのであろう。皆、息を潜め視線を逸らしたのがわかる。
「あっ・・・はぁ・・・」
意識が遠のいていく。身体が冷えていく感じがする。血が流れすぎたのか。
何も考えられない。俺は死ぬのか。
倒れる瞬間に見えた若い銀行員の顔は、罪悪感と悲壮感とが混ざり合ったかのような表情をこびりつけたまま固まっていた。
(ははっ・・・俺、何してんだろうな)
バカなことをした。ヒーローに夢見るほど若くはなかったはずなのに・・・
何故あの時、いつものようにコンビニに行かなかったのだろう・・・今となっては時既に遅しというやつか。
こういう時は走馬灯が見えるというが、見えるのは俺に終焉をもたらすであろう男の足と、崩れ落ちた若い銀行員のスカートの中・・・いや、何も見えない。
「〇〇〇!」
何かを叫ぶ声が聞こえる。
誰の声かもわからない。
その直後、低く乾いた音を最後に、俺の意識はテレビを消したかのように途切れた。
「いらっしゃいませ~」
自分でそう脳内再生しながら、久しぶりの銀行に入ることの緊張をほぐし、ATMへと向かう。
カードを入れて、さて下ろそうかというその時だった。
『全員手を挙げろ!!!!』
銀行内に怒声が響き渡る。
『キャーー!!!』
普段なら嬉しいはずの黄色い声が、悲鳴だと認識するまで、数秒の時間を要した。
「全員床に伏せろ!!」
なおも怒声は続く。
「お前はこれに金を詰めろ!ありったけだ!」
いらっしゃいませなんて軽く言ってたら余計なものまでどうやら入ってきてしまったようだ。
こんな時、ハリウッド映画の主人公ならきっと・・・なんてことを考えてみるものの、そんなことを俺がしたら即射殺だろう。
「まいったな・・・」
ただの26歳サラリーマンに打つ手などなく、関節が外れそうなほどに震える膝を押さえつけるしかない。
「おい、そこのお前。」
俺のすぐ隣で誰かが指名される。
(おいおいやめてくれ!俺はまだ死にたくねえぞ!)
しかし、なかなか隣の指名された奴が動かない。
(やばい!やばいって!死にてえのか!?)そう思いながら恐る恐る隣を見る。
可哀想なことに、指名を受けたのは銀行員らしき服装の若い女性だった。
「おい!お前だよ。そこの女!」
怒鳴られたことでその女性は、やっと顔を上げた。
「こいつは驚いた。なかなかの上物じゃねえか。」
強盗犯の一人がそうボヤいた。
顔を上げた女性は、まだ若く新入社員といったところだろうか。整った顔に見事なスレンダーな・・・いや、今はそれどころではない。
「奥の金庫を見に行く。ついて来い。」
強盗犯の1人が、その顔を醜く歪ませながらそう吐き捨てるように言った。
若い銀行員は助けを求めるかのように狼狽した目で周りを見る。
だが、当然ヒーローなんて現れない。ただ、虚しく視線をそらされるだけだった。
「はやくしねえか!」
痺れを切らした男が、その子の髪を掴み怒鳴る。
「お、おい・・・やめない・・・か」
辺りがどよめくのを感じた。
(俺は何をしてるんだ!?)
気がつくと俺は立ち上がり、若い銀行員の髪を掴む男の腕を掴んでいた。
一瞬の静寂が店内を包む。
「あ?なんだお前?」
男は一瞬何が起きたのかわからないとでもいうような目で俺を見る。
「い、いや・・・そういうのはちょっと・・・」
(だから俺は何をしてるんだよ!?)
なおも俺は言葉を続けた。
「大体お前らなんなんだよ。俺はただ給料下ろそうとしただけなんだぞ・・・なんでこんなことになるんだよ!?」
もう何がなんだが分からなくなっていた。
ドンッ!!
不意に強い衝撃を頭に感じた。
視界が歪み、遅れて激しい痛みが襲う。
「くっ!・・・っあ」
どうやら頭を銃で殴られたようだった。
冷たいはずの床が、流れ出る血によって熱を帯び始める。
「お前舐めてんのか・・・いや、どうやら死にたがりのようだな。」
店内の空気が凍りついた。
次に俺を襲うのは、終焉という名の鉛だろう。
店内に流れる死の雰囲気を感じ取ったのであろう。皆、息を潜め視線を逸らしたのがわかる。
「あっ・・・はぁ・・・」
意識が遠のいていく。身体が冷えていく感じがする。血が流れすぎたのか。
何も考えられない。俺は死ぬのか。
倒れる瞬間に見えた若い銀行員の顔は、罪悪感と悲壮感とが混ざり合ったかのような表情をこびりつけたまま固まっていた。
(ははっ・・・俺、何してんだろうな)
バカなことをした。ヒーローに夢見るほど若くはなかったはずなのに・・・
何故あの時、いつものようにコンビニに行かなかったのだろう・・・今となっては時既に遅しというやつか。
こういう時は走馬灯が見えるというが、見えるのは俺に終焉をもたらすであろう男の足と、崩れ落ちた若い銀行員のスカートの中・・・いや、何も見えない。
「〇〇〇!」
何かを叫ぶ声が聞こえる。
誰の声かもわからない。
その直後、低く乾いた音を最後に、俺の意識はテレビを消したかのように途切れた。
0
あなたにおすすめの小説
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる