新宿情火~Flamberge~Ⅰ

坂田 零

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ACT3-1

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     * 
 あの女はいわゆるブスだった。

 ほぼノーメイクに近い顔、腫れぼったい一重瞼に、厚い下唇、そして、丸みを帯びた小鼻。

 特にスタイルが良い訳でもなく、その女に褒められるとこがあるとすれば、肌の色つやと胸のデカさぐらいなもんだった。

 説明会の途中、どうしてもタバコが吸いたくなってそっと会場を抜け出し、たどり着いた非常階段。

 タバコを吸うために、スーツのポケットに手を突っ込んだ時、階段下の踊り場に座り込んでいる女がいた。

 名前なんかもう忘れた。

 確か、『しのぶ』だかなんだったか、そんな名前だった気がした。

 階段の上の俺に気づいて、しのぶは顔を上げた。

 不可抗力で目があってしまった。

 だから、気まぐれに声をかけた。

 なんて声をかけたかなんて、覚えちゃいない。

 新入社員だったしのぶは、仕事でミスをして上司にこっぴどく怒鳴られた挙句、他の社員の前で「高卒で田舎臭い顔したやつは、仕事もまともにできないのか!?」と罵られたそうだ。

 ドン臭いし田舎臭い。

 それはどう見ても明らかだ。

 これでもう少し顔が良ければ、そんな叱られ方もしなかったかもしれない。

 俺はそんなことを思いつつ、両手で顔を覆って泣いているしのぶを、一応は励ましてやりながらまじまじと見た。

 しのぶの話なんかより、ブラウスのボタンが千切れそうなほどの巨乳の方が、気にかかって仕方なかった。

 “顔を隠せば穴は一緒” 

 それは当時、大学でよくつるんでいた悪友の言葉だった。

 この時、俺の頭にその言葉がよぎった。

 一服もしたし、説明会に戻らないといけないな・・・

 俺は胸ポケットからボールペンを取り出し、メモに自宅の電話番号を書くと、それをしのぶに渡した。

 所々を端折りつつ、俺がその流れを話終えると、何故か、美麗はくすくすと笑い出したのだった。

 俺は思わず、きょとんとしてしまう。

 美麗は口元を、赤いマニュキュアが塗られた指先で覆いながら言った。

「ごめんなさい、可笑しくて、つい・・・っ
そんな理由で電話番号を渡したんですね?」

「あの頃は、とにかく数をこなしたくて、ブスだろうがなんだろうがお構いなしでした」

「ひどい人」

 美麗はそう言って、再び艶やかに微笑った。

 美麗が言っていたシチュエーションと、確かにこの話は似ているがあの時の『しのぶ』と、今、目の前にいるこの

 美女が同一人物とは到底思えない。
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